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  月読 後日談


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 ぎむれっと前日譚


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  かっこいいカカシと、
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2020年10月21日(水)
イエイガーマイスター/ハンターの守護聖人〜現代 1)

「ありましたね、そんなこと」
テンゾウは感情の伺えない表情のまま、カカシを見た。
「ボクは実質外されていたようなものでしたから」
「や、だって、仕方ないでしょ」
言い訳口調になる自分にカカシは内心で辟易しながら、言い募る。

「事後処理でも、他部隊の応援とかで外されましたしね」
「あ、それは」
「自分、カカシ隊のはずなのに役立たずなのかなあ、なんて悩んだりも」
「え?そう?そうだったの?」
「なんてこともありました、という、昔話です」

へ?と間抜けな答えを返すカカシに、テンゾウはにんまりと笑みを向けた。

「お久しぶりです、カカシさん。で、これが解析を依頼された血液ですね」
豹変ぶりが凄い、さすが現役暗部、などと自称隠居のカカシは嘆息する。

「今となっては、大蛇丸も、そう悪さをするとは思えないのですが、まあ、そこはそれ、ですね」
テンゾウは部下に、カカシが持ち込んだ血液を持たせ、目の前の施設に向かわせた。

「監視してるだけって、退屈しない?」
「ええ。先輩のおかげで、時々部下をおもちゃにして息抜きしてますから」
「おもちゃって」
「だれでしたっけ、監視途中に、アイス買って来いとか言ったのは」
「……はい、自分です」
そして二人顔を見合わせて笑う。

いいことだと、カカシは思う。暗部でいることが幸せかどうかは脇に置き、テンゾウは任務に飽いていない。
つまり、それなりの緊張感を持ち任務にあたり、適度に息抜きもできている、ということだ。

「最近はどう?」
「至って大人しいものですよ、大蛇丸は自分の興味あることについて研究できればそれでいい、みたいな性格だったのかもしれませんね」
「ただ、木の葉の里では、綱手様や地雷也様と合わせて三忍と呼ばれ、比較されていたから」
「ライバルというのは難しいですね、切磋琢磨する相手はいたほうがいいようにも思いますが」
「そうだね」と答えたカカシの脳内には、やはり一緒の班で競ったオビトやリンの姿が浮かぶ、そして、カカシの元で競ったナルトやサスケ、さくらの姿も浮かんだ。
「ああ、でも、ガイさんとカカシさんの関係はいいですね」
「え?どこが?」と答えるカカシの声も笑っている。

 ガイは先の里の騒動のとき負傷し、いまは車いすの生活を余儀なくされており、だいたいカカシが付き添うのが常だ。
 それでも卑屈になることもなく、逆立ち歩きでの競争を迫ってきたりするのがガイという男だ。そこにカカシは救われている部分も多々ある。
 内心ではいろいろ思うところもあるのだろうが、それを表に見せないのがガイの強さだ。

「里のほうは、どうですか?」
「うん、若手が頑張ってるよ。今回も里の間で連携をとって、騒ぎを大きくしないように押さえている」
「昔だったら……」とテンゾウは先の言葉を呑んだ。

確かに、昔だったらこれを機に里間での緊張が高まることもあっただろう、とカカシも思う。
ただ、それを口にすることは、当時の影を貶めることにもなりかねない。何にせよ、時代が変わったのだから、とカカシは思う。

「時代は変わっていきますね」
と空の向こうに目をやったテンゾウに、カカシはテンゾウとの年月を思った。



2020年10月20日(火)
イエイガーマイスター/ハンターの守護聖人〜過去 4)


「では、それはそれとして、ここに変異した遺伝子がある、と隊長はお考えですか?」
「うん、ある……いや、ここにあってほしい」
「あってほしい?」
「だって、ここになかったら、それこそもう、あらゆる病院、薬事施設、公から個人のまで総当たりしなくちゃ、デショ?」
「……確かに」
「それも、秘密裡にだよ」
「……ですね」

カカシは外に続く扉を閉ざし、鳥面を振り返った。

「でも、このなかで、どれが変異した遺伝子を内包させているのか、しらべる必要があるんだ……」
その先を言いよどんだカカシに、鳥面はふっと息をつく。
「最悪、それが持ち出された可能性もある?」
「うん」

しばし沈黙が落ちた。

「悪意があったと言い切ることはできない、供養のつもりで持ち出したこともあり得るから」
「そうですね」と答える鳥面の声は、沈んでいた。
「とりあえず、ここにずっと保管されていたものが動いた痕跡を探す」
「病気の広がりを考えると、最近の話、ということですか」
「そう、ここ最近のことだね」
「見張りに当たっているメンバーについては?」
「調査済み」
既にかがみこんで棚を調査し始めているカカシに習い、鳥面を端から棚を注意深く観察していった。

棚には特に何の表示もなかったが、瓶には年月日や恐らくは実験体のカルテナンバーらしき数字と、いくつかの記号が記されたシールが貼られている。
しばらく眺めているうちに、棚には年月日ごとに瓶が収められていること、そして記号ごとにまとめられているらしいことがわかってくる。
雑然として見えたが、法則に則って秩序だって瓶が置かれていることが、鳥面にも理解できた。

おそらくカカシは、とっくにその法則に気づいていたのだろう、「割と、きちんとしているでしょ?」と言った。
「ええ、大蛇丸というのは几帳面だったんですね」
「みたいだね」

棚を移動したとき、鳥面はふとした違和感を抱いた。自分の感じた違和が何か、探ろうと棚を一瞥し、そして気づいた。
「隊長!」
「何」と応じたカカシの声を間近に聞き、思わずのけぞる。
「こんな短い距離で瞬身使わないでください」
文句を言いながら、目の前の棚を指さした。
「年代から言って、8年ほど前、新しいタイプの強力な風邪が流行ったときのものかと」
瓶はきっちり並んでいる、が。
「瓶と瓶の隙間が空いているね、他の棚に比べて」
「瓶を一つ持ち去って、その隙間を埋めるために、他の瓶を等間隔に並べ替えたように見えます」
「うん、そう見える」
「しかも、並べ替える前に、棚のほこりをぬぐった形跡もあるね」

ある程度密閉された空間で、人の出入りもほとんどないため、ほこりっぽくはないのだが、それでも棚にはうっすらと時間の堆積が残っている、が、その棚にはそれがなかった。

上下の棚には、同じ記号だが、異なる年代の瓶がおかれている。
「おそらく、風邪に関する何らかの実験を行ったんでしょうね」
という鳥面に、カカシは肯いた。
「通常、研究のためにこうした処理を行うのには腐敗を防ぐためにホルマリンを使うんだ。病変の痕跡を残すためもあるんだろうけど。でもこれは大蛇丸が開発した培養液だろうね」
「つまり。生きている?」
うん、とカカシは肯いた。
「これ持ち出して検査するのも大変だなあ、どうするんだろ、医療研究班」
「いずれにせよ、報告、ですね」
「うん、ここに猫面を連れてこなくてよかったよ本当に」
「ですね」
「あいつ、絶対自分は関係ないのに、自分のせいみたいに落ち込むから」

「え?」と鳥面は、カカシを振り返る。
「落ち込まれるのが嫌だった、だけなんですか?」
「嫌だよ、落ち込むともう、どんぞこまで落ち込むから、うっとおしいったらないんだよ」
「任務には関係ないじゃないですか。猫面は落ち込んだとしても、任務には持ち込まないタイプだと思うし」
鳥面の言葉にカカシは、そうなんだけどさ、と呟いた。

「俺、あいつに落ち込まれると、なんかいたたまれなくなるんだ」

ふふ、と鳥面が笑ったことに、カカシは気づかなかったようだ。何も言われなかったので。
隊長、けっこう猫面のこと気に入っているんですね、と内心で呟きながら、
「じゃあ、ここについては報告することにして撤収ですかね」
と問うた。
「や、報告は鳥面が行って。俺ここに残る、一応、監視が必要だから」
「なら、自分が」「いい、俺が残るから」

鳥面は仕方なく現場を離れ、カカシに代わり、火影の元に報告に戻ったのだった。

その間にカカシは、調査対象になった瓶の年代や記号と書類とを突き合わせ、親族が特定できるものには特定をしていた。
親族への連絡は、その後のカカシ班の活動になったが、後味の悪い任務であったことは言うまでもない。ただ、いくつかの事例に関しては、親族が形見として引き取った。
「多少は、報われたかな」とカカシは苦笑したものだ。

ただ、この任務から猫面のテンゾウは除外されていた。暗部の他部隊への応援にまわされていたのだ。
それもまた、カカシの配慮だった。

結局、別れた妻とともにいた娘が、売られて研究所にいたと知った一般人が、内臓でもいい、娘を供養したいと研究所に潜り込んだのが、発端とわかった。
ただ、どれが娘のものかわからなかったため、娘が行方不明になった年の棚から、適当に持ち出したのだとわかった。
「娘でなくてもいい、同じような目にあった子どものだれかなら、それでも慰めになると思いました」
と彼は供述していると言う。

こちらは、最近の記録から今までの風邪とは異質で重篤な症状を持つものが通院した記録を調べて判明したものだった。
結局、彼を中心に、彼の交流範囲、彼が通院した病院を主に、感染が広まったことも確かめられた。

木の葉の里ではこの事態を重くみて、残りの培養片について徹底調査を数年に渡って行い、親族がわかり希望したものについては十分な注意の元返却し、わからなかったものについては、記録を残したうえで合同火葬にした。

その後、施設自体は廃棄され、いまは痕跡もない。



2020年10月19日(月)
イエイガーマイスター/ハンターの守護聖人〜過去 3)


「で、ここに来た目的は、なんなんですか?」
「実は当時、大蛇丸はいろんな病気について調査を行っていたんだ、なかでも風邪やその周辺の病気については、かなり突っ込んだ研究も進めていてね」
「そうなんですか?」
「うん、一応、この研究所の発端は、病理研究施設ということで里からも公認されていたんだ、だから、その体裁を整えるためにも、里から依頼された研究も進められていたんだよ」

 なんで、違法なのに規模の大きい施設が見逃されていたのだろう、という鳥面の素朴な疑問はここで解消された。が、新たな疑問も生まれる。

「風邪についての研究結果は、里にも報告されていたんですよね」
「うん……でも、実験体を使った研究については、隠されていた……はずなんだ」
「はず?」
鳥面の追及に、カカシは苦笑した。
「だって、大蛇丸だよ、真面目に里のためにだけ研究したはずない……でしょ?」
「つまり」と言って鳥面は脱力した。
「ただの予想ですか?」

カカシは「テヘ」と言って、首を傾げる。
「テヘ、じゃないですよ、もう」
腕組みをした鳥面は、それでも、ふっと息をつくと「確かに」と呟いた。

「真面目に里のためだけに研究したはずないですよね、もしかしたら、遺伝子操作を行った?」
「かもしれない、でしょ?」
「でも書類は残ってないんですよね」
「処分したか、もしくは、まだ書類に残すような段階ではなかった……」
「でも、ですよ、仮にここで、何か遺伝子の変異が起こったとしても、だれもそれを持ち出せないですよね」

カカシはガラス瓶に沿わせていた鈎爪を、つっと己の胸に向けた。それは自分の心臓をえぐるような仕草のようでもあった。

「ねえ、もし自分の子……娘でも息子でも、あるいは、孫でもいいや、そういう近しい親族がここで実験体になっていたとしたら?」
「でも、実験体にされたのは、出自の不明な孤児や……」
鳥面の言葉にカカシは目を伏せ、緩く首を振った。
「攫われてきた子もいるんだよ、確かに、貧しい地域の貧しい家庭の子どもではあったけれど、それに、それだけじゃないんだ」
「……まさか、親に売られた?」
鳥面の言葉に、カカシは顔を上げ、悲しげに微笑んだ。

「だから、テンゾウをここには来させたくなかったんだ」
鳥面は無言で肯いた。
「不幸な偶然でここに来ることになったのか、孤児だったのか、あるいは親に売られたのか」
いずれにせよ、どれも楽しい過去ではない。
攫われた不運を嘆くのか、あるいは孤児となった理由を嘆くのか、あるいは子を売るしかなかった親を嘆くのか。
「いつかは知るのかもしれないけれど、それは今じゃない……」
「嘆くばかり、なんて……」
「それに、嘆きは時に恨みに変質することもあるからね」
そのカカシの声音には、暗部らしいひんやりとした冷たさがあった。

「つまり、恨みを持った疑いのある者がいる、と?」
「……かもしれない、ってこと」
「でも、一般人はもちろん、忍も特別な許可がなければ入ることができないはずです」

「そうなんだけどさ」と言って、カカシの部屋の奥に進む。
奥には小さな鉄扉があり、簡単な摘みを回すと開錠されたようで、ドアを押し開けると、そこには陽光にあふれた草地が広がっていた。
「え? これは?」
「別に秘密の通路ってわけじゃないよ、ただ、ゴミ捨てに使っている通路ってだけ」
「ゴミ? ゴミ捨て」
「だって、ここを監視してる暗部だって、飲まず食わずじゃないもの」

ね、とカカシは笑みを浮かべ、片目をつぶって見せさえした、いや、もともと閉ざされた瞳とは反対の瞳を閉じられたからと言って、それをだれが“ウィンク”だと理解するだろう?

「つまり、このゴミ捨て通路は施錠されてはいるものの、割と行き来に利用されていて、うっかりだれかが潜り込もうと思えば、できなくもない」
「そーゆーこと」



2020年10月04日(日)
イエイガーマイスター/ハンターの守護聖人〜過去 2)

「つまり、遺伝子の意思で強い遺伝子が偶然生まれ、それを人間の意志が、広めた?」
カカシがまとめるとテンゾウが肯く。
「じゃあ、さ、偶然生まれた強い遺伝子を、どうやって探り当てたのかな?」
「そこが、今回の探索の要となるのではないでしょうか」
テンゾウの言葉に、なるほどと3人が肯いた。
「病院関係……か」

正式の命ではないということは、おそらく火の里のさまざまな施設にも疑いがかかっている、ということだろう。
もちろん他里の介入も疑わなくてはならない、ただ公にはできない、と火影は言った。

「獅子身中の虫、かもしれないね」
「身中? え? 里の中?」
鳥面が思わず口に出したといった体で、あわてて自分の口を塞いだ。
「うん、その可能性もあるってこと」

「あからさまに里を探っている、と思われないように」とカカシが言う。
「虎面と猫面は、病院関係を洗う」
「承知」と二人の影が消えた。
「で、僕らは、とりあえずテンゾウを保護した場所に行こう」
「だから、この編成なんですね」と鳥面は小さく呟いた。

 かつて大規模な研究所のあったそこは廃墟となっている。しかし、監視は付いていた。
「変化はないはずですが」
「うん、変化があれば連絡が来る、来ないということは、変化がない」
 カカシの言葉は静かだったが、鳥面はかすかな緊張を感じた。

「でも実験結果は、粛々と時を費やしているかもしれない」

「お疲れ様です」と警備をしている暗部隊員の挨拶に「お疲れ」と片手をあげて応じたカカシは、鳥面を伴って廃棄施設内に入った。

 ひび割れた大きな試験管のような装置は、もともと人間の子ども、正確には異なる遺伝子を移植した子どもを保護という名の元、培養していた装置だ。
 どれも破壊され、そこからこぼれた培養液なども、今は跡形もない。カカシはそれらを一顧だにせず、そこから続く扉を開けた。
 その部屋はそう広くはなく、かといって狭いというほどでもないのだろうが、部屋中に棚が設置されているため、息苦しく感じられる。棚の一部には、試験管やビーカーといった実験に使う用具が整然と収められていた。実験の準備室のようなものだろう、と鳥面は壁面に並ぶガラス器を眺める。

「え?、あれは?」
 そこには、何かの溶液に浸された肉塊が瓶詰にされ、並んでいた。
「あ、やっぱり、あった」とカカシはその棚の渕をトントンと指先で叩いた。
「これ?」「うん、痛ましいことなんだけど……実験に失敗した……つまり失敗作、と大蛇丸が判断した実験体の、内臓」
「内臓、ですか?」と鳥面が一歩後ずさる。凄惨な場に直面することも多い暗部所属の鳥面にして、一瞬、動揺したのだろう。
「内臓? 内臓だけ?」と呟きながら、瓶詰を凝視する。
「丸ごとの場合もあるし、内臓から切り出された一部だけ、って場合も。どこに違いがあるのか、その基準は、よくわかってないんだけど」
「ただね」と言いながら、カカシはふっと息をついた。
「この結果が、今の火の里の医療に役立っていたりもしているんだ……」
言いながら、カカシが暗部の面をくるりと後頭部に回した。

さらけだされた素顔は、しかし鼻筋の途中から上だけで、口元は覆われている。
左目を閉ざしたまま、右目だけでカカシは並んだ瓶を端から順繰りに確かめる。

鳥面は瞑目し、「知識としては知っていましたが」と吐息とともに吐き出した。
「これが実態なんですね」

「誤解しないでほしいのだけど、“これ”そのものが、残酷なわけじゃないんだ」
鳥面が、眉間にしわを寄せた。
「ま、内臓だの、その欠片だの、というだけを取り上げれば、忌まわしいと思うのはわかるんだけどね」
カカシは、暗部が装着している鈎爪がガラス瓶の表面を傷つけないように、そっとなぞる。
「忌まわしいのは、ここにあるすべてが、本人の同意もなく実験体になって、その死後も本人の意志とは無関係に切り刻まれたこと、なんだよ」

それでも鳥面は承服しかねる、という表情で、ガラス瓶を見渡し、カカシを見た。

「たとえば、さ。鳥面が未知の病気にかかったとするよね、鳥面の血液を調べたら、その病気についてわかったり、もしかしたら治療方法がわかるかもしれない、ってなったら」
「ああ、血液を提供したり、場合によっては専門施設で経過を見たいから入院してくれと言われて従ったり、はしますね」
「うん、そう、ちゃんと事前に説明があって、同意があれば、それは医療への貢献になる、そういうこと」
「死後、自分の体を調べることで何かわかるのであれば、それは拒否するものではありません。それは、そうですが」
「そう思うのは、鳥面が忍だから、というのも少なからず、あるよね。医療関係者だったり、そういった方面に深い関心をもっていたら忍でなくても、同意することもあるだろうけれど」
「でもここにある……いるのは……まだ判断力も持たない子どもだった……」
「同意も何もないよね。ちゃんとした判断力だって」

自らの意志に関係なく、実験体にされ、死後も切り刻まれる……。
「死後の世界を信じている信じていないにかかわらず、とても理不尽です」
震える声で答えた鳥面に、カカシは「うん」と頷いた。
「でも、今回はここを調べないと。大蛇丸は当時、いろいろな病原菌やウィルスの調査実験も行っていたんだよ」
「そうなんですか?」
「下心はいろいろあったんだろうけれど、まあ、根っからの研究者気質なところも、多分にあったんだろうね」
カカシは、ふっと息をつく。
「やったことの是非はともかく、残念なことなのかもしれない」

しばし、二人の間に沈黙が落ちた。今も当時のまま、緩く入っている空調の微かな稼働音が聞こえた。