これもタイトルにひかれて読もうと思った本だ。
『秋麗』 まさに人生の秋を生きている私がこのまま老いていっていいものか・・これからどんな冬が待っているのだろうか・・暖冬なのか、厳寒なのか、日々じわじわと突きつけられてくる老いを実感しながら生きている。
作者は少女期に受けた性暴力という事実と、昔から日本に根強くある家父長制度に疑問をもちながらも結婚して1女を設けた。 それでも副タイトルにあるように家庭内別居34年の答え、を 結果的に探すかのような生活を続けた。 作者の言う晩夏から秋へ、初秋から晩秋へと人生のシーズンは容赦なく移り変わっていくことをお互いが病をえて気づかされていくのだ。
人はよき家族に囲まれて死にたいと願っている。でもどんなにたくさんのよき家族が見守ってくれていても、誰一人一緒に死んでくれるものもいなければ、代わって死のうと申し出てくれるものもいない。死ぬのは当事者ただ一人。人生の終焉のときに死という一人旅を免れることのできぬなんと人間は孤独なものよ。
どちらが先立つかは神のみぞ知るである。よき人の死を見送りながら、見送りながら生きつづけることが、どんなに存在としての孤独感を深めさせていくかを身をもって知りはじめているだけに、せめて生ある間は、Kとはやさしくあり合いたかった。いずれにしても行く手には死という名の一人旅が待ち受けている。だとすれば可能な限り、Kとわたくしの二人旅をつづけていきたい。
夫が出張中のある日、主人公恭子の元に、関口真弓と名乗る女から電話がかかってくる。その女は、夫隆之の愛人で、隆之の子を妊娠している、と高圧的な態度で恭子に明かす。不妊症だった恭子はその事実に愕然とする。子どももできない上に家事もろくにできない女に妻の資格はない、と罵られ、はらわたが煮えたぎる思いの恭子は、夫が出張中の今の内に、と関口真弓を毒殺する。 犯行は完璧だった。証拠も一切残さなかった。しかし、事件の報道をどんなに待っても、関口真弓が妊娠していたという事実はない。夫は彼女との関係を認めたが、しっくり来ないものがあった。自分は一体誰を殺したのか、あの電話の主とは別人だったのか。自分は嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子だが、捜査の手は確実に迫ってくる。
主人公恭子の職業や夫の職業を変えてテレビドラマ化された。 (私は見ていない・・知らなかったのだ) あとでドラマのホームページをみたら、キャストがなかなか面白そうで見逃したことを残念に思う。
それにしても夫の愛人に妊娠を告げられたことで簡単に殺人を実行できるものだろうか。 まぁミステリーではなくて最初から犯人が主人公なのだからそういう設定なのだろうが、プロローグの意味が物語の最後のほうで解き明かされる。 これが面白かった。
そしてこの物語、最初は自費出版だったそうな。 すごい!!
1台の馬車につけられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引張ろうとするように、一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆく―
作者があとがきに記したように、同じ時代に同じ場所で生きた四編の物語が書かれている。
○悪禅師 義経と同腹で京の醍醐寺に預けられていた今若が、異母兄頼朝の旗揚げをきいて得度して全成と名乗っていたにもかかわらず矢も盾も堪らず駆けつけたのだった。
○黒雪賦 石橋山の戦いで頼朝を救ったことから重用された梶原景時が主人公。 鎌倉幕府では権勢を振るったが頼朝の死後に追放され、梶原景時の変として一族とともに追放された。
○いもうと 北条政子の妹保子が主人公。 全成と夫婦になって頼朝の子、幼名千万(実朝)の乳母夫となる。
○覇樹 政子の弟の四郎義時。頼朝の死後、鎌倉幕府は実質政子の父である時政から四郎、五郎といった北条氏が実権を握っていく。
まぁ、それにしても戦国時代に負けず劣らず明日は我が身の世界であることか。きのう勝っても明日は寝首を掻かれて敗残の将・・。
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