2012年04月25日(水) |
母のはなし 群 ようこ |
たぶん・・・群さんのお母さんのおはなしなのだろう。
昭和5年、子煩悩な父と大らかな母の4番目の子として生まれたハルエ。 だが父の急逝で生活は一変するも健やかに成長し、やがて見合い結婚する。 でも財布を任せてくれないのに自分浪費家の夫に悩まされ・・・、大学生になった長女のアカネや息子のヒロシにも背中を押されるように離婚する。 ・・・そして長女が文筆家になって成功したあたりから、いままで常識人だったはずのハルエが娘にたかる浪費家になっていくのだ。 そんなちょっとオトナシかった少女がおばあさんになるまでの物語。
物書きの人が自分の生い立ちや親を題材にしてエッセイとか物語を書くことも多いだろうけれど、はちゃめちゃな親も結構いるんだなぁ、と。 まぁ、どこまでが本当なんだろう、と思わないでもないが,父親とは疎遠になったままなのだろうか。 結局のところ、母も父も人間性としては大差なかったことになるのだから。
2012年04月19日(木) |
獅子は死せず 中路 啓太 |
「毛利勝永」(もうり・かつなが 1577 〜 1615)とは、忠義と武勇に優れた豊臣秀頼配下の大坂方武将内での大名首朱功記録保持者であり、真田幸村と共に徳川家康を後一歩まで追い込み、豊臣秀頼最期の時まで付き従いながらも、後世の評価を全て真田幸村に持っていかれた為に
「惜しいかな後世、真田を云いて毛利を云わず」
とまで評された戦国無双の武士。
一説には秀頼の介錯をしたのは勝永だとの説もあるらしい。 そして この物語では勝永の最期は書かれていない。 どうかして生き延びた・・・というような希望的憶測で終えているのだ。
勝永と妻のようとの夫婦愛、そして臣下の杉助左衛門と商家の娘ねいとの関係が戦場に咲いた花のようで心慰められたことだ。
それにしてもこの物語の主人公である勝永も そして幸村も哀れなことだ。
豊臣家の首脳部はいつまでたっても信繁(この物語では幸村のことを終始信繁としている)らをただの牢人上がりと見なして重用せず、それでいて、秀頼自身も、主立った直臣たちも、強い指導力を発揮できなかった。そのために見方の企てはことごとく失敗し、この城の南面における、おそらく最期の戦いにいたっても、秀頼の出馬もなく、諸将がばらばらに動く結果となってしまった。
2012年04月02日(月) |
花の下にて春死なむ 北森 鴻 |
三軒茶屋の路地裏にあるビアバー『香菜里屋』のマスターを中心にして、そのビアバーの常連客たちが登場する6つの短編の物語
○花の下にて春死なむ フリーライター飯島七緒の視点から、急死した俳句仲間の隠された人生の軌跡が語られる。
○家族写真 離婚歴のあるサラリーマン野田克弥の視点から、駅の貸本に挿まれていた家族写真にまつわる秘密が語られる。
○終の棲み家 多摩川の河川敷の小屋に棲む老夫婦の写真を撮り続けたカメラマン妻木信彦の視点から。
○殺人者の赤い手 派遣プログラマー笹口ひずるの視点から、香菜里屋の近所で起きた殺人事件と「赤い手の魔人」という怪談騒ぎの謎が語られる。
○7皿は多すぎる 古参メンバー東山朋生の視点から、回転寿司屋で鮪ばかり7皿も食べた男の謎が語られる。
○魚の交わり 飯島七緒の視点から、1話に登場した俳人の過去にまつわるもう一つの秘密が語られる。
本のタイトルに引かれて読みだしたが、物語がビアバーのマスターを中心にして語られているので、私の苦手な短編集という感じはあまりなかった。 だから主人公はマスターの工藤ではなくて、香菜里屋というビアバーこそが主人公なのだと思ったことだ。
覚書 はるか古代、推古天皇が飛鳥の豊浦宮に都をおいた。 ところが山口県の長府にも豊浦宮があったようだ。 推古天皇よりも遡る神話時代に仲哀天皇が設けた宮こそがもうひとつの豊浦宮なのだ。。。
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