カゼノトオリミチ
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2008年09月30日(火) ココロのなかに




ココロのなかに オニがいる

オニは いつも泣いてる

いつも悲しくて

いつも泣いてる



たかく たかく たかく

作った 砂のお山が

波に 崩れてゆくのが 悲しくて



自分の こんな 悲しみは

うんと うんと ちっぽけなのに

それなのに

 

なぜだか こんなに 悲しいのが

申し訳なくて また

泣いてる


2008年09月29日(月) ひみつのコトバ




伸ばした手で 暗やみさぐる

窓の 向こうは 雨

小さくつぶやく ひみつのコトバ

どうしてだか 涙が とまる



それから つぶやく ひみつのコトバ

たったひとこと

こころの中を 守ってくれる



他愛ない ひとことだけど

どうしようもない 心の中を 守ってくれる

ごめんね

だから 言わせてね


2008年09月28日(日) 金木犀




プラタナスの街路樹 続く 大通りに

ひんやり うす灰いろが おりてきて

ベールのように 街を 包む



横断歩道の 向こう側では

みなが 微笑んでいる



いまある結果 ではなくて

この先の いつか のほうへ

むかって みなが 歩いている



いつのまに 蕾をつけた

金木犀の なめらかな かおりに触れた 

ココロが ささやく

ワタシノシアワセ って なんだったか と



「机の下で きっと 目を閉じて 待っている

茶色く あたたかな

三角みみの まるい瞳の仔を だきしめる」



信号が 変わるまでに

ワタシが 思いついた シアワセは

そんなこと だけ 


2008年09月25日(木) あのころのこと




今朝は、乾いたつめたい風が吹きました。

日が昇り始めた頃、ひゅううう〜と、裏の小さな林を揺らして…

思いもかけない程の、強くて、冷たい風が吹き抜けました。

寝起きの顔には、気持ちよかったです。

こんな秋を知らせる風が吹くと、昔住んだ遠い場所のことを、思い出します。



冷たい春も、短い夏も、洗われるような秋も…氷のような冬も。

美しかったです。 特に秋は…

息を吸い込むと、身体中が透き通ってしまうような、キレイで冷涼な風が吹きました。

背の高い樹は、みんな黄色や赤に紅葉し、その葉がいっせいにカサカサと、風に揺れます。



夏は短くて、空が高くなったな、と思うと、あっという間に秋になりました。

ある日。  乾いた、北からの風の便りが届きます。

そのうちに…オイルヒーターのニオイが部屋に流れ、チン、チン、と音がします。

そして灰色の冬がやってきます。



あの頃は、毎日が必死で…

今にして思えば、もっともっと、色んなモノを、拾い集めるコトが出来たのではないかと…

もったいなかったような、気もします。



でもあの時は、あれで精一杯だったです。きっと。…だから、いいんだと思います。

というか、それしか出来なかったのだけれど、…気取るものも、隠すものも、

…つくろうものも何も無く、ありのままの自分でいたような気がします。



いつの間にか今年の夏も、消えて行ってしまいました…

季節は、夏から秋に、変わっています。


2008年09月20日(土) 洗い桶




手を入れる

洗い桶に

水の中で

今朝見た夢を

そおっと泳がせる



思考のどこかから

にじみ出た想い

このまま

桶をかたむけ

流してしまうには

ツライから



朝ごはんの皿や 椀と

一緒に 揺れるのを

しばらく 見ていて

それから

手繰り

排水溝へと

流してしまおう


2008年09月15日(月) かほさん




梨木香歩さんの書く世界がスキです。

図書館で借りてきたので、返却日にせかされ、自分にしては急いで…
(といっても10日ほどで) 2冊のかほさんを読み終わりました。

かほさんを一度読み始めると…
終わってしまうのが惜くなる程、入り込んでしまいます。

作者と同じところに立って、作者の思いを共感したいと思います。


お手軽な文庫本は、ほぼ読み終わり、図書館で単行本を借りました。

今回借りたのは、
「沼地のある森を抜けて」 と 「丹生都比売(におつひめ)」。

いつも思うのですが、一度ページをめくると、並んだ言葉たちが、
読む人を静かに、物語の内側へ、ページの内側へと誘います。


読み進むと…心が穏やかになっています。
なぜでしょうか。

かほさんを読むと、余計な思いが消えてゆきます。

生きるうえで、なにを思っていればいいのか。…が
わかってくるように思います。

なにが大切なのか…。

ぼんやりしていたものが、
自分の気持ちの中で、はっきり掴めるようになってゆく気がします。


ゴツゴツしたたくさんの石ころの中に…
ほんの数個の、丸く滑らかな石があることに、気付かせてくれます。

気持ちの向くべき方向を、示してくれるような…。

こちらだよ、と  風見鶏を優しく撫でる風のような…

かほさんの言葉たち。です。


2008年09月09日(火) 国道




プラタナスに
這い登る ツタの 勢いに
訳のわからぬ 恐怖を抱きます

何も思わずただ ただ 生きてる
まっしぐらな 勢いに

おそらく
一時間前もなく 一秒先のことも
ツタには ない
その 生々しさ むきだしの 生命力に

背中がぞくぞくします

国道の 熱風にさらされ
プラタナスにしがみつく

何も思わず
そこに どうして
居るのだろうなどと 思わず
生命力のしくみのままに 
がしがし テリトリを広げ

時が来れば 朽ちてゆく
その瞬間さえ 意識せぬまま

なら なぜ 人間は と
プラタナスの実の ニオイのよう
青臭いこと 思います

過去の糸に からまり
一秒先に 捕らわれ
自分の周りに 糸を吐く
ヒトは かいこのよう
その繭の中ですら 心は泡だち
眠る時さえ おどおどします


2008年09月03日(水)




時間の糸は 生きてきた分だけ からみつく
手も 足も 繭玉のようになり


大切な日々を
こんなふうに過ごしていいはずもなく


口だけ達者な テレビのボタンを
プツリ 消したい


日だまりの風が ほんの少し 秋で
こどものトカゲが じっとしているのを 見ている


大切な日々を
こんなふうに過ごしていいはずもなく


今朝 玄関の小さなアリたちを
まとめて ホウキで集めて捨てました
そして
新しい秋の服のことを 考えている


それから ぼんやり思い出ている
むかし 本の中に書いてあったこと


生きていても いいですか と
いったい誰に 聞いていたんだろうか と


かたわらで眠る 老犬が
ぶるぶるっと 身震いをする
絡まったままの 糸はほぐれず


季節は今年も 冬へとむかう
繭は ながくながく 糸を ひきずったまま
 


natu