「電動歯ブラシを一度体験したら、もう普通の歯ブラシは使えない」
「歯の歯間などの汚れを、歯茎に負担をかけず磨ける感覚がたまらない」
など、周囲の人から体験談を聞かされ続けてきたせいで
自分もなんだか欲しくなっちゃって、近くの電気屋さんに行った。
店内をうろちょろしながら、電動歯ブラシコーナにたどり着く。
超音波電動歯ブラシ、超高速振動歯ブラシ、超音波歯ブラシ。
なにかの必殺技のような名前の歯ブラシたちがずらり並んでいた。
【正しい使い方は、相手の鼻の穴に向かって突き刺す】
とか、書かれていてもなんら不思議じゃない名前だ。
そんなアホなことを頭の片隅で考えながら
僕は電動歯ブラシとにらめっこしながら、お財布と相談していた。
ただいまの所持金は、二万円弱。
僕がこれ欲しいなぁ〜と思った超音波電動歯ブラシは安くて、一万三千円。
付属品をもろもろ付けるとなると、一万五千円くらいかかる。
うぅ〜〜〜。
ちょっと高いなぁ〜〜〜。
でも、やっぱ一度は味わってみたいしなぁ〜。
うぅ・・・・でも。。。
「買うか」 「買わないか」 シーソーのように繰り返していたところ。
『腕を高速に小刻みに振れば超音波とか発生するじゃない』
と、脳内に潜む悪魔が革命的発言。
「確かに、悪魔の言うことも一理あるな、
腕立て伏せでもして筋肉さえつければ、不可能ではないのでは」
『あぁ、人間やる気になればなんでもできるもんだ、例えお前でもな』
悪魔が僕の肩に降りてきた。
「悪魔のクセに、ちょっとムカツイたが、たまにはいいこというじゃねぇーーか」
久々に悪魔と意気投合した。
『だろ。だから、浮いてお金でパチンコ打ちに行こうぜ』
僕の耳元で悪魔が囁いた。
「前言撤回するわ」 僕はすぐさま悪魔を手で追い払った。
『いやいや、考えても見ろよ、もし、パチンコで当たれば
電動歯ブラシの2本や3本、購入したってオツリがくるぜ』
「確かに、それはそうだけど・・・」
『一か八か、当たって砕けろ、ダメで元々だろ、万が一ってことも』
明らかにダメを前提として、悪魔は言ってやがるが
「もし、当たれば、2本や3本、購入したってオツリがくる」
という甘い言葉に乗せられ、僕は誘惑に負けてしまった。
そう、パチンコ店へ。
久々に行ったので、どれも新台ばかりで目移りしてしまった。
打ってみたい台は沢山あったが、二兎追うものは一兎も得ず
という先人の言葉を無視するわけにはいかないので、一台だけに決めよう。
迷うこと5分。
僕の命運を分ける台を決めた。
それは・・・CRキン肉マン。
懐かしい〜、昔よく落書きしたなぁ〜。
社会の教科書に出てくる、織田信長や聖徳太子とかの額に「肉」とか。
国語の教科書に出てくる、夏目漱石や清少納言とかの額に「肉」とか。
授業中よく寝ている友達の額に、マジックで「肉」とか。
なんて、昔の日々を振り返りながら打っていた。
「おぉ〜、モンゴルマンだ、懐かしい」
「お!ウルフマンもいる」
「あれ、ウルフマンって死ぬんだっけな」
「ケビンマスクだ、いや違うロビンマスクだ」
「ケビンマスクは2世の方だっけな」
「うわぁ〜〜、擬似連4、キンチケット、ゼブラ、火事場のクソ力で外れたわぁ〜」
などと、気づけば1時間半ぐらい回しており
事態は最悪な方向へ進んでしまっていた。
そう、いつのまにか諭吉が2人ともいなくなっていたのだ。
最悪だぁ〜〜〜。
悪魔、悪魔はどこじゃぁ〜〜〜。
『今日の一枚』
戦利品の2万円相当のイカは涙の味がした。