My life as a cat DiaryINDEX|past|will
今日は休暇。家事も全て忘れてあてもなく街をぶらついて、美味しいランチでも食べよう、しなくてはいけないことや買わなくてはいけないもの、行かなくてはならない場所、今日はそういうのは何もなし。先週突然何かに取り憑かれたように体が重くなって、くたばってしまった夜があった。ロクちゃんの誕生以来半年間毎日駆け足でやってきてちょっと疲れが溜まったのだろう。今日は一日だけがっつり休む、そう決めてロクちゃんを連れてニースに出た。
初夏になるとイタリアではトロペア産の赤玉ねぎが一斉にお店に並ぶ。カラブリアという土地について想像すると、そこは乾いた大地、そしてその大地を炙るようにぎらぎらと照りつける太陽、注目を浴びることなく静かに循環し続ける紺碧の海、不毛で大した作物が採れず、暮らしぶりは貧しくて・・・。実際、過去には職を求めて北上してくる人が沢山いたのだとか(近年では北イタリアを目指すより、海外へ移住するほうが主流となっているそうだ)。そんな大地からこんな鮮やかな色の玉ねぎが顔を出したら、なんともカラブリアを明るく照らすスポットライトのようではありませんか。日本の赤玉ねぎを食べてしまうと、正直イタリア人が感嘆するほど柔らかくも甘くもないように思うが、味は濃い。これで煮るコンフィチュールはひと味違うというんで、作ってみることにした。
わたしの朝はエスプレッソではじまる。プレッシャーバルブのついたビアレッティのエスプレッソメーカーでぎゅっと圧力をかけて抽出する表面にクレマの乗ったカフェ。イタリア人には解せないらしいが、砂糖も入れない。バルコニーのテーブルに置いたら、おっぱいを飲み終えて、沐浴して、アーモンドオイルを塗ったピンク色の頬をつやつやさせてご機嫌なロクちゃんを抱きかかえてきて着席して膝に乗せる。2つある椅子のもうひとつにはクロちゃんが座ってる。こうして3人揃って朝日を浴びる至福のひととき。さて、カフェをひとくち、と啜ると胸の方からニョキッと小さな手が必ず伸びてくる。もうこのところロクちゃんは食べ物にも興味津々で何でも手を伸ばしてくる。口に持っていくと何でも嬉しそうに舐めてる。好き嫌いはなさそうだ。中でもカフェを淹れると鼻をひくひく動かして夢中で掴み取ろうとするのだ。
ロクちゃんはじめてイタリアへ。歩いてでも行けるイタリアが遠い国になって半年以上。やっと自宅からの距離の制限があるものの、入国可能になった。出産したらここで祝おうと決めていたレストランをやっと再訪することができた。海の前のテラスで、人々のざわめきと波の音を聞きながら食事。市場でオリーブやトマト、白いちじくなんかもたっぷり買い込んだ。フランスでもそうだが、イタリアでも沢山の人がロクちゃんを見て"なんて美しいバンビーノなんでしょう!!"と声をかけてくれた。確かに彼はわたしが人生で創造したものの中のマスターピースである。ロクちゃんの体が汗でベトベトで、水分は足りてるのかなどと気がかりで、寛げる旅ではなかったけど、やっぱりどこへ行っても彼と一緒だと倍楽しい。
最近のお気に入り伝え継ぐ日本の家庭料理シリーズの「小麦・いも・豆のおやつ」のレシピ。日本各地の家庭で古くから作り続けられているおやつ。きっと農作業の合間にちゃちゃっと作って家族の空腹を満たすようなものだったのだろう、家にいつもあるような炭水化物に少しの砂糖や味噌や醤油を足すようなレシピが多い。ランチの後に必ずデザートを食べてるから、おやつには砂糖やバターたっぷりといったようなものは避けたい。かつ、お腹にたまるものがいい。そう考えるとこの本のレシピはどれもうってつけ。昨日は岩手のかますもちを作った。小麦粉で作った真っ白な生地の中に味噌と黒糖と胡桃を入れて茹であげる。小麦粉とか胡桃っていうのが岩手っぽいな。千葉といったらお米と落花生だからな。地方色がよくでてるのも面白い。今日は群馬の焼きもちを焼いた。地粉に味噌と砂糖を混ぜて、鉱泉でまとめて焼く。鉱泉はないから重曹とベーキングパウダーで代用。味は素朴だけど、仄かな甘さに心がほっこり癒やされる。食感はスコーンをもっともっさりさせたような感じ。フランスのお菓子が目の前にあったら、ぺろりと平らげてしまう。そしてあぁ美味しかった、もっと食べたいなぁ、と思う。でもこういう素朴な日本のお菓子を食べる時は、違った感想を抱く。あぁ、お腹が満たされた、今日もありがとうというような。日々感じたいのはこういう気持ち。リュカも喜んで食べるんで、午後のおやつに持たせてる。ロクちゃんもここで育ったらヌテラだのチョコレートだのいうんだろうなぁ。でもこういう味も解る味覚を養ってあげたい。
マルシェで買った鞘付きのグリーンピース、空豆と新玉ねぎ。グリーンピースの鞘、新玉ねぎ、粗塩を鍋に入れて、ひたひたの水を入れて10分程煮る。これを濾したらそのスープにグリーンピースを入れて5分程煮て、空豆を入れて更に3分。完成。器に入れてオリーブオイルをひとふりしていただく。細川亜衣さんの"愛しの皿"の中に見つけたレシピ。究極にシンプルな材料だけど、骨の髄まで味わい尽くすよう。イタリア人はグリーンピースを果物のように鞘から出したのを生で食べたりする。それだけで味が完成してるものなのだ。甘みを引き出すための塩をしたらそれ以上何が必要だろうか。初夏の瑞々しい新緑を連想させる見た目も印象が強い。マルシェでグリーンピースを見たら、直ちにこのスープを思うだろう。
Michelina
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