今年の春は寒くてなかなかお昼寝日和にならないが、それでもボクの庭には今年もたくさんのクローバーが生えてきたのだ。 寒い季節は敷いてもらった毛布の上でお昼寝する方が暖かい。 しかし、この季節は何と言っても直接地面に触って、春になって地面から芽を出そうとウズウズしている小さな種の声を聞いたり、地面から顔を出した草のヒンヤリとした感触を楽しむのが一番である。
最近ボクは新しく生えてきたクローバーのフカフカの葉っぱの上に前足を置くことに凝っている。 お腹は冷たい土の上に置いても、やっぱり前足の肉球で草の感触を楽しむのが最高なのだ。
今日ボクが笑顔なのも、草のヒンヤリとした感触を満喫しているからなのである。 やっぱり春は楽しいことがいっぱいなのだ。
今日ボクは突然ボスとアキコに抱えられ納屋に連れて行かれた。 連れて行かれた納屋の隅には何かケモノ臭い黒い毛のかたまりがあった。 ボスもアキコも「ゲンゾーがんばれ!」とボクを応援してくれていたが、何を頑張ったら良いのかさっぱりわからなかったので、ボクは頑張って毛のかたまりのニオイを嗅ぎまくった。 ーーーこれが今日の納屋事件でボクがしたすべてである。
ボクが一生懸命ニオイを嗅いだ毛のかたまりはタヌキだったらしい。 ボスもアキコも納屋に入り込んでしまったタヌキに外に出て欲しかったのに、臆病なタヌキが隅に頭を突っ込んだまま動いてくれないので、番犬のボクに何とかしてもらおうとボクを納屋に連れて行ったのだ。
「タヌキを追い払ってくれ」と言ってくれれば良かったのに、ボスもアキコも「タヌキを見た時ボクがどんなことをするのか」ということが楽しみで何も教えてくれなかったのだ。 せっかくボクの格好いいところを見せるチャンスだったのに、失敗なのだ!
結局このタヌキは番犬のボクではなく、ボスが頑張って追い払ったらしい。 ボスもアキコも「ニオイを嗅いだだけだったね」「ワンの一言も無かったね」と言っていたので、ボクは番犬の地位までボスに持っていかれるかとドキドキしたが、二人とも「ゲンゾーは優しい犬だよね」という結論に達していたのでちょっと安心したのだ。
タヌキは犬の仲間らしい。 アキコが「全然丸顔じゃなくてゲンゾーに似てたよ」と言っていた。
今日は本当に久しぶりに晴れて暖かい1日だった。 雨続きだったのでちっとも外に出てこなかったアキコが久しぶりに庭に出て来たので、ボクとアキコで庭を散歩した。
ボクの庭の隅にはフキが群生しているところがある。 ボクは毎日見て知っていたのだが、久しぶりに出てきたアキコはフキノトウがすっかり育って花を咲かせているのを見て「あぁ、私の天ぷらの具が」と言って悔しがった。 ボクは天ぷらを食べられないし、フキの花はとてもきれいなので、フキがアキコに見つからずに花を咲かせたのはとても嬉しい。
フキノトウが大きく育ってしまった状態を「薹が立った」と言って盛りを過ぎた例えに使うらしいが、フキノトウを食べ物だと思わなければ花が咲いた状態はまだまだ美しい盛りなのだ。 ボクが見るところ、アキコはもう「薹が立って久しい」感じだが、このフキの花はまだまだ盛りでとてもきれいなのだ。
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