2003年05月10日(土) |
エンブリオ 箒木 蓬生 |
内容 九州の小さな海岸の町。贅沢な施設と高度な医療で知られるサンビーチ病院。不妊夫婦に福音をもたらし患者たちに「神の手」と慕われる院長の産婦人科医、岸川卓也のもう一つの顔。男性の妊娠、人工子宮、胎児からの臓器移植…。生殖医療の無法地帯に君臨する医師の狂気の華がひらくとき。生命の尊厳と人間の未来を揺るがす書き下ろし長編小説。
2003年05月06日(火) |
虚構の家 曽野 綾子 |
ホテルの社長である日和崎の中2の息子は過度の潔癖症、小6の娘は虚弱体質。
私大の教授の呉の息子は東大を目指す都立高3年生。 睡眠薬がなければ眠れない母を女中代わりにこき使う。 東大を目指す兄を中心に家がまわっているので、高校生の妹は年上の男性と交際をしている。
日和崎の息子は登校拒否を経て自殺する。
サイダーが無いと勉強できないという息子のために、睡眠薬の飲みすぎでフラフラの状態でサイダーを買いに出かけて交通事故で死亡する母。 娘は家をでて出産する。
虚構の家は、現実にあり得ないうその家ではなくて、現実の家だったのです。それは私の家であり、あのたの家でした。私の家、あなたの家は「今のところはまだ崩壊はしていない」が、「明日は崩壊するかも知れない、あるいはしないかも知れない」不安定な存在です。正常と異常は一本の連続した糸なのです。
我が家にも 親の問いかけに何も話さない娘がいる。 私は我が家を虚構の家とは思わないが、危うい・・とは思う。
昭和五十年、洋上にいる息子へ宛てられた母・晴子の長大な手紙。そこにはみずみずしい十五歳の少女がおり、未来の母がいた。三十になって知る母の姿に激しく戸惑いながら、息子・彰之は初めて母という名の海へ漕ぎ出していく 戦前から戦後へと続く母・晴子の回顧と独白は、彰之自身の記憶の呼び声となって波のごとく重なり、うねり合う。母はなぜこうも遠いのか。母とはいったい何者か。
読みごたえのある本だった。 静かに生きているようで、心の中がしっかりしている女性の物語が私はとても好きだ。人は自分に無いそれでいて自分に近いものを持っている人にあこがれることがある。私は自分を知ってもらいたい・・と日々心の中で叫んでいる。私も主人公の晴子のように息子と娘にあてて、長い手紙を書いてみたいものだ・・。でもたぶん・・書けないだろう・・書きたいのに・・!!
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