2016年04月28日(木) |
天皇の代理人 赤城 毅 |
昭和の末頃に「しぇりー博物館」という変わった名前のバーで出会った颯爽とした老紳士から聞いた話。
駆け出し外交官・津村と、特命全権大使・砂谷が 戦前戦中における日本外交史の謎を、今だから話せるんだが、 と シェリー酒片手に津村老人が回顧するスタイルで短編連作で4つのお話。
一つ目は 死神は誤射したというタイトルのついた佐分利公使怪死事件。 密室でピストル自殺をした佐分利公使だが、左利きなのに右手にピストルを持っていたり、普段は身綺麗にしている公使が寝間着で自殺するなど謎の多い事件だった。 犯人はホテル従業員という皮肉な結末だが、その苦みが、この先の事件と日本の行く末を暗示している。
二つ目の事件は頑固な理由。 吉田茂に白州二郎、大島浩が登場する。 砂谷のキャラが、以前見たドラマの白州二郎とかぶる。
三つ目、舞台はベルリンで、操り人形の計算。 それまでの二つの話は砂谷と(津村)による謎解きを楽しむタイプだったが、 一転してドイツの女スパイも登場して二転三転する物語。
四つ目、今度は永世中立国スイスでの 終幕に向かう列車という話。 戦局いよいよ配色濃くなった日本はアメリカとの講和の道を模索する。 そこで登場するのがフリードリヒ・ハック。
あの大戦で国を憂う男たちの姿に酔わされる。その努力が報われないのがまた悲しすぎる!
最後におっと思わせる結末ー特命全権大使・砂谷ーが明治天皇の孫だという驚きの設定を用意してくれていて読後感は爽やか。
2016年04月18日(月) |
落窪物語/田辺 聖子 |
かたりべ草子二
えらいサクサク読めると思ったら、あとがきで小学校上級から中学生むきのための、平凡社名作文庫として書いたものだった。
2016年04月13日(水) |
十二の嘘と十二の真実 あさの あつこ |
本当は怖いグリム童話のような、どこかの国の后と侍女の話と日本のお婆さんの話とが交互に描かれる構成で、だんだんと読み進めるにつれて、どちらの話も歪んで不気味で薄気味悪く、どちらが嘘でどちらが真実というのではなくて、どちらもウソなんですよ、作り話ですよ〜って感じ。
どちらもツルという女が登場する。一方は殺人を犯したり、死後は他人にとり憑いて操り表向き良い老婆を装っていたが本性は恐ろしい。もう一方は侍女となり国の后をおだてるだけおだてて自分だけが信頼を得て周りを殺しつくし、最後は人を食ってしまう。 どちらも気味が悪くて恐ろしい…そして2つの話が終わった後に出てきたツル。 でも どう繋がっているのかは分からずじまい。
最後に『崖の下』 何故かニンゲンの子が狼に育てられて、いわゆるオオカミ少年なんだけれど、少年は自分が本当はニンゲンなのだということには気がついていない。
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