2006年05月28日(日) |
呪縛の蝋・前編仮公開の日 |
『呪縛の蝋・前編』目次 1 2 3 4 5
はい、というわけで似非怪奇ミステリーもどき『呪縛の蝋』の前編でした。最近、ぜんぜん日記書かないと思ったらこんなの書いてたんですねー。 これは、4月20日の日記で触れている文芸誌用の短編で、お題に沿って書かれたものです。 ちなみに怪奇ミステリーとなったのは、その前後にプレイしたフリーゲーム『ずろうの棲家・前編』(配布元『キタユメ。』←漫画も面白いですよ?)に影響を受けたものと思われます。このゲーム、音楽といい、画像といい、動画といい、物語といい、かなり完成度の高い作品です。ただ、これだけホラーっぽい作品ながら前編であるため、殺人もホラー表現もほとんどありませんが。後編が待ち遠しいです。
しかし、だからって真似してこちらも前編で止めることもないだろうに。 いや、〆切まで日がないので、書けなかったときの保険ですよ、保険。
先に言っておきますがコレは怪奇、と名乗ってますが「似非」です。怖くないとか言われても当社は責任を取りかねますので、ご了承ください。 また、ミステリーとも名乗っておりますが「もどき」です。だから先が読めたり、ジッチャンの名に掛けて謎を解いたりしても、「○○使う気でしょ〜?」なんて言わず、そのまま分からない振りして子供の夢を壊さないであげてネ☆
2006年05月25日(木) |
呪縛の蝋・前編(5)の日 |
呪縛の蝋
5
赤羽教授は、帰ってきたときには離れの書斎で寝泊りするのだが、食事は雛子たち三原家と取ることになっているらしい。とりあえず今夜は教授と一緒に離れに泊まらせてもらうことになったのだが、その流れで千鶴も夕食に呼ばれることになった。
「すみませーん、おかわりお願いできますー?」
千鶴は、空になった茶碗を雛子の母に差し出した。
「あらあら、やっぱり若い男の人は良く食べるのねぇ」 「いやぁ、普段はそれほど食べないんですけど、お母さんのお料理美味しいんでー」
ついつい、と笑って言う千鶴に雛子母も悪い気はしないらしく上機嫌で茶碗にご飯をよそう。
「アンタ、他人の家でご馳走になってるんだから、少しは遠慮しようと思わないの!?」
焼き魚の身をいそいそとほぐしていた雛子が千鶴をにらみつけると、千鶴は笑顔で味噌汁をすすって答える。
「食べられるときは食べるよー。遠慮しないのが礼儀でしょー? あ、どーも、ありがとうございます」
白米が盛られた笑顔で茶碗を受け取る千鶴に、今度は赤羽教授が話しかける。
「それで、明日はどうするんだね?」
「朝一番で帰ろうかと思います。まだ色々知りたいことは残っていますけど、教授の行ったとおり、部外者の僕が首を突っ込んでいいところじゃないしー」
好奇心は確かに残しているだろうがさして執着を見せないという器用な反応を返した千鶴に、熱い茶の入った湯飲みを片手に雛子の父がふむ、と頷いて提案する。
「なら、今夜の白灯祭を見ていったら? 割と珍しい形の祭りだ。きっと青山君の好奇心も満たされるぞ」 「え? いいの? こんな余所者うろつかせて。確か、一日目は手伝いがあるんでしょ?」と、意外そうな声を上げたのは雛子だ。
「でも表が賑やかなのに離れでジッとしていろというのも酷だろう。確かに、一人で歩かせば問題はあるが、簡単な話だ。お前も一緒に行けばいい。年頃も近いし、意外と気が合うかも知れんぞ」 「ええっ!? あたしが!?」
白灯祭は盆に催されるということからも分かるように、この時期に帰ってくる死者の霊を歓迎する、というのが主な目的の祭である。各自神社で霊を宿らせる媒介となる灯籠を受け取り、故人と過ごした昔を懐かしむように、村中を歩いてまわる『灯籠巡り』が主な行事だ。 村の各所には祝い餅や振る舞い酒、菓子類などが配られており、各自それを受け取って帰るスタンプラリーのような形式で行事は進む。
「うん、いいねー。こういう純和風な雰囲気は大好きだよー」
配られていた米菓子を食べつつ満足そうに頷く長身細身の大学生を、雛子はじろりと軽くにらむ。
「アンタねぇ、あれだけご飯食べておいてまだ食べるの!?」 「育ち盛りだからー、僕」と、身長一七〇、御歳おそらく今年で二十二の男が気楽そうに答え、雛子は盛大にため息をついた。
いちいち間の抜けた口調にはまったく我慢ならない。何故自分がこんな男に付き合わなければならないのだろう。今年こそオジサマ(赤羽教授)と灯籠めぐりしなかったのに。―――今頃、美咲は西村勇と仲睦まじく歩いているのだ。先祖様片手にうらやましい、もとい、浅ましい。 だが灯籠片手に夜の村を歩くというのは、この長閑(のどか)さくらいしか取り柄のない村にしては気の利いたロマンチックな行事であることは確かだ。雛子にも恋人がいれば一緒に歩きたい。もっとも同年代の色気づいた男子達とはあまり付き合いたいとは思わないが。彼らはどうも底が浅すぎ、青すぎる。男はもっと渋く、重く、そして深くあるべきなのだ。
しかし今、隣にいるのは恋人にしたいランキング現在一位のオジサマではなく、今日あったばかりの不法侵入ヘラヘラ男・青山千鶴である。何故、出会う知り合いすべてに「彼氏だ」「男だ」と騒がれなければならず、そのたびにコイツは赤羽教授の教え子云々の説明を繰り返さなければならないのか。 ちなみに本命のほうは、父母と一緒に祭の運営の手伝いに回るとかで、今日の灯籠巡りには参加していなかった。
「教授たちはどこで働いているのかなー」 「さあね」私が聞きたいわよ、という勢いではねつけるように雛子は答える。「ぜんぜん見かけないし配るお餅とか運ぶ裏方でもやってるんじゃないかしら」
もう何度も灯籠巡りを行っているが、両親および教授は必ずといっていいほど一日目は姿を消す。美咲が近年親友の自分より幼馴染上がりの彼氏をとって一緒に回る相手がいなくなってからは、その居場所を突き止めようと探したりもしたのだが、やはり見つからなかった。
灯籠巡りの一番の名所はやはり蝋人形館である。中には入れないが、暗い中、かがり火の揺らめく光に照らし出された古い洋館というだけでもいろいろな意味で凄味のある景観だ。たとえ扉が開いていたとしても、とても足を踏み入れる気にはなれない。
「あはは、何か冒険心をかきたてられるね〜、なんとか中に入れないかなぁ?」
同行中のヘラヘラ男はと言えば、子供のように灯籠で照らして中をのぞいたり、窓をガタガタ鳴らしたりしているのだが。ただの蝋人形館だし、特に心霊スポットだったり神聖な場所ではないのだがなんとなくバチ当たりだ。
「ガキっぽいことしてるんじゃないわよ。ホラ、さっさと行くわよ」
声を掛けるが、千鶴は全く聞いた様子も見せず、館の側面に回ろうとしている。
「ちょ、ちょっとどこに行くつもりよ?」 「いやぁ、あの明かり取りの窓はどこかな、と思ってさー」
どうやら夕方、赤羽教授に案内された地下室の窓のことを言っているらしい。あの地下室は上部二十から三十センチほどは地上に出ており、たった一つだけ明かりを取るための窓があった。位置関係からして裏だろうとあたりをつけたのか、千鶴は指して迷うことなく屋敷の裏へと入っていく。 どういうつもりであんなモノを見たがっているのだろう。 勝手な行動をするなら置いていこう、というかむしろこの男から離れるチャンスだ、と思ったのは確かだが、ここで面倒を起こされて後で自分にしっぺ返しがくるのも歓迎できない。 というより正直言って、若干の好奇心もあって、雛子は千鶴の後を追って、蝋人形館の裏手に回る。
「ちょっと待ちなさいよっ」
小走りに追いかけると、千鶴は奥の角を曲がったところでぴたりと足を止めた。それが不意の行動であったため、雛子は止まりきれずに彼の背中にぶつかってしまった。
「うぷっ……、アンタね、そんなに急に止まることないでしょう!?」
待てと言っておいてなにやら理不尽な文句であると自分でも思ったが、千鶴はそんなことは気にした風も見せず、自分の唇に人差し指をあてて、喋らないようにジェスチャーをする。そして、その指である一点を指差した。 その先をたどって視線を移してみると、確かに一点、おかしなところがある。
「……明かりが点いてる?」
千鶴が指差したのは、彼が探していた地下室の窓だった。ただ、予想外だったのが、その窓の中から微かに光が漏れていること。忌まわしい事件の跡に残った部屋なので、こんな祭りの日でなくともほとんど人は立ち入らないはずなのに。 しかも、ただの明かりではなかった。電灯にしては薄暗く、しかも揺らめいていたのである。
すっ、と千鶴が足を踏み出した。ぜんぜん足音がしないと思ったら、彼は靴を脱いでいた。近づいて窓をのぞきこんでみるつもりなのだろう。 雛子はホラー映画のように覗き込んだ瞬間、何かに襲われるか、得体の知れない怪人と目が合うような気がして、あまり覗きたいとは思わなかったが、それでも自分の身内に関わる問題である、という事実が見なければならない、と己に告げている。 見たくはないが、見なければ気がすまない。雛子は意を決して、千鶴に習い、靴を脱ぎ、持っていた灯籠も地面に置くと、窓に歩み寄った。
「光に当たらないように気を付けてねー。あっちから見えちゃうかもしれないからー」
追いついてきた雛子に、千鶴が小さな声で注意する。なんでこの緊張すべきときまで間の抜けた喋り方をするのか。しかもヘラヘラ男の癖に注意などと年上ぶって。(というか、先ほど靴を脱いだ事といい、そんなノウハウをどこで身に付けてきたのか)何か言い返してやりたい気分になったが、素直な心で見れば彼の言っていることはもっともだったので、何とか衝動を抑えて光を避けるように立って、中を覗き見る。 そして、見なければ良かった、と雛子は一瞬で後悔した。
サバト―――雛子の素人目にはまず、その言葉が脳裏に浮かんだ。 まず目に付くのが、部屋の中央の床に描かれた円形の文様である。魔術儀式などでは良く使われる魔方陣という奴だろう。太く六芒星が描かれたそばに細かい文様が付け足されている。 その六芒星の各頂点には、それぞれ件の六体の蝋人形が円の外に正面を向けた形で配置され、その目の前には灯籠が淡い光を放っていた。窓から漏れていた明かりはどうやらこの灯籠だったようだ。 そして、魔方陣の真ん中に、その蝋人形を作った本人である伊戸部礼二の蝋人形が入っている(と、言われている)、お札がたくさん貼られた大きな箱が据えられていた。
また魔方陣を囲むように人影も見える。一人は地下室の奥側に立ち、なにやら本を読み上げているようだ。慣れた動作なのか中々堂に入っている。そして残りの十五人近い人々はそれぞれ目の前にある蝋人形に向かって跪(ひさまず)き、一心不乱に祈りを捧げていた。 雛子が認めたくない事実は、このサバト自体ではない。人影の招待のほうだ。灯籠の頼りない光に照らされて本を読み上げている男は間違いなく伊戸部宗太郎。そして、偶然窓に正面を向けて唯一顔が判別できた“高野日奈”の蝋人形、その正面で祈りに結んだ手を震わせている人物は―――
もう何度も灯籠巡りを行っているが、両親および教授は必ずといっていいほど一日目は姿を消す。美咲が近年親友の自分より幼馴染上がりの彼氏をとって一緒に回る相手がいなくなってからは、その居場所を突き止めようと探したりもしたのだが、やはり見つからなかった。
―――ここに、来ていたからだ。
心臓が早鐘を打ち、気の遠くなる思いがした雛子は、窓のそばの壁に背を持たれかけて座り込んだ。 どうすればいいのだろう。ここから乱入でもして儀式の邪魔をするか。それともこの場は見逃して、帰ってきたところを待ち伏せて問いただそうか。 そこで、もう一人そばにいることを思い出した。ふと千鶴がいたところに視線を移すと、彼もまた窓から目を離し、立ち上がっていた。自分が見上げていたのに気づいたのか、彼も雛子に視線を移し、自然と二人の目が合った。 「いやはや、ちょっと覗くだけのつもりがなかなかスゴイものと見ちゃったねー」 口調と表情は変わっていない。いつもと同じ間の抜けた語尾に、へらりと笑った顔。だが、微笑みに細められた目が違っていた。薄暗くて瞳など見えるはずもない。だが、それでもその目には好奇心だけの今までとは違う、明確な意思の光が宿っていた。
その晩、日付が変わってしばらくして離れに教授が帰ってきた時、電灯も消し、千鶴のために敷かれた来客用の布団にすでに横になってはいたが、意識は覚醒したままだった。
「教授?」
まさか、千鶴が起きているとは思っていなかったのか、相当の動揺を見せて彼は千鶴に向き直った。
「青山君、まだ眠っていなかったのかね? 明日は早いんだろう?」 「教授こそ、こんな遅くまでどこへ行ってたんですかー?」 「ああ、祭の手伝いでね。明日の準備もあって、こんな時間まで掛かってしまったよ」 「蝋人形館の地下室でー?」
あらかじめ用意して会ったのだろう嘘に、千鶴が真実を知っていることを匂わせると、案の定、教授は激しく動揺したようで、暗い中で表情は読めないものの、それでも大きく身じろぎ、しばらく沈黙した。
「……見てしまったのか……あれを……」 「はいー」
返事をすると、千鶴はむくりと起き上がり、教授に向かい合って正座をすると、突然例の間の抜けた口調を忘れたように宣言した。
「というわけで、気が変わりました。帰るつもりだったんですが、僕は明日からも調査を継続しようと思います」 「……好きにしたまえ。私は君の調査に加わる気はないが、できる範囲で協力しよう」
そう言って赤羽教授は自分の寝床に入ってしまった。彼の言動を見ていると、どうも千鶴がこの件に関して首を突っ込むことに、あまり賛成ではないらしい。しかし、それでもハッキリと反対をしないのは、その一方で何かを知ってほしい、という気持ちがあるからかもしれない。 どちらであろうと、千鶴のこれからすることに変わりはない。
三十年前、伊戸部礼二が何をしたのか? 何がしたかったのか? 蝋人形魔術の真相は? 蝋人形の代わりに消えた伊戸部礼二と六人の娘たちの行方は?
やるべきこと、解くべき謎は山積している。
2006年05月24日(水) |
呪縛の蝋・前編(4)の日 |
呪縛の蝋
4
高野日奈、当時は二十二歳、素朴な可憐さはもとより、よく気がつき、村の誰もが彼女の幸せを願ってやまない器量よしだった。家が近かった赤羽とは幼いころからの付き合いで、その関係はごく自然に恋人同士となっていった。 そのころの赤羽はすでに大学院生で、大学近くの下宿に一人暮らしをしていたが、長期休暇となれば家に戻っていた。
「俊ちゃんったら、帰ってくるたびに栄養失調になって帰ってくるんだから。お勉強も大切だけど、体を壊したらそれもできなくなるのよ」
講座に入って自分のしたい勉強ができるようになってからというもの、研究にのめりこむあまり、食事をおろそかになりがちだった赤羽が帰ってくるたび、そう言って腕によりをかけたご馳走を作ってくれたものだ。 高校を卒業した後、地元で働き始めた日奈であるが、このときすでに赤羽とは博士号を取って講師として働き始めた折には結婚しようと約束をしていたのである。しかし、それが果たされることは無かった。
三十年前の夏、修士論文が佳境を向かえ、夏休みに入ってもなかなか地元に帰らなかった赤羽が実家に戻った盆の白灯祭も間近に迫った8月の半ばだった。 赤羽を迎えた日奈の隣に一人の男が立っていた。この田舎には珍しく白い肌をもち、顔立ちが整った、さぞ女達が騒ぎそうな端麗な容姿。
「俊ちゃん、覚えてない? ほら、伊戸部さんとこの息子さん。中学までこの村にいた―――」
日奈の紹介で、ようやく赤羽はその男のことを思い出した。伊戸部礼二、赤羽と同じ年でこの村の蝋人形館の蝋人形職人をやっている伊戸部宗太郎の息子だ。 親の血筋か、村の中でも抜きん出た器用さと美的感覚を備えており、絵画のコンクールか何かで入賞し、父親以上の蝋人形職人となるべく中学卒業と同時にイタリアに修行に出ていた。 今思えばその年の違和感の始まりはそこからだったはずだ。ところが旧友に会え、イタリアの様子などを聞いて話が弾んでいるうちに、それに気づけなかった。
その違和感がはじめて赤羽の心を掠めたのは、帰ってきたその日の夜だった。いつもは、勉強にかまけてきちんと食事をとらない赤羽を叱りつつ、腕を振るってくれる日奈だが、この年に限って叱ることも食事を作ることもしなかったのである。 単に仕事や白灯祭の準備で忙しいのだろう、とこの時の赤羽は結論付けた。今年は帰ってくる時期が時期であっただけに、仕方の無いことだと納得してしまったのだ。
違和感が疑念につながったのは、その年の白灯祭だった。赤羽と日奈は例年通り二人で祭を回っていたが、どうも日奈の様子がおかしい。どこか口数が少ないうえに、時々他の考え事に気をとられているようだ。 どうかしたのか、と聞いても日奈はなんでもない、とその都度苦々しさを帯びた笑みを返し、余計に赤羽の心配を募らせた。 そのときから、赤羽は何かと日奈に対して気を配るように心がけることにしたのだが、肝心の日奈は盆が終わると朝に仕事に出たまま、なかなか帰ってこない。日奈の両親に聞いてみても、このところの帰りの遅さは不可解に感じているだけで、理由などは聞けなかった。
ある日、赤羽は仕事の定刻の少し前から、日奈の仕事場の前を見張っていた。聞けば日奈の仕事はあまり残業がないタイプのものらしい。そこで、仕事の後彼女がどこに向かうのか後をつけてみようと思ったのだ。
定刻をすこし過ぎると帰り支度を済ませたらしい日奈が仕事場から出てきた。赤羽は見つからないようにそっと彼女を尾行したが、彼女が歩くのは村に帰る道である。今日は普通に家に帰るつもりなのかと、なおも付いていくと、不意に日奈は帰路から外れた。そして彼女がたどり着いたのは、村の蝋人形館だ。 玄関まで着くと、伊戸部礼二が日奈を迎え、二人して中に入る。どくり、と痛みを感じるほど心臓が大きく鼓動したが、おそらく蝋人形か絵かのモデルになっているのだろう。ここのところ帰りが遅かったのもいつもここによっていたからに違いない。そうして無理矢理自分を納得させたが、心の痛みは消えそうにない。 赤羽はこの感情の名前を知っていた。これが「嫉妬」というものか。あまりにも当たり前に恋人同士になっていたために、今まで危機感など抱いたことが無かったのだが。 ならば、と日奈が出てくるまで待とうとしたのであるが、運命が彼をあざ笑うがごとく、日奈はその晩に限ってその蝋人形館から出てくることはなかった。
激しい落胆が彼を襲っていた。いくらモデルだろうと朝まで付き合うことはないだろう。つまり二人は“そういう関係”である可能性は極めて高い。だが、まだ信じたい。日奈を失うことなど受け入れたくない。彼の人生では女性は彼女だけ、愛する相手も彼女だけ。一生涯だ。失いたくない。失えない。 日奈を問い詰めようか、それとも伊戸部のほうを責めようか。ともかく、ここで静観しているようでは話にならない。 とりあえず、後をつけていたことは伏せて、日奈に夕べどこにいたのかを尋ねることにした。しかし、彼女は目をそらしたまま答えようとしない。そこで、伊戸部の名前を出した。尾行がばれてもいい。はっきりさせようと思った。 伊戸部に気持ちが傾いているのか、と聞くと、日奈は激しく首を振った。
「違う! 私が好きなのは俊ちゃんだけよ! それは本当よ……信じて……」
その激しい否定に安堵を覚えた。嘘ではない。少なくともそう信じたい。では何故、とさらに尋ねようとしたとき、異変は起きた。 日奈の顔は青ざめ、呼吸がし辛いのか胸を押さえて、うずくまる。大丈夫か、と声をかけると、日奈は部屋の隅に置いてある自分の鞄を指差して答えた。
「薬……、薬をとって……」
日奈が病を患っていることに衝撃を受けつつも、鞄をまさぐり、薬らしきものを手にしたそのとき、赤羽を更なる衝撃が襲った。 その薬というのは、注射器とセットになっているものだった。注射器つきの薬などまともな病院や薬屋では処方しない。そして、今の日奈の症状―――まず疑いなく“禁断症状”だ。
結果的に、赤羽はまず落ち着いて話をするためにその薬(おそらく麻薬)を注射してやった。 そして、まず日奈に話したことは、彼女が「薬」と呼んでいるものの正体である。そのときの彼女の表情を見ると、日奈がそれが麻薬であると認識はしていなかったようだ。三十年前のこの片田舎では、麻薬のことなど知らないものがほとんどだったのである。 彼女にこれを与えたのはやはり伊戸部であったらしい。精神的にショックを受けていた彼女にこれ以上問いただすのは酷だと考えた赤羽はとにかく、しばらく耐えれば禁断症状からは抜け出せることと、二度と麻薬を摂取するなと言い置いて、彼女の両親に事情を話しに離れた。
ここで、彼女から離れず見守っていれば、彼女は守れたのかもしれない。だが、彼女に対する気遣いよりも伊戸部に対する怒りのほうが大きかった赤羽は、彼女を見守る、という一番大事なことを見逃し、両親に話をしている間に彼女が部屋を抜け出したことにも気づけなかったのである。
日奈が部屋からいなくなってしまったことに気づいたのは、その日の夜、日奈の持っていた薬を持って、伊戸部が麻薬を扱っている事を警察に告発しに行った後だった。その際、警察官が気になることを言っていたのである。
「伊戸部礼二か……君、礼を言わせてもらうよ。これで彼に家宅捜査を掛ける口実ができた」
先ほど、日奈の両親に相談した際、去年の秋ごろから次々に村の娘が五人、行方不明になっているという事実を聞いた。村は狭く、消えたどの娘も日奈とは親しかったため、かなり気落ちをしている様子だったと話していた。 その失踪事件が始まった時期と、伊戸部礼二がイタリアから帰ってきた時期と重なるために、警察は彼を疑っていたらしいが、死体も見つからず、また、彼を疑うにも証拠・証言があまりにも少なかったため、家宅捜査も出来なかったのだという。
姿を消した日奈が伊戸部の元に向かったのは明らかであったため、赤羽は息が切れるのにも気づかない勢いで蝋人形館へと駆けていく。今までの五人の村娘の失踪事件。伊戸部が犯人であった場合、おそらくその五人はもう生きてはいまい、と警察は考察していた。その事実が、焦燥感が彼の体を駆り立てていた。 伊戸部が展示スペースの奥にある階段を下った先にある地下室を作業室として使っていることは知っていた。扉を開け、転がるようにその階段を駆け下りて、赤羽はその場で固まった。 薄暗い電灯の下で、ワイングラスを傾ける伊戸部、その向かいに座っていたのは、赤羽に今まで向けていたものとはまるで性質の違う、よそ向けの微笑を顔に貼り付けた“高野日奈”だった。
「喜ぶがいい。君の愛する彼女が永遠の美を手に入れたことを」
赤羽が突然やってきたことにまるで動じた様子も見せずに伊戸部礼二は言った。 「元々、彼女が余計なことに首を突っ込んでいたのがいけなかった。例の失踪事件を追っていたらしいが、中々手がかりが見つからなくてね、気落ちしていたので、少々薬を分けてやったらいたく気に入ったらしくてしょっちゅう相談をしにきてたよ」
何のつもりか、ぺらぺらと上機嫌でしゃべり続ける伊戸部の言葉はほとんど聴いていなかった。
何だ、これは。
薄い微笑を浮かべたまま微動だにしない日奈の向こう側で、同じように椅子に座っている娘が五人。
何だ、これは。
震える足を何とか前に出し、どうにか日奈に歩み寄った。だが、正面で視線を合わせても、まったく反応がない。日奈、と名を呼び恐る恐る、彼女の顔に触れた。
弾力と熱を失った肌―――明らかに、人のものではない。
その瞬間、赤羽は悟った。彼の唯一無二の恋人、高野日奈を失ってしまったことを。
「彼女は、君のことばかり話していたよ。さっきここに来たときも、こんな薬に身を汚してしまって、君に申し訳ない、そう言っていた。相当悔しかったんだろうね、君を落胆させてしまったことが。何を思い余ってか、僕に襲い掛かってきたから、蝋人形にしてやったんだ」
全身から力が抜ける心地がした。膝が崩れ、その場に座り込んでしまう。事実を拒絶し、嘘だと自分に言い聞かせることもできない。「心にぽっかり穴が開く」ということを赤羽は身をもって知った。
「何を嘆いている? 君は彼女を失ったわけじゃない。ここにいるじゃないか」
伊戸部は隣に座る日奈を一瞥して言った。
「むしろ喜んだらどうだ? どれほど美しくても年をとればやがて誰もが醜く変わり果ててしまう。だが、こうして蝋人形にすることで永遠の美しさを手に入れることが出来るのだから」
だが、もう日奈は自分に向かって話しかけることはない。体を気遣い、料理を作ってくれることもない。その空っぽな微笑のまま、豊かに感情表現をすることもない。
「同じ体になれば、永遠に一緒にいられる。彼女が動かないことで嘆くのならば―――」
底冷えのする眼を細め、狂気じみた笑みとともに伊戸部が続けた言葉は、耳ではなく心に直接届くような妖しい響きを持っており、今でも録音でもしたかのように脳裏に焼きついている。
―――お前も蝋人形にしてやろうか?
「気がついたら、蝋人形館の外に駆け出していたよ。要するに逃げたんだな。もう動かない彼女からも、得体の知れない伊戸部からも」
彼が、高野日奈を失った翌日、麻薬取締法違反の容疑で家宅捜索令状を持った警官たちが、蝋人形館に踏み込んだが、すでに伊戸部礼二の姿はそこに無かった。その代わりに、鏡で写したかのような伊戸部の蝋人形が残されていたという。 同時に、高野日奈をはじめ、今まで行方不明であった五人の村娘の蝋人形が伊戸部の作業室で発見された。しかしながら、実際の身柄が見つからず、この事件は失踪した娘たちが蝋人形になって帰ってきたという奇怪な事件として、当時はずいぶん話題になったらしい。 その後、“人体を蝋人形にする魔術”を研究していたという伊戸部礼二の手記が見つかり、この村ではこの蝋人形が実際に失踪した娘たちなんだと信じられている。
「だが、魔術や伊戸部などはどうでもいい。あの事件で悔やまれるのは唯一つ―――大切な人を守りきれずに失ってしまったことだ」
赤羽教授は三十年たった今でも変わらず微笑み続ける高野日奈の蝋人形の髪を弄びながら、語り終えた。
「……それで、その伊戸部サンの蝋人形はどこにあるんですー?」
しばらくの沈黙の後、千鶴が尋ねた。話には出てきたが、ここにあるのは六人の村娘の蝋人形だけだ。見渡す限り、それらしきものは見当たらない。
「ああ、あの中だ」と、教授が指差したのは、部屋の隅に置かれた長方形の箱だった。確かに人一人は入りそうだが、よくよく見てみると、箱には鎖が巻きつけられ、それが錠前で閉じられている。また、箱の表面にはいくつもの魔術的な文様が施された札が貼り付けられていた。
「やったことがことだからね。村に忌み嫌われて、あんなふうに封印されてしまったんだよ」
封印、恨み、怨念、そういった言葉が不意に脳裏に浮かび、背筋を寒気が走る。この現代にここまでオカルトじみた話が実在していたとは。
「青山君」
不意に名前を呼ばれ、千鶴は「はい?」と返事をしながら赤羽教授の方に向き直った。
「君の探究心は学者として、実に良い資質であるといえるが、ここで一つ忠告をしておこう」
旧白灯村の人たち、特にそこにいる蝋人形の彼女たちの肉親は、ここに彼女たちの姿があり、そして死体が見つからないことで、“まだ彼女たちはここにいる”という希望を持っている。 いかに千鶴が好奇心に任せて、真実を暴くことは、その希望を打ち壊すことになりかねない。いくら学者でも、人の心の支えを取り払ってしまう権利はない。教授の言いたいことはそういうことらしかった。
「もし、これ以上この事件について調べたいのなら好きにしたまえ。村の人は非協力的だろうが、何とか力を貸してもらえるように、取り計らってもいい。だが、真実を暴きだした後の責任はとる覚悟はしておくように」
その口調はいつもどおり紳士の温和さを持っていた。だが、千鶴にはとても厳しい響きに聞こえた。
2006年05月23日(火) |
呪縛の蝋・前編(3)の日 |
呪縛の蝋
3
今の旧白灯村は、主導権が片品町のほうに移ったため、そういった動きはあまり見られないが、昔はどこの村にもあったように村興し、というものを考えたらしい。 そういった計画の下、少しでもこの村のことを知ってもらおうと、村の主産物である木蝋の関連もあり、見物客を見込んで建てられたのが『白灯村蝋人形館』である。 そう説明する赤羽教授の案内によって辿り着いた木造の洋館を眺めて、千鶴は言った。
「……またずいぶんとそれらしい雰囲気で」
遠目には白亜に見えたが、近くによると木造の壁はささくれ立ち、塗装があちこち禿げ、申し合わせたようにツタが絡みつき、古さにむしろ誇りを持った感じすら見受けられる。確かに、“ああいった噂”が立てられるにふさわしい雰囲気といえた。 近づいていくと一人の老人が、蝋人形館の入り口前をほうきで掃いている。彼も、こちらの気づいたのか、ほうきを動かす手を止め、顔を上げた。 「赤羽君? いつ帰ってきてたんだ?」 「昨日ですよ。お久しぶりです、伊戸部さん」
伊戸部(いとべ)と呼ばれたその老人に、赤羽教授はぺこりとお辞儀をして挨拶をする。
「後ろの雛子ちゃんの隣にいる人は?」と、伊戸部老人は赤羽教授の後ろで立っている千鶴に視線を送って尋ねる。この時期は外部の人間の立ち入りを制限されているために、明らかに見たことのない人物に戸惑っているようだ。
「彼、青山君は私の教え子でして、恥ずかしながら例の噂に引かれて忍び込んできたのです。本来は即刻帰すところなのですが、せっかく来たのですから、教え子のよしみで、人形館くらい見学させてやろうかと」
そういうわけで、人形館を開けてもらえないだろうか、と赤羽教授が頼むと、伊戸部老人は答えを渋り、外来である千鶴を怪訝な目つきでしばらく見る。そして、うーん、と唸った後、「……ま、いいでしょう」と、ようやく答えを返し、腰に掛けてある鍵束を赤羽教授に差し出す。
「君なら勝手が分かっているだろう? どうせこの後中の掃除もするつもりだったから出るときも鍵は閉めなくてもいい。ただ、帰るときにその鍵をワシに返すのを忘れないようにな」 「ありがとうございます、では」
鍵束を受け取った赤羽教授は、老人に一礼すると、千鶴と雛子をついてくるように手招きをした。
外見はいかにも古く、ほこりっぽい部屋を予想していたのだが、中は意外に清潔に保たれていた。
「それはそうだ。この蝋人形館は今でも普段一般公開しているのだからね」
もっとも、客はほとんど入っていないらしいが、と正直に感想を述べた千鶴に赤羽教授は苦笑して答えつつ、電灯のスイッチを入れ、洋館の玄関ホールに灯をつける。 窓から入ってくる日光では陰影がきつく、あまり良く分からなかった室内が伝統に照らされたその瞬間、千鶴は思わず息が詰まった。 目の前にクラシックないでたちの執事と給仕が立っていたのである。その手前には『いらっしゃいませ、白灯村蝋人形館へようこそ』 と、達筆な楷書体で書かれた手紙が貼り付けられたスタンドが設置されていた。
「あぁ、びっくりしたぁ。蝋人形だったんだー」 「まるで生きてるみたいでしょ?」
面食らった千鶴の反応を楽しむかのように、雛子は彼の顔を覗き込みながら得意げに言う。 千鶴は蝋人形を実際に見るのが初めてというわけではない。卒業論文で蝋人形を取り扱っただけにいくつか蝋人形館を覗き、その精巧さに目を見張ったものだが、ここにある蝋人形は格が違う。まるで、実際に生きている人間をそのまま固めたような現実感があるのだ。いつ呼吸を始めてもおかしくない。
広い玄関ホールにロープで仕切られた順路に沿っていくと、このような豪奢な洋館に住む欧州貴族の生活をテーマに、さまざまな情景が蝋人形で表現されており、それぞれの情景についての説明がそのどれかの人物の台詞として手紙に書かれ、スタンドに貼り付けられていた。 企画自体はありふれたものだが、ポットから紅茶を注がれる瞬間を表現したもの(樹脂か何かで紅茶を表現している)など、芸が非常に細かい。
「これは職人の腕がよほど良かったんだなー」
すっかり感心した様子で言う千鶴を、赤羽教授は「ここはまだ序の口だ」と言って、階段のほうへと導いていく。 二階の展示部分は、階下とは趣が大幅に違い、生活習慣の紹介という感じはしない。まるで泉から上がってきたばかりのように、服ごとずぶぬれになって絡み合っている『水の滴る男女』、足の方から何か黒い液体に体を絡めとられている男を表現した『黒い衝動の束縛』、被弾して脇腹から出血しているが、木に寄りかかって安らかな死に顔を見せている兵士『ようやく見つけた安らぎ』。
「こりゃ珍しいねー」
蝋人形は元々、医学研究のために解剖した遺体をそのままの形で蝋製模型として残すために作られたものだ。その後、歴史的に重要な場面を再現したジオラマを作って展示したのが蝋人形館の始まりで、現代の蝋人形館は、それに加えて有名人や故人を本物そっくりの蝋人形にして展示しているものが人気を博している。 蝋人形、というものは低い温度で溶けるという性質が不安定なのか、このように何らかのメッセージをこめた芸術作品としてはほとんど考えられない。蝋人形作りはどちらかというと依頼されたものを黙々と作るような職人芸なのである。 だが目の前にある蝋人形は明らかに“美術作品”として製作されたものだ。千鶴はあまり美術方面に造詣があるほうではなく、美術品としてのこれらの作品の良し悪しは分からないが、たしかに珍しい。
そこで、製作者の人格に興味が移ったところで、千鶴は思い出した。 「これを作った人が例の蝋人形魔術を?」 「そう、伊戸部礼二(いとべ・れいじ)、という名前の男だ」 「伊戸部?」
というと、先ほど表を掃除していた老人の名前ではなかったか。そういう意味合いでたずね返すと、赤羽教授もそれを察したのか、首を横に振って答えた。
「いや、彼、伊戸部宗太郎(いとべ・そうたろう)氏はその父親だ。この人形館においてある蝋人形を作っていた最初の蝋人形職人でもある。……ついてきたまえ」
教授は半ば言い捨てるようにぼそりと言って、きびすを返すと先ほどの階段を降りていく。
「………」
千鶴は先ほどから小さな後悔を覚えていた。どうも、自分が蝋人形魔術事件の話題を振ってから、教授の表情が暗い。普段から紳士めいた振る舞いで、温和そのものの教授がここまで心の闇をちらつかせたことがあっただろうか。 ほとんど好奇心だけで首を突っ込んでしまったが、自分は知らずに赤羽教授の心の傷に触れていたのではないだろうか。 ここを見終わった後で、本当に赤羽教授が自分に帰ってほしいと願っているなら、本当に帰ろう。
赤羽教授は階段を降りると、先ほどの順路を逆にたどるのではなく、仕切りのロープをはずして、階段の奥に続く廊下に千鶴を案内した。そこは、展示用に装飾されているわけではないため、さきほどとは変わった殺風景さと薄暗さが目立つ。 その廊下の奥にあるドアを教授は開けると、その向こうに現れた階段を一段降りていく。
「薄暗いし、勾配が少し急だ。足元に気をつけたまえ」
教授のその注意どおり、その狭い階段はバリアフリーの精神など欠片も感じられない急勾配で、一段一段が狭く、気を抜くと踏み外してしまいそうだった。 それを抜けると、二十畳程度の広さはある板張りの部屋にたどり着く。薄暗かったので中はあまり見えない。代わりに、この部屋の第一印象を訴えたのは嗅覚だ。鼻腔をくすぐるこの独特のにおいは間違いなく蝋のものだった。
赤羽教授が真っ暗だった(地下室なので少し地上に出ている上部に申し訳程度につけられた窓から以外、まったく日光が入ってこない)部屋の電灯のスイッチを入れると、部屋の全貌が明かされた。 そこはアトリエだった。二十畳はありそうな広い部屋にさまざまな蝋人形を作る道具が並べられ、そこここに散らばっているのは失敗したのか、腕や足、首といったパーツがあり、立てられたイーゼルの上にはデザイン画が描かれている。 中でも目を引いたのは、部屋の中央に置かれた“六体”の蝋人形だった。これらには何の趣向も凝らさず、かといって一階の蝋人形群のように欧州人を模したものでもない。れっきとした日本人であり、格好としては昔の日本では普段着だった袴などが着せられている。
「これはひょっとして……」 「例の魔術で作られた蝋人形だよ」
教授はその中のいったいに歩み寄ると、椅子に腰掛け、肖像画を描く画家に向けたようなすこしはにかみを混ぜた微笑を浮かべる女性の顔を覗き込んだ。 その容姿を見た千鶴は、隣にいた雛子と見比べた。その視線に気づいた雛子はむっ、とした表情を見せて冷たく言った。
「あたしのお母さんのお姉さん。それに……」そして、目を伏せて付け加える。「オジサマの恋人だった人」
雛子の言葉に、千鶴は弾かれたように赤羽教授に視線を移した。教授は、やや自嘲気味な笑みを返して言った。
「驚いたかな? 君の聞いた噂の事件、当時私は君が思うより遥かに近くにいたんだ」
2006年05月22日(月) |
呪縛の蝋・前編(2)の日 |
呪縛の蝋
2
がさがさ、という音を立てて森を抜けた千鶴は、茂みの陰からガードレール越しに昼下がりの住宅地を見やった。住宅地と言うには建物の密集度がかなり低く、ぽつりぽつりと大きめの古びた日本家屋が建てられているだけだ。 見通しはかなりいいが、人影は見受けられない。真っ昼間の今なら家で家事をしているか、ワイドショーや昼ドラを見ながら菓子でもつまんでいる奥さん方くらいしかいないだろう。 この、人が出払っている間に何とかキャンプを張れる場所を見つけたい。人を受け付けないなら宿の類も期待できないので、はじめから一週間くらい滞在できる用意はしてきている。 上から見た限りではキャンプの場所は木蝋製造所の裏手が良さそうだった。近くを小川が流れて水が使えるし、村のほうからは見えづらい形でいい具合に開けている。 あとは何とか蝋人形館に潜入していろいろ調べるだけだ。人の話を聞けないところがどうにもやりにくいが、白灯祭というイベントにも何らかの秘密は隠されているはずだ。それを見る価値は絶対にある。ひょっとしたら村の人たちの噂話のひとつでも拾えるかもしれない。少なくとも、外部の怪奇ミステリーに染まった人間が勝手に想像力を膨らませて語る噂よりもよほど信憑性は高いだろう。
今いるのは集落の東端。目指すところは村の北東だ。住宅地に人がいるなら外を回りこむつもりだったが、住宅地の中を通っていけばずいぶん距離が違う。安全とはいえないが、早く寝床を確保しておきたかったこともあり、千鶴は住宅地をショートカットしていくことにした。
「よいしょっ……と」
ガードレールを乗り越え、道を確認しようと顔を上げたとき、千鶴は凍りついた。
「アンタ、誰?」
目の前に高校の制服を着た少女がいた。何かの運動部に入っているらしく、肩に掛けられたスポーツバッグは大きく、もうひとつ細長い棒状の袋が背負われている。あまり化粧っ気はないが、ポニーテールにほどよく日焼けた顔が健康的だ。
「イヤッ、山歩きをしてたらすっかり遭難してしまってね〜。ここはどこかなー?」
一応、用意をしておいたとぼけ文句を口にするが、彼女はそれをきいて睨む視線を強くし、千鶴ににじり寄る。
「この辺に山歩きをするような場所があるなんて聞いたことないわよ! 初めからここに忍び込むつもりでやってきたんでしょ!? 時々いるのよね。この時期この村が立ち入り禁止になってるのを知ってて忍び込もうとするデバガメが!」 「出歯亀とはまた古風な言い草だなー……」 「いい!? あたし達が立ち入り禁止にしてるのはそれなりの理由があるからなの! あたし、アンタみたいな軽がるしく人の思いを踏みにじるようなケーハクな野次馬が一番嫌いなのよ!」
男子大学生でも背の高いほうである(が、かわりに細身だが)千鶴にここまで強気に出られるとは外見どおりの性格らしい。これはまたとんでもないのに見つかってしまったようだ。
「分かった、悪かったよ。今日はこれで帰りますって。村の出口どこ? 国道はすぐ分かるかな? じゃ、僕はこれで。また来るよ」
こうなったら、さっさとこの場から退散するに限る。帰ると見せかけて森に逆戻り。今度は慎重に外側を通っていこう。ショートカットをするつもりが飛んだ回り道になってしまった。 彼女に背を向け、坂を下っていく千鶴だったが、しばらくして後ろから足音がやまないことに気がついた。ゆっくりと後ろを振り返ると、先ほどの女子高生が彼の後ろからついてきていることに気がついた。
「あれ? 君の家はこっちなのかなー?」
しかし、この道は先ほど彼女が上ってきた道だったはずなのだが。嫌な予感がしたが、目の前の気の強い少女はその期待は裏切らなかった。
「何言ってんのよ。アンタがちゃんと村を出て行くか見届けに行くんじゃない」
どうやらこちらの作戦はお見通しらしい。これはどうしたものか。下の入り口がふさがれているから、遠いところから森に入ったのに、そこを出てしまったら挽回が利かなくなる。 どうやって撒こうか、と思案しながら一緒に歩いている、というより連行されていると、前方から一人の初老の男性が坂を上がってくるのが見えた。しかも、見覚えのありすぎる人物である。 その男性は俯かせていた頭を上げて、千鶴と目が合うとぴたりとその動きを止めて固まった。
「青山君!? どうしてここに……」 「それは僕の質問ですよー、赤羽教授」
その二人のやり取りを聞いた少女は目を丸くして千鶴を振り返る。
「え? アンタ、オジサマの知り合いなの?」 「オジサマ……?」
よく状況が理解できないが、どうやらここに赤羽教授が現れたことは彼にとって助け舟になるらしかった。
ほどよく緑の生い茂る庭。日のよく当たる縁側。庭の木陰を通り、吹き込んでくる涼風を迎え入れて鳴る風鈴。香る畳の匂い、水滴の浮いた冷たい麦茶のグラス。正しい日本の夏だ、と思う。
「……私は“注意”したつもりだったのだけれどね」
反対に煽ることになるとは、と赤羽教授は手元のグラスを傾け、麦茶の氷を鳴らしながら言った。
「教授もここが教授の実家だというのを黙ってたじゃないですかー」
話を聞くところによると、教授が盆に帰るといっていた実家はこの旧白灯村にあったらしい。先祖代々の持ち家であったため、手放すには忍びなく、それならばと職場に近いところに別宅としてマンションを借り、時々こちらに戻ってくる形にしよう、というわけだ。
「というわけで、オジサマも困ってらっしゃるみたいだし、コレ飲んだら帰りなさいよ」
麦茶を持ってきたお盆を胸に抱えつつ、冷たい視線を送るのは先ほど千鶴を見咎めた少女、名を三沢雛子(みさわ・ひなこ)だった。彼女はこの教授の母屋に住んでいる。というのも、昔、家が消失してしまったらしく、それならば、と普段自宅に戻らず、すでに家族も亡くしていた教授が母屋を提供したのだという。特に光熱費を除けば家賃は取っていないらしいが、その代わりに留守がちの自宅を掃除をするなど管理をしてもらっているらしい。それから離れを自分の書斎にした教授は、帰ってきた際にはそこで過ごしているらしい。 オジサマこと赤羽教授のことは結構慕っているらしいが、千鶴はどうやら歓迎されていないらしい。オジサマの麦茶にのみ氷を浮かしているくらい露骨な態度の差別化である。
「いやいや、せっかくここまできたんだから、蝋人形館くらい見せてやってもいいだろう」
初対面の男にまったく遠慮なく冷たい態度を貫く雛子に苦笑しながら赤羽教授は言った。
「でもそれじゃ東京に帰れなくなっちゃいますよ」 「今夜くらい泊めても構わない」からり、と彼はもう一度グラスの中の氷を鳴らす。「……それに、なぜ私たちがこの時期外の人を拒絶するのか、その理由くらいは教えてやってもいいだろう」
そう続けた赤羽教授の声は何故か沈んで聞こえた。
2006年05月21日(日) |
呪縛の蝋・前編(1)の日 |
呪縛の蝋
『蝋人形といえばさ、俺、変な話知ってるよ』
『つーか、変じゃない蝋人形の話なんて聞かないよな、さわやかな蝋人形の話とか想像できん(笑)』
『確かにね(笑)。で? どんな話なの?』
『創作とかじゃなくてさ、本当にあった話らしいんだけど、ある村に蝋人形館があってね、そこの蝋人形職人がさ、人間を蝋人形に変える魔術を編み出したんだって。それで、その職人自身も色男だったらしくて、自分に言い寄ってくる村娘を次々と蝋人形に変えちゃったらしいよ。六人ぐらい』
『そっくりの蝋人形を作って殺しただけじゃないのか?』
『当時の警察もそう考えて、遺体を捜したらしいけどただの一体も見つからなかったらしい。今も、その蝋人形館にはその娘達の蝋人形が残されてるんだってさ』
『へえ、その蝋人形、六体しかないのか? 村にその蝋人形職人が気に入った娘が六人しかいなかったってこと?』
『いや、蝋人形は全部で“七体”あるんだ』
『七体? 蝋人形にされた村娘は六人なんだろ?』
『こんなとこでも勿体振らないでよ。焦らさず話すべし』
『だから、「娘」じゃなかったのさ。その七体目は―――その蝋人形職人本人のなんだ。もちろん彼の姿もそれきり消えてこの事件は終わり。それきり進展はない』
『へえ、そりゃまた理解に苦しむ話だな。ところでそれ、どこの話なんだ?』
『群馬県だね、もっとも今は例の市町村合併で“村”ではなくなったらしいんだけど――』
呪縛の蝋
1
「……群馬県片品町白灯……“旧白灯(しらひ)村”、かぁ……」
駅からヒッチハイクを乗り継いでやってきたのはとある山中だった。周りを見渡しても夏の日光を浴びようと必死で生い茂る緑の木のみ。自動販売機も、人気のないところにこっそりと置かれた、十八歳未満は利用できないものを最後にまったく見かけなくなっていた。 ここまで乗せてくれたトラックの運転手も妙なところで降りるものだ、と怪訝な顔をし、背負っていた大きな背嚢の中身に関心を寄せていた。バラバラの死体でも入っているのか、と勘繰っていたらしい。
千鶴は、コンパスと駅で買った地図を取り出して、現在の位置を確認するとガードレールを乗り越えて深い森の中に足を踏み入れた。その先には、彼の目的地がある。 もちろん、村とは言っても、目的地・旧白灯村はそこまで徹底したド田舎ではない。自動販売機もあるし、二十四時間営業ではないが、コンビニもある。とにかく、こんな山中を歩いていかなければたどり着けない場所ではないのだ。
では、なぜ千鶴はわざわざこんな面倒なルートを辿っているのか。その原因は目的地に関するある情報があったからである。
研究室にしては埃っぽさが足りない。
青山千鶴(あおやま・ちづる)は、赤羽俊彦(あかばね・としひこ)教授の研究室に来るたびにそう思う。整然と並べられた書物は、まあ分からないでもない。自分も本は大きさをそろえて並べておきたい性質だ。 しかし、この部屋の整然清潔さときたら姑が口を挟む隙も見つからないほどで、それにとどまらず壁には小さな絵画が掛けられ、本棚の上などにも上品にインテリアがちりばめられている。
目の前で、前期末試験のレポートに赤ペンを走らせている本人の姿も、シワ一つないスーツにぱりっと糊の効いたワイシャツ、その仕種でさえも、無駄ひとつなくびしっと決まっている。 人は、こういう人間を指して“紳士”と呼ぶのだろうが、大学の生徒達はこの教授をそう呼ばない。
(うあー……)
みるみるうちに、レポート用紙が赤ペンで真っ赤にされていく様子を見て、千鶴は内心で呻いた。 赤羽教授に提出したレポート用紙は全て赤ペンによる校正が入って帰ってくる。それがいい加減な気持ちで適当に書いたレポートでさえも本気で校正するので、提出期限前夜に徹夜をし、インターネットからコピー&ペーストで手抜きをしようものなら、たちまち文体の違いを見抜かれて赤ペンが入ってしまう。だが、適当でも一応の苦労をして書いたレポートにそこまで細かくダメ出しされて気分を害さない人間はいない。またレポート評価が厳しく単位のとりにくい授業と見れば逃げ腰になる生徒も多く、赤羽教授の講義を履修するのはそれなりに真面目に授業に取り組む根性のある生徒に限られてくる。 また、赤羽教授は一種の色覚障害なのか、訂正だけでなく、普通に文字を書くときも赤ペンを使う。それだけならともかく、講義で赤チョークを使うので彼の板書はすこぶる評判が悪い。(字自体はとても綺麗なのだが) 以上の特徴的な行動から、人呼んで“赤ペン先生”。それが“紳士”を差し置いて彼に与えられた称号である。
「これからの休みはどこかに出かけられる予定なんですかー? 教授」
評価が終わり、疲労のにじむ吐息と共に渡されたレポート用紙の束をクリアファイルにはさみ、付箋に日付を書いて貼ると、「返却」と書かれたファイルボックスに収めながら千鶴は聞いた。 この質問は、夏休みに“遊ぶ”予定を尋ねているのではない。生徒への講義以外に研究という大きな仕事のある大学教諭職は、夏期休暇という期間が持つ意味は非常に重要だ。研究によっては長期にわたって現場に滞在して行うものもあるのである。 教授も前期の講義のレポート評価、新学期の講義の準備などで今までの夏休みをつぶしてきたが、まだ夏休みは一ヶ月と半分残されている。
「ああ、盆に一度本宅に戻ってゆっくりした後、インドのほうを見て回ろうかと思っているよ」
教授は東京から少し離れたところに先祖代々住んできた“本宅”を持っているらしい。普段は大学に程近いところに“別宅”としてマンションの部屋から通っている。
「君はどう過ごすのかな? 大学院行きはもう決まっているし、卒業論文もほぼ完成と見たが」 「あれに関連してちょっと面白い噂をネットで拾ったので、ちょっと現場に行ってみようかなぁ、と思いましてー」 「噂? 蝋人形の?」
赤羽教授の民俗学のゼミで、千鶴は“蝋人形”を取り扱った。いささか意表をついた論点ではあるが、蝋人形は昔の風俗を非常に正確に表現しているという内容でいくつか例を挙げて並べたものだ。
「ええ。群馬の方にある蝋人形館なんですが、車で行けないこともないでしょー?」 「もしや“旧白灯村”のことかな?」
言おうとしていた地名を先に言われ、千鶴は目を丸くした。しかもそんな僻地の名など知るはずがないと思っていたのに。
「インターネットで調べたと言ったね? ならば私と同じルートで突き当たったのだろう」
千鶴の表情に疑問の色を見て取ったのか、先手をとってそう答える。確かに同じ言葉で検索を掛ければ大抵同じ結果が出る。となると、この話を知っていたとしても不思議はなかった。
「いつ行くつもりかな?」 「できればすぐに。ちょうどお盆ですしー」 「お盆は止めておきたまえ。あそこはお盆の間、出入りを禁止されているからね」
「え?」と、未知の情報に動揺する千鶴に、赤羽教授はさらに説明した。 「白灯村はいつもお盆に白灯祭(しらひまつり)っていうお祭りをやるんだが、そのお祭りの間、外部の人間は中に入れないんだ」 白灯村に続く道は一本なのだが、その一本がその祭りの間、封鎖されてしまうと言うのだ。 「行くなら、お祭りが終わってお盆が明けた後にするのだね」
行くなと言われると、行きたくなる。
「それが人情ってモンでしょうー!」
その主張を掛け声にして、千鶴は丘を越える最後の一歩を踏み出した。背中に大荷物を背負って道なき道を踏破するのは正直辛かったが、大学時代を通して登山部に所属し、鍛えてきた健脚はまだまだ余裕がある。 背嚢の側面についているポケットから水筒を取り出すと蓋を兼ねるコップに麦茶を注ぎ込み、一息つきながらこれから下りていく丘の麓に広がる景観を眺めた。
白灯盆地。それが眼下に広がる地形に与えられた名称である。それは盆地と言うよりすり鉢のようで、そこにあるべき平地は申し訳程度にしかない。 その平地も盆地の五箇所から流れてくる小川が合流して白灯川となり、下流のほうに流れていく。地図に大きな間違いがなければそれを下っていくと片平川へと合流し、やがて利根川にたどり着くはずだ。 その白灯川に沿ってこの村唯一の外部とのつながりである国道が通っており、それが村の中心へと至っている。そこには村役場と見られる建物や、その他商店などおよそ主要な設備は盆地の真ん中である平地部分に建てられているようだ。 その周りを囲むように段々畑が設けられており、ポツリポツリと農家や住宅地が存在していた。 また、盆地の奥のほうに一つだけ工場のような建物がある。木蝋の製造所である。実は白灯村は東日本、しかも山奥の群馬には珍しい櫨(はぜ)の木の数少ない群生地のひとつで、この村の主産業は和ろうそくなのだ。
そして村の中心に目立っている洋館、それが噂の現場―――白灯村蝋人形館。
2006年05月10日(水) |
のだめカンタービレとクラシック語りの日 |
「のだめカンタービレ」。同じ作者の「天才ファミリーカンパニー」を読んでからずっとほしかったんですが、なかなか古本屋では見つけられませんで、難波の本屋で1〜3巻のみを新刊で買ったとき、おおはまりでその衝動のままにあとの最新刊までの11巻分を衝動買いしました。 音楽の知識はほどほどに身に付くし、話は面白いしで聞きしに勝る作品ですね。ほかの二ノ宮知子作品も読みたいッス。ただ男主人公のタイプが美形天才高慢一辺倒なのがこの人の欠点……なのでしょうか、味といえるのかもしれませんが。 のだめや千秋やその他個性豊かな人物達のそれぞれの音楽への向き合い方がそれぞれ描かれているのが素敵です。
ちょっと思ったのですが、最近読んだ「ダ・ヴィンチ・コード」といい、「のだめカンタービレ」といい、芸術のウンチクってかなり僕の心の琴線を掴むものがあるのかもしれません。
そういえば、この漫画を読んで、長い間ホコリを被されていた「クラシック名曲100選」(←音楽CDではなくて、そういうソフト)を引っ張り出してきて聞きました。 このCD、まじで素人向けで良いです。情緒掻き立てる背景で音楽を流してくれるのはもちろん、曲や作曲者に関する簡単な説明文がついてくるのです! おまけにですよ!? 演奏する楽器を変えることもできるんです! ホルストの「木星」なんてピアノだけにするとかなり悲惨なんです!
それにしても名曲と呼ばれる曲はやっぱりいいですね。全然聞いたこともない曲だと思いきや、CMでよく聴く曲だったり。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク第1楽章」なんて聞いたこともなかったけど、聞いてみたらすごく好きな曲でしたし、ミーチャムの「アメリカン・パトロール」も「ああ! この曲かぁ!」って感じです。 クラシックはちょっと……、と思っている人でもその生活の中のいたるところにクラシックが入り込んでいるものなんですね。
著作権は残ってなさそうだし、探してみれば無料のMP3どっかでダウンロードできるかもしれませんよ。
web拍手レス(本当はのだめのみでちょろっとmixiのほうに書こうと思ったんですけど、思ったより長くなったので、エンピツ日記に移しちゃいました/はぁと)
>「自分の名前が出ていてものすごくびっくりしました(笑)。」
あはは、分かります、それ(笑)。掲示板でなくて日記とかで語られるととってもびっくりしますよね。名前が出てなくても、そちらの日記でこのことがネタになってるだけですごく嬉しかったですし。
>「まほゆめ更新して無くても影からそっとみてますよ」
ありがとうございます〜! でも影からじゃなくても良いじゃないですか! 光の下に出ましょうよ! 正面真近くから見てくださいよ!
>「気づくほど読み込んだ人です。さて、私は誰でしょうww 「○」から始まる人です。」
そしてmixiでは「×」から始まるひとだ! いや、なんとなくそうだとは思ってましたが……(本当デスヨ?)。毎度温かい応援ありがとうございます〜。
2006年05月07日(日) |
ギリギリのタイミングで更新の日 |
こんばんは、GWで一度はまほゆめ更新という目標をギリギリで達成した想 詩拓です。日記をサボるのが結構当たり前になってしまいましたねー。で、更新履歴を書き込もうとしてはたと気づく。
実はこれが今年最初の更新なんじゃん!?
そ、そういえば今年になってからは電撃用の小説にかかりっきりで、まほゆめ全然更新してなかったんですね。申し訳のように拍手だけは1,2度更新してましたけど。 銀の掲示板では再開を待ち望む声がとうとう上がったりして本当にお待たせしてしまったようです。「楽園」やら「カオパラ」「インターネット創作作家協会」やらに更新の申請するのもずいぶん久しぶりでした(苦笑)。
【ネット小説を読む】
他のところも大体GW更新は果たしているようですね。僕もいろいろネット小説を読みまわっておりました。最近完結してそのうち読もうかと思っていた椎名かざなさんのところの「SkyHigh,FlyHigh!」とか、古戸マチコさんの「人なる」最新話とか。
「SkyHigh,FlyHigh!」は第二部の「EVER GREEN」から先に読む形になったのですが、ベネリウスとか第二部ではさらっと触れるだけだった単語がすごく重要だったり、まりい嬢のルーツが垣間見れたりしてかなり楽しく読めました。読了後に2部を読み直すとまた違ってくるんでしょうねー。 あと以前は、話番号のみのリンクだったのですが、リニューアルして章ごとに分けてくれたのですごく見やすくなったのがうれしかったです。
「人なる」最新話「変化」。スーヴァ君が表に出てきて、いじめられる話が微笑ましい反面、カリアラ君の奇行をはじめ、話の本筋は一読しただけでは掴みきれてなかったり。今の時点では消化し切れてないところがたくさんあるので、あまりコメントはできない、ですね。眼鏡をはずしたときに見える糸という抽象的なものがすごく表現しにくそう。 でも、ビジス氏の存在の大きさや彼を失うことでできた穴という問題をどう解決していくか、そして「嘘」と「学習」を学び、次に一言では言い表せない感情を得ていくカリアラ君の人間としての成長が描かれていくのが見ものとなるストーリーは第1部と比べて第2部は格段に話が綿密になっている感じはしますね。もちろん、あちこちに挿入されるソウルフルなコミカルシーンも大好きです(笑)。
【ダ・ヴィンチ・コード】
話題作には手を出さないのが基本の僕(←世間ではそれをひねくれ者という)ですが、母親が買ってきたのを借りて読んでしまいました。 やはり、この作品の魅力は美術に関しての薀蓄ですね。“教養がつく小説”というのは大好きなんです。父、母、嫁、本人周囲の人物がそれぞれ何らかの学術専門家だったりするので詳しいのにも納得できます。
インディ・ジョーンズなどに代表される宝探し系のミステリーの王道をいっており、かなり好感の持てるストーリーなのですが、「○○氏の正体は実は××だった」という犯人側の謎に関しては多少チープと言わざるを得ませんね。詳しくはネタバレになるのでいえませんが。 ただ、欧米の小説は独特のジョークがあって、時々ウィットの利いた掛け合いが読んでいて楽しいですね。
【もと同級と遊ぶ】
3日に高校から一緒の友達二人と遊びました。遊ぶといっても、部屋に押し入って菓子を食い散らかしつつ、他の二人がギターで遊んでいるのを横目で見ながら、おもちゃのウクレレをかき鳴らしたり。イヤ、二人とも音楽系なんで、置いていかれない為に必死だったんですって(笑)。 あとは、お勧めフラッシュを見たり、mixi見せ合ったり、ですね。インドア限定でも結構遊べるもんだ。っていうか積もる話もありましたしね。
元々同級なんですけどカナダに言った関係で僕が留年しちゃったんで、彼ら二人はお先に卒業したんです。二人とも、就職したり、専門学校行ったりで、人生の方向性が定まって、人生において一歩置いてかれてますね。うう、この五月でなんとか内定ひとつは取りたいですよ(苦笑)。 そういえば、僕の関係者って大抵大学のサークルなどで関係のある人ばっかりだったりするのですが、高校からの付き合いってことで二人は数少ないプライベートのみの関係者だったりするんですよねぇ。他の人たちって普通、そういう人って何人くらいいるんでしょうか。
web拍手レス(今日はいっぱい書いたー。でも明日はまたサボりなんだろうなぁ)
>「ふふん、と鼻を鳴らし、柳葉に笑いかける。しかしそれは決して友好的なものではなく、 ・・・え?」
え!? (最新話の原稿を確認) あぁぁあぁぁっっ、やっぱり間違えてる!
(しばしの間)
ん? 何のことですか? 主人公の名前を他の作品のと書き間違えるなんてこの僕がするわけないじゃないですかぁ!
……いや冗談です。誤字報告本気で感謝します。うわぁ、これは捨てておけん赤っ恥だ(汗)。 でも気づくほど読み込んでくれてありがとうございます!(←ポジティブシンキング)
2006年05月01日(月) |
【就活日記05】就職活動生の主張の日 |
わたくしー、いち就活生・想 詩拓ー! 全国の就職活動に身をささげる同志たちを代表しー! 誰にだかは知らんが一言モノ申したいことがあるー!
一同:なーにー?
履歴書ワープロ打ちさせんかいボケェェェェェェ!
文面とかどこの会社に出すときでも全然変わらないので、あとは写すだけと簡単に思っておりましたが、とんでもありませんな(汗)。いや間違う間違う、ちょっと気を抜くと非常にくだらない間違いをして、一枚無駄にするんですよー。 せめて修正液OKとか、コピーOKとかせめて間違った欄だけ他の紙に書いて切り貼りするのがOKとか、もうちょっと楽な道はないものか。どのみちもう書類を手で書く時代は終わったのに……。
……なんか受験のときは「こんなの社会にでたら役に立たないのに」って言ってたのと似てるかもしれませんね。ま、いろいろ忍耐力とか集中力とかを使わせるための物だったりするのかも。
でも、まあ今日は総合資格、日本通運という2つの会社から「説明会の後にやった適性検査を通過したから選考に来い」って電話が掛かってきたのでビックリでした。両方とも大手なんで、こっからものすごい振り落としがあるんでしょうけど。 今のところ本命だった凸版印刷は一次面接で落っこちちゃったみたいですね、連絡ないし。なかなか超えられない一次の壁〜。
web拍手レス(5月中にはひとつは内定もらいたいなぁ、というのは甘い考えでしょうか)
>ギャーギャー言われたので、復活させてみた。一日でやりました。疲れたから何かくれw
べ、別にそんなせっついてたわけじゃないし、下げたのを元に戻せばよかったんですけど、こちらとしては。リニュまで一気にやっちゃったんですか……、ま、いつかはやることだし予定が早まって結果オーライじゃないですか!(オイ)
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