My life as a cat
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2006年12月31日(日) 野生動物のように

歯が痛くてとうとう歯医者へ。野生動物のように強く健康で、それでいて儚くいたい。だから食べ物や生活習慣に気を使って、体の発する声に耳を澄ます。それでももし大病を煩ってしまったらあっさり死にたいと思う。だから保険に入っていない。しかし、そんなことを思えるのは健康な時だけだ。いざどこかが痛み出したら藁をも掴む思いで薬を飲んだりする。そして痛みが和らぐ頃、わたしは紛れも無く傲慢な「人間」なのだと自己嫌悪に陥る。その代償のように歯医者で大金を落としました。

(写真:キングス・パークより)









2006年12月25日(月) 家族の時間

マーヴの親友のデイヴィスの家に遊びに行った。以前からちょっと奇妙な家族なのだとは聞いていたけれど、それはもう家に入った瞬間に伝わってきた。お父さんとお母さんと大学生の弟も出てきて大歓迎してくれて、「座りなさい、座りなさい」とわたしをリビングのソファーまで誘導して、腰をおろすなりすごい勢いで質問攻めされた。「とにかくよく喋る」、「同じ事を何度も言う」、「ただのWant to をあたかも本当にその計画があるように言い切ってしまう(あっ、でもこれはガイジンの特性ね)」、「用心深い」というのはデイヴィスの特性だけれど、これが家族全員同じなのには驚いた。マーブは”Depressed family(落胆家族)”と表現していたけれど、そんな暗い影も、明るくて仲の良い彼らの会話の中にちらりと見えた。

マーブが「恐怖の炭水化物料理」(笑)と表現するお母さんの料理は噂どおりたっぷりパスタにポテトにちょっとだけ生野菜というものだったけれど、彼らは東欧の人だからこんなものでしょう。お父さんとお母さんは戦争で国を追われて、幼い二人の子供を連れて言葉もできないのにここにきて、移民して間もない頃は苦労したのだというような話をしていた。「オージーはニコニコ笑っても、本当は外国人嫌いなのよ。」と当時お父さんが自分の技術を生かした仕事につけなかった理由を人種差別に押し付けて嘆くお母さんの横で、当の本人は「ここは豊かでいい国だなっ」などと言っている。子供を抱えて、支離滅裂でコロコロと気が変わるお父さんに着いてきて一番気を揉んで苦労したのはお母さんなのに違いない。10年近く住んだ今でも、ヨーロッパに帰りたいと言う。でも、家の男三人がわたし達に「ねぇ、ママはすごい料理上手でしょう?」などと誇らしげに言ってくるところを見るとお母さんはそう不幸な人ではないのだろうと思った。

食事中、マーヴがわたしが口を着けたフォークを使うと、お母さんに「同じフォーク使ったの??」と目を丸くして驚かれて、逆にこちらが驚いてしまった。

夕方にスカボロー・ビーチへ繰り出しても、弟は「針が落ちてるかもしれないからサンダルは脱がない」と言う。その後「アイス・クリームは喉を引っ掻くから悪い食べ物だ」と言ってわたし達が食べるのを横で見ていた。デイヴィスは「ママ、魚の骨が喉に刺さると死んじゃうから絶対骨付きの魚は買ってこないでね」などと言っているし、わたしとマーヴは「神経質過ぎだよ」と苦笑いするばかりだったけれど、いつどこでテロにあって命を落とすのかわからないようなところに身を置いた経験のある人は用心深くなってしまうのだろうと納得した。

奇妙だけれど、みんな屈託の無いいい家族だと思った。そして家族の時間をたっぷり持っているのもいい。そうマーブに伝えると「っていうか持ち過ぎだよ。」と返された。確かにだからみんな似過ぎてしまうのかもしれないなっとまた納得。


2006年12月24日(日) アツイ、クリスマスの夜

マーヴと二人、静かなクリスマス・パーティー。と言ったら、暖炉の部屋で窓の外には雪がこつこつと降り積もるところを想像してもらいたいところだけれど、何せここは南半球。静かにしていても汗ばんでる。今日の献立はルッコラとパイン・シードのサラダとベジタリアン・ラザーニャ、デザートには紅茶のプディング。バックにはダイアナ・クラルやサラ・ボーンの渋い女の歌声を。しかし、こんな時もマーヴはテレビのシンプソンズに気をとられていた。

食事の後はマーヴの趣味でマーティン・スコセッシのスリラーを鑑賞。元囚人のデ・ニーロがパブでひっかけた女をベットまで連れ込み、頬の肉を食い千切ったりするような寒い寒いシーン満載。体が冷えたのはいいけど、眠れないじゃないっ!








2006年12月22日(金) Buche de noel

ブッシュ・ド・ノエル作りに兆戦。ただのスイス・ロールと言えども売られている物のようにふんわり、しっとりといかない。オーストラリアの小麦粉自体がもうぼってりとしているせいか、それとも色んな得体の知れないものを入れないとあぁならないのか。ちょっと心配しながら、これはシンプルな角皿に乗せて、最近家を建てたデニスとナエちゃん夫妻へ新築祝いも兼ねたクリスマス・プレゼント。

わたしにプレゼントを購入したマーブは、渡すのがあまりにも楽しみでクリスマスまで待てなかったのか、今日にくれてしまった。こんな人初めて(笑)。小さな箱を開けてみるとシンプルなピアスが入っていた。殆どアクセサリーを着けないわたしが唯一好んでするのはピアスだとちゃんと覚えていたのだね。「カードがないじゃない!プレゼントは言葉と一緒に来るでしょ、フツウ!」とからかったらI,,,love,,,you,,,と口の中でもごもご呟いていた。


2006年12月17日(日) クリスマス支度

週末は暑い中クリスマス・ショッピングに奔走。ひとりのほうが捗ると言ったのに、着いてきたマーヴは、一旦エアコンの効いたお店に入ってしまうともう次に行きたがらない。そして屋外に出るともう口もきかない。しかしいつも二人とも手に取ってみるものが違うから面白い。わたしの私物で彼が真っ先に興味を示したのは温度計と圧力鍋だった。そして彼のフェイバリット・ショップはパース駅前のアンティークとうたったガラクタ屋。

細々した物やカードを買い込んで最後は日本食料品店へ。フランス語も全く出来ないのに日本食といえば醤油くらいしか手に入らないスイスの僻地まで、経済的なヘルプも期待できない程若いBFを追いかけて行って、職探しまでしているという三十路女の親友を労い、エールを送ろうと、炊きこみご飯や乾燥ワカメ、紫蘇ふりかけなどを買い込んだ。3ヶ月奔走したものの惨憺たる結果で、焦りや落胆も大きいのだというようなメールを受け取っても、何故か惨めさなどは感じない。相手に期待をかけない。ただ自分の愛する人と一緒にいるのだという逞しい決意がスカッと気持ちいいくらいだ。その情熱はいつか形を変えてでも何か彼女の力となるのでしょう。

夕飯を食べ終える頃、きりりとした空気が戻ってきたので、マーヴと散歩に出た。夕陽がすっかり地平線の向こうに行ってしまう間際の赤紫色の空に酔いながら、クリスマスの計画を立てた。彼はわたしのために計画しているプレゼントがあるらしいが教えてくれない。”Sex and the city”のDVD全集ではないとなると。。。努力は認めるけれど、やっぱり女の気持ちが解からない彼の買ってくる物なんてちょっと恐いでしょう〜。


2006年12月09日(土) ここでいいでしょう?

日暮れ頃、シティのジェッティからスワン・リバーを渡ってサウス・パースへ。いつものごとくマーヴに付き合ってジェラーレでアイス・クリームを食べて、少し早めのディナーはイタリアン・レストランで摂り、シティへ戻る最終のフェリーが出るまで川沿いを散歩した。本当の手付かずの自然の中で生まれ育ったマーヴはこんな綺麗に整えられた人口自然パークに感動したりはしないけれど、シティから離れて土や木や水の豊富な場所に来ると、いつも楽しそうに実家の広大な自然の中の暮らしのことを話す。それはそれはスローな暮らし。バックヤードに放ったらかしなのにボンボンと生っているバナナやマンゴーが美味しいとか、化学物質の薬を飲んだことがなかったとか、18歳でここに来るまでシャンプーで髪を洗ったことが無いとか。若い好奇心でもっとハリのある街に住んでみたいというけれど、彼が東京などのお金だけ持ったまま貧しく暮らすことしかできない大都会の中に身を置いたらすぐに病気になってしまうのではないかと思う。二人してジプシーのように毎日どこへ住もうかと相談するけれど、やっぱりお互いにここがいいんじゃないかな。




2006年12月03日(日) 復活したいつもの週末

デイヴィスとマーヴと3人で賑やかなヒラリースへ。波のないボート・ハーバーで今年の初泳ぎ。すかっとしたらあっさりときりあげ、スビアコのとある小学校へ。バスケット・ボールを奪い合ってじゃれあう二人を太くて立派な木に登って見下ろした。潮の香りに樹木の匂い、ここには深呼吸したくなる瞬間がたくさんある。

先週末、夜になってもマーヴは帰ってこなかった。一緒に出席するはずだったパーティが終る頃検査の為に拘束されているのだと知った。それから3日間、着替えを取りに10分くらい帰ってきてはまた病院に戻る。腕には札をつけられて(検査の為)殆ど食事をもらえないのだと言って顔はやつれて、髭もボウボウ、電話をかけることも許可されていないのだという。病人というよりも囚人のようだった。そんなに長時間しっかり拘束されるなんてどこか不審な点があったに違いないと心配で眠れない夜を過ごした。けれど水曜に「至って健康」という太鼓判を押されて帰ってきた。子供の頃、母がどこどこが痛いなどと言って病院に行ってしまう時、どうしようもなく不安になった。そんな気持ちも全部思い出しておんおんと泣いてしまった。「病人はこうやって人を不安に陥れるんだよ。わかってるの!」とヤツアタリもして。次の日買い物に行くと、マーヴは不健康食品を手に取ってはわたしをチラリと窺ってまた元に戻していた(笑)。

グラウンドを走り回るマーヴの姿がありがたかった。

(写真:今年は電球がついて豪華になったクリスマスのデコレーション)


Michelina |MAIL