花と花器との写真集。
花は あの武相荘に咲いたお花や知人から届いたもの。 花器は 正子は骨董市で求めた常滑の大壺や李朝の壺、時には手籠や徳利、そして竹筒や灯明台、臼など。 それらが 床の間のみならず 部屋の隅だったり、階段の途中だったりにさりげなく置かれている。 四季に分けて そこに短い文が添えられている。
薔薇などに代表される華やかなものはなくて えのころ草【猫じゃらし)なども登場する。
ほんとうはこういう路傍の草を、何げなくいけたのが私は好きなのであるが、農家の部屋はだだっ広いので、茶室のように美しくは見えない。せいぜい柱にかけて、一人たのしむだけである。
花ははかないから美しいのであって、花入にいけたその瞬間がいのちである。ゆめゆめ長く持たせようなどと思ってはならない。
著者の祖父がモデルの物語。 生死をテーマに主人公である鉄砲屋江口稔の生涯が描かれている。 物語は、まさに主人公・稔の死の場面で始まり、近親者の死、初恋の人の死、親友たちの死などを経て、稔の目を通して、(時に村で火葬場の仕事をしている友人、清美の口を)通して著者自身の生死観が綴られている。 人の命はどこから来て、死んだ者はどこへ行くのか。ふとしたときに湧き上がってくる懐かしい感じは何なのか。 最初の死の場面は、全部読み終えたあとにもう一度読むと死ぬ事は怖くないような気がしてくる。
大阪に収められた骨で作った骨仏を祀ってある一心寺がある。 私の父も葬式はせんでいい、墓もいらん、と常々言っていたので一心寺に骨を納めて今は骨仏になっている。 参拝する人の絶えない賑やかなお寺で、いつも線香とロウソクの炎が揺らめいている。 そして 骨仏は白く黙して参拝客を見ているのだ。
線香の 種火もらいて 骨の寺
振り向けば 飛行機雲の 骨の寺
2016年07月09日(土) |
九十九藤(つづらふじ) 西條 奈加 |
主人公のお藤の生家は四日市宿で小津屋という旅籠だったが、実際に家業を切り盛りしていたのは父ではなく祖母だった。
口入屋も営んでいた祖母が亡くなり、続いて母も亡くしたお藤は後添に入った継母に女衒に売られてしまった。 隙を見て女衒から逃げ出したお藤を助けてくれたのは、後に黒羽の百蔵と名乗る須藤兵庫であり、駿河屋の主人だった。
江戸での女中奉公のあとで縁あって大工と所帯をもったが離婚して、 赤字続きの口入屋の差配となったお藤。 武家相手から商家へと方針転換を打ち出すが奉公人からは猛反発を受ける。何とか軌道に乗った頃、それを苦々しく思う組合から呼び出しを受ける。 そこには 黒羽の百蔵と呼ばれる中間の頭もいた。
組合と決着のつけ方と恩人 黒羽の百蔵との絡みと顛末は書き込み不足というか、中途半端に終わった感があるのに最後はあまりに上手く事が運んで少々肩すかし。 たった一度の絡みで百蔵の子を身籠らせるなんて。。。
でも例えば あまりに少なかった黒羽の百蔵との絡みなんかを脚色して、NHKの木曜時代劇なんかにしたら面白いだろうと思った。
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