読書記録

2015年01月30日(金) ランドセル俳人の5・7・5                  小林 凛



  いじめられ 行きたし行けぬ 春の雨


 たった944グラムという未熟児でこの世の生まれた男の子が、楽しいはずの小学校で入学と同時に受けた壮絶ないじめ。
最終的に母は不登校という選択をしたが、それでもその決断をするまでに四年有余を要した。
そんな11才の凛少年の生きる希望は俳句を詠むことだった。


      俳句はいつも

 春は俳句の花が咲き
夏は俳句の稲育つ
秋は俳句の実がみのり
冬は俳句の風が吹く





そして そんな凛少年も中学生になり、2冊目の句集ができた。

冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに

2冊目の句集は 聖路加病院の日野原重明先生との90歳の差を超えた往復書簡も挿入されている。


 羽化したる天道虫や我に似て

 春の陽の我が生き様を照らしけり

 聖路加の師にいだかれて虹の橋


中学生になった凛少年は母の背を越した。
私はそのことがいちばんうれしい。
よくぞ育ってくれた、とできることなら直に伝えたい。
















2015年01月24日(土) 長い長い殺人            宮部 みゆき

 ある事件に関係する人たちの財布が次々に登場して、自分の持ち主である主人の物語を語っていく。

刑事の財布、強請屋の財布、少年の財布、探偵の財布、目撃者の財布、死者の財布、旧友の財布、証人の財布、部下の財布、犯人の財布、そしてエピローグに再び刑事の財布が登場する。

単に不倫カップルの交換保険金殺人と分からせておいて、途中に全然別の殺人事件(死者の財布の章)を絡ませたりしてなかなかに面白かった。
そして不倫カップルが犯人と思いきや、ある意味偏執狂の実行犯が突然登場して面食らってしまった。
それが作者のテクニックなのだろうけれど、意外な結末というか事件の真相は最後まで知らせないなんて、上手いなぁと感心した。















2015年01月13日(火) 白蓮れんれん                林 真理子


 「筑紫の女王」と呼ばれた柳原白蓮が、夫・伊藤伝右衛門に三行半をつきつけて、若い恋人・宮崎龍介のもとに走った事件は、白蓮が大正天皇の従妹であったということとも相まって、大正の世を騒然とさせた一大恋愛スキャンダルだった。
先の朝ドラ「花子とアン」で村岡花子の腹心の友として登場していた葉山蓮子のモデルである。
テレビでは表現できない赤裸々な事実ということだったけれど、テレビでの蓮子=あきこの印象がいい意味でとても強かったので新鮮味は感じなかった。
あの時代、有名な良家の女性が年下の男性と駆け落ちをすること自体が大事件だったのだ。


『よるべなき吾が心をばあざむきて今日もさながら暮らしけるはや』

そうだ、結婚などというものはそうだ。けれど世の女たちは皆そのことを隠している。不幸な人妻がみじめなのではない。みじめなのは不幸なことを世の中に知られてしまう人妻だ。さらにおぞましいのは、不幸なことを大声で言いたてる女なのだ。













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