しろにじ創作倉庫



峠を越える日

2006年05月27日(土)

この峠の向こうには

ただ苦しみの世界が広がるばかり

なのに人は

どうして峠を越えようとするのだろう

温もりに包まれた平穏な日々に

愛すべき人々に

別れを告げてまで


虹の生まれるところ

2006年05月20日(土)

いつか誰かに話そうと思っていた

僕が初めて

虹の生まれる瞬間を見たときのこと


ふわふわと頼りない光の粒子が

近付いては離れ また 寄り添い

やがて一つになって

鼠色の空のキャンパスに

大きな虹の橋を描いていく


そのとき その空間に居合わせたことが

僕にとっては

なんと幸福なことだったのか


これは 誰にも話したことがないんだ

だけど きみになら

話していい気がする

ううん

絶対 きみに話したいと思ったんだ


漂流

2006年05月07日(日)


波間に揺蕩うわたしの腕を
暗い緑色の藻が掴む
わたしは冷えた躯を波に預け
ゆらゆらと 流れ藻とともに漂い続ける
島影はいくつも誘うのに
波は意地悪く わたしをそこへ運んではくれない

ああ きっと 人生は
波間でもがいている漂流物
わたしに運命は決められない

涙が 海に溶けて
それとわからなくなるように
わたしの躯も 緑の藻に同化して
いつか跡形もなく消えていく

ただ 人だった記憶の断片を
波の間に残したまま

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