月に舞う桜

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2020年02月29日(土) マイノリティに対する”善良な”人の”寛容な心”

たぶん彼は”善良な”人なのだろう。

社会的マイノリティは、マジョリティが受け入れる/受け入れないを検討してもよい存在ではない。
社会的マイノリティの権利保障は、決してマジョリティの”寛容な心”に左右されるべきものではないし、マジョリティによる施しでもない。
でも、そういったことに思い至らず、あくまで善意で「寛容な心を持って受け入れていかなければいけない」などと言ってしまう”善良な”人は、結構いるのだろう。

そういう意味で、彼はまさに日本の象徴なのかもしれない。

ところで、社会的マイノリティは、マジョリティを寛容な心で受け入れるか否かなんて悠長なことを考えていたら、生きていけないのである。

なぜ自分がマイノリティに対して「寛容な心」「受け入れる」という言葉を平気で使えてしまうのか、よく考えてほしいものだ。


◆天皇陛下「多様性に対して寛容の心を」。在日外国人やLGBTに関する質問に答えた(2020.02.23 HUFFPOST)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e51ddb2c5b6b82aa654083c


2020年02月21日(金) 車椅子ユーザーが多数派の世界

先週、車椅子ユーザーが多数者で、二足歩行者は障害者として扱われるレストランを疑似体験できるイベントがあったそう。現実社会とは、マジョリティとマイノリティが逆転した世界。
レストランは、今年の秋に、一般を対象に都内で公開予定とのこと。

ネットにいくつか体験レポートがあったので、読んでみた。

店内は、車椅子ユーザー向けに設計されている。低い天井、滑りやすい床、車椅子ユーザーが使いやすいテーブルの高さ。もちろん、椅子なんてないので、二足歩行障害者は低いテーブルで立食しなければならない。

そういったハード面の設計もさることながら、ソフト面(店員の対応)の構築が素晴らしいと感じた。
まず、二足歩行者は入店時に「介助者はいないのか?」「次回から介助者と同行して」と言われる。
そして、食事中、「店の景観が悪くなるから、中腰で食べるように」と理不尽な注意を受ける。
注意した店員役は店長役に裏へ連れて行かれ、「対応が雑。二足歩行の人にもっと丁寧に接して。優しくしないとダメなの。店の評判に関わる」と叱責される。その叱責は、客席にも聞こえてくる。「本当は僕だって来てほしくないけど」「こんなに一度に押しかけられたら正直迷惑だけど」という店長の本音も。
これらのひどい対応はスタッフの演技だけど、現実社会における車椅子ユーザーあるあるが詰め込まれている。

それから、店内のテレビ画面には模擬ニュース番組が流れていて、二足歩行障害者対策会議の様子などが放送されている。そこでは、「歩行手段の完全車椅子化に向けたリハビリ推進」や「建物内に最低一つは椅子を設置することを義務づける」といった案が出ている。

椅子の設置義務が “最低一つ” なのが良い。
そうだそうだ! 電車も飲食店も、椅子なんか取っ払って、隅っこに一脚だけ置いておけばいいさ!

なーんて思う悪魔のような私(笑)。

さらに秀逸だと思ったのは、店内に貼られた「二足歩行の方へのおもてなしの心遣い」。
「出来るだけ椅子を用意しましょう」と「腰を労ってあげましょう」「足が疲れていないか確認しましょう」が並列されている点が最高!

椅子の用意は「必ず」じゃなくて、「出来るだけ」でいいんだぞ?
出来なければ、腰や足を労ることで補えばいい、と。

現実世界に置き換えたらどういうことか、分かりますよね?
本当にうまく作られている。

自走車椅子ユーザー向けに作られているようなので、手にも障害がある電動車椅子ユーザーの私には不便な点がありそうだけど、少なくとも、二足歩行者優勢の現実世界よりは格段に快適そう。
テーブルの高さはもちろん、テーブルの脚が邪魔にならない設計なの、良い!

ただ、参加した二足歩行者へのフォローアップがあったのか、少し気になった。
とても素晴らしい取り組みなので、伝えたかったことが体験者に正しく伝わっていると良いなあ。
自分が受けた扱いは現実社会の反転で、それがどういう意味を持っているのか、根本的な問題が理解されているといい。
単に「車椅子ユーザーは普段、こういうことで不便や不快を感じているのだな」だけではなく、社会構造の問題として捉えられていますように。
模擬TVニュースに出ていた「歩行手段の完全車椅子化に向けたリハビリ推進」や「建物内に最低一つ椅子設置の義務づけ」の問題点とか、スタッフ心得で、椅子を用意するという合理的配慮と、足や腰を労るという思いやりが同列に置かれていることの意味とかを、体験者が素通りしてないといいな。

他のマイノリティ属性を多数者にした同じような取り組みがあると良いよね。そこに、現実社会のマジョリティとして参加してみたい。


◆「車いすが健常者・二足歩行が障害者」の世界が体験できるレストランに行ってきた もう理不尽すぎて泣きたい(2020.2.15 ねとらぼ)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/13/news114.html

◆東大で「バリアフルレストラン」体験イベント 秋の一般公開目指し企画(2020.2.14 文教経済新聞)
https://bunkyo.keizai.biz/headline/671/

◆BuzzFeed Japan Newsのツイート(店内を映した動画あり)
https://twitter.com/BFJNews/status/1228238072006856704?s=20

◆店員役を務めた車椅子ユーザーさんのツイート(店内掲示物の画像あり)
https://twitter.com/NakashimaMinion/status/1228883037925990400?s=20


2020年02月19日(水) 性加害矮小化の有害さ その2

男子中学生が女子生徒の着替えやスカートの中を盗撮して、その画像を売買していた事件、校長や保護者のコメントからして、認識がおかしいんだよね。

校長「今後、子供たちにスマホの使い方やルールを改めて教えていきたい」(2/11 読売オンラインより)

保護者「携帯電話とか根本的なところが解決しないと、またこういうことが起きるだろうなと」(2/11 MBSニュースより)

※上記二つとも、記事は既に削除されてしまった

スマホの使い方なんていうのは、根本的な問題じゃない。
盗撮は性暴力であり、れっきとした性犯罪であること、他者の人権を踏みにじる行為であって絶対に許されないことを教えないでどうするの?
「保護者も学校も、性教育を含めた人権教育をちゃんとして!」と思っていたけど、校長と保護者がそんなことを言っているようじゃなあ。
何が根本的なところなのか分かっていない保護者や学校関係者って、もしかして多いのだろうか。これから加害者を教育し直すべき立場の人たちなのに。
性教育(=人権教育)をしっかり行わないのは、子どもに対する虐待ですらあると思う。
まだまだ「性教育=子どもの作り方を教える」だと思っている人もいるのかもしれないけど、そうじゃないからね。性教育って、自分の心と体を大切にし、守る術を知り、他者の心と体も尊重できるようになるためのものだから。

中学生にして盗撮&売買するような、人を平然とモノ化する価値観を備えてしまった人間を放っておくと、大人になって、例えば日本青年会議所に入って女体盛りやコンパニオンの水着オークションや、ホステスに服を脱げと強要して体を触ったりするようになりかねない。
ほんと、幼少期から性教育を徹底してくれ。


2020年02月18日(火) 性加害矮小化の有害さ

男子が女子に意地悪したときに、周囲が「あなたのことが好きだからやったのだろうから、許してあげなさい」と言って加害者をのさばらせる件、何か大人になってからも既視感だなと思ったら、父親が娘に性加害したときに、母親が娘に向かって「お父さんはあなたのことがかわいくて仕方なくてやったのだから、許してあげて」というやつだな。
本当に有害だから、撲滅しましょう。

最近、創作物における性加害の扱いの軽さも気になっている。
例えば私は『ドラゴンボール』が大好きなんだけど、以下の理由で子どもには薦めがたい。

・亀仙人の性加害を軽いおふざけのように描いている
・武道家・師匠としては素晴らしい彼が、実質的に性犯罪者である
・性加害に対する周囲の反応の軽さ

これは、「性加害は笑って済ますべき軽いこと」との誤った認識を子どもに刷り込むと思う。
それでも、私はドラゴンボールという作品を全否定しない。が、もし、性加害の扱いの軽さという一点でドラゴンボールを全否定する人がいても、反論はできない。


◆弁護士 太田啓子 @katepanda2 さんのツイッターより↓
https://twitter.com/katepanda2/status/1227733815486889985?s=20
「男子が女子に意地悪したときに、「あなたのことが好きだからやったんだろう許してあげて」というのは即刻撲滅すべき有害なカルチャーだと思っている。男子を育てる全大人に撲滅責任がある。相手を好きだろうが嫌いだろうが意地悪したらいけないし好きな相手からは嫌われて逆効果甚だしいと教えないと」


2020年02月17日(月) 差別マウント

女性差別の深刻さを指摘するために、「『障害者手帳を持っている人が割引などの優遇を受けるのはおかしい』とはならないのに、なぜ男の女の話になると云々」と言っている人がいた。

それこそ、あなたが健常者だから知らないだけだ。

“善良な” 男性が、女性差別の数々を知らない、見えてない、見ないふりをしているのと同じ。「障害者手帳を持っている人が割引などの優遇を受けるのはおかしい」と言う人の存在を自分が知らないからって、ないことにしてるだけ。

属性Aに対する差別のひどさと根深さを指摘するために、被差別属性Bへの差別が比較的軽いかのような話を持ち出すのはやめた方がいい。

女性差別は最大で最後まで残る差別だと言う人もいるけど、男女は約半々で、被差別者が多いから、他の差別に比べて大きく見えるという面もあると思う。
医大が女子受験生の点数を一律に減点するのも、高校を何度受けても定員内不合格になって進学できなかった重度障害者がいるのも、どちらも同様にひどい差別だけれど、前者に比べて後者は大きなニュースとして扱われないでしょう?

誰に対する差別も、同等にひどいし、同等に根深い。そこに大小の差はない。一つの差別を可視化するために、別の差別をないことにするな。


2020年02月10日(月) 障害児の通学の壁

医療的ケアが必要な障害児の教育を受ける権利が奪われている問題。
自分は元気(持病以外では)なのに、学校に行きたくても行けないのはものすごく切ないし、そのときだけでなく将来に渡って不利益を被ることになる。


◆「通学したい!」障害児に立ちはだかる「付き添い」の壁 国が支援しても現場が動かない理由とは?(2020.02.06 AERA dot.)
https://dot.asahi.com/aera/2020020500020.html
「公立特別支援学校に通学する医療的ケア児のうち、校内や登下校時(いずれかも含む)に保護者が付き添いを行っている割合が65.8%にのぼった。」

「校内に医療的ケアを行える人がいても、保護者の付き添いを求められるケースが多い」

「学校から校内でも付き添うよう求められた保護者は、教室の隅や別室で何時間も待機させられるケースが少なくない。多くは就労をあきらめ、経済的不安や身体的負担を抱える。」

「親が体調を崩すと登校できなかったり、親の事情で通学できる日数が限られたりする問題がある。」


2020年02月08日(土) 働いた分、金払え

前々職の特例子会社で、親会社から出向してきた上司は「給料分、働け」的なことを言っていたけど、私は「うん、給料分しか働かねーよ?」と思っていた。
でも、自分で言うのもアレだけど、給料以上に働いたと思うわ。
ちなみに、主任になってようやく、親会社の大卒初任給程度だった。健常者と同じ仕事してたのに。

まあ、上司は親会社基準の給料をもらってるから、私たちの給料がいくらかなんて知らなかったんだろうな、とは思うけど。


◆自己責任論撲滅さん @u2qKSkUcSIeBuid のツイートより↓
https://twitter.com/u2qKSkUcSIeBuid/status/1223164014974234624?s=20
「低賃金でも真面目に働くって行為が結果として給料を下げてるんですよ。
最低賃金でも勝手にやる気出してくれるなら経営者は給料上げる必要が無いので、余った金をお偉いさんで山分けして終わり。
だから低賃金なら真面目に働かなくて良いです、二日酔いで寝坊するくらいが丁度いい。
嫌なら金払え。」


2020年02月07日(金) 車いすバスケに見る障害者の隙間問題

前に勤めてた特例子会社に、障害がかなり軽度の人がいた。重度の私は、彼らに対して「特例子会社じゃなくてもいいのでは?」と思ってしまった時期があった。重度障害者の席を奪われている気がして……。もちろん、そんなこと口には出さなかったけれど。
でも、彼ら(障害が軽度の人)だって、健常者の枠では能力を十全に発揮できない(できなかった)のかもしれず、障害者の枠から閉め出されるいわれはないのだよね。

車いすバスケが東京パラから除外されるかもしれないというニュース。
国際車いすバスケットボール連盟の障害クラス分けが、国際パラリンピック委員会(ICP)の基準に合っておらず、ICPの基準では本来パラリンピックの出場資格がない軽度障害の人たちが出場できてしまう状況を問題視しているよう。

これを「障害者の隙間問題」と呼んだ人がいた。
パラリンピックの出場資格が得られないほど軽度の障害だからと言って、健常者のバスケに出られるわけではない。
スポーツに限らず、様々な分野での ”障害者の隙間問題” を考えさせられる。


◆限りなく健常者に近い選手が出場? 車いすバスケがパラ五輪から除外か。(2020.02.04 Number Web)
https://number.bunshun.jp/articles/-/842395


2020年02月06日(木) 障害児者に対する性犯罪の実体ヒアリング

法務省の、障害児者に対する性犯罪の実体ヒアリングの議事録がとても良い。一読の価値あり。

・障害者は、健常者に比べて性犯罪被害に遭う割合が高いこと
・障害児者が性犯罪被害に遭った際の、支援や裁判などの課題や問題点
・障害に乗じた性犯罪の法制化を議論する上で検討すべきこと

等が網羅されている。

素人考えだけど、いまある監護者強制性交罪・監護者強制わいせつ罪に、被害者が障害者である場合の特別規定を盛り込むのが、まずは現実的なのかなと思ったりする。
被害者が障害者である場合は、被害者の年齢要件を撤廃したり、監護者の範囲を拡大したりとか。

あと、法制化とは別の問題だけど、「身体介助が必須だと介助者に身体を預けなければ生きられないから、暴力リスクが高まる」という話が、個人的には最も身につまされる。
私も経験あるし、本当に重大な問題だよ。
早く、介助の完全ロボット化を!!


◆第9回 性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ(令和元年9月24日)
http://www.moj.go.jp/hisho/saihanboushi/hisho04_00023.html


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