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2008年07月12日(土)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 22) Side K


テンゾウが溶けるように姿を消した後の空間を、ハギと呼ばれた男は凝視していた。
オレにとっては見慣れた瞬身の術だが、この村では使う者がいないのかもしれない。

ともあれ、村長に「では、また夜に」と挨拶し、オレは蔵を後にした。男も一緒に、蔵を出た。

しばらく歩くと予想通り、男が問いかけてきた。
「さきほど、トキが消えたように見えたのだが」
「あれは忍の術のひとつで、瞬時に場所を移動するときに使います」
「忍の方が普通に使う術、ということでしょうか?」
「普通……と言っていいかどうか」
どこに基準を置けば、この村の“普通”なのか、それがオレにはわからない。
「忍の術のなかでは一般的な術ではありますね」
「時空間忍術というのは?」
「瞬身の術は、ある程度以上の技量があれば使いこなすことのできる術ですが、時空間忍術は、かなり特殊な術です。どの忍も訓練を積めば身につけることができる、という類のものではありません」
長の家の敷地を出て、男が東へと道をたどるのに、オレもついて歩く。これと言って理由があったわけではない、強いて言えば、男のことが心配だった。
男は、目の当たりにした己より若い父の姿に動揺しているのだろう、心ここにあらずといった態だ。
その姿は、いやでも死の間際の父の姿を連想させた。

確かに、先生の言うように、時空を繰るのはタブーなのだ。
目の前の男の姿を見て、改めて思う。

「お気づきかもしれませぬが、私は忍としての資質をあまり持ちませぬ。結界の守り番を命じられたときには、何かの間違いかと思ったほどで」
しばらくして、男が問わず語りに話し始めた。
「結界の守り番は、忍としての資質を持っていることが条件なのですか?」
「それが条件とは言われておりません。が、守り番に選ばれる者を見れば、自ずと……」
「……なるほど」
「でも、わかりました。今日のため、だったのでしょうな」
オレは、どう答えればいいのかわからず、口をつぐんだ。
「さきほどは不覚にも動揺しましたが……二度と会えないと思っていた父に会えたことは、嬉しく思います。彼が、犯罪に手をそめている……たとえやむを得ずであったとしても、そうなのだとしたら、それを止めるのが己の役目でしょう」
彼は言葉にしたことを確かめるように、頷く。声に力がこもっていて、オレは安堵した。
「母は……もしかしたら……知っていたのかもしれない……」
オレたちはしばらく無言で歩いた。彼が足を止めたのは、テンゾウの住まいとよく似た一軒屋の前だった。
「おお、うっかりと繰言につき合わせて……こんなところまで。失礼いたした。茶でもお入れしましょう」
「いえ。私が勝手についてきたことですので」
オレは一礼すると「また夜に」とのみ答え、その場を去った。

テンゾウの家に着くと、家の前に子どもがいた。突然現れたオレに、びっくりしたように後ずさる。
だが、逃げるかと思った予想と異なり、彼はオレを見上げた。おとなしそうな顔立ちだが、意志の強そうなくっきりとした眉をしている。確か名は。
「モズ?」
子どもは、きっと唇を引き結んだまま頷く。
「トキはいないよ」
テンゾウに用があると思ったオレの言葉に、首を振る。
「知ってる」
じっと見つめられ、どうやらオレに用があるらしいとわかった。
「あがる? なにも出ないけど」
うん、と小さく答え、モズは土間に入ってきた。
土間からの上がり口に腰を下ろしたオレと向かい合うように、モズが立つ。
じっとオレを見つめ、そして目を閉じた。何かの気配を確かめるかのような行動だと思ったオレは黙っていた。
やがて目を開いたモズは、またオレを見た。
「やっぱり、あなただ」
「やっぱり?」
「うん……前に……」
そう言ったきり、モズは黙ってうつむいた。

彼について確か、テンゾウは「特殊な感知能力を備えている」と言っていた。
どう特殊なのか、その話はしていない。うっかりしていた。気にはなったのだ、その話を聞いたとき。

「前に感じた気配と同じかどうか、確かめに来たのかな?」
問いかけると、モズは下を向いたまま頷いた。
「前に感じたのが、どんなだったか……話してくれる?」
モズは顔を上げてオレを見た。
「どうして……」
「ん?」
「どうして、それだけで、わかるの? トキもすぐわかってくれた。でも、ほかのひとは、なかなかわかってくれない」
ん〜、とオレは言葉を探す。
言わんとしていることが、よくわからない。でも。相手は何がしか、自分を理解してくれていると喜んでいる。
どうも口下手な子どものようだ。
「全部わかるわけじゃない、でも、わかりたいとは思っている、だから話してくれるかな?」
うん、とモズは頷いた。
「前に、気配を感じたんだ……えっと、気配ってのは、ボクがときどき感じるザワザワっとした感じのことで、そういうときは大抵、戦闘があって……」
たどたどしい言葉で語られる内容から、村が脅かされそうな、たとえば戦闘とか、結界を破ってだれかが侵入しようとしているとか、そういった気配に敏感なのがわかった。
だが、その能力が何に由来しているのかまでは、わからない。本人も自分の能力について、うまく説明できず、また周囲も彼の能力について理解できないため、正しく理解できないでいるのだろう。
それでも、事情を知らないよそ者のオレに、補足説明をしながら語る様子から察するに、言葉が不足しているだけで、頭の回転は速いことがわかった。
「で、オレの気配を感じたのは?」
「うん、前に、気配を感じたとき。いつもの気配とは全然別の……今まで感じたことのない……まっすぐにこっちを見ているみたいな感じ」
「まっすぐ……?」
「うん」とモズはオレを見た。
「会ってわかった。アレ……トキを見ていたんだ」
難しい謎々に正解したみたいな顔でモズが言う。邪気のない顔に、ドクンと心の臓が脈打った。
長の言葉を思い出す。執着が、封印されていた道を開いたと、言ったあの言葉。
あのとき、キーワードを掴んだと思った。
オレが印を組むと開いた「ときわの森」から続く時空の道を、ほかの暗部が試しても無理だった、その理由――つまり、執着、だ。
アレが発動したのは、過去へのオレの思いがあったから。だとしたら、オレより年下の暗部が印を組んでも道が開かないのは当然だ。
オレよりずっと年若い彼らに、そこまで強い過去への執着がなければ……当然のことなのだ。
そう思った。

だが、今回この村の封印を解いたのは、ひとつには、あの男――息子をこの村に逃がしたらしい男の思い。
だが、それだけでいいなら、とっくに封印は解けていたはずではないか。
この村の東の地点には時空の歪みがあるが、それが今まで封印されており、今回、それが解けたということは。

――オレ?
この村にいるテンゾウへのオレの執着が、道を開いた?

「あの」
黙ってしまったオレに不安を覚えたのだろう、モズがおずおずと声をかけてきた。
「ああ、ごめんね。ちょっと考えていたんだ……で、ザワザワした感じは、東の結界の辺りから感じるのかな?」
「……ザワザワした感じはいつもある……ただ、ときどき、ザワザワした感じがとっても大きくなるんだ」
いつもある?
「たとえば、だれもしゃべったり動いたりしていなくても、人がたくさんいるところには、自ずと気配がある、みたいな感じかな?」
モズの表情がパァッと明るくなった。
「そう、そうだよ」
そして、うん、と頷く。
「それ! なかなかわかってもらえないんだ。人がいても、しゃべったり動いたりしていなければ、静かだろう?って、言われる」
なるほど、普通の五感ではそうなるのかもしれない。だが、生きた人間には生きている証、呼吸や血液の脈動といった生命活動がある。ただ、それを感知するのは、忍以外のひとにとって特殊な感覚になるのだろう。
「いつもは、穏やかなんだ。でも、ときどきすごくザワザワする。そういうとき、たいてい戦闘があるんだ」
わかったよ、という印にオレは大きく頷いて見せた。それに力づけられたかのように、モズは言葉をつなぐ。
「そのザワザワは、でもね、近いときもあれば、遠いときもあるんだ。トキに言われて気がついたんだけど、遠いときって、今じゃないみたいなんだ」
「今じゃない……つまり、過去や未来?」
「……かなぁ?」
「そういう気配も伝わってくるのかな?」
「いつもじゃないよ。ときどき。最初のころは、ほかの気配と区別つかなくて騒いで、でも、何もないから、みんなに呆れられた。今は少しわかるよ。安心していていいのか、危ないのか、少しだけ、なんだけどね」
一気に話し終えると、モズはふぅと大きく息をついた。
「いっぱいしゃべって、疲れた」
モズはオレを見上げて、笑った。



2008年07月03日(木)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 21) Side T


「ハギ」
ボクの声に、格子の前の彼が振り返り、のろのろと身体を起こす。
「トキ……」
葛藤の末、表情をなくしたような顔に、少しずつ血の気が指してきた。
「トキ、これは、どういうことだ?」
ハギの問いかけはボクに向けられていたが、ボクにも答えようがない。仕方なく口をつぐんでいると、ハギの視線がゆっくりと移動した。
「長……これは、どういうことですか?」
「その者を、お主は知っている、そうだな」
長は、いつもと変わらぬ声と口調で、ハギに尋ねた。
「はい。私の記憶に間違いがなければ、これは……」
ハギの視線は長から、再び格子の向こうへ移動する。
「ちち……です」

ちち……その音が「父」だとわかるまでに、ボクは少し時間を要した。
「ですが、長」
ハギが言葉を継ぐ。
「別れたころ、つまり40年ほど前と姿が同じです。自分よりもはるかに若く見える」
確かに横たわる者は若々しく、ハギは誰が見ても、それより年上にしか見えない。
「そんなことは、ありえません。ですからあれは、父の血縁のだれかだと思われますが……」
長はゆっくりと頷いた。
「あれは、お主が言ったとおり、お主の父だ」
「ですが!」
「ああ、わかっておる。お主の言いたいことはわかっておる。だが、お主の父は、お主と別れて後、1年と数ヶ月ほど、つまり今を基準にすれば40年ほども前の時間を生きておる」
は? とハギが怪訝そうな声をあげた。

そういうことだったか。
ようやく、昨日の長の言葉が腑に落ちる。

「お主とお主の母と別れて後、お主の父は、とある男たちに捕まった。いや、あるいは追い忍との戦闘中に助けられたのかも知れぬ。そのまま時空を行き来する術によって、さまざまな時代に身を置くようになった」
「で、では……あれは、あの父は、母や私とはぐれてから2年とたっていないと?」
「ああ」
ハギは再び格子を掴んだ。
「そんなことが……」
あるのだろうか、と呟くようなハギの声が聞こえた。

「木の葉の方は、それを調査されておるのだ」
長の言葉に、ハギが振り返り、ボクを見た。
「トキ、おまえ……」
「あ、いえ、それはオレです。何分、無傷の額宛をつけるのがはばかられたもので」
横から、カカシ先輩が口を添える。ハギはようやくそこにもう一人いたことに気づいたという顔で、先輩を見た。
「ああ。長から触れの出ていた方……ですか」
頷いてから、またボクを見る。
「トキのことを……里に報告されるのですか?」
「いえ。私の任務はあくまでも、彼ら」
と先輩は格子の向こうに視線をやった。
「に関わる調査です。調査の途中、たまたま知った事柄を、一々報告する義務はありません。ただし、里の危機に関わることについては、その限りではありませんが……」
「では」
「ハギ。やめぬか。それは、おぬしが心配することではない」
長の言葉にハギが、口をつぐんだ。
「われわれは、この因縁を断ち切らねばならぬ。そのためには、この方も必要。そして、おぬしもまた必要なのだ」
「わたしが?」
「そう。先々代の長が封印した道を再び開いたのは、おぬしという息子を思う、あの男の執着があったからこそ。だから、それを断ち切らねば、たとえ封じたとしてもまた道は開いてしまう」
なぜか、先輩が「なるほど」と小さく声をあげた。
「父は……父は、どうなるのですか」
「それを決めるのは、お主の父自身」

守り番の交代時間が近づいているボクは、いつ退席しようかと機会をうかがっていたのだが、ここに来て、この顛末を見届けないことには、己の本来の任務が果たせないのでは、と思うに至った。
しかし、本来の任務については他言無用、だれも知らない。
どうしたものか、とあれこれ考えていると、長が
「とりあえず、この者たちが目を覚ますのは、夜になろう。ハギも一度、家に帰り気持ちを静めるがよい」
と言った。
「木の葉の方も、また夜に」
「承知いたしました」
「トキは、そろそろ交代の時間かの?」
「はい。失礼いたします」
村ではあまり使わない瞬身の術を使い、ボクは北の結界に飛び、守り番を交代した。
なぜ、ボクがあそこに立ち会うことを許されたのかを疑問に思ったのは、それからだった。
先輩という部外者のお守り役としてだったのか、村長には別の意図があったのか。

この前、ここに立ってから、まだ1日と半分しか過ぎていない。
しかし、ボクはずっと会えなかった先輩と再会し、長と会見し、そして先輩を……。
やっと自覚したばかりの恋心を、そのままぶつけて思いを遂げた。
先輩は抵抗しなかった。翌日も、機嫌が悪いようではなかった。
あれは……受け入れてくれた、ということなのだろうか?

大好きだよ、と囁く先輩の声は、耳ではなくむしろ、ボクの身体の隅々に行き渡ったかのようだった。
そのままでいい、という先輩の言葉はなんだったのだろう?
確かにあの言葉を聞いた途端、凝り固まっていた何かがほぐれたような感じがあったのだが。

大好き……。

あの行為の後、囁かれた言葉にボクは期待してしまう。
まるで、先輩もボクをずっと思っていてくれたかのような、そんな雰囲気だった。

確かに、暗部にいたときからずっと、目をかけてもらった。
いろいろ教えてもらったし、何よりボクに欠けていた人間関係の築き方を、教えてくれた。
先輩なりの付き合い方でボクを振り回してくれるという、一種、スパルタ教育ではあったが、あれがあったからこそ、今のボクがある。
ターゲット待機中に、暑いからとアイスを買いに生かされたりとか、長期任務から戻った途端に遊郭に呼び出しを食らって適忍の襲撃をかわす楯にされたりとか……。
思い出せば思い出すほど、理不尽にこき使われた、のは確かなのだが。
それでも、ボクはそれが嫌ではなかった。そうやって当てにされるのが、嬉しかった。

きっと、ボクはずっと先輩が好きだったのだ。
任務で組むことが多かったから同胞意識だと勘違いしていただけで、ほんとうはずっとずっと、先輩の「特別」になりたかったのだ。
昨日の先輩の様子では、先輩もボクの特別でいることが嫌ではないと思えた。

……そうだったらいいのに。

ボクは木々の葉の間から、中天に上った太陽を見上げる。
常緑樹の葉を透かして、眩しい晩秋の陽が煌く。

先輩。
任務を終えて、早く、里に戻りたいです。
里に帰って、先輩と飲みに行ったり、また一緒の任務に就いたり、そんな日常を送りたいです。

そのためにも、まずは、この里での任務を完了すること。
ボクは夜に向かって、気を引き締めた。



2008年07月02日(水)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 20) Side K


ちょうど、ひと眠りしたころ、テンゾウが身じろぎ、オレも目を覚ます。
晩秋のやわらかな朝の陽が庭を照らしている。とはいえ、農業を主体とした村はとっくに活動を開始していた。
「すぐ、朝飯にしますね」
照れくさいのだろう、テンゾウはオレの顔をロクに見もせずに布団から起き上がった。
「すすぎは、その甕の水を使ってください」
オレは土間に降り、金だらいに水をすくい、顔を洗い口を漱ぐ。残った水は庭にまく。
と、低い生垣の向こうに、昨夜、村長の家で見た使用人の姿が見えた。
従者をひとり従えた彼は、会釈すると「トキさま」と声をかけた。土間からテンゾウが顔を出す。
「長から命じられて、朝餉をお持ちしました」
え? とオレはテンゾウを顔を見合わせる。
「よろしいでしょうか?」
「え? あ、はい」
テンゾウは来訪者を土間に通した。
風呂敷を解くと小ぶりな重箱が現れ、蓋を開けると煮しめや香の物、握り飯などがぎっしり詰め込まれていた。
「取り急ぎ、今朝はこれでおしのぎください、との主からの伝言です」
テンゾウは猫目をいっそう見開いて、弁当と使用人を代わる代わる凝視した。
そして、オレを振り返り、また弁当を見た。
「あの……何か、お気に召さないものが?」
「いえいえ。破格のご配慮、いたみいります」
石と化したかのようなテンゾウに代わり、オレは頭を下げた。
彼はほっとしたように笑うと、「夕餉には、また何かお持ちしまうので」と一礼するときびすを返す。
オレはテンゾウの代わりににこやかに礼をして、見送った。

「先輩……」
「ん〜?」
「こんな……の……初めてなんですが」
「あ、そ」
「何か、しましたか?」
うろんな眼差しに、苦笑する。オレが恫喝でもしたみたいだ。
まったく、こいつにとってのオレってなんなのよ、とぼやきたくなる。
「昨日、長が『食事も不自由ないように手配する』と、おっしゃってたでしょ?」
「はあ、まあ、そう言えば」
テンゾウは重箱を持ち上げ、くんと臭いを嗅いだ。
「大丈夫そう……ですが」
今度は、そっちの心配ですか、やれやれ、と内心でため息をついていると、どうします、と目線で問いかけてくる。
「ま、大丈夫でしょ? それに、毒を食らわば皿までも、と言うし」
と答えると、テンゾウはようやく吹っ切れたような表情を見せた。
「そうですね。先輩やボクを暗殺するなら、もっと効果的かつ的確な方法もあるんですから」

思いのほか豪華になった朝食を終え、オレたちは家を出た。
テンゾウは、このまま「守り番」に就くというので、見慣れた暗部装束にヘッドギアを装着している。
木の葉の里の印を横一文字に切る刀傷に、わかっていたこととはいえ、胸の奥がざわめいた。
これはもう生理的なもの、としか言いようがない。
当のテンゾウは、いつもと変わらぬ表情だった。まったく、たいしたタマだ。
オレは正規の忍服だが、額宛をするのはやめた。この村で無傷の額宛をするのは気がひけたからだが、考えてみれば、それもおかしな話だ。
正義などというものは、その背景となる価値観によって容易に変わるものだということを、オレは改めて実感した。
そんなオレの心情を知ってか知らずか、テンゾウは気軽な様子で、
「とりあえず、山に入ります」
と歩を進め、オレたちは村を懐に抱くように位置する裏山に分け入った。
なるほど、そのほうが早く移動できるし見通しも効く。それに。
「おそらく長から何か触れが出ているとは思いますが、あまり村のひとたちと顔をあわせないほうがいいでしょう」
同意の印にオレは頷いて、テンゾウのあとを追った。

昨日訪れた長の家をやや右手に見る位置から村を見渡す。
「村長の家を囲むようにあるのが、守り番の長の住まいです。そこから離れて、ボクたち守り番がそれぞれ自分たちが守る方角に近い辺りに点在しています」
遠く南に見えるのは湖らしい。そこにむかって土地は緩やかに傾斜し、山に近いほうには畑地が広がっていた。南側の田は稲の刈り取りも終わっているようだ。一部では牧畜も行われている。東南の山の一部は段々畑になっており、見たところやはり採り入れを終えた果樹の木々なども認められた。
気候は悪くないのだろう。外の地域と交易のできない閉ざされた村で、なるべく多くの食材を調達しようと工夫されていることがわかる。
オレが飛んできた元の村も似たような土地柄だったが、やはりこの村とは違う。
確かに二つの国に翻弄されはしたが、決して、閉ざされた場所ではない。もちろん、よその土地との交易もあるから、狭い土地でごちゃごちゃといろいろな作物を育ててはいなかった。
そんなオレの考えを見透かすように、テンゾウが言葉を継ぐ。
「牧畜や果樹の育成は、酒造りなどと同様に、この村では特殊技能になります。こうした家は技術が絶えないように特別に保護されています」
「教育は?」
「学校はありません。でも、地域ごとに子どもに読み書きを教えたりする役目の者もいます。忍の資質を持って生まれた子への指導などは適宜」
「あの、モズって子は?」
「ゲンブ、北の守り番の長ですが、彼から頼まれてボクが見ています」
ふうん、と相槌を打ちながら、再度、村を眺めた。
「で、あそこが発電所で、余熱を利用した浴場がその少し先にあります。24時間無料で利用できます」
1週間、ここにいるとなったら、お世話になることもあるだろう。
「ん、わかった」

「じゃ、ちょっと、移動しましょうか」
テンゾウはさらに山を登った。ここは、昨日、テンゾウと出会った場所、と思ったときには、老木の枝に立った男の姿が見えた。彼はテンゾウを振りかえると「よう」と手をあげ、オレに会釈をした。
「ここが、ご存知のとおり東の結界です」
同じ手順で、北、西、と山を回り、それぞれの守り番と挨拶を交わした。
どうやら、彼らにはオレのことが通達されているらしく、咎められることもなくオレたちは西の斜面から南に広がる湖のほとりまできた。岸からそう遠くない位置に、小さな島がある。そこに南の結界があるとテンゾウは言った。
オレたちは水面を歩き、島に到達した。
何を祀っているのか小さな社があり、その傍らの木に守り番はいた。
「珍しいな、おまえが南に顔を出すとは」
かなり年配の守り番はテンゾウに声をかけ、オレを見た。
「ああ……おぬしが」
ふっと笑った顔は、まるでオレのことを見知っているかのようだった。しかしオレの記憶にはない。
「父上は息災か?」
「あいにく……」
「そうか。悪いことを聞いた」
「いえ」
答えながら、脇が汗ばむのを感じる。めったにないことだ。こんなところで父のことなど聞かれるとは思っていなかったオレは、確かに動揺したのだ。だが、彼は気にする様子もなく、オレを見、目じりに笑い皺を刻んだ。
「かつて戦場で父上と相見えたことがある。それだけのことだ。お気に召されるな」
隣のテンゾウを見ると、意図せずして視線がぶつかった。どうやら、テンゾウも驚いているらしい、まったくもってそんなふうには見えないが。ということは、この邂逅は偶然、なのだろう。
一瞬、テンゾウが何かの意図のもと仕組んだことかと疑ってしまった。
テンゾウのことは好きだ。過去の記憶を封じられていると知って、普段、言わないような言葉も口に乗せてしまったほど、だ。
だが、それとこれとは別。テンゾウに対する疑いは99%は晴れても、まだ100%とは言えないのが現状で、オレは片時もそのことを忘れるわけにはいかない。まったくもって因果な商売だ。

オレの嘆きを知ってか知らずか、テンゾウは恬淡としていた。
島を離れると空を見上げ太陽の位置を確認する。聞いていた任務時間まで、あと半刻あまりといったところか。
「どこか、行きたいところはありますか?」
観光じゃあるまいし、返事のしようがない。
「とりあえず長の家だな。今朝の礼を言って、今後、そういうお気遣いは無用に、と話したほうがいいだろう」
「ここからゆっくり歩いて半刻といったところです。この村は南北よりも東西に広いので」
「じゃ、歩きましょーか」
「そうですね。少しは村のひとたちにも見知ってもらったほうがいいかもしれませんし」
オレはテンゾウについて、刈り入れの終わった田の間を歩き、霜を防ぐ藁をかぶせた畑地の間を歩き、時折、出会う村人たちの好奇の視線に、それでも精一杯愛想よく応えながら村の北を目指した。

「あ、トキさま。ちょうど良いところに」
長の家の門のところで、使用人のひとりだろう、朝飯を運んでくれたのとは別の男がテンゾウを認める。
「何か、あったのですか?」
「お呼びするようにと長から申し付かったところで」
「長は?」
「そちらに」
敷地の西北に位置する蔵を示す。テンゾウは蔵に視線を送り、それからオレを見た。
「木の葉の方もご一緒に、とのことです」
抜け忍の村でオレは唯一、所属する里をもった者、ということか、と妙に納得した。

蔵と見えたのは外見のみ、実質は牢だった。そして、格子ごしに見えるのは、床に横たわる三人。みな術をかけられているのか眠っているように見える。
そして、ただひとり、格子に手をかけてひざまずくようにうずくまる男がいた。