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※いつものとおり長いので、せっかちな方はずっと下までスクロールして、 「松坂はジャイロボーラーなのか?」「真のジャイロは実現できるのか?」 というラストの2つだけをお読みください。
この冬の話題を独占しているレッドソックスの松坂大輔だが、その中でも 日米のマスコミ各紙がこぞってとり上げているのが「ジャイロボール」だ。
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日本の野球少年たちには 既に周知の魔球であった。
野球に興味のない方にとっては、当然ながら「ジャイロボールって何?」 「大リーグで流行ってるの?」という感じだろうが、実はジャイロボールは 日本で生まれた魔球の名である。特に野球少年たちには既に周知の魔球なのだ。
ジャイロボールは、7年前に発表された「魔球の正体」という本の中で、 物理的に有り得る魔球として、著者の姫野氏と手塚氏により命名された。
しかし、ジャイロボールの名を野球少年達に広めたのはその本ではなく、 実は、アニメも放映されている週刊少年サンデー連載の「MAJOR」に他ならない。 話題になる前からジャイロボールを投げていた主人公の投手茂野吾郎は、まさに ジャイロボーラーの先駆けである。ちなみに私は「魔球の正体」は今だに読んで ませんが、このマンガは連載当初から好きでした笑。作者の満田拓也氏は、 間違いなく「魔球の正体」を読んだはずである。そして閃いたのだろう。 「これだ!これこそ主人公のウイニングショットにちょーどいい!」と。
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松坂のジャイロボール動画?
「魔球の正体」の中で「ジャイロボーラー(ジャイロボールを投げている投手)」 として、著者直々のご指名を受けた数名の投手の名が挙げられている。その一人に 松坂大輔の名が挙っていたのだ。著者が作成した資料の中には、松坂を題材に分析 している箇所もあり、松坂の球がジャイロである証拠としている動画もあった。 YouTubeを見ると、上記の他にもこの動画やこんな動画も掲載されている。
※どれも微妙…。3番目の動画はフツーにカットボールだと思うのだが?!
ライフルの弾丸もジャイロ。
さて、本当に松坂大輔はジャイロボーラーなのか?という疑問の前に、そもそも ジャイロボールって何なのか?上記の動画ではよく分からないのだ。
「MAJOR」の茂野投手のジャイロボールは、球速が落ちずに手元でホップする 超速球として描かれている。本当にそんな球なのか?そうならば騒ぐ価値がある。
普通に直球を投げれば、打者から見る球はバックスピン回転となる。一方ジャイロは、 上のイラストのように螺旋回転しながら飛んでくる。ライフルから放たれた弾丸や、 アメフトでクォーターバックが投ずる楕円形のボールもジャイロ回転の飛行物体だ。
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球速が落ちない =手元で伸びる感覚
で、螺旋回転するから何なんだ?というわけだ。どんな変化をするのだろうか? 実はジャイロは変化の仕方はあまり問題ではない。それよりも、投手の手元を 放れた時の球速と、打者の手元に来た時の球速差が少ない事が最大の特徴らしい。 (※上記は「フォーシームジャイロボール」の場合)
ちなみに、投手の手元を放れたボールは、バッターの手元まで来る間に、空気抵抗 によって確実に速度が落ちる。しかし「魔球の正体」の中での計算によれば、 初速が同じ直球の終速と比べて、ジャイロの方が終速が10km/h程度速いらしい。
これが本当なら間違いなく打てない球である。なぜならバッターは、 投手の手元を放れた時点の球速と球道を目視して、ホームベース通過時の球速と 球道を予測してバットを振り始める。つまり、投手の手元を放れた時点では、 その球が直球か、球速の落ちないジャイロかは全く判断出来ないのだ。 直球と思って反応する前にボールが手元に来てしまうことになる。
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球速は落ちないが、 球は落ちていく?
ジャイロボールは球速が落ちないうえに、さらに変化もするという。 普通の直球はバックスピン回転により、引力に逆らって浮く力「揚力」が発生して いるが、螺旋回転のジャイロボールはそれが発生しない。したがって、引力に 逆らえないジャイロボールは、通常の直球の放物線よりさらに下へと落ちるらしい。 球速は落ちずに球筋は落ちる。これは打てない。ちなみに、ジャイロに云わせれば 「直球の方が変化球」とのこと。バックスピンをかけて、引力に逆らって浮いてる ように見せる変化球ということになる。ジャイロは引力通りに落ちているだけなのだ。
さらに、ジャイロ回転の軸を左右上下にずらすことにより、「MAJOR」の茂野君 のようなホップするジャイロや、高速スライダーのようなジャイロなど、変化も つけられるとのこと。あくまで物理的な机上論だそうですが…。他にも色々と 細か〜いウンチクがあるので、興味ある方は下記サイトをチェキしてみよう。
■ジャイロボールとは?「PITCHING WORLD」
■ジャイロボール「Wikipedia」
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ジャイロボールの様々な変化を総称すれば、すなわち、
「球速が落ちずに変化する球」
というところだろうか。 とにかく「球速差がない」という点にフィーチャーされる球である。 (※くれぐれも上記はフォーシームジャイロの場合)
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松坂はジャイロボーラーなのか?
結論から云えばジャイロボーラーではない。これは簡単な話である。 松坂は自ら「カットボールの投げ損ないが偶然にそういう球になる時がある。 意図して投げられない」と云っている。投手の「持ち球」と云えるのは、 意図して投げれてこそである。だから「ジャイロボーラー」ではない。
それに、松坂の球でジャイロボール疑惑がかけられているのは、 彼のウイニングショットである140km/h台の高速スライダーだそうだ。 または、145km/hのカットボールがそうだという説もある。
いずれにしろ、「新しい魔球を投げる奴がいる!」的な論調の話題なら、 既存の高速スライダーではなく、新しい別の球を指してほしいところ。 《今まで投げていた球の一つが実はジャイロだった!》 と云うのでは、ワクワクする新しい魔球の話とは云えない。大して面白くもない。 《主人公の必殺技に新しい名前がついたよ〜!》という話にすぎないのだ。
もっとも、松坂は「高速スライダーもカットボールもジャイロではなく、 ジャイロはジャイロで別にある」とコメントした。これは面白かった。 あいかわらず彼は、サービス精神旺盛のコメントをする奴だと思った。
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真のジャイロは実現できるのか? 机上の魔球にすぎないのか?
アメリカのマスコミのみならず、メジャーリーガー達も 色めき立っている。マスコミ嫌いのあのボンズでさえも、日本の記者が 「ジャイロボールの映像があるんだ」と誘ったら目つきが変わったほどだ。 特にバッターにしてみたら、新しい魔球を体感してみたいと思うのは 本能であり、我こそがそれを打ち砕きたいと感じるこそ、この新世紀の 新魔球といわれるジャイロボールに興味深々なのだ。
しかし、ピッチャー出身の僕は思うのだ。ボールをリリースする時に、 指先からボールに最大限の力を伝えられるのは、間違いなく直球リリースの方だ。 ジャイロはボールは、ボールに横回転を与えながら前へ押し出すのである。 ジャイロリリースで150km/hの初速が出せる腕の振りがあれば、 直球なら160km/h以上は余裕で出せるはずだ。そっちの方がよくないだろうか? そもそも、ジャイロリリースで150km/hは無理。そうなると現実的にみて ジャイロとは、高速スライダーやカットボールに限りなく近い球でしかない。 ま〜、それはそれで究極に打ちにくい魔球であるのだが…。
いずれにしろ、この「ジャイロボール論争」は、世界中の野球ファンの 中に眠り続ける最もドリーミーな部分を刺激して、大いに野球を盛り上げて いるわけである。とっても結構なことではないか。それで十分だと思う。
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ジャイロが無くたって、カット、スライダー、カーブ、フォーク、 チェンジアップ、フォーシーム、ツーシーム・・・
すでに松坂は七色の魔球使いなのだ。 もうすぐシーズンイン。がんばってほしい。
070316 taichi
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