カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
闇のなか 目をあけて 黒い粒子か浮かぶのを 見ていた
あのこ達が 作る闇のなかで
老犬は くさはらを 生き生き跳び跳ねる
そのまま闇に 連れて行かれぬよう
ワタシはしばらく 眠る老犬を 見ていた
黒い粒子のこ達は ながい列になって
なかなかこの夜を 終わらせてはくれない
ヨリソウ キモチ
手を放したら 飛んでった
ひらり
春を呼びに 行ったの
帰ってくるかしら
いつか
ハコベの咲くころに
黄色いチョウチョになって
ワタシの庭に
青い1月の空が
西へと連れていって
しまったのなら
ひとり
しいんと おひるすぎ
北風に
冷たいしずくが
ちぎれて うしろへ
飛んでゆく
手渡されたバトン
それなら
受け取ろう
重く、重く、重いバトン
脇に挟んで
温める
どうしよう
このバトン 返したい
でも
どんなコトバも
あてはまらない
もう
キモチは コトバに
なっては くれない
行き場をなくした
コトバたち
牛乳瓶の中へ
堆積してゆく
過去の記憶は
躯となり
やがて砂になり
行き場のない
コトバを
濾過してくれる
ワタシは
膝を抱えて それを見ている
牛乳瓶の
まあるい天窓から
浅い春の
無邪気な光が
うっすら差し込み
降ってきた
コトバたちは
濾過の順番を
しずかに並んで
待っている
お前の ボロボロの毛並み ひび割れた肉球 痩せた前足 ガタついた後ろ足
山ほどの ありがとうの気持ちが 尽きないよ
ウトウトと 寝ている姿は いくらながめていても 飽きないよ
黒くて丸い瞳は 掌に乗るような 仔犬の頃から 変らない
けれど 閉じたまつげの先は すっかり白くなった
いつかある朝に そっと眠ったままで
天使が迎えにくると いいよね
神様がくれた 命の灯りが 尽きるまで
見守っているから
でもまだもう少し この子のそばに 居させてください
暖かな茶色い 温もりを見ていたい
玄関を出て しばらく行くと 左へ曲がる
軽い足どり そこからは上り坂
気持ちいい風 夕方ランニング
登る景色は 茜色 見下ろす街は 箱庭
懐かしい街よ
走る走る 夕暮れの雲と ワタシひとり
さみしくない
どこまでも いつまでも
ただ走り続ける
終わりは無い シアワセ
今日も北風
コトバを風に
コトバを風に 放とう
頬をたたく北風は
私のイヤな部分を
浄化して くれるようで
もっとあたれ
もっともっと
涙出るけど
コトバなんて
きらいだ
しゃべりすぎれば
必ず後悔
なのにまた
ココロはコトバを
染み出させる
なんでだろ
薄く灰色の ベールをまとった 1月の水色に
やわらかな ホットケーキみたいな 雲がうかぶ
そっとなぜだか ココロの中で 手を合わす
誰に何をか わからないけど
遠い何かを思って 手を合わす
生きているうち ふと ムネのどこかが
強く柔らかく 押されるようで
空の向こうの 何かに
ココロの中で 手を合わす
そんなことが 多くなりました
この思考の 方向は いいことなんて ない
頭の中 しゃべりすぎ
だまれ ぷちり ハサミ 切る
はぁい 断線しました
なのにまだ続く どうしてなの
またヒヨドリに 叱られそうだ
いえいえ こんな暖かな日は
トリたちも 自分のことで きっと忙しいはず
私は手に 大好きなハンドクリーム
いっぱい塗ろう シアワセな においにつつまれたい
気がついたら この道を 歩いていた
自分で選んだはずだけど
これでいいのか これでいいわけない
これしか できないのか
本当にこれしか できないのか
うるさいうるさい
つんざく ヒヨドリの声が 思いを引き裂く
なにもない 1月の午後の空
何が正しくて 正しくないか
この道であってたか
そんなこと 思うな思うな
水道の水は いつまでも手に冷たくて
でも力なく 水桶に手をひたしたまま
泳ぐ手を見る
1月の午後の空に
ヒヨドリの声が 心地よく響く
おはようおはよう
ツイピピチュイピピ
うす青い凍った空気に
清らかに響く朝の挨拶
その小さな足は
まん丸く空気を含んだ
柔らかな胸毛は
冷たくないかい
さあさあ さあ
元気出して
行こう行くんだよ
日の出とともに
街中を飛びまわり
朝をお知らせしてくれる
浅い浅い春の
かわいい小さな
朝の鳥たち
鎧を着ける そう 自分を すべてから守るため
自分が正しい 自分が作った筋書 自分を正当化するため
扉をいくつも
塀をいくつも たてて
守る
盾を 槍を
自分の理屈を
そうしなくては そうしなくては
いてもたってもいられない
誰かをうらみ 誰かを批判し
誰かを責める
自分を すべてから守るため
もう一枚 また 鎧を身に着ける
natu
|