2013年04月25日(木) |
夜中にジャムを煮る 平松 洋子 |
私は夜中ではなく昼間にジャムを煮るけれど、図書館で物色していて食いしん坊の私ゆえ思わずタイトルにひかれて読んだ本。
著者はフードジャーナリスト、駄洒落ではないがなかなかに面白い文章を書かれていた。
内容は著者のこだわりの台所道具とか食材とか、とても参考になった。 私は道具にこだわるほどの器量は持ち合わせでいないが、漆器は大好きだ。 できることなら家具も含めていろんな漆器を揃えたいと思っている。
そして著者が言う最高の道具とは ”手”だった。 "手” で ちぎったり、合えたりこねたり ホント最高の道具だ。
フードジャーナリストの仕事としていくつかの国の台所事情を伝える。 韓国や沖縄などの普通の家庭に入り込み、それらの人々の普通の食事を紹介する。
著者が子供の頃に食べていたもの、母の手作りのちらし寿司、なかなかいいなぁと思う。 そして何も口にしたくない日には舐める、齧るでいいのだと。
読み終えて 何かしらジャムを煮たくなった。 フルーツの芳醇な香りに満たされたいと思うのだ。
2013年04月17日(水) |
ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂 マーギー・プロイス |
アメリカの女性文学家が、アメリカに残された記録や資料をもとに書いた物語。
土佐の貧しい漁師の息子に生まれ、十四歳のときに乗り組んだ漁船が嵐で漂流、無人島にたどりつき、やがてアメリカの捕鯨船に救出され、その船長の養子になってアメリカの教育を受け、約十年後、日本に帰り着く。すぐれた才能と海外の広い知識を買われて、平民の身でありながら幕府直参に取り立てられ、中浜万次郎と名乗る。 以後、幕末から明治にかけて、日本に海外事情を伝え、開国を勧め、また英語教育に努め、アメリカの科学技術の紹介などにも尽力する。
彼の一生は、波瀾万丈の冒険小説であり、壮大な立身出世物語であり、また感動的なヒュウーマンドラマであり、また一方、激動の幕末から明治にかけての日本とアメリカの政治戦略の縮図でもある。
それでも私が感じたのは、万次郎の運が良かったということに尽きる。 捕鯨船の船長がいい人だったことと、時代が万次郎を認めたということだろう。 それもこれも万次郎の好奇心と勤勉との賜物ではあるけれど。 この物語は私なんかのおばちゃんが読むよりは、小学校高学年から中学生にお薦めしたい。
2013年04月10日(水) |
清冽 詩人茨木のり子の肖像 後藤 正治 |
清冽とは 水などが清らかに澄んで冷たいこと。また、そのさま。
これは 「婦人公論」に17回にわたって連載されたものを骨格としてまとめたもの。 そしてタイトルは作者が詩人茨木のり子に対して感じたイメージであろうか。
私は今でこそ 『つぶや句』 と称して 俳句とも川柳ともいえない駄作を楽しんでいるが、若い頃はかなり詩にあこがれていた。
人が宿す、奥深き思念の層へと届いてくる言葉−それが詩である。
と あとがきにもあったように詩は魂を揺さぶる言葉だと思っていた。 とは言っても 茨木のり子の詩を何一つ覚えてはいないのだ。 そしてこの本は詩集ではないので 茨木のり子の詩はあまり掲載されてはいない。 でも私の魂は汚れてしまったのだろうか…詩集を読みたいとは、さほど思わない。 ただ 川崎 洋 と同人を組んでいたことを知ったのは収穫だった。
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