My life as a cat
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2023年09月28日(木) マルチリンガルな2歳9ヶ月の言語能力

ロクちゃんは全く喋れていないのに、それなりにクラスの子達と仲良くやれてるっぽい。帰り道、名前を呼んで手を振ってくれる子がいたり、彼より頭一つ分大きい女の子が彼の手をとって面倒をみてる。クラスに3〜5歳全て混ぜているのは小さな方は大きなほうから脳に刺激をもらい、大きなほうは小さなほうを面倒見ることで責任感を養うというのが目的なんだそうだ。わたしの行っていた幼稚園ではそういうことはなかったので、これはとても良いアイディアなのではないかと感じてる。学校がはじまって約一ヶ月、劇的に喋りだすのではないかという親の予想は見事に裏切られ、彼はほとんど喋らない。日本語、英語、フランス語、スペイン語がめちゃくちゃに蔓延る家庭環境、住んでるレジデンスは北欧の人が多く、スウェーデン語やデンマーク語が窓の外から聞こえてくる。そして極めつけは、イタリアとの国境にほど近いというカオス。彼の頭の中はどんなことになっているのか。いつか喋りだす日が来るのか。でも何語で?喋ることはしないが、意志ははっきりしてる。

「明日の朝ごはんパン?ごはん?」

「No pain」

「納豆ご飯でいいの?」

首を縦に振って頷く。その程度の会話しかできてない。ただ言ってることは何語にしても全て理解できてるらしい。

「電気つけてくれない?」

でも、

"Turn on the light please"

でもちゃんと電気つけてくる。今ではよく喋る姪っ子ちゃんも3歳くらいまでだんまりで何も喋らなかったのが、ある日突然井戸から水が溢れ出すみたいに喋りだしたという。そんな日が楽しみでもあり、ちょっと怖くもある。


2023年09月24日(日) ママ、バイバイ

朝の少し冷たい空気が心地良い。ヘーゼルナッツや胡桃など、木の実を拾いながらロクちゃんと散歩。彼は始終走りっぱなしで、こちらがやっと着いてくくらい。結局5kmくらい歩いたが、彼は全く疲れた様子は見せなかった。

ランチは卵入りのパスタを打って、拾ったヘーゼルナッツをソースに頂いた。にんにく、ナッツ、パルミジャーノ、パセリ。秋の香りたっぷり。

ロクちゃんの学校がはじまって3週間。やっと母子ともに少しずつ離れることに慣れてきた。いつも、"ママ、バイバイ"と何度も手を振ってくれた。一段階段を登って振り返って手を振り、また一段登って振り返って手を振り、校舎のドアが閉まるまでずっと手を振ってくれた。最初の一週間は泣きべそをかきながら。二週間目は寂しそうに。三週間目、やっとにっこり笑って"ママ〜!!バイバ〜イ!!"と、やっぱり何度も何度も振り返って。わたしは毎日毎日泣きながら学校からの坂を下る。泣かずにいられる日がくるのだろうか。それにしても三週間経ってから知ったこと。それは彼のクラスには3、4、5歳がみんなミックスされているということ。最初並んで歩いてるのを見た時は、我が子だけが本当に小さくて、言葉も遅れてて心配した。学校が終わると我が子だけが、バックパックの脇に粗相して濡らしたパンツの袋を提げて出てきた。ところがこれも誤解で、彼のバックパックが小さいから入らなかっただけで、他の子も粗相してるらしい。ともあれ、言葉が遅れてるのは事実なので、来週から補習クラスに入れることになった。苦手なことを指導してくれるということらしい。彼には同年代の子と比べて出来てないことがいっぱいある。でも、逆に彼だけが出来ることだっていっぱいある。塗り絵は全部ハミ出しちゃっても、パソコンや電話はすでに基本機能を使いこなせてる。字は読めないけど、ボタンの在り処で記憶してるみたいだ。みんな何かの天才なんだ。産んだばかりの時は、いつも成長具合が遅いことを心配してたけど、最近はこれはこの子の個性なんだとじっと見守っていられる余裕がでてきた。


2023年09月04日(月) ピカピカピカチュウの新入生

はじめての通学の日。日本の小さな子の通学姿が可愛いくて、安全のためにもと黄色いにこだわって帽子を探したら、ピカチュウになった。自分は好まないアニメとかのキャラクターでも子供が持つとなんでこんなに可愛いのか。みんなにカワイイね!と言われるから当人もお気に入りの様子。

学校では4つのクラスにわけられて、既に顔見知りのお友達とは誰も同じクラスにならなかった。担任は若い女の先生ですごく優しそうな人で安心した。年度の区切りギリギリで生まれて3歳に満たないまま学校に通うことになってしまったロクちゃんは、おそらくクラスで一番小さく、また言語的にも遅れをとってる子だからか、先生は目をかけてくれてるみたいだ。初日だけ保護者も教室に入れた。

「バイバイね。ママとパパは後で迎えにくるからね」

と言ったら、電車で遊んでて無反応。教室のドアを閉める間際に咄嗟に立ちあがってパパ!!ママ!!!と追いかけてきたけど、心を鬼にしてドアを閉めた。1分待ってこっそり教室を覗いたら、何事もなかったように電車で遊んでた。泣かなかったことはわたしを少し安心させたけど、自分のほうが辛くて、涙ぐみながら学校からの坂道を下った。ひとりで歩くと身軽で身軽で、重い重い荷をやっと下ろしたようだった。でもなんだか寂しいな。

初日は朝の2時間で終わり。家に帰ったって、家事など捗りそうな心境ではなかった。学校の下にあるカフェで本でも読んで時間をつぶして迎えに行くことにした。少し気持ちがアップするかとカフェにいつもは入れない砂糖を入れてみる。バッグの中にあったロクちゃんの帽子をお守りにテーブルに出して気配を思い出してみる。ロクちゃんの学校がはじまったら、この2年半ほとんどできなかった読書をもっとしようと思ってた。わたしだって一度は子供だったんだから、自分の気持ちとか母がしてくれたこと思い出して育てればいい、育児なんて本で読んで勉強するようなもんじゃないとは思っていたけど、たまたま見つけた「臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました」は良書。なるほど、なるほど、あんな風に接したからこうなっちゃったのかとか、科学的根拠も交えて説明されてて納得することばかり。読みながらクッキーをばりばり食べる。甘いものに気持ちを助けられた朝だった。

迎えにいくと、先生に手をひかれたロクちゃんがでてきた。パンツが変わってた。あぁ、やっぱりトイレに行けなかったのか。手を繋いでまた坂を下る。どうだった?楽しかった?友達できた?泣かなかった?質問攻め。

「ママ!ママ!って呼んだよ」

彼から得た回答はそれだけだった。そして、家に帰ると突然"De l'eau(水)"としっかり発音したのだった。先生が何度も言ったんだろう。これからこうやって毎日毎日彼は新しい言葉を覚えてくるのだろう。


Michelina |MAIL