歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2005年10月26日(水) もしも、メイド歯科医院があったなら・・・

先日、世の中にはコスチュームプレー(コスプレ)の愛好者が数多く存在することを実感したことがありました。僕は家族と共にとある遊園地へ出かけたのですが、その日は園内の客の半数近くは何とコスプレ愛好者で占拠されていたのです。しかも、コスプレ愛好者はほとんどが女性。当日は園内で何らかのコスプレマニアのイベントが開かれていたようなのですが、客観的に見てコスプレマニアの人たちが様々な園内の乗り物に乗っていたり、互いに写真を取り合っている姿は実に異様な光景でした。話には聞いていたものの、世の中にはコスプレ愛好家が少なからず存在することを改めて実感した次第です。
一方、そんなコスプレ愛好家を見ることを趣味とする人たちも存在します。コスプレ愛好家と異なり、こちらは大半が男性です。こういった男性はアニメ系オタクとでもいうべきなのでしょうか?

そういったアニメ系オタクや東京の電気街である秋葉原をたむろするオタク、秋葉系オタクをターゲットとした商売が今ブームなんだとか。代表的なものがメイド服を着た女性が客をサービスするメイド喫茶。何でもアニメ系オタクや秋葉系オタクの人にとってこれらメイド服姿の店員を見るのが"萌え"なのだそうで、秋葉原に出来たメイド喫茶は瞬く間に全国各地に広がり、それぞれの地でアニメ系オタクや秋葉系オタクなどの濃い人たちを中心に、外野から眺めようとする客で賑わっているのだとか。 最近では、メイド喫茶だけでなく、メイド美容室なるものもでき、アニメ系オタクや秋葉系オタクがメイド姿の店員に"萌え"ながらカットをしてもらっているそうです。

ところで、厚生労働省の医療施設調査によれば、全国に歯科医院は65000件余りあるのだとか。この数は既にコンビニの数をはるかに凌駕するだけの数です。そのため、多くの歯科医院も限られた患者さんを如何に確保するか悩んでいるのが現状です。そのような中、如何に多くの患者さんに足を運んでもらうために独自性を出すかということに頭を悩ませている歯科医院の院長が多いのが現実です。
そこで、数多い歯科医院の一院長である歯医者そうさんは考えてみました。上記のようなコスプレ萌え系のメイド喫茶やメイド美容室が流行っているなら、メイド歯科医院というものがあってもいいのではないか?何とも単純な発想ですが、もしも、メイド歯科医院ができたならどんな歯科医院になるのでしょう?僕は無い知恵を絞って想像してみました。


場所は、東京は秋葉原、もしくは大阪は日本橋の電気街のとある雑居ビル。 そこの一室に開業した歯科医院。その名もメイド歯科医院。ちなみにメイドと書いても冥土ではありません。それでは、まったく別の意味になってしまいます・・・。
まあ、そのようなくだらないことは置いといて、歯に不調を感じていた秋葉系オタクK君は、"メイド"という文字に惹かれ、メイド歯科医院を訪れました。
玄関先のドアを開けると

「ご主人様、お帰りなさい!」

そう言っていきなり声をかけてきたのは女性スタッフ。女性スタッフはもちろん黒色のメイド服姿。 メイド服はレースのフリル部分がやや大きめのカチューシャと、白レースのチョーカー。エプロンは、肩ひもの部分にレースがついており、これは背中の肩甲骨まで伸びており、リボンは後ろで縛っています。襟元、袖口にもレース。手首にはカフスをつけ、足元は、オーバーニーソックスと黒のローファーまたはヒール。スカートの下にはパニエを履きといったところでしょうか? いきなりのメイド服姿の女性に圧倒されながらもにっこりと笑ったその笑顔に思わず萌えてしまった、K君。 メイド服姿の女性スタッフに案内され、窓口へ出向くと受付にも当然のことながらメイド服姿の女性受付が。女性受付はメイド歯科医院のシステムを説明していきます。

「以上がメイド歯科医院のシステムですが、何か疑問の点がありましたらいつでも気軽にお尋ねください。」

萌え萌えの気分満載のK君はメイド姿の受付嬢にメロメロで、彼女の説明がほとんど耳に入らなかったことは言うまでもありません。

受付上の説明後、治療の時間までしばし待合室で待つことに。 待合室はすでに4人の患者が治療を待っていました。患者は皆男性で、各々秋葉系の二人組と、コンピュータソフト系会社勤務で暇つぶしに立ち寄ったようなサラリーマン、ゲームボーイを熱心にやっている大学生。 K君は何気なく待合室を見渡すと、壁はアニメ風の天使とハートのマークが一面に描かれているではありませんか。待合室には液晶テレビも置いてあるのですが、流れている番組はもちろんアニメ番組。本棚には漫画が多数並べてありました。そんな本の中からK君が選んだのはアニメージュ。

アニメージュを見ながら30分ほどの時間が経った頃、受付からK君を呼び出す声が聞こえました。

「ご主人様、診療室の方へお入りください。」

メイド歯科医院では、来院する患者の名前は全て"ご主人様"で呼ぶことになっているのです。全ての患者が"ご主人様"と呼ばれるので誰が誰だかわからない可能性があるわけですが、メイド歯科医院は患者一人に対して専任のメイド服姿の女性スタッフがつくシステムになっており、K君も自分の順番を間違えずにすむことができたというわけです。
実は、医療機関では個人情報保護法の観点から必要以上に患者さんの名前を待合室で呼ばないよう配慮しないといけないようになっています。個人情報保護法の観点からも、メイド歯科医院で患者を"ご主人様"と呼ぶことは理にかなっていると言えるでしょう。

それはそれとして、専任のメイド服姿の女性スタッフに案内され治療室に入ったK君の目に入ったのはやはり壁。壁紙がハートマークであることに思わず目が点に。そんな室内を流れるBGMはもちろんアニメソング。全て圧倒されていたK君は診療チェアの方へ誘導され、選任のメイド女性スタッフから問診を受けました。どうやら、この専任のメイド女性スタッフの正体は歯科衛生士だったようです。小柄な彼女の容貌はこの人に似ているという話がちらほら。
問診内容は極めて真面目なもので、K君の主訴から既往歴、アレルギーの有無や歯科医院での治療経験などを確認するものでした。残念ながら
"何に萌えますか?"
という問診はありませんでしたが・・・。

一通りの問診を終えたメイド歯科衛生士は診療台の上でK君の口の中を確認し、カルテに歯の状態を書き込んでいきます。そして、まずは口の中の汚れを取るブラッシング。その際、メイド服歯科衛生士の胸がしばしばK君の頭に接触。K君は"萌え"状態を通り過ぎ、思わず昇天してしまいそうになります・・・。

ブラッシングが終わった頃に登場したのが歯医者の先生。メイド歯科医院では、歯医者はメイド服姿の女医さんだったのです。メイド歯科衛生士からK君の口の中の状況を聞いたメイド歯医者の先生は、K君の問題の歯を見ると、直ちにレントゲン写真を撮ることをK君に告げ、K君は院内のレントゲン室へ案内されました。レントゲン室の中も壁一面にアニメキャラクターの絵が描かれているのは言うまでもありません。そんなアニメキャラクターを横目で見ながら、レントゲン撮影。 レントゲン装置は当然のことながらデジタルレントゲン装置。撮影画像は直ちに診療チェアに備付の液晶モニターで映し出されるのですが、液所モニターの背景の壁紙はなぜかちゆ12歳
レントゲンを見たメイド歯医者の女医先生は早速K君にむし歯を治療することに。幸い、むし歯は小さいもので、メイド服姿の女医さんが手際よく治療を行なったおかげで治療は短時間で終了。

「ご主人様、歯の治療が終わりましたよ。」

メイド歯科医院では、特別料金を支払えば、治療後にメイド歯医者やメイド歯科衛生士との写真撮影も可能。デジカメで撮った写真はその場プリントアウトしてくれます。歯の治療の楽しい思い出になるかも。K君がもちろん記念写真を撮ったのは言うまでもありません。
治療が終わり、受付で支払いを終えたK君は足早にメイド歯科医院を出て行こうと玄関の扉を開けようとすると、専任の女性スタッフが玄関のドアを開けてくれました。そして、一言

「行ってらっしゃいご主人様。早く戻ってきてくださいね。」

思わず赤面してしまったK君。 こんな歯医者なら毎日でも来て"萌えて"みたいと感じながら、メイド歯科医院を後にしたのでした。



2005年10月18日(火) 画期的なむし歯治療法?3Mix-MP法について その2

3Mix-MP法の3種類の薬ですが、それぞれ単独では厚生労働省によって認可された正式な薬です。

メトロニダゾールは膣トリコモナス症の原因であるトリコモナス原虫に対する特効薬として名をはせた薬です。ミノサイクリンとは比較的安全性が高く、副作用 が少ないと言われている抗菌剤のこと。シプロフキサンとは生物学兵器の代表として有名な炭疽菌に効果のある抗菌剤として有名です。
ところが、これら3種類の薬はむし歯の治療を前提として開発された薬ではないので、むし歯に対する効能は厚生労働省によって認められていません。これら3種類の薬は、多くの歯科臨床の場においてむし歯に対する効果があることが判明してきており、厚生労働省もその効能について知らないことはないのですが、現時点においてこれら3種類の薬をむし歯の治療として用いることは正式に認めていないのです。

昨日の日記で、3Mix法は3種類の薬の合剤を用いた20年以上の歴史がある治療法であることを書きましたが、それほど歴史がある治療法であるにもかかわらず、これまであまり知られていなかった理由がここにあります。実際に治療効果が基礎的研究、臨床研究で幅広く確かめられているものの、厚生労働省の正式認可を受けていないため、3Mixである3種類の薬の合剤によるむし歯治療法を大っぴらにして治療できる状況ではなかったのです。3Mix法は知る歯医者ぞ知る治療法として静かに歯科界で広がらざるをえなかったのです。そのような事情があったにも関わらず、今回急にマスコミに何度も取り上げられているという状況に歯科界は困惑しているのが現状です。 3Mixと呼ばれる3種類の薬の合剤によるむし歯の治療方法が厚生労働省によって認められていないということは、3Mix-MP法も同様であり、保険治療でも認められていないということにもなります。

今後の展開でどのようなことになるかはわかりませんが、現時点においては3Mix-MP法による治療法は自費診療となります。 通常、むし歯の治療のために詰め物や被せ歯を詰めたりセットしたりすることは保険治療で認められていますが、3Mix-MP法を行なった後に詰め物や被せ歯を詰めたり、セットしたりすることは保険治療ではできません。なぜなら、厚生労働省は保険治療と自費治療との混合治療を認めていないからです。現在の規制緩和の流れで混合治療の解禁が議論に上がっているわけですが、現時点では混合治療は原則として認められていません。3Mix-MP法による治療を行なう場合、詰め物や被せ歯に至るまでの治療は全て自費治療となるのです。自費治療ですから保険治療に比べかなりの高額治療になるわけです。このことはマスコミでは充分に伝えられていません。3Mix-MP法の記事を読んだ人は、歯を削らない治療だから治療代も安くなると考えられている方もいらっしゃるかもしれ ませんが、実際の治療は自費で、高額になっても仕方がないことを理解して頂きたいと思います。

昨日の日記で、僕は3Mix-MP法の3Mix-MPとは3Mixと呼ばれる3種類の薬の合剤にMPであるマクロゴールとプロピレングリコールを合わせたものだと書きました。実は、3Mixである3種類の薬の合剤はむし歯に対する治療の基礎的研究、臨床研究の蓄積があるのですが、マクロゴールとプロピレングリコールには基礎的研究、臨床的研究の蓄積がありません。マクロゴールやプロプレングリコールにはむし歯菌に対する薬理効果はありません。しかも、長期 間歯の中で貼付されることによる影響がどのようなものか解明されていないのが実情です。これらマクロゴールやプロプレングリコールは一般医療でも広く使われている薬ではあるのですが、まだ生体内、特に歯の中で長期に保持されることでどのような変化が起こるかどうか科学的裏づけがなされていないのです。今回 の一連の報道において、この点を指摘している報道は一つもありません。医療に関する報道は慎重の上にも慎重を重ね、治療法を様々な角度から冷静に報道して欲しいと思うのですが、今回の一連の3Mix-MP法に報道の中にマクロゴールとプロピレングリコールの懸念に関する報道がないということは、マスコミ報道に大きな落ち度があるといっても仕方がありません。

以上、2日間にわたる長文になりましたが、最近報道されている3Mix-MP法に関し、僕が感じたことを思いつくままに書いてみました。 3Mix-MP法に関心のある方の参考になれば幸いです。



2005年10月17日(月) 画期的なむし歯治療法?3Mix-MP法について その1

この夏、当地では某放送局のテレビ番組で"痛くない、削らない、再発しない"という触れ込みの、あるむし歯治療法があると大々的に放送されました。この放送の影響はかなり大きなもので、放送終了後、僕の地元歯科医師会ではこの治療法について多くの問い合わせがあったそうです。

時同じくして、読売新聞でもこの治療法についてこのような特集記事が組まれ、大きな反響があったそうです。また、先週末に放送されたTBS系列の全国番組ブロードキャスターにおいても、最新のむし歯治療法の一つとしてこの治療法が取り上げられていました。土曜日の夜で視聴率も高い番組であるだけにその反響はかなり大きいものであることが予想されます。
このむし歯治療法の名前は3Mix-MP法。この3Mix-MP法について、今日と明日にわたって取り上げてみたいと思います。

口の中には多種多様な微生物が存在し、人間と共存しているのですが、そんな微生物の中にむし歯の原因となるむし歯菌が存在します。むし歯菌は歯に付着し、 口の中にある砂糖を取り込み増殖します。その過程において代謝産物として乳酸が出るのですが、この乳酸が硬い歯を溶かすのです。その結果、歯に穴があくことがむし歯なのです。すなわち、むし歯とはむし歯菌による感染症であるのです。

むし歯を治すには、むし歯菌に感染した歯質を取り除き、取り除いた部分に詰め物を詰めたり、被せ歯を被せることが普通です。ところが、実際の臨床の現場では、一見むし歯菌を完全に取り除いていたと思っていても、むし歯の治療後に歯が痛んだり、詰め物や被せ歯の内部の歯がむし歯になっていたりしたことが起こっています。
また、むし歯の治療のために感染した歯質を完全に取り除こうとすると歯髄(神経のことです)が露出し、その結果として歯の歯髄を取り除かなければならないことも少なからず起こっています。特に、歯が成長途中の小学生、中学生のむし歯の場合、むし歯が進行して歯髄を除去したとしても、歯が完成していないために歯髄の処置の予後は悪いことが多いのが現状で、多くの歯医者を悩ませる問題です。

そんな悩みを何とか解決したいと思い立ち上がった研究者がいました。その研究者は新潟大学歯科保存学と口腔細菌学の歯科医師たちで、彼らの長年の研究の結果、メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフキサンという3種類の薬の合剤がむし歯菌の増殖を抑え、殺菌することを突き止めたのです。その後の研究 で、この3種類の薬はミノサイクリンがセファクロルに代わり、メトロニダゾール、セファクロル、シプロフキサンに変更されていますが、3種類の合剤である ことは変わりなく、いつしかこの3種類の薬の合剤による治療方法は3Mix法と呼ばれるようになったのです。これが今から20年以上前のことです。
3Mix法は、開発元の新潟大学歯学部の学術的研究、臨床研究のみならず、全国の臨床歯科医師によっても効能が確かめられてきました。多くのマスコミで3Mix- MP法が最新の治療法と宣伝されていますが、実際のところは最新でも何でもなく20年以上の歴史がある治療法なのです。

ここで、お気づきの方もいらっしゃることでしょうが、今マスコミで騒がれているむし歯治療法は3Mix-MP法です。3Mix法ではありません。MPがついていません。これはどういうことかと言いますと、3Mix-MP法とは3Mixであるメトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフキサン(何故か変更前の3種類の合剤なのですが)にマクロゴール、プロピレングリコールというワセリン状のものを合わせた合剤だからです。MPとはマクロゴールの頭文字とプロピレングリコールの頭文字を二つ合わせた略字みたいなものです。3Mix-MP法とは3Mixの変法であるということが言えると思います。どうしてMPを3Mixである3種類の薬の合剤に混ぜ合わせたかといいますと、3Mixの薬を歯に塗布する際、MPがあるほうがなじみやすく、浸透しやすいのだとか。か といって、MPであるマクロゴールとプロピレングリコールそのものにむし歯にたいする薬効あるかというとそうではなく、3Mix-MP法においても薬効は 3Mixである3種類の薬の合剤なのです。実質、3Mix-MP法と3Mix法は同じものなのです。

さて、マスコミ報道では3Mix-MP法はこれまでのむし歯治療法とは異なり、むし歯菌によって侵された部分を削りとることなく敢えて残し、その部分に3種類の薬の合剤を貼付することにより内科的にむし歯菌を殺菌し、むし歯を治療することが画期的であることが報じられています。3Mix-MP法においては、削っても痛みを感じることがないエナメル質だけを最低限削り、後は3種類の薬の合剤を塗布し、その上に充填材を詰めていく。敢えて悪い部分を残しても内部で3種類の薬の合剤の作用で治癒が進むとされています。このこと自体は間違いではありませんが、マスコミの報道では重要な点が欠けているところがあります。

一つは、3Mix-MP法は症例を選ぶという事実です。むし歯というと全て同じように考えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、浅いものから歯髄に至る深いものまであります。また、症状も無症状のものもあれば、激痛を伴うようなものもあり、十把一絡げにむし歯をくくることはできません。3Mix-MP法で最も効果があるとされているのは、むし歯が歯髄の近くまで進行し、むし歯を取り除くと歯髄が露出してしまいそうな症例で、しかも、患者さんが無自覚な場合です。こういったケースはむし歯菌が歯髄まで侵入していないか、侵入していたとしても歯髄の表層に至っているようなケースであり、この場合に3Mix-MP法を行なうと効果的だとされているのです。

それでは、痛みを伴うむし歯はどうなのでしょうか?痛みを伴う場合、むし歯菌は歯髄にまで達し、歯髄が炎症を起こしているケースなのです。そのような場合、むし歯菌を取り除くだけでは歯髄の炎症が治まらないケースがあり、むし歯菌を除菌したとしても炎症が続き、痛みが治まらないケースもあるのです。このような場合、3Mix-MP法を行なったとしても結果的に歯髄を取らざるをえなくなります。3Mix-MP法では歯髄に侵入したむし歯菌にも作用し、殺菌 することができるとされていますが、むし歯菌そのものは除菌できても一度炎症が起こった歯髄の炎症を抑えるのは症例によっては難しい場合があるのです。同じむし歯であっても3Mix-MP法に効果がない場合があるというのはこういったことからなのです。

それから、3Mix-MP法は基本的に長期間の経過観察が必要な治療法です。表現が悪いかもしれませんが、3Mix-MP法では敢えて悪いものに蓋をする治療法です。いくら蓋の内部で3種類の薬による薬効が期待できるとはいえ、3種類の薬を貼付し、充填材を詰めてそれでおしまいというわけにはいかないのです。マスコミでは、3Mix-MP法によって直ぐに痛みが消失し、治療も終わるかのように報じられていることがあるのですが、内部のむし歯菌が完全に殺菌され、むし歯によって失われた歯の内部組織である象牙質が再生することを歯医者が確認して、初めて治療が成功したといえるのです。3Mix-MP法は決して短期間で終わる治療法ではなく1年程度、場合によってはそれ以上の経過観察が必要なのです。

続きは明日。


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