カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
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たわいない に
助けられたりする
トイレで
水と一緒に流してしまえるくらいの
取るに足らない たわいないことだ と
そんなことは たいしたことはない と
帰り道 夕焼け雲をみながら考える
そう、そう、そうだよ。
たわいない たわいない と呟く
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ぽろぽろと
秋にしろいばらが散る
誰も気が付かない
雨の明け方に
朝もやの中からやってくる
新聞配達の低いバイクの音
彼の背中に
ひらり
ひとひら舞い落ちた
はなびらは
そうっと遠い旅に出る
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おかえりの鐘が商店街にひびく
街からは 数日前の明るさも消え
午後5時は 暗闇の始まり
風呂屋の煙突よりも高い場所にとどまって
黒のベールにつつまれた なんて薄い月
顔をあげなくていいよ
ひとつひとつ クリアするしかない
その先はどうあれ
今は足元だけを見ていればいいよ と
誰を照らすこともなく
ただ 淡く
爪の先のようなか細いオレンジ色はそこに居て
秋の終わりへと続くこの街を
見下ろしている
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電話でたくさん話をした
話題を上手に提供してくれる電話の向こうの人の
心づかいに感謝しながら
コトバのレールの上をするすると走り続ける
と だんだん ひとりでに
コトバが走り出し 加速して
ふわふわレールから浮かび上がり
自分が話しているのに
コトバが勝手に舞い上がり
手で捕らえようとしても捕まらず
きっとこのまま 口から生まれた
すぴーちばるーんの中に くくられて
どこにコトバは 飛んでいくのだろうか と
ぼんやり別のところで 考えつつ
私はまだ 会話を続けていた
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返事の来ないように
宛名を書かずに手紙を書く
そんななら 書かなければいいのにと
カラスが笑って鳴いている
わかっているよ そんなこと
誰にも届かなくても
誰かに宛てて 書きたいの
つまりは 傷つきたくないのでしょ
10月の風が ヤマボウシの色を
少しだけ赤く染めて そよいで消えた
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こころが 小さくすいこまれてゆく
そんな気持ちだったのではないかな
背中からまるくなって
どんどん内側にまるくなって
まるく まるく ちいさくなって
点になって
消えてしまいたい と
そんな気持ちだったのではないかな
でも 偶然に眼にした 1行に
その ちいさなコトバ に
引っ張られて 戻って来れました
点が 空間の向こう側へと
消えてしまう前に
そんな気持ちに なる前に
ありがとう
ありがとう 見知らぬ人へ
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言葉が人を突き刺すから
こころの辞書を思い出した
すっかり置き去りにしていた
古びたニオイのこの辞書を
最近は
変換 ゆび一本で出来るから
かちゃかちゃの キーボードの音でなく
厚くて重たい辞書のページを
手繰ってみた
さらさらという 紙の音がした
2006年10月16日(月) |
その存在のための呼び名 |
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名前 なまえ
そこにいる存在に つけられたもの
或いは 呼び名
おぎゃあと生まれて
どんなにか祝福されて
えがおに満ちて
その存在は あたたかくて
それなのに 時は過ぎて
ニュースでながれる
かなしい名前
この世に生を受けた あの日
かなしみの存在として よばれるために
つけられた名前など
ひとつもないのに
ひとつも
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西の空に静かに太陽が落ちてゆく
見守るように並ぶ チイサナ固まり いわし雲たち
シャツの腕を撫でる風は冷たくて
あわててガラス窓を閉める
時計は午後5時 こんなに夕暮れがはやまりました
ひんやり鼻をくすぐる 秋の空気は
そう
からっぽな季節に向かっているんだ
だから誰かをハグしたくなる
あたたかくてふわふわの茶色いかたまりは
私のハグに じいっとがまん がまん
まあるい眼で不思議そうに見上げてる
ありがとう
2006年10月13日(金) |
10月の風のお知らせ |
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太陽が昇ってすぐに雲に隠れてしまったので
あたりには灰色とみかん色が
行き場を失くしたように重くながれている
ひんやりした空気の便りには
10月も半分過ぎたから そろそろしんみりしなさい と
私はさっそくアンテナを長く伸ばして
今日の始まりの風を深呼吸
はい 了解しました
西の大地のメイプルの葉が色変わりしたと
いま 確かに感じ取れました
朝のぼんやり頭に
アァァ アァァ アァァ
カラスが笑って鳴いています
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ひらりひらりと 二羽三羽
秋ののどかな日だまりで
輪を描くように
風にふんわり舞う
羽の先の黒いのはメス 茶色のままのはオス
今日は 明日は
つかの間のダンスを踊れよ
たわわに揺れるブッドレアの穂の上で
秋の蝶たちよ
自分達が枯れ葉の色をまとっているのを
知っているのか
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昼間だけでなく
ひろいひろい
やみの海にも
白いひつじ雲は浮かんでいます
たくさんのマシュマロのような雲の間に
顔を出したお月さま
おはよう こんばんわ
私はこれから寝ますが
どうぞ
どうぞ朝まで見守っていてね
おねがいします
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「苦しくなったら
悪いことの数と
良いことの数を 比べてごらん
悲しみの数ばかり数えてはダメだよ
きっと良いことの数のほうが多いはず」
雨の遅い午後
美容院の週刊誌に救われる
帰り道
アカルイキモチ
アカルイキモチ と となえてみた
それから
わざと傘をずらして歩く
顔に どしゃぶりの雨がかかるように
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言葉では割り切れない
きっちり結論なんか出せない
わかってるけど
おもちゃの貯金箱をさかさまにして
がちゃがちゃと振るように 言葉を捜して
今日も
ほそぼそと冬へと続く この道を
日暮れるまで行ったり来たり
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モンキチョウが 残り少ない蜜を探して
頼りなく花から花へと ひらめく
こうしてしゃがんでいるうちに
存在と空間の境界線は
午後の太陽ににじんでゆく
高くなった雲がほこほこと
西へ西へと流れているだけの午後に
誰かの記憶から 私が消えるときは
なにもお知らせなどせず
辺りの空気の温度が ほんの少し下がるだけ
それは あなたの肌に心地よい風となり
庭先をなぜて
この秋はじめての落葉が
かさりと小さくかたむく
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大切な気持ち
人を愛する気持ち
世界を愛する気持ち
地球を愛する気持ち
愛を守るためにはどうしたらいい?
愛を守るために誰か、何かを傷つける
誰も、何も愛さなければ
傷つけることもなく 傷つくこともない はず?
…石になったらいい?
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朝 掛け布団をたたみ 枕を直すとき
つぶやくおまじない
「このベッドで 今日もまた穏やかな夜を迎えられますように」
柔らかい時の流れに寄り添いながら
日は昇り 日は沈み
繰り返し朝は来る
果てに往きつく その時を迎えるまで
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かなえたい強い思いと
拒みたい強い思いと
どちらも わがまま
今夜
なだめるように降る雨も
行き場をなくして
よどみ
タメイキの水たまりへと
迷い込む
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日影のすみっこ
白いシュウメイギクの蕾が
やっと見えてきた
秋だなぁ、
ぼんやり草花を見つめていると
時が淀んで止まりそうになる
あわてたように乾いた風が
カサカサ吹き過ぎる
いつの間にか
冷たい朝露の降りた10月の朝に
暗がりに浮かぶように
白く咲いてくれていたら嬉しいな
natu
![](http://img.enpitu.ne.jp/enpitu.gif)
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