2012年03月26日(月) |
暁英 贋説・鹿鳴館 北森 鴻 |
日本が江戸から明治へと、恐ろしいほどの混沌から抜け出そうとしてもがいていた頃、日本政府に雇い入れられた若き英国人建築家―のちの鹿鳴館建造担当者―ジョサイア・コンドルを主人公とした歴史ミステリー。
工部大学校造家学科教授兼工部省営繕局顧問としてのコンドルの多忙な日々が始まった。 お雇い外国人という立場でありながらも、異例なほどに日本文化を愛し日本という国の光と影の部分も見ながら、日本趣味の昂じたコンドルは画家河鍋暁斎に弟子入りし、「暁英」という雅号をもらう。日本人を妻とし日本に骨を埋めた人物だ。
しかし惜しくも作者の北森鴻はこの作品の完成を待たず不帰の人となってしまった。 ジョサイア・コンドルの人となりはよく分かったけれど 贋説・鹿鳴館というタイトルにこめられたそのすべての謎の答えは作者の頭の中に仕舞われたまま天国に行ってしまった。 私の頭脳では想像すらも難しいことだ。 あぁ、完成したものが読みたかったなぁ。。。
時代は容赦なく人を飲み込んでゆく。 そこであがくか流れに身を任せるか、選ぶ自由はあっても、どちらにせよ行く末の自分を予測することできない。
作家であり慶應義塾の大学病院で精神科医としても勤務する。 「楡家の人びと」や「どくとるマンボウ」シリーズで知られる。本名は斎藤宗吉。
1927年5月1日生まれ。2011年10月24日死去。満84歳没。
歌人 斎藤茂吉の次男。兄は医師でエッセイストの斎藤茂太。娘は会社員兼務でエッセイストの斎藤由香。 はてなワールドより
この本の著者、北 杜夫は 『母の影』を そして 娘の斎藤由香は 『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方 』というタイトルで本をだしている。
北 杜夫は決してマザコンではなかったと思うけれど 青山の大病院のお嬢様として生れ、九歳で齋藤茂吉と婚約。一流を好みながら贅沢を嫌い、権威をものともせず、常に前向きマイペース。関東大震災、病院の全焼、東京大空襲などの災難を、気骨をもって毅然と乗り越え、89歳で大往生を遂げるまでに海外108ヶ国を踏破。 息子にも孫娘にも本を書かせるような生き方をした女性、ある意味人生を謳歌したということなのか。
人は、齢をとるにつれ、両親に対する感情もさまざまに微妙に変化するものなのだ。
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