仕事場で、たぶん気持ちの行き違いで。 あたしは、初めて、職場で泣いた。 今朝早く、オンナノコの日になって。 痛くて辛くて、眠れなくて。 結局、午前中は休ませてもらうことにした。 朝イチで華に弱気メールをしたら、しばらくして、華が前触れもなくやってきてくれた。朝ご飯と鎮痛剤を持って。 仕事が休みの華だけど、祝日だし、簡単に出てこれるわけないのに。 それでも、息を乱して駆けつけてくれた。 あたしは痛くて、痛くて。 華に縋り付いて「にゃあ」とだけ鳴いた。 こんな季節に湯たんぽを入れて、午前中をやり過ごした。 お昼から、薬で痛みを抑えたものの、貧血と軽い発熱でふらふらしながら仕事に行った。ゴールデンウィークだからこそ、休めなかった。 でも。 行き違いだと思いたいことが、あって。 あたしは二階の倉庫で泣いた。 店で泣いてしまうのが嫌だったから。 店長が気付いて、あたしは彼にだけ話した。 結局泣きやむことができなくて、あたしはそのまま帰らせてもらった。 世界はあたしに、少しだけ優しくない。 嫌われても構わないけど、仕事に支障が出るのが嫌で。 あたしは指摘されたこと、自分で気になったことを直してきた。 直すように努力してきた。 でも、あまりにも辛くて。 あたしが何をしたんだろうと、そんなことばかりを考えて、泣いた。 逃げ腰のあたしだけれど、これからどうしよう。 仕事を辞めたくない。 少し前に辞めたいと思って、店長と話しもしたけれど。 こんなに融通を利かせてくれる仕事場はそんなにない。 華との時間を取りたいから、この仕事場は変えたくない。 だから、もう少しがんばろう。 大丈夫。 あたしは、そんなに弱くないはずだ。 大丈夫。 あたしなら、大丈夫。
最近、けんかしてばっかり。 ううん、けんかにもなんない。 あたしが怒ってばっかり。 あたしが悪いの。 めんどくさい性格。 神経質で、嫌になる。 寂しいのが嫌で、いつもいつも気にして欲しくて。 うざったい奴だと、自分でも思う。 もっと、あたしが。 ううん、あたしじゃなければ。 あたしじゃなければ。 ああ、もう、考えたくない。 小さく丸まっていよう。そうしよう。 通り過ぎて落ち着くまで、待とう。
早起きして、華と一緒の通勤電車で免許の更新へ。 途中でばいばいして、あたしは一人で向かう。 春だというのに、寒空の下。 知らない場所は、人があふれかえっていた。 写真は髪が乱れていたけど、もういいや。 もらった時にはすごーーくショックだったけど。 次の更新は平成24年。その頃、あたしはどこにいるんだろう。 午後から昼寝をして、あっという間に日が暮れた。 夜には、長い付き合いのシマリスが寒そうにしていたから、人肌で温めてあげた。 そうして、一日が過ぎた。 それでも、あたしが何となく元気な理由。 単純だよねぇ、我ながら。 でも、根性はねじ曲がってるけどさ。 自覚、してます。
免許の更新。当たり前です。いい大人だもの。 なんて。ただ、華が仕事だから明日を選んだだけ。 だってせっかく一緒にいられる日に、講習なんてきいてらんない。 ちなみにようやくゴールドです。ゆうりょうなのだ。 原付とって、中免とって、車をとりなおしたので、免許携帯自体は長いんだけど、ゴールドまで遠かったなぁ。 にしても、よく捕まってないよね。あたし。 今は仕事車しか乗らないから、もちろん安全運転だけど。 よく捕まらなかったなぁ(笑) そんなわけで、ひとりでいきます。 知ってる電車と知らないバスで、朝早くからおでかけです。 面倒だけど、仕方ない。 明日の昼間、あたしはひとりだ。
長くなってきた髪を切った。 これから伸ばすための準備。 長くなったら、華が髪を編んでくれるって。 月曜になったら免許証の更新へ行こう。 苗字がまだ直されて無くて、引き摺ったままの一つを解消しよう。 優しい顔の写真にしよう。 次の休みが晴れたら、一緒に出かけよう。 お弁当を持って、遠く、遠く。 夏が待ち遠しい空を見に行こう。 一つ、一つ。 指折りに数える日々。 そうすれば、時間はきっと過ぎていってくれる。
無事に過ごしてきました。 帰ってから、十時を待たずに落ちたけど。 いつもよりも早く出かけて、ラブホでお風呂入ったり、ごはん食べたり、DVD見たり。華がバスルームでローションを発見したから、ベタベタにされたり。 いつもよりものんびりと過ごした。 それから、あたしが企んでいたことも、無事に完遂できた。 もちろん、自分にではなく、華にと。 可愛く鳴いてもらいました。 初めて見た、華のその声の甘さに、思わずじんわりと来てしまうあたし。 だって可愛い。本当に可愛い。こんなに可愛い生き物、他にいなくてもいいと思えるくらい。 可愛くて仕方なくて、どうして良いか分かんないほどで、あたしは呆然と華を見つめていたと思う。 華は不満だったみたいだけど(笑) ここに引っ越してきて、二度目の誕生日。 あたしは幸せに浸りました。 これから先、もうちょっとがんばってみよう。
あと数時間で日付が変わる。 そしたら、26歳になる。華としばらく同じ年齢。 「誕生日なんて来て欲しくない!」 と職場で叫んでたら、おばさんたちに怒られてしまった。 いいよ、もう。いっそ一気に5歳ぐらい年取りたいんだよ。 だって26歳とか面白くないもん。 だって、まだまだ独りだもん。 なんてね。 言ってみたって、何にも変わらない。 明日は華とデートできるんだから、少しは喜べ、あたし。 で、華に当日のプランを考えてもらったんだけれど。 華はそういうのがすごくすごく苦手で、受話器の向こうで長く沈黙をしていた。 いいけどさ。 でもそれって、あたしを喜ばせるの半分で、あなたが楽しいのも半分じゃない? イイデスけど。 あー、あとちょっとだ。 さよなら、25歳。 蝶の彫りを入れて将来を決めた、25歳のあたし。ばいばい。
華の癖が、少し変わった。 というよりも抱きしめ方が変わった。 会うたびに、飼い主を見つけた犬みたいに情けない顔をして寄ってきて、ぎゅうっと抱きしめるのがいつもなんだけど。 まぁ、理由は分かってるし。 そうしたいのも分かるけど。 あたしの身にもなってよぉ……。 縋り付くこの、額とか、瞼とかに、たくさんキスをしてあげて。 ここにいることを教えてあげる。 あー、馬鹿な子。この子、ほんと馬鹿だ。 可愛くて仕方ないじゃないの。 アリもしない尻尾が見えてしまう。 可愛い、可愛い、あたしの華。 でも、可愛いだけで生きて行けたら、そんなに楽なことはない。 抱き返しながら、そんなことを考えているあたしは、ちょっと酷いやつだ。かなり現実主義だ。 ねぇ、華。あたしの可愛い子。 いつまでも尻尾を振ってるだけで、繋ぎ止めていられると思う? 今は誤魔化されてあげるけどね。 それぐらいしたってバチは当たらないと思うんだよね。
仕事前に会うのは日課。 華の仕事が変わったから、それに合わせて会える日も少なくなった。 喧嘩の翌日。 正直、どうすればいいのかわかんない。 「明日にはいつものいちごに戻ってる?」 って昨日聞かれたけど。 いつものあたしって、どんなだろう……。 支度に追われていたのはあたしのせいだけれど。 でもね、華。 いつもみたいに両手を広げてさ。 あたしが寄ってこないのを嫌がるみたいに、催促してくれなかったね。 あたしは泣かなかったよ。 「いつも通りじゃないのは、そっちじゃん」 そう、小さく呟いて。 キスの一つもせずに出て行こうとするあなたに、あたしからキスして。 ねぇ、華。 あたし、そんなにぎこちなかったかな? そういう風に見えてたのかな? でも、あたしにも、あなたがぎこちなく見えたんだよ。 難しいね。 なかなか、人間って難しいんだね。 ***** 久し振りにエンピツを書くと、読んでくれている方がいらっしゃって、嬉しく思います。 正直、あたしは見知らぬ土地に飛び込んで生活していて、大学とかも地元だったし、今のところ仕事場以外の知り合いはいません。作ろうにも手段はないし、華が嫌がるのも理由ですけど。 なので誰かに話したくても、なかなか難しいもの。しかも事情を知らない相手に説明すると、思い出すだけでも涙が出そうなほど嫌なことも話さなきゃならないので、あんまりしたくなくて。 そんなことで、ずっとずっと溜め込んでいたものをここで吐き出せて、少しだけ気が楽になります。 読んで頂いてる方には、あくまで他人事でしょうが、こんな風に生きている人間がいることを知ってもらえたなら、嬉しい限りです。 あたしは、此処にこうして生きているのです。
いちごです。 こうやって名乗るのも、すごく久し振り。 本当なら、あの子と一緒に書いているブログがあるんだけど、何となく、こちらに書きに来てしまった。 愛しているかと問われたら、愛していますと答えられる。 それなのに、その不器用さに苛立ってしまう。 どうして、と思う。 それを口にしてしまった。あの子を傷付けるやり方で。 ううん、どう言ってもきっと傷付けたはずだけど。 傷つきやすい、とてもナイーブな性格で。 あたしのことを愛しすぎて盲目で。 臆病者で意地っ張りで。 あの子は、余りにも不器用だと思う。 それが、あたしを苛立たせる。 やり方なら幾らでもあるじゃないの。 あたしを宥める方法なんて、幾らでも教えてあげたじゃないの。 あたしがどんなに怒っても、拗ねてもさ。 ただ抱きしめてくれれば、誤魔化されてやるのに。 「何か言うことはないの?」と尋ねれば、 「何を言っても逆ギレみたいになる」と答える。 臆病者。喧嘩してよ、せめて。心を聞かせてよ。 それでダメなら、あたしたちはきっとダメなんだよ。最初から、もう。 来週、あたしは26歳になる。 古巣を抜け出して、このアパートで二度目の誕生日を迎える。 二人が二人になれるまで、あと四年と四ヶ月。
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