読書記録

2017年03月23日(木) 冬芽の人 / 大沢 在昌


 元刑事の牧しずりは、かつての同僚・前田光介の墓前で彼の息子・仲本岬人に出会う。前田は強盗殺人事件の捜査中に、しずりをかばって負った怪我がもとで亡くなった。以来彼女は罪の意識から周囲の人との関わりを絶ち刑事も辞職して、心を閉ざしている。そんな中父の死の経緯を知ろうと近づいてきた岬人から、過去の事件に関わる意外な情報がもたらされた。しずりの脳裏にはある疑念が浮かぶ――あの事件は、実は仕組まれたものだったのではないか…?
刑事の頃 光介から告白されたこともあるだけに、 その息子の岬人までも不幸にしてはならないと事件の真相を追うことに躊躇もするのだが、運命のように真犯人にたどり着くのだった。

題名に惹かれて読み始めたのだが、サスペンスで面白くあっという間に読み終えた。
もうじき 読売テレビでドラマ化されるらしい。


冬芽
晩夏から秋にかけて生じ、越冬して春に生長する芽。
                  明鏡国語辞典より













2017年03月02日(木) 藪枯らし純次/船戸 与一

 
 興信所の調査員・高倉圭介は中国地方の山奥にある赤猿温泉郷で、この鄙びた温泉に帰ってきた曰く付きの男「薮枯らし純次」の監視が依頼された仕事だった。村人たちはこの男に何を怖れているのか? 
この男の母と姉が赤猿神社の同じ松の木で首を吊ったことの報復なのか。
村の歴史に纏わる秘密は依頼者の一人でもある高照寺の過去帳と、維新の歴史を研究する赤猿の湯の同宿者らから次第に明かされていく。
そして藪枯らし純次が開いたジャズバー「レッドモンキー」がオープンしてから官能的な旋律が村に響き、第一の殺人事件が発生。そして、次々に血腥い事件が起り、高倉は次第に、閉鎖された村で、瘴気ただよう闇の狂気にとりつかれてゆく…。

 タイトルは 「藪枯らし純次」 でも主人公は 興信所の調査員・高倉圭介なのだ。
世の中は面倒なことはなるべく避けたい人間と、変にこだわるタイプとがあるが、主人公は完全に後者で、事件の大筋が見えてきたときに自分には関係ないのだからと引き返すこともできただろうに、そこは小説・サスペンスで最後は「死」が待っているのを承知で突っ切ってしまう。
まぁ、無難に事件が解決するよりは主人公が真犯人と共に死んだほうが物語としては面白いのだけれど。


覚書
藪枯らしとは、葡萄科の多年生蔓草で二股になった巻鬚を樹木に絡ませて茂り、その樹木を枯らしてしまう。
鳥が種を運んでくる植木職人が一番嫌がる雑草で、別名貧乏葛ともいう。













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