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ロクちゃんが絵本の中に描かれてたテレビを指差して言った。
「ぶんぶん」
「それはぶんぶん(乗り物)じゃない…」
と言いかけて気付いた。そうだ、我が家にはテレビがないから、知らないんだ。彼は毎晩わたしのケータイでYoutubeを観てる。プラレールという電車のレールを自由に組み合わせていくチャンネルを熱狂的に見てて、勝手にチャンネル登録とかしてる。これが2020年生まれ、現代っ子なんだな。
姪っ子ちゃんは来年から小学校に行くんで、ジジババがランドセルを買うという。ピンクがいいとか言われたら嫌だなぁ、と恐る恐る何色がいいか本人に訪ねたら、キャメルがいいと答えて周囲の大人を大満足させたらしい。ロクちゃんにもランドセル買うというから一度は断ったのだが、フランス標準のカータブルという通学バッグを見て、すぐに母に電話した。
「やっぱり日本のランドセル買って」
カータブルというやつはナイロン素材とかでイラストとかが入ってて、可愛いといえば可愛いけど、あんなのに教科書とか入れたら折り曲がってしまわないのか。それにすぐに汚れたり切れたりしてダメになって買い替えという無駄もしたくない。かといって高価なランドセルなんて背負っていったら羽交い締めにされて盗られたりしそうという懸念も。使い古された中古のランドセルを買うというのもありかな。とりあえず、今年は適当なバッグに着替えのパンツとお昼寝のためのぬいぐるみだけ持って通学すればいいらしいから、まだ時間はある。夫婦で検討中。
誕生日の朝。梨の木の周辺におしっこをする愛猫を叱り、何故か突然床におしっこをした息子を叱り、苛立ちながら床を拭く。生理前の体の不調と寝不足と暑さと育児の疲れと全部が一緒になって精神的に不安定。ランチは家族のことは一切考えない、"わたしの好きなもの"を食べると決めた。結局、枝豆とCantalのチーズの春巻き、卵焼き、おにぎり(これでもかってくらいふんだんに母が送ってくれた海苔を巻いた)。うん、これだ、これが一番だ。ロクちゃんは春巻き用にと出した抹茶塩(抹茶とフルール・ド・セル混ぜただけ)が相当気に入ったらしく、何にでもこれを振りかけてた。そしてデザートに自分で焼いた桃のショートケーキを嫌になるまで食べた。
人のことは一切考えずに思いっきり自分の好きなものだけたらふく食べて機嫌もすっかりよくなった午後、ふと思い出した。ロクちゃんが生まれた日、この人はわたしのお腹の中でじっと体を丸めて育って、やっとこの色のある世界に出てきたのだと思ったら、それはそれは感動して、この子にこの世の美しいものをいっぱい見せてあげようと決めた。一年後、美味しいものを食べる時の目の輝きがこの上なく愛らしくて、この子にはたっぷり愛情のこもった美味しいものだけ食べさせて育てようと決めた。その一年半後、やんちゃな二歳半の男の子がとてもとても手に負えなくて、どうしてこんなに反発ばかりするのかと怒ったり泣いたりする日が多くなって、そんな風に過去に決意したことはすっかり忘れてた。わたしは子育てとか全く得意なほうじゃないって自分でわかってる。だから一緒に美しいもの見に行ったり、美味しいもの食べたり、これくらいしか母としてしてあげられることが考えられなかったのに。それも忘れてしまったらわたしは一体どんなデキの悪い母親になってしまうのか。初心に帰ろう。子供の態度に翻弄されて怒ったり泣いたりするようではダメだ。わたしは彼にどんなことをしてあげたかったのか、それを肝に銘じて接していくことが一番大事だ。
ふと立ち止まってそんなことを考えた誕生日だった。47歳、まだまだわたしは自分育てに追われてる。
室田 HAAS 万央里さんの"パリの菜食生活 ふだんづかいのヴィーガン・レシピ"の本に載ってる担々麺を作ってみた。同じ国に住んでる人だし、使いやすいかな、と思ったのだが、あちらはパリ。アジア系の食材がわたしよりずっと身近にあるのだろう。わたしは麺打ちから始める。中華麺と書かれてたのをうっかりうどんを打ってしまった。それはまぁ刀削麺的味わいでいいか。本に載ってる生姜ラー油を作り、肉味噌を作り、豆乳(これは近所で手に入るがついでだから作った)を絞る。2時間を費やし、やっと完成。うっうっうまい!!やっぱり菜食っていいな。こんなこってりな物でも、どこかすっきりしてるんだよな。デザートは桃のレアチーズケーキのタルトを。これまた時間がかかったけど、その甲斐あったな、美味しかった。
ロクちゃんのおむつを外して、ブリーフを履かせて数週間。すっかり自分でトイレに行って用を足してこれるようになった。ママ!ちゃっちゃーん!!!とか言ってトイレから誇らしげにドヤ顔で出てくるのだけど、時にはミニソーセージが脇からはみ出てたり、半玉でてたり、おしりのほうが妙に食い込んでたりしてる。笑ってしまいそうになりながら、ブラボー!!!"と手を叩いてあげる。通学するまであと2ヶ月ない。それまでに自分でパンツとブリーフを履けるようになるのか。
春に軽い気持ちで種を撒いといたひまわりが巨木のように成長して、2階のバルコニーに届いた。出産祝いだといってイタリア人の友人がくれた和梨も、一本ではだめかと思っていたら今年4個ほど実を生して、日に日に大きくなってる。口に入るか、楽しみだ。環境が合うのか、放ったらかしのいちごも大盛況。毎朝摘んで、ロクちゃんがおやつにいちごミルクを飲んでる。逆に環境が合わないのか、ブルーベリーは全く実を生しそうな気配がない。いつになったらブルーベリーマフィンを焼けるのだろう。
ランチは白桃のリングイネ。細川亜衣さんの本に載ってたレシピを手に入るものと自分の都合でアレンジ。白桃は皮を剥いて切る。つぶしたにんにくとピーマンのみじん切りを少々、ライムの絞り汁とすりおろした皮を入れ、オリーブオイルをたっぷりと和えておく。桃の皮と種をパスタの水に入れてお湯に香りをつけてから、リングイネを茹でてソースと和える。盛り付けたらゆかりを少々。果物を使うパスタって冷製でカペッリーニとかと合わせるのが多いけど、わたしはこの湯気のたったパスタと桃を和える瞬間に桃とにんにくがふんわりと香り立つのがなんとも好きで、こちらのほうが美味しいと思う。マルシェで手に入れたインペリア産のオリーブオイルをたっぷり使うのが成功の鍵か、このパスタ毎日食べても飽きない。デザートには、またまた白桃とミントの寒天ゼリー。バスケットいっぱいに桃を積み上げて、まるで主食かのように桃を食せるこの季節がたまらなく愛おしい。