月に舞う桜
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★合計16冊 90. 藤沢令夫『プラトンの哲学』 91. 湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』 92. 櫛木理宇『灰いろの鴉』 93. 古田元夫『東南アジア史10講』 94. 櫛木理宇『業火の地』 95. 田中拓道『福祉国家の基礎理論 グローバル化時代の国家のゆくえ』 96. 冠木結心『カルトの花嫁 宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』 97. マーガレット・アトウッド『食べられる女』 98. マーガレット・アトウッド『オリクスとクレイク』 99. 安部公房『R62号の発明・鉛の卵』 100. ミヒャエル・エルラー『プラトン』 101. マーガレット・アトウッド『洪水の年(上)』 102. マーガレット・アトウッド『洪水の年(下)』 103. 安部公房『終りし道の標べに』真善美社版 104. 櫛木理宇『氷の致死量』 105. 江國香織『なかなか暮れない夏の夕暮れ』
※数字は1月からの通し番号
引き続き櫛木理宇が面白い。 私がこれまで読んだ小説はどれも、親から子どもに対する虐待や親子間の軋轢・葛藤の問題がベースに描かれている。そして、どの小説も、一貫して徹底的に子どもの側に立っている。親もまた過酷な家庭環境で育っているとしても、それはそれとして、子どもへの加害を矮小化しない。「親も大変だったから仕方ない」とか「虐待されたからって、いつまでも親のせいにするな」などという、現実世界でよくある胸糞悪い親擁護言説は持ち出されない。そういう点で、この作家は信頼できる。たぶん、とても優しい人なのだろう。 そして、多産DV、ヤングケアラー、戦争体験の後遺症、女性に対する呪い、性的マイノリティの生きづらさなど、主軸のサスペンスに絡めて描かれる社会問題が多岐に渡る。 性的マイノリティというと、同性愛者やトランスジェンダーが描かれることが多いが、『氷の致死量』では主人公がアセクシャルだ。そういうふうに、より光が当たりにくい人たちに光を当てているところも良い。 櫛木理宇には、いつか障害者の小説を書いてほしい。キラキラポジティブではなく、障害者の生き難さの現実を(私がまだ読んでいないだけで、もしかすると既にそういう小説は書かれているのかもしれないが)。
他には、マーガレット・アトウッドのマッドアダム三部作を読み始めた。 それから、西洋哲学を古代ギリシャから復習しているが、やっとプラトン(の解説書)まで読み終えた。
4月26日の日記に書いた、居宅介護のヘルパーさんが「趣味でやっている短歌会の冊子を、今度持ってくる」と言っていた件の後日談。
数週間前、ヘルパーさんが件の会報を持ってきた。 正直、読みたいとも言っていないのに持って来られて迷惑ではあるけれど、感想を聞かれるといけないので読んだ。 会報の名前に何となく見覚えがあるような気がしたが、よく見てびっくり、某宗教がやっている短歌会だった(厳密な意味では宗教団体ではないが、思想団体という意味で私は宗教と見なしている)。 気持ち悪いやら腹立たしいやら。 あわよくば、私をこの団体に引き込もうとしたのだろうか。 急いでヘルパー事業所の契約書を確認すると、ヘルパーの禁止事項の中に「宗教などの勧誘」が含まれていた。 万が一、ヘルパーが今後何か一言でも勧誘めいたこと言おうものなら、すぐにヘルパー事業所にクレームを入れようと決意した。 そして、金輪際、私からは短歌の話題をいっさい持ち出さないことも決めた。
次の週以降、ヘルパーから短歌の会報については何も聞かれなかった。私が感想を言わないので、何か察したのだろうか。 一度、「桜井さんは最近、短歌を作ってますか?」と聞かれたが、「いやあ、暑くてだらけてて、全然なんですよ」と笑って答えておいた。本当は、その頃ちょうど、調子よく短歌を立て続けに数首作っていたのだが。
障害者は、宗教に狙われやすい。 私は祖母が熱心なカトリックだったため、その反動で宗教全般が大嫌いだ。生理的に受け付けないレベルで。 今回は勧誘されなかったが、ちらとでもそういう素振りを見せられたりすると、無性に腹が立つ。
日常生活全般について他人の介助を受けて生活しなければならないと、様々なリスクがある。 代表的なのが、身体的暴力のリスク、金銭収奪のリスク、勧誘のリスクだ。 今後、母がもっと年を取ったり病気になったりすれば、ヘルパーの利用を増やさざるを得ない。母が死ねば、日常生活を全面的に、他人であるヘルパーに頼ることになる。それも、何人ものヘルパーに。 そうすれば、リスクは格段に上がる。 週に一度しか居宅介護を利用していない今でさえ、ヘルパー介助が煩わしいのに、全面的にヘルパーに頼らなければならない将来を考えると憂鬱で仕方ない。ましてや、暴力や勧誘のリスクも考えるなら、尚更。
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