2005年08月20日(土)
道化師が手を振る 行き先はこちらだと招いている 乾いた死の笑い はね返る不気味なこだま
海がないのに どこからともなく波の音が聞こえてくる
あの音は波の上をすべる船 静かに静かに進む船 愚者たちを乗せて楽園へと向かう船
おいで 仲間が待っていると道化師は誘う 聖なる船に乗って 浄土を目指し旅立つために
でたらめな歌とでたらめな音楽 不思議な歌は合唱となって波の音と重なっていく 空には色とりどりの花火 この呪われた出航を祝福しているかのように
道化師が手を振る 後戻りはできないと笑っている 白いもやの立ちこめる先は未来のない未来 めざす涅槃は そこにあるのだと
響き渡る 出航の銅鑼 むせび泣く 汽笛を誰が聞こう 別れを惜しむ者はいない 幸せなる者たち 選ばれし者たちの船出
異国の楽器を道化師はかき鳴らす 踊る人形 笑う影 乱痴気騒ぎの甲板の上 ふるまいの陽気な酒を浴びて 海鳥たちよ 歌え 聖なる歌 歓喜の歌 愚か者の歌を
さんざめく 声 声 声 あお あか みどり き そして黒 五色のテープを渡す彼の岸 此の船上
愚者たちを乗せて 船はいま錨を上げる 音も立てずに岸壁を離れ行く
振り返るなと道化師が言う 本物の愚者たちの住む陸は あの島国
さあ行こう 希望を掲げて 涯なき蒼き海原をはるか漂い続ける 愚者たちの船
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