エスカレーター - 2006年06月25日(日) 普段95%パンツルックだけど、おヘソの周囲の4つの傷口にウエスト部分があたると痛いから、クローゼットの奥から真夏用のインド綿でできたワンピースを取りだして、袖を通した。ってノースリーブだから袖はないんだけど。 剥き出しの肩に外の風が心地よかった。 裾がひらひらとなびいてカラダのラインを撫でていくのが気持ち良かった。 いつもよりずっと遅くしか歩けなくて、まわりの人にどんどん抜かされていくけれど、その背中を見るのもなんだか楽しかった。 一緒に歩いてくれている彼が心配そうに気をつかってくれているのがくすぐったかった。 シネマコンプレックスのチケット売り場に向かうエスカレーターの中で、ふいに二の腕の裏側にくちづけされた。 少しおニクがつき始めた二の腕はひんやりしていて、とっても遠慮がちにほんの一瞬だったけれど、その人肌を感知して、無性にゾクゾクした。 「なぁにすんのよー」 と振り返りながら笑った私の表情は、きっとその軽い口調とはうらはらに潤んでいたに違いなく、その証拠に、彼はもう一度同じ場所にくちづけた。 今度はさっきより少し長く。 接点から温もりが快感になって全身に伝わる。 「だって目の前で触れてほしいって言ってたから」 こら。そんなキザなセリフ言うと襲っちゃうぞ。 来週か再来週あたりに。 青く見えて実は透明 - 2006年06月19日(月) 彼は歌唄いで。 ライブに行ってみた。 180cmある彼の背が天井の梁に届きそうなくらいの小さな箱。 アコースティック一本。 彼が周囲の空気を吸って声を震わせた瞬間、その場の色が変わった気がした。きゅうっと空気が一瞬で濃くなって、次に大きく伸びやかに発散された。 今までも彼の歌声は、何度も聞いたことがあったけれど、その夜の声は全然違った。 広がる空間のバイブレーションが直接心に響いて、涙がでそうになった。 私の向かい側に座っていたキャスケットをかぶった男の客が、「vocalじゃなくてvoiceだね」と隣の派手なTシャツの男にぼそりともらした。 わかったようなわからないような、でもわかる気がした。 もっと広い広い屋根のないところで、空に向かって歌っているのを聞きたいと思った。 スポットライトを浴びて、全身を使って表現している男が私とつい先週カラダを重ねた男と同一人物だと思えなくて、とても遠い存在な気がして、でもそれは心細くはなくて、むしろ誇らしくて、その時に感じた違和感や、握りつぶした憤りなど、瑣末なことな気がして、それこそ彼のことをわかったようなわからないような、でもわかる気がした。少なくともそのままそこでずっと歌っていてくれればいいのにと、その熱気を夏仕様のひまわり柄のタンクトップから剥き出した肩先から、革製のビーチサンダルのピンクに塗った爪の先まで目を閉じて揺れて、感じた。 ステージの上の男に恋をしていた。 バカだな。バカだね。 ライブハウスを出て、大雨の中傘も持たずに、全身びしょ濡れになりながら走りだした。 「気をつけて」という背後から聞こえる彼の声が雨音にかき消されるのでさえ気持ち良かった。 いろんなことがどうでもいいよと、どんどん流されていった。 たとえそれがその時だけの感情であったとしても、それは揺るぎない真実。 ウィークディ - 2006年06月18日(日) 私の知らないあなたがいて 私しか知らないあなたがいて 誰かに何かを言えるほど偉い人間ではないと、 誰かに何かを言ってしまった後いつも思う。 出来れば誰にも何にも言わずに、あるがままを受け入れてあるがままでいられたら。 …などという途方もない偽善。 見えているものを見えないようにすること。 - 2006年06月17日(土) 待ち合わせの駅の地下鉄の出口を駆け上がると、すらりとした長身の彼の大好きな笑顔。 平日の昼間の逢瀬は久しぶりで、たっぷり時間もあるし、ゆっくりしようねと日取りが決まってから指折り楽しみにしていた。 「お昼、何か買ってから行こうか」となんの気なしに彼の顔を覗き込みながら言うと、申し訳なさそうな顔で「ごめん。俺、弁当」と言われる。 その言葉の意味が一瞬理解できなくて、「ベントウ?」と初めて聞く言葉を繰り返すように聞き返してしまった。 次の彼の肩掛鞄をポンポンと軽く叩くアクションで、すべてに気づいた。 「そっかそっか、仕事行くことになってるんだもんね。普段はお弁当なんだ」 と、明るい声でその場の気まずい空気を払拭しようと試みながら、内心動揺していた。 何故だろう。 怒れない。 事情があるのはお互い様だから? いやそれでもその中に、そういう仲だからこそルールはある。 でも私は平和主義なのだ。自分で自分に呆れるくらい。人が不愉快な顔をしたり怒ったりするのを見るのが嫌い。ここで気分を害して不穏な空気になってしまうくらいなら、気持ちのブラインドの角度を少し変えればいいだけで。 そう言い聞かせながら、「じゃあ私もおべんと買おうかな」と駅のロータリーで手近に見つけた店で、ちょうど昼時で山積みになっていた弁当のパックを手に取り、その動揺を見破られないように努めて明るく明るく明るく。 駅前の喧騒を抜けて、ホテルの立ち並ぶ一角へ、肩を並べて「さすがにこの時間は人通り少ないね」などと笑いながら歩く。 思ったより広くて快適な部屋で、少し気持ちが軽くなる。 適当に選んだ弁当が案外美味しくて、少し気持ちが軽くなる。 だけど、目に入れようとしなくても、すぐ隣で食べているものには嫌でも目がいってしまう。 手づくりの。飾り気のない。普段着のお弁当。 このなんとも言えない釈然としない気持ち。 彼のオクサンに嫉妬したんじゃない。 彼のオクサンの気持ちになってしまった。 「ごめんなさい」と心の中で謝った。 それを平気で食べてる彼の気持ちがわからなかった。 いや、平気じゃなかったと思う。思うけれど、それをここで出して食べられるくらいには平気でいられるその気持ちがわからなかった。 それでも。 私は。 せっかくの休日を「こんなこと」でダメにしてしまうのは嫌だと思っていた。 見ない。 見えていない。 感じない。 感じてない。 自分の食べ終わった空容器を白いビニール袋に戻して固く縛り、洗面所で念入りに歯を磨いて、カーディガンを脱いで、胸元の大きく開いたカットソー一枚になり、肩口からブラジャーの紐がのぞいているのに気づいたけれどわざとそのままにして、彼の元へ戻った。 いつもは自然に入るスイッチを、自分で探り当ててパチンと押した。 首元に腕を絡めてキスをした。 だけど、普段彼に触れられる前からぬるぬると溢れて愛おしいと囁き続けている股間にそっと自分で触れてみると、にちゃりと指先に貼り付くような感触で、心よりずっと正直な抵抗するカラダに焦る気持ちでいっぱいになり、なるべく早く真っ白になりたいと、目を閉じてカラダに感じるものだけに集中した。 オフ - 2006年06月15日(木) ピアスとZIPPOと雨の音。 遠くに聞こえる緊急車両のサイレンの音も優しくて、 お湯を溜めているバスルームの音もあたたかくて、 自然光が少しだけ入る色彩の薄い室内で、 吐息が少しくすぐったくて、 挿入されたまま眠ってしまった。 ふんわりと - 2006年06月14日(水) わたしにだけかおるくらいの わたしにだけきこえるくらいの わたしにだけみえるくらいの ほんのちょっとをたくさんかんじて。 進化するカラダ - 2006年06月12日(月) 挿入した状態で逝くとき、前は動きが徐々にスピードアップしていくのに合わせて高まって果てていたけれど、最近少し違う。 「ちょっと待って」と相手がくぐもった声をあげて動きを止めた瞬間に、きゅうっと内部が収縮して蠕動運動を始めて、一気に昇りつめることがある。それはさながらペニスを使ってマスターベーションしているような不思議な感覚で、身体を動かさなくても逝けちゃうなんて、私ってばどこまで行っちゃうんだろうと、それはそれは嬉し恥ずかし気持ち良しなのであります。 よく降るね。 - 2006年06月11日(日) 「ねぇ、何してるの。」 何してるか知りたいわけじゃない。 「用はないんだ。声聞きたかっただけ」 これももう使用済み。 手にした携帯電話を幾度も幾度も開いては閉じて。 あたしはね、長々と続く打合せを抜けだして、薄暗い廊下の途中の窓辺で、雨の音聞いてるとこ。 とらえる - 2006年06月10日(土) オフィスの片隅。 穏やかなくちづけから始まった接触が、徐々に密着していく体に対応して、艶っぽい湿気を帯びてきた。 「触って」 後ろ手で自ら下着のホックをはずす。 「少しだけね」 男はそう耳元で囁きながら、乳首の先を軽く摘む。 〈そうはさせない〉 襞が答えた。 シャッター - 2006年06月08日(木) 夜に少しだけ時間ができたから、仕事帰りに電車を乗り継いで逢いにいった。 逢いに行ったけど、どこか店に入るほどの時間はなかったから、ひと気のなくなったオフィス街を手を繋いで歩いた。 話すことは、なかった。 何を話そうとしても、その言葉はこの気持ちを伝えるには不要なことな気がして、口をつぐんでしまった。 手のひらから、指の間から感じるものだけで他には何もいらないと思った。 地下鉄の入り口まで来たとき、まだ乗ろうとする電車にはもう少しだけ間があったから、地下に降りる階段のすぐ脇にあった自動販売機で缶コーヒーを買って、10メートルくらい先の外灯の谷間になってるガードレールに腰かけた。 ふと前を見ると、アスファルトに並んだふたつの影。 なんだかとってもいい感じで、記録しておきたくなって携帯電話を取りだしたけれど、ファインダーは真っ暗な画面になるばかり。 そうそう、デジカメも持ってるんだった。 うーん夜景モードにしても無理かなぁ。 そうだ、フラッシュたいてみようか。 ぴかっ。 うわ、こりゃ全然だめだ。 真っ白だ。 そりゃそうだよねぇ。 当たり前だよねぇ。 あはは。 あはは。 笑うふたりの影は揺れていた。 ほんといい感じなのに残念だね、と言いながら、心の中ではそんな風に思ってなかった。 いつもよりゆっくり目にまぶたを一回閉じてみたから。 ちゃんと記録されたから。 仮眠 - 2006年06月06日(火) 電車の中で睡魔に襲われた。 ことんと首が傾いて、隣の男の人の肩にあたった。 無言の会釈で謝ったら、無言の笑顔で返してくれた。 しばらくしてまたことんとなってしまって、また謝ったら、「いいですよ」と寄りかかりやすいように肩を貸してくれた。 私の座高にちょうどいい高さで、細身のその体は逢いたい誰かを思いださせてくれた。 また無言で「ではお言葉に甘えて」と目で語り、眠さとだるさでどろどろになった頭部をその肩にみたびことりと預けた。 りできたら最高なんだけどなと、吊革に捕まって横から後ろからぎゅうぎゅう押されながら、立ち位置を確保するのも精一杯な通勤電車の中の妄想。 キス - 2006年06月05日(月) その柔らかさを確かめるように、左に右に下に上に真ん中に、ふわりふわりと唇を弾ませる。 離れているより接触している方が少し長くなった頃から、薄く開いたふたひらの隙間から溢れる空気の温度と湿度が1%あがって、それを合図に湿度の元になっているもう一枚の花弁が花弁同士の交合を求めてさまよいだす。 押し込んだり押し込まれたり、吸い込んだり吸い込まれたり、絡めたり絡めとられたり。 唇に全神経を集中させればさせるほど、唇を中心に潤いが全身に広がっていく感覚に痺れる。 ああ、なんて美味しいの。 わかった。 あなたが好きなんじゃなくて、あなたの唇が好きなんだきっと。 そのキスで このキスで 逝かされて 生かされる。 蝕む。 - 2006年06月04日(日) 私のカラダを。 何者かが。 絶不調。 だけどココロは元気だよ。 髪を揺らす風にも青空に流れる雲にもアスファルトに落ちる日溜りにも薄く色づき始めた紫陽花の花弁にも遠くに聞こえる踏み切りの音にも愛を感じる。 「おやすみ」 - 2006年06月03日(土) すごく特別な呪文みたいに感じた。 やっぱ好きだ - 2006年06月02日(金) って言ってくれる君もやっぱ好きだ。 完全復活したよ。 逢いたいだけじゃなくてセックスしたい。 丸いお尻のほっぺたを手のひらで押し広げて、大きくなったそれ、ちょうだい。 手を差し込みやすいように、脇の下を緩めて、ふくらみの先端ほんのり硬直させて、摘みあげられるの待ってるから。 寄せてくる顔のそこかしこに、振り返りながらキスの嵐降らせてあげる。 バロメーター - 2006年06月01日(木) 逢いたいなぁ。 って思えるのは元気になってきた証拠。
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