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途中で車を停めて海を眺めたりしながらゆっくりシティに引き返した。Jはハンドルを握りながらたまにこちらを向いてあっかんべーの顔をする。
先日Jとほんの少しの口論をしたときのこと。わたしは立ち上がって自分の本を持って家の中で一番明るくて暖かいランドリーに椅子を持って行き、読み始めた。キッチンからじっとわたしの様子を伺ってうろたえるJ。そのうちぽんとわたしの肩に手を置いて、こっちにおいでよ、一緒に過ごしたほうが楽しいよと言う。延々機嫌を損ねるようなものでもなかったから振り返って人差し指で目の下を引っ張り、舌を出して"あっかんべー"の顔をしてみた。するとなぜか超気に入った様子で
"What does it mean!!"
とゲラゲラ笑い転げている。
"I'm pissed off with you"
と教えてあげたにもかかわらず、以来その顔をしてあげるととても喜ぶのである。
Yanchep National parkに寄ってCave(鍾乳洞)や鳥、コアラ、カンガルーなどを眺めこの旅行は終わり。
夜にアレックス達と日本酒をちびちびやりながらJengaをして遊んだ。アレックスとアンナは似た者カップルなのか邪悪さを発揮しボトムのほうを狙って引っこ抜いてしまう。しかしわたしはまんまと切り抜け、結局このカップルが一番の敗者となった。
2010年07月30日(金) |
Sand Boarding |
パースからHWYを北上すること1時間半、Lancelinへ。南半球では北上=暖かい。ここはサバンナとインド洋だけしかないところ。唯一空きがあった海沿いのおんぼろ小屋のようなところに荷物を降ろしたら砂山へ。サンドボードを楽しんだ。
日が傾きかける頃へとへとになっておんぼろ小屋に戻った。何もやることがないから、だだっ広い庭で野うさぎを追いかけ、満天の星を見て、たくさんしゃべった。たまにひらりと届くJからのメールからは読み取れなかったJのわたしに対する気持ちを知った。初めて会った時、ナイスガールだと思った。もっと知りたいと思ったのにすぐに日本に帰ってしまった。それから仕事上の激流に飲み込まれて何も考える間もなく、日々が過ぎていった。けれど、ふと心の隙間に風が吹き込んだ時、なぜか君のことを思い出した、と。わたしも同じだった。一途に毎日Jを思ったわけではないけれど、仕事や家事で忙しい日々の中でやっと寝床についてほっと一息ついて、ふとJを思い出したりした。お互いに少しずつ一緒にいる道を思索し始めてしまった。この灯りはすぐに消えてしまうのか、ずっと長々と心に燈っているのかわたし達にもわからない。打ち寄せる波の音を聞きながら、わたし達の運命も海にゆらゆらと浮かんで波に委ねられているように思えた。
2010年07月29日(木) |
Flavor of India |
アレックスとガールフレンドのアンナ、そしてアレックスが"シングルだと思うよ〜"とわたしのために誘ってくれたという彼の仕事上付き合いのある日本人男性と4人でインディアンレストランで食事をすることになった。そんなプレッシャーをかけられてやや緊張していると当人がやってきた。どんな想像をしていたんだと言われたら、何も想像していなかったけれど、予感と違って、大らかそうな男性が現れた。なかなかお喋り(悪い意味はない)な人で同じくお喋りなアレックスとわたしと3人あまり深入りしない普通の大人の会話が弾んだ。アンナはひたすらおとなしくたまに相槌を打ったり笑ったりするだけだった。
帰り道、その男性と別れてすぐに、感想を求められる。いい人であった。友達としてつきあいたいと思うけれど、異性としてのつきあいを想像できるような要素が見当たらなかったなどと答えた。ひたすら黙っていたアンナは鋭く観察をしていて、ゆっくり慎重につきあいを進めていきたいタイプで誠実、堅実でとても良い男性だと言った。いつも相手をちらりと見て"Not my type"などと簡単に決めてしまうわたしと違ってアンナはじっくりと相手を見て良いところを拾ってくる。わたしよりうんと若いけれど、見習いたいところの多い人だ。
その頃、激務のせいでもの忘れが激しくなったJはいつもどおり8時に"やばい!彼女を家に送らなきゃ"と立ち上がってから、今日はわたしを迎えに行かなかったことを思い出したらしい(笑)。
2010年07月28日(水) |
Helsinki Salmon soup |
夕飯にとコトコトスープを煮た。いつかどこかで覚えたヘルシンキのサーモンスープ。にんにくと玉ねぎ、ハーブ、セロリ、にんじん、ジャガイモ、そしてサーモン。固形のコンソメなどを使った濃い味は苦手だから、じっくりと煮込んで味を出す。Jは手伝うとはりきってギターを抱えてキッチンにやってきた。料理しているわたしの脇で歌って踊って調子付けてくれているらしかった。
「ママの作るスープの味だ!!」
一口食べ感嘆して身を乗り出し、おでこにキスをくれた。Vege loverじゃない彼にそんなに喜んでもらえるとは。うまく調理してあれば野菜料理も好きなんだと満足げに平らげた。わたしも数日ぶりのたっぷり野菜のヘルシーテイストにほっとした。
食後のコーヒーを飲みながら、珍しくパソコンとにらめっこしているJの横顔を眺めていた。
「何してるの?」
「資金繰り」
「何の?」
「君に家を買いたいの」
あまりに飛躍し過ぎていてコーヒーを噴出しそうになった。
「。。。。すごいね」
しかし、顔つきが険しかったので資金繰りはうまくいってないのだろうと踏んだ。
アレックス家に戻って夜な夜な読書をしていると、サマンサも何かを煮込んでいた。小柄でちょっとかかとを上げて背伸びして大きな鍋を覗き込んで首をかしげたりしている姿がなんとも可愛らしい。そのうち飲んでみてと大きなボールにたっぷり何かを持ってきた。見たことのないもの。説明によると漢方のスープのようなものらしかった。ロンガン、杏仁、高麗人参、百合根、緑豆など色んなものが煮込まれていて、ほんのり薄く甘く味付けしてあった。あっさりしていて美味しい。作り方を教わったので食材を買って帰ろう。
まるでそれが義務かのように毎日Jは仕事を終えると電話をかけてきて迎えにやってくる。一緒にいられるのは嬉しいけれど、小さな難点は食事。肉を食べないわたしと、好き嫌いの多いJ。二人とも食べられるものを探すとジャンクなベジタリアンフードといったものになりがちで、それが続いたら体が弱ってきた。白米にひとつかみの玄米と16穀米を混ぜたほんの少し青くさい"わたしのご飯"が恋しい。それにひじき煮でしょ、きんぴらごぼうに、冷奴、ワカメと長ネギの味噌汁にピーマンの甘辛味噌煮、大根おろしとシラスに醤油をかけたのとか、、、、。雑穀たっぷりの茶色いパンとスイスチーズ、マリネードオリーブの朝食は大のお気に入りだけれど、ピッツァやパスタは月に一度くらいのペースでないと楽しめない。
他人は自分の期待どおりの言葉をくれない。
「彼女は両親も母国にいたから帰りたかったんだ。だから止めなかった。」
Jから聞いた過去のガールフレンドの話に自分の過去を重ね合わせてムキになった。
「That's bullshit! 男のひとことで女の気持ちなんてころりと変わってしまうのに。」
"You can stay here"なんて言葉じゃなくて、"Please be with me"という言葉を何年も待っていたのに結局それを聞くことはなかった。満たされないから実質一緒にいてもいつもどこか孤独で日本が恋しかった。責任感が強いからこそ軽はずみにそんなことを口走らないと一方では理解していた。けれどもう一方で理屈じゃない、素直な感情を見せてほしいと"ただの女の子"である自分が愚図っていた。勝手に他人に期待をかけて、それが起こらないことに苛立ったり傷ついたりするべきではない。経験から学んだことだ。感情をコントロールできるかは別として。悩み傷ついて行ったり来たりした道を辿りながら、もっと若かった自分を慰めてあげたい気がした。
目がまわるような忙しい日常から逃げ出してほんの少しの休暇をパースでのんびり過ごしている。ほんの数ヶ月前仕事疲れとストレスに重たい表情を見せていたアレックスには若くて可愛らしいガールフレンドができて、家中にぱっと花が咲いたような甘ったるいムードが漂っている。ハリソンは相変わらずのらりくらり、結婚を迫られてストレスが溜まっているだのなんだのと贅沢な文句を垂れている(笑)。
Jは仕事でパースを離れている確率のほうが高いし、いたとしても離れるのが辛くなるのが目に見えているからもう会わないほうがいい、頼りない小さな決意をしてきたというのに、幸か不幸かちょうどパースに戻ってきていて電話が鳴った。わたしの気持ちは複雑だというのに、相手は至って簡潔なようだ。今夜時間があるなら迎えに行くよと言われ、あっさりsureと答えてしまう自分の弱さに辟易してしまう。。。自分を傷つけ泣かせているのは他ならぬ自分なのだと最近思い知った。
"I like you a lot"それはきっと本当なんだろう。でも男の戦場のような日常の中ですぐにわたしのことも忘れていく、そんなところなんだろう。あれを忘れた、これを忘れたという話が多いもの。しかし、Jのおなかを枕に芝生に寝転んで大きな空を見上げていたら、会えばこんなに楽しいんだから、まぁいっか、そう思えてきた。
絶好の海日和!早朝、友人と車を飛ばして勝浦の守谷海岸へ。ここは入り江になっていて波が穏やか。泳いでは栄養補給をして日が暮れていった。
夕方たっぷり泳いだ後の心地良い疲れと日焼けで火照った体で今度は電車に乗って都内まで出る。今夜は同僚や彼らの友人とみんなでインディアンレストランへ行くのだ。片田舎にひとりで暮らし、誘っても”行きたい!”(それは本当だ)と声を弾ませるだけでなかなか重い腰をあげないわたしに、来れたらおいで、と毎度声をかけてくれる同僚のインディアンガイとアメリカンガイの存在がありがたい。待ち合わせの時間より前に電話が鳴る。
「迷ってないか?ちゃんと電車に乗れたか?」
ここに来て間もない外国人にこんな心配をかけるわたしって一体。。。
待ち合わせ場所に着くと、先日合コンで会ったブリティッシュガイ、写真で顔を見たことのある人やまったく初めて会う人、インターナショナルな顔ぶれが揃っていた。オーストラリア人も2人ほどいた。
「今夜行く店には美味しいインディアンワインがある。」
というインディアンガイに
「信用してあげてもいいけど、オーストラリアンワインには勝てるはずがない。」
と3人で口を揃えたら、なんだか気の置けない友人とたくさんの笑いを共有したパースのパブの雰囲気が甦って楽しくなってきた。
話題のインディアンワインを開けて乾杯!フハ〜、泳いだ後の酒の美味いことよ。スパイスが効いた斬新な味。美味しいとみんな口を揃えた。次々と料理も運ばれてくるのだが、またどれも美味しい。みんなの空腹も少し落ち着いたところで、よし、あれだという合図で出てきたのはウォッカで割ったマンゴーラッシー。全くアルコールの味のしない危険なドリンクであった。
ふとあるきっかけで、わたしが話した。
「婚約したけど、結局結婚できず離れてしまったの。」
咄嗟に
「大丈夫、わたし達もみんな独身だからさっ。」
と女の子達を指して慰めるように言ってくれたのはフランス人の元同僚の前のガールフレンドだった。彼がいた頃、嬉しそうに彼女の写真をよく見せてくれた。愛していたのだと思う。けれど、彼は突然逃げるように会社を辞めて、日本を去っていってしまった。彼女との別れを惜しんでいたというのは聞いたが、結局置き去りにしたことには変わりなかった。しかし、ファッションに疎いわたしでさえ知っているような有名なデザイナーの下で寝る間も惜しんでばりばりと仕事をこなす人、フランス人の彼が去って間もなくまた新しいボーイフレンドができて更に多忙を極めている、そんな話を聞いて、頭の切り替えが早く勝気な人、わたしのように立ち止まって長いこと泣いたりはしない人を想像していた。話してみたらやはり想像と遠くはなかったけれど、その中にも表情豊かで人間味の溢れる人だった。同じ年頃の男女がみんなキャリアや恋愛に悩み苦しんで、それでもだからこそ力が湧き上がるんだと言わんばかりに豪快に飲んで全てを笑い飛ばしていた。
ビーチ、美味しいワインと料理に溢れ出すたくさんの笑い、最高!と叫びたくなるような楽しい夏の1日だった。
海浜幕張にて男友達と会う。これと言った名所もないが、午前中用があってそこにいるから、来るなら午後に案内してさしあげようと言ったら、わざわざ遠くから電車でやって来たのだ。そば屋でつるりとランチをして近況を聞く。威勢よく職を求めてあれこれエントリーしているらしい。学歴やキャリアはご立派だが、なにせ当人日本語がまったくできない。狭き門である。
おなかを満たしたら公園を散歩。鯉のいる池の前までやってきた。
「鯉って、200年くらい生きるらしいよ。本当かな?」
「サーモンみたいに劇的に生きる魚は短命だけど、こんなぽっかり口あけて生きてる生き物はそれくらい生きても不思議じゃないね。」
そんな話をしながら先に石畳を歩きだすと背後でぽちゃりと音がした。ふと振り返ると、なんと!!!
この大男が池に腕を突っ込んで一番巨大な鯉の頭を撫でているではないか!! もっと驚いたのは巨大な鯉が黙って撫でられていることである!!なんとゆう奇妙な光景なのか。わたしは一生忘れないだろう。
1時間後、もうあなたには本当驚かされたわっ、と蒸しかえして、笑いながら横を見ると、なんと!!
この大男のシャツの襟に大きな虫が止まっていたのだ!!
悲鳴をあげ、後退りするわたし。当人は”自分じゃ見えないからはたいてよぉ”と大らかである。仕方なく、でこピンのようにはたくしかなかった。
ビートルート探しに付き合いCarrefourへ行くと、あっさり缶詰のを発見。当人喜んで5缶もお買い上げ。こんな遠くまで来た甲斐があったと満足げにまた電車に乗って帰っていった。よかった、よかった。
動物好きにはたまらない朝の3チャンネル(6:55くらい)。リトル・チャロもいいが、その後の犬や猫と飼い主の写真を歌に乗せて紹介する番組。例えばオス猫の場合はこんな歌。
♪オレ、ネコ、オレ、ネコ、
コレ、オレのウチ、
コレ、オレのウチ、
コレ、いつものゴハン、
コレ、スペシャルゴハン、
このヒト、ゴハンをくれる、
このヒト、あそんでくれる。
オレ、ネコだから人の言葉ワカラナイ、
オレ、ネコだけど、このヒトの気持ちなぜかよくワカル。
オレ、ネコ、オレ、ネコ、
オレ、ネコ、オレ、ネコ。
猫が主格なのがなんとも愛らしい。この番組を見て、植物に水をやったら、なんだかやさしい気持ちになって鼻歌を歌いながら会社へ向かう坂道をおりている。
(写真:めきめき伸びたペチュニア(手前)とまだまだ伸びそうなカリフォルニア・ローズ(奥))
2010年07月04日(日) |
恋するブリエッタローズ |
合コン無事終わる。ちゃんと喋れた。というか、相手がきちんと会話ができる地に足の着いた堅実な人々だった。周囲に座っていたのが、ランチタイムの友と仲良しのイギリス人の男の子とわたしのマネージャーが慕っている日本人の男の子で、話したことはなかったけれど、顔見知りだったので、話題も見つかり安易に打ち解けることができた。みんな楽しめたようで、また近々同メンバーで飲みましょうということで完結。めでたし、めでたし。
日曜の午後久々にパースの友と会う。髪も肌も爪も艶やか、いつ会っても彼女は変わらず美しく、そして耐えることなく恋に愛に苦悩している。この苦悩こそ彼女を錆びさせない秘訣だろう。ガルリカフェのみゆき通り館で和栗のモンブランをつつきながら(ケーキもいいが、ここのお高いコーヒーも美味しいんだよね〜)ガールズトークに花を咲かせる。強いわたし達が求めるのは言いなりになる草食男子なんかじゃなく、わたし達をねじ伏せるような更に強靭な大男だ。しかし2本の大木はぶつかり合って傷だらけになる。探し物はなかなか見つからない。別れ際、
「小銃をぱちぱち撃つのはやめたわ。一発の大砲でとどめを射すわ。」
と息巻く彼女に、
「あまりにもの大砲の勢いに撃った自分が吹っ飛ばぬように。」
と忠告して別れた。
帰り道、近所のホームセンターで今にも死んでしまいそうな白いブリエッタローズが売られていた。ある人が、そういうのを生き返らせるのこそが植物を育てる愉しみだと言っていたのを思い出し、家に連れ帰ることにした。400円となっていたのにレジで10円でいいと言われる。大きな鉢に移し替えて、水と栄養剤を与えたら、みるみる元気になってきた。今は10cmくらいで小さな花がひとつだけ開いている。夏の終わりにはこぼれ咲くといいな。