2016年10月25日(火) |
コンビニ人間 村田 沙耶香 |
主人公は36歳の未婚女性、古倉恵子。 大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目の超ベテラン。 これまで彼氏なしだけれ本人はそのことでひけめも感じていない。 オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、 変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。 日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニの音とでもいうべきレジを打ち、清潔な売り場の風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。 仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、 完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、主人公を世界の正常な「部品」にしてくれる、だから自分自身のことをコンビニ人間と言う。
そんなある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、 そんなコンビニ的生き方は 「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが…、私から言わせてもらえば定職のない白羽のほうこそ恥ずかしいと思うのだが。
面白くて一気読みしたけれど、ここまでコンビニのマニュアル人間というのも凄すぎる。
ただ物語として読み終えたらいいのだろうけれど、50代60代になっていったらどうなるのか? 年金とか社会保険とかどうなってるの? こんな若者が高齢になっていったら日本はどうなるのか、いらぬ心配をしている。
2016年10月20日(木) |
雄気堂々 斗牛を貫く / 城山 三郎 |
寒々とした行灯の灯の下で、横浜焼打ちという暴挙を企てていた若い頃の渋沢栄一は、無名の反体制の一青年であった。渋沢自身の言葉を借りれば「血洗島の一農夫」でしかない。その「一農夫」がその後の動乱の中で成長し、受誦した詩の一部のように「雄気堂々」の人生を志していく。
渋沢は薩長土肥いずれの藩閥出身でもなく、維新に活躍したわけでもない。それでいて、いわゆる明治の元勲と肩を並べ、近代日本を築く最高の指導者、最大の経済人になる。 それも雄気堂々 であって、後暗いところはない。
これは、ひとつの人格形成の物語であると同時に、国家形成の物語ともいえる。
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