またしても、喧嘩をした。クリスマスの真昼。 外は寒くて、手も冷たくて。 それでもあたしに触れる華の手は、いつも熱い。 誘い方がなってない! なんて怒ったのは少し前。 あたしばっかり欲しがるのが不公平だって。 ずっとずっと言い続けてきた。 欲望の出所の違いかな。 昔馴染みに話をしたら、苦笑いを返された。 あたしはよく言う、ビッチの類じゃないかと思う。 誰彼構わずじゃないけれど。 触れるのが好き。触れられるのが好き。 あの快楽が、たまらなく好き。 けれど。 寒さがつのる所為なのか。 それとも、あたしが退化しているのか。 近頃、そんなにしたくない。 だから、華の手を振り解いて、 「その気にさせるまでは、しない」って言い張った。 あたし、何様ですか。 自分で笑ってしまう。 またしてもあたしに振られた華は、 困り切って、怒ったり、泣いたりする。 感情の起伏が激しくなるのに、全く動けない華は、 とてもいたいけな生き物だと思った。 あたしは、それを、ぼんやりと眺めているだけ。 だって、幾ら5年の付き合いだからって。 当たり前のように求めるのなんて、つまらない。 あたしが乗り気じゃないことで、 責められるなんてまっぴらごめん。 それなら、なしでもいいんじゃない? 同性だから、友達みたいになっちゃうけど。 冷たい手が、熱くなる瞬間。 こういうのなら、嫌いじゃないよ。
背景を黒で加工して。 ぼんやりと白の中心に座っている。 影が差せば消えてしまう、小さな円。 あたしはとても、無力で、小さな生き物。 あまり話したことのない人は、気弱そうな人だと言う。 ちょとだけ知り合った人は、強い人だと言う。 ちゃんと知った人は、脆い人だと言う。 全部、あたしでしかないのに。 華は。 そんなあたしを、守らなければと思っていたのに。 何時の間にか、あたしの存在を、自分の一部にしてしまっている。 あたしよりも、本当は脆い、あなた。 ほっとけば何時間も、何十時間も眠り続ける、 怠惰なあたしを揺さぶり起こしては、 さみしいと、いとしいを告げてくる。 本当に可哀想なのは、あなた。 こんなあたしに依存しているあなたは、本当に可哀想。 そして、そんなあたしは、もっと可哀想。 自己憐憫は気持ちいい。 自己陶酔も気楽でいい。 あたしは卑怯者、なのです。相変わらず。
4ヶ月。 いろいろなことがあった気がするのに、 あんまり代わり映えはない。 あたしは仕事を変えて、 華とは喧嘩をして、仲直りをした。 新しい仕事場は人が多くて、嫌になる程、めんどう。 そこも2ヶ月弱。ようやく慣れてきた。 一昨日は忘年会に行ってきて、最後の三次会まで参加した。 泥酔した人間は本性が出るんだと、改めて実感。 あたしは、と言えば。 お酒が入ると、喘息も出るし。 三口で二日酔いになるような体質だし。 自重しながら参加。 あの人たち、次に会う時は普通の顔してるんだろうな。 それが社会人というものなんでしょう。 意味が分かりませんが。 華とは。 喧嘩して。泣いて、泣き付かれて。 ズルズルと続いていく。毎日。 相変わらず、あたしはひとりで。 広い家で、隅っこに座ってる。 小さな生き物が二匹、部屋の隅から見詰めている場所。 一生、このままでしょうか。 それもそれで、いいかもしれない。 あたしは結婚に向かないタイプ。 華は、いつまでも煮え切らないタイプ。 一緒に暮らす日がくるだなんて。 信じられるような若さは失いました。 仕事場で「彼氏いるんだー」って言われるたびに、 曖昧に笑って返すあたしも、立派な社会人。 まあ、一部にはカムアウトしてますけど。 嘘を考えるのも面倒だし。 あ、あと。 タトゥーも増えました。先月。 あたしの左腕に、二輪の薔薇。 華の右胸に、大輪の菊。 もう戻れないんだと、思い知る日々。 年を取ったのかもね、本当に。
|