読書記録

2013年06月09日(日) 花散らしの雨 みおつくし料理帖           高田 郁

 シリーズ2作目


老舗のはずの神田須田町の料亭「登龍楼」からの嫌がらせで、「つる屋」に付け火されて澪と店主種市は店を失なった。
そんな時 幼馴染の野江・あさひ太夫から思いがけず借りた10両と、種市の亡くなったおつるの嫁入りに貯めこんでいたお金とで、澪は「つる屋」再建に乗り出した。

口入屋で ふき という少女を雇い入れてから、澪が考えていた創作料理がつる屋よりも先に「登龍楼」で供されて、つる屋のほうが真似したと噂されるようになった。

それでも澪は自分と似た境遇のふきは責めずに 「登龍楼」へ乗り込んで解決していく。これは「登龍楼」の板長の仕業で 主人 采女宗馬の知らないことだった。

澪と芳が住む裏店の住人 伊三次・おりょう・太一 一家や御典医の息子でありながら町医者と名乗る源斉など、江戸に出てきて知り合った人々との心温まる日常が綴られている。
そして 「いよぉぅ 下がり眉」と 揶揄してくれる浪人風情の小松原と。


俎板橋から   ほろにが蕗ご飯
花散らしの雨  こぼれ梅
一粒符     なめらか葛饅頭
銀菊      忍び瓜

こぼれ梅とは味醂を作ったときに出来る絞りかすのこと。
そのまま食べるらしい。


○忍び瓜 レシピ

材料  キュウリ3本
胡麻油 小さじ1
砂糖  小さじ1
酢   大さじ2・5
醤油  大さじ2・5
だし  50cc
鷹の爪 適量


キュウリを板摺りし、めん棒などでたたいて 小口切りする。
鷹の爪は種を取って、細目の小口切り。
キュウリをさっと湯がいて笊に取る。
熱々のキュウリを一時間以上調味液に漬けて、仕上げに白ごまをあしらう。











2013年06月07日(金) 八朔の雪 みをつくし料理帖                高田 郁

享和二年水無月、ことさらに暑い夏、主人公の澪は 水害で両親を亡くし八歳で天涯孤独の身となった。
孤児としてさまよっていたとき、「天満一兆庵」の女将に救われ成長するにつれ板場に入るようになった。
しかし その奉公先も火事で失い主人嘉兵衛と女将芳ともに江戸で店を出す息子のもとに来たが、そこは人手に渡っていて若旦那の佐兵衛は行方知れずになっていた。
澪は「天満一兆庵」を再建すべく 化け物稲荷の導きで神田御台所町の蕎麦屋「つる屋」で働くようになって、上方と江戸の味や水の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で日々研鑽を積んでいく。

狐のご祝儀では ぴりから鰹田麩

八朔の雪では ひんやり心太

初星では とろとろ茶碗蒸し

夜半の梅では ほっこり酒粕汁

関西人の私には 馴染みの料理が澪の努力とともに紹介されていて面白く読んだ。

幼馴染の野江も 澪と同じように少女の時の水害で何もかも無くしていて、吉原の翁屋であさひ太夫という花魁になっていた。(これは後半のオチのような展開になっていた)

野江は 《旭日昇天》の相
天下取りともいえる強運の吉祥だが、器以上の運であれば、却って不幸になる

澪は 《雲外蒼天》の相
頭上に雲が垂れこめて真っ暗な苦労が絶えん人生で艱難辛苦が降り注ぐが、それを抜けたところには青い空が広がっている。








2013年06月01日(土) 終わらない歌             宮下 奈都



☆シオンの娘
御木元玲は歌で生きることを目指して来たが、
上手さを周囲と比較すること(一番になれない)で自分に天井を作ってしまい行き詰まってしまう。

☆スライダーズ・ミックス
原千夏は高校を卒業後、憧れの女優の主宰する劇団で舞台を目指し自活するが、育ちが良すぎると呟かれる。

☆バームクーヘン、ふたたび
里中佳子は体調が悪いからと欠席するつもりだったクラス会に行った。
地味な日本文学科で4月からは大学3年生になる。
必修でもない伊勢物語で論文を書いて学内の懸賞論文に応募して悪目立ちしていた。


☆コスモス
東条あやは短大を卒業して、誰も知り合いのいない北陸の町で眼鏡を作る会社に就職を決めた。
この章だけ、高校の同級生ではない会社の先輩である奥野さんが登場する。


☆joy to the worid
育ちが良すぎる、といわれた千夏は笑おうと思ったけれど、笑えなかった。
それでも新たなオーディションを受けて、うどん屋の娘らしく貪欲になろうと思った。


☆終わらない歌
若手公演というチャンスが巡ってきて、千夏はプロフェッショナルな歌い手が必要だと言われ、玲を自分の劇団に連れていくのだった。
そして玲の歌の力は終盤に一気に描き込まれるのだ。



20歳になった同級生たちの連作短編集で、私は知らなかったけれど『よろこびの歌』という物語の続編らしい。



意味もなく生まれて死んでいく私たち。だから誰かのために、何かのために、って考えなくても、どうせもともと意味なんてないんだ。自分がいいと思うとおりに生きればいいんだ。








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fuu [MAIL]