DiaryINDEX|
past|
will
ロクちゃんと一緒に聞こうとYoutubeでクリスマスの歌をプレイしてたら、Maria Menaの"Home for Christmas"がかかって、ほろりと泣けた。そうそう、わたしにだってあるよ、"どんな小さな街角や通りの名前もすべて記憶してる場所"。今年も結局帰国できないまま、ここで5回目の冬を迎える。日本の師走の忙しい雰囲気が好きだった。こたつに足入れるとクロちゃんが中にいて、ぶり大根と大根の葉のふりかけでごはん沢山食べて、熱い風呂に浸かって。愛しい我が子との幸せな日常があるのに望み過ぎかな。でもだからこそ両親に見せたかったな、抱っこしてもらいたかったな。そう呟きながら彼のパスポートすら準備できてないや。このご時世パスポートさえあればというわけにもいかないし、母国は遥か遠い国になった。目に涙をためてたら、ロクちゃんが一緒にうたいながら寄ってきて袖を引っ張って叫んだ。
「マ!ッマー!!!」
「ママはね、ママのママに会いたいの」
そう話すと、顔を覗きこんでしばらく考えてた。
「ん。。。。マンマ!」
まだパパとママとニャニャしか言えない。でも昨年のこの時期、姿を見せないままお腹の中で大暴れしてた子が、1年後には袖を引っ張ってわたしを呼んでるのだから、感慨深い。
リュカの職場の人々もちらほらと消えはじめたようだ。寒いのが苦手で、夏の間がっつり働いて、この時期になると暖かいところで数ヶ月過ごして春に帰ってくるなんていう人はこの辺りで珍しくない。冬は冬の楽しみがあるし、保存食を開けて寒さに耐えながら春を待ち侘びる時間もわたしは好きだな。帰国はかなわなかったけど、ここでも楽しいこといっぱい待ってる。今年はロクちゃんの誕生日とノエルを繋げてリュカも休暇をとった。あれこれ企画中。
週に一度のデトックスの日。今日は動物性の食べ物は一切摂らない。要はヴィーガン食。買い物も一切しない。冷蔵庫や戸棚の整理をしつつ、掃除をして、食べ切れていなかった物などで食事する。ロクちゃんも同じ。卵の入ったビスケットも食後の山羊のチーズも今日はなし。きな粉のビスケットを焼いてあげた。ランチは残ってたパセリでペペロンチーノ、デザートは栗ジャムのパン。夕飯はさつまいものレモン煮とゴボウの唐揚げ。ロクちゃんが着られなくなった新生児用の服をフリマサイトにアップ。ネットで情報を得ることも最小限にする。物も情報もデトックスしないとすぐに本当に必要な物が不要な物に埋もれて探し出せなくなってしまう現代。こういう日は必要。
(写真:昨日のおやつの時間。朝からずっと愚図ってたロクちゃんがやっと午後に寝て、ほっと一息。疲れ果てて一杯飲酒。愚図ってる時は早く寝て欲しいのに、寝てしまうと今度は早く起きないかなぁと思ったり。彼の帽子を編み途中)
(写真:完成した黒うさぎの帽子は、耳が短すぎて犬みたいになった)
ロクちゃん11ヶ月の誕生日を目前に離乳食はもうやめることにした。プロセスフードみたいなのは自分が好きじゃないから、大分いい加減に全て手作りという中途半端な愛の籠もった離乳食だったが、ロクちゃんは何でもよく食べるし、お腹を壊したりすることもない。大人の食べるものを塩でしっかり味付けする前に取り分けるくらいでいいようだ。昨夜はお好み焼きにした。ロクちゃんのは真ん中の油があまりついてないところを取り分ける。
「ママの国の食べ物なんだよ」
そう言いながら口に持っていくと、もぐもぐとよく食べた。いつもは魚の出汁が入った食べ物なんてあげないから、これはけっこう刺激的だったのかもしれない。それにかつおぶしなんてものが乗ってて、ハーブや野菜をたっぷり煮込んでから寝かせた自家製のウスターソースがかかってる。赤ちゃんだって美味しいものはわかるのだ。クロちゃんの夕飯もかつおぶし。この日本猫はかつてこれが毎朝食だったのに、かつおぶしの輸入が禁止されてる国に移住して以来、年に数回食べられるだけとなった。かつては新鮮なかつおぶしじゃないと嫌だとか贅沢を言ってたのに、今では冷凍庫で数ヶ月眠ってたものでも有り難いと喉を鳴らして食べるのだから、涙ぐましい。しかし赤ちゃんも猫もみんなで同じものを食べると家族の絆が強まった気がしてなんだか嬉しい。
今日は久々にレストランでランチにした。ニースの郷土料理を出す店で、アントレからデザートまでロクちゃんも全て少しずつ口にした。オリーブのペースト、野菜のファルシ、白身魚のグリル、ニョッキのゴルゴンゾーラソース、ミルフィーユにショコラムース、食後のカフェまで。夜は大好物の山羊のチーズをバゲットの真ん中の柔らかいところを片手に頬張る。こういう姿を見るともう立派にフランス人の芽がでているようで、少し恐れおののく。そのうちわたしの理解できないような難しいフランス語で議論しようとしてくるのだろうか。フランス語のいまいちなママと議論を好まないパパと寝てばかりいる猫という家族の中で彼はどうやって育っていくのだろうか。
2021年11月01日(月) |
ロクちゃんのビスケット |
3連休はずっと雨。家でゆっくりできたらよかったが、庭仕事が山積み。レインコートを着て、夫婦そろって黙々と勤しんで、夕方熱いシャワーを浴びて、温かい夕飯に舌鼓をうつ、というルーティンであっという間に終わった。雨の日はそれなりの情緒の味わい方を知ってたつもりだけど、今はロクちゃんの布おむつがからりと乾かないことが、少しだけ胸につっかえてしまう。
何度も試作したロクちゃんのビスケットが遂に完成。ある日、イタリアのスーパーで買った丸くてちょっと分厚いビスケットを何の気なしに彼に与えてみた。すると、いつもは食べ物を手で掴んでは半分くらいは床に落としてしまうのに、しっかりと握って食べきるではないか。そしてもっと食べたいと訴える。その日以来ビスケットの袋をがさがさやるとすぐに近寄ってくるようになった。ただこのビスケットは、砂糖も油も多めなので、これと同じ食感で、もう少し体にやさしいものを再現しようと奮闘していたのだった。手に持ちやすくて、生えかけの歯で噛むとほろりと崩れて、でも床にぼろぼろと落ちないという絶妙な固さ、これが大切なのだった。あらゆるレシピを試してみたが、彼の手で握りにくかったり、固すぎて彼が舐め飽きて床に落としたりと失敗してはリュカとわたしのおやつとなり、大人もすっかり食べ飽きてきたところだった。食いしん坊のロクちゃんはビスケットの缶を差し出すと、その小さな手で掴めるだけ掴みとろうとする。なんちゅう欲張り。でもこの後が愛おしい。彼はみんなにビスケットを分けてくれる。一口自分が口に入れ、それからわたしの口の前にも持ってくる。
「ありがとう。ロクちゃんは優しいね」
と言って一口噛み付くと嬉しそうに笑って、また一口自分が食べては今度はパパに差し出す。今日は眠ってるクロちゃんにも分けてあげようと口の前に持っていき、煙たがられた挙げ句、猫の唾液がたっぷりついてしまったので、取り上げて棄てるしかなかった。分かち合いの精神、ちゃんと芽生えててよかった。
(これは単にクロちゃんにちょっかいを出してるところ)
そろそろ葡萄の季節も終わる。葡萄のフォカッチャに葡萄のパルフェ、堪能し尽くした。ロクちゃんの食後のデザートも林檎や洋梨にシフトしつつある。