ボクの庭のモミジに花が咲いた。 モミジと言うと秋に葉が紅く染まってきれいなので秋にしか 見ない人も多いらしいが、モミジにもかわいい花が咲くのだ。
花の咲く時期、モミジは薄紅色の芽と黄緑色の葉と紅色の花 が一緒に見られてとてもきれいである。 近くに寄らないと新芽が出てきただけのように見えるのでつ い見逃してしまうのだが、かわいい花がちゃんと咲いている のだ。
ボクの庭にモミジの木があるのでボクは1年中モミジを見て いるのであるが、ボクが一番好きなモミジはやはりこの時期 のモミジである。 秋のモミジは何となく淋しいが、この時期のモミジはとても 生命力に満ちあふれていて、見ているととても元気になる。 満開の桜も良いが、こんな風にひっそり咲いている花もなか なか良いのである。
眠くて日記をさぼってばかりいたボクであるが、そろそろマジメに 日記を書いてみようかと思う。 なぜならボクのまわりの春が素晴らしいからである。
今日、庭の裏の菜の花畑に行ってみたら、菜の花も満開、川の向こ うの桜も満開で、素晴らしい景色であった。 アブなどの虫たちもブンブン音を立てて飛び回って春を喜んでいた。
素晴らしく気持ちのいい日だったので、写真も大きくしてもらった。 ボクが眠い写真よりもこういう写真が大きい方がちょっと嬉しい。
何だかしばらく日記をさぼってしまった。 なぜ日記をさぼってしまったのか、それは毎日眠いからなのである。
アキコは高校生の時に遅刻した理由を先生に聞かれて「寝坊した」と 言ったら「腹が痛いとか、めまいがするとか、もっとまともな言い訳 をしろ」としかられたことがあるらしい。 なかなか潔くて良いとボクは思うのだが、高校生は大変らしい。
でもボクは犬なので言い訳はせずに堂々と男らしく言おう。 「眠かったのである。」
ボクがどれだけ眠かったのか、証拠写真もつけてもらった。 ベッドの上で寝ている間にベッドが落ちて斜めになっても気持ちよく 眠っていたボクの写真である。 しばらく日記をさぼってしまったので、大きい写真をつけてごまかし てもらうことにしよう。 ごまかすのは男らしくないけれど、こんな春の日のお昼寝は最高に気 持ちがいいので、みなさんにも推奨したい。 それでは、また。おやすみなさい。
2006年03月27日(月) |
どうして鎖がついているのか |
ボクはかなり乱暴者の犬らしいのである。 ボクは乱暴者でも男らしく生きているので満足なのであるが、アキ コが時々「おとなしい犬をダッコして優しく可愛がってみたい」と いうようなことを言うのである。
ボクもたまにはおとなしく可愛がられてみようかと思うのであるが、 アキコに可愛がられているうちにだんだん興奮してきて、つい大暴 れしてしまうのだ。
最初はボクのすぐそばでボクと遊んでくれているアキコは、ボクが 暴れ出すとだんだん後ろに退いていって、最後には鎖がギリギリ届 かないところまで退いてしまう。
今日もおとなしく可愛がられていたのだが、気がついたらアキコの 手にしか届かないところにいた。 ボクの鎖はどうしてついているのだろうとずっと考えていたのだが、 どうもこの鎖はアキコがボクから逃げるためについているらしいと いうことが今日わかった。
今日もまたボクは一つオリコウな犬になった。
今日はボクの日記にはかなりそぐわない花の話なのである。 この花はクリスマスローズという花の仲間らしい。
今日、ボクは散歩の時にいたずらをしてお隣の畑の横の草む らに入り込んでこの花を見つけたのである。 きれいな観賞用の花など一つも育てていない畑にどうしてこ の花が咲いているのか、ボクにはさっぱりわからない。 でも、お隣の畑で使うための竹棒がドカっと立てかけてある、 なんだかごちゃごちゃした空間の下にこの花がひっそりと咲 いていたのである。
ボクがこの花を見つけて黙って見ていたら、ボクを追いかけ て来たアキコもこの花を見てびっくりしていたようである。 こんなところにこんなきれいな花が咲いているなんて、誰も 気がつかないのである。
クリスマスローズはボクとアキコに見つめられて恥ずかしそ うにうつむいていた。 あぶなく惚れてしまいそうなほど可憐な花であった。
ここのところ暖かくて気持ちのいい日が続いているのに、庭の鶏小屋の 中でオス鶏たちが激しいボス争いの闘いを繰り広げているので、ボクは おちおち寝ていられないのである。
今までずっとチビという鶏がボスだったのだが、最近オスダッタという オスがチビにケンカをしかけて大騒ぎになるのである。 昨日の夜はチビがオスダッタにいじめられて、とまり木ではなく巣箱の 上で寝ていた。 もしかしたらもうすぐチビに代わってオスダッタがボスになるのかもし れない。鶏の世界のことはわからないが、オスが3羽もいると誰がボス になるかでいろいろ大変らしい。
ボクはアキコには勝てるがボスには勝てそうにもないので、このまま2 番目の地位で我慢しているつもりである。 ボクがボスに闘いを挑んだりしたらアキコが悲しむだろうから、男らし いボクがボスにボスの座を譲っているとも言える。 鶏たちも男らしくボスの座などにこだわらず、のんびりひなたぼっこを すればいいのに、まだまだ修行が足りないようである。
私はゲンゾーより下なんですね。byアキコ
ボクの散歩道の桜がとうとう咲いた。 近所の桜は少し前からもう咲いていたが、ボクの散歩道にある 桜は出遅れていたのである。 なかなか咲かないのでボクは少し心配になっていたのだが、今 日になってようやく咲いたのでボクはとても嬉しい。
それにしても桜の花の色は薄桃色でとてもきれいである。 毎日小さな植物の花が少しずつ咲いていくのを見ているのに、 どうして桜の花が咲くとこんなに嬉しいのだろうか。 桜が咲くとわくわくした気持ちになる。
これから毎日少しずつ花が増えていくのを見ながら散歩ができ るなんて、ボクはとてもしあわせである。 桜が咲いている時は1日5回くらい散歩に出かけたいものであ る。
ボクの庭のボケの花がまた咲いた。 他の花が咲いているのを見つけた時は「見つけた!」と喜ぶのに こんな言い方をしては悪いが、このボケの花は本当にしょっちゅ う咲くのである。
もう少し寒い時期に咲いてくれたら嬉しかったのに、今年は寒か ったので、冬には花を咲かせなかった。 ボケの花もまわりを見て「出遅れてしまった」と思ったに違いな い。桜と同じ時期に咲いてしまったのはとても運の悪いことだっ た。
しかし、アキコはボケの花もちゃんと写真に撮っていた。 アキコが撮った写真を見たら、ボケの花もなかなかきれいに写っ ていたので、ボクはちょっとボケの花を見直した。 しょっちゅう咲くのでありがたみを感じていなかったが、そうい う花こそじっくり鑑賞するのが良いのかもしれない。
今日、ボクは庭のクローバー畑の中に小さい花を見つけた。 これはキュウリグサという花なのだ。 葉を揉むとキュウリみたいな匂いがするからそんな名前がついて いるらしい。
ボクはこの小さな花が大好きなので、春になると毎日のようにこ の花を探すのである。 キュウリグサは決して「ここに咲いてるよ」と主張することなく いつもひっそりと咲いているのだ。
花の大きさが1〜2ミリくらいしかないので、この花を見つける のはとても大変なのであるが、見つけた時の喜びはとても大きい。 ガラス戸を開けたアキコの手にギュウニュウを発見した時よりも もっと大きい喜びなのである。
小さい花は「どうして私は小さいのかしら」と悩んでいるかもし れないが、小さいこともまたステキなことである。 小さいから良いことも世の中にはたくさんあるのだ。
今日、ボクは散歩道でてんとう虫を見つけた。 てんとう虫は竹の落ち葉の上をモゾモゾと動き回っていた。
ボクがじっくり見ていると、てんとう虫は竹の葉のアーチを登り始 めた。 裏を歩いたり表を歩いたりしながら、てんとう虫はアーチを一周し て下の枯れ葉の上で止まった。
時々落ちそうになりながらも、こんな葉っぱの表裏を自由歩き回る ことができるとはなかなか見事な技である。 ボクはてんとう虫がもう一周してくれないかと期待していたのだが 残念ながらそのまま枯れ葉の上から動かなくなってしまった。
でも、見事なてんとう虫の曲芸を見ることができて、今日はなかな か楽しかった。 てんとう虫の曲芸は格好良かったので、ボクもあんなアーチを駆け 登ることができる犬になってみたいと思った。
ボクがお散歩をするような場所には小さな野バラの木がたくさん 生えている。 バラと言うと庭で育てるような豪華な花を想像する人が多いらし いが、庭で育てるバラと違って、野バラはどちらかと言うと荒れ 地に生える逞しい木なのである。
今日は散歩の時にバラの木に新しい葉っぱがたくさん出ているの を見つけた。 バラはヤブの中だけじゃ飽きたらずに日なたに枝を伸ばして新し い葉っぱを太陽に向けて広げていた。
バラの葉っぱは小さくてギザギザしていてとてもステキな形をし ているのだが、この葉っぱを見つけたら注意が必要である。 うっかり下をすり抜けようとすると、必ずチクっとトゲが刺さる のである。
今日はボクもアキコもこのバラにチクっとされた。 でも、バラは「ここにいるから花が咲いたら見に来てね」と言っ ているようであった。 花が咲く時期になったらアキコと一緒に小さなバラの花を見に来 ることにしよう。
今日、ボクは散歩の時に桜の木がザワザワしている気配を感じた。 ふと見上げてみると、桜のつぼみが膨らんで今にも咲きそうな勢い であった。
少し前に見た時にはまだまだ固いつぼみだったのに、ここのところ の暖かさでみんな一気に膨らんだようである。 桜のつぼみは今にも咲きたくてたまらないという顔をして、みんな でボクを見ていた。
もうすぐ桜が咲くのだと思うとボクもとてもウキウキした気分にな った。 桜が咲くとどうしてこんなに嬉しいのかボクにはよくわからないが、 やっぱり春が来るのは嬉しいものである。
桜が咲いたら、ボスとアキコと一緒に桜の木の下でビスケットをつ まみにギュウニュウで乾杯することにしよう。
今日、ボクは庭で四つ葉のクローバーを見つけた。 前にもアキコが見つけたことがあるが、今回はボクが見つけたの である。 四つ葉のクローバーは4つの葉っぱが一緒になっているのでこれ を見つけるのは「4合わせ(しあわせ)」なことらしい。
前回アキコが見つけた時は喜んですぐに摘み取ってしまったのだ が、ボクはいつまでもボクの庭にしあわせがあるように摘み取ら ずにそのまま成長させることにした。 ボクの庭でしあわせがどんどん大きくなるなんて、とてもステキ なことである。
これからボクはこのクローバーが大きくなるように、毎日見守っ ていくのだ。 鶏のアイツがこれを食べてしまわないように、ひなたぼっこの間 もしっかりクローバーの番をすることにしよう。
ボクの庭のクロヤナギに花が咲いた。 アキコが「クロヤナギに花が咲いたよ」と教えてくれたのだが、 クロヤナギの花はどのあたりが「花」なのか、ボクにはさっぱり わからなかった。
でも近くで見てみるとなかなか面白い。 丸い部分にバッテン印がついているところがキュートである。
ここのところとても暖かくなって、土手や道ばたに草がたくさん 生えてきた。 冬の間、茶色っぽい色をしていたボクの世界がまた緑色のすてき な世界に変わってきた。
今日はアキコと一緒に足をのばして近くの棚田を見に行って来た。 棚田はみんな水が入れられて、あちこちでおじいちゃん、おばあ ちゃんが田んぼの作業をしていた。 写真のおばあちゃんがしている作業は田んぼの水が漏れないよう に田んぼの縁を固める作業らしい。 こうして固めたところがクロというものらしい。
ボスやアキコがボクを田んぼに近づけないようにするのは、こん な風におじいちゃんやおばあちゃんがクワで少しずつ固めて作っ たクロをボクが足で崩してしまわないようにするためだったらし い。 田んぼの縁はきれいに土が固めてあるが、こんな風にクワで少し ずつ固めていったものだとは知らなかった。
こんなに苦労して作ったクロだから、これからはボクもクロを踏 んだり崩したりしように気をつけて散歩をすることにしよう。 今日、棚田を見たおかげでボクはクロを崩さないオリコウな犬に なった。
田んぼの写真を撮りに来た観光の人が田んぼの縁にサンキャクと いうものを立てることがあるが、絶対やっちゃダメだとアキコが 言っていたので注意してクダサイ。
今日はとても暖かくて気持ちのいい日だった。 とても気持ちがいいので、アキコが「一緒に田んぼを観察しよう」 とボクを誘ってくれた。
ボクは自由に田んぼを覗いて見たかったのだが、ボクが田んぼの クロ(水が出ないように土を固めたところ)を崩さないようにと、 アキコはボクをダッコした。 ダッコされるのは男らしくないのでちょっぴり恥ずかしかったの だが、こうしないと田んぼを見せてくれないと言うので仕方なく ボクはアキコにダッコされて田んぼを覗き込んだ。
最初はアキコにダッコされている姿を他の人に見られないかと気 になっていたのだが、田んぼを覗き込んだボクは田んぼの中に夢 中になってしまった。 田んぼの中には黒くて小さな生き物がたくさん泳いでいたのであ る。
これはオタマジャクシというカエルの幼生らしい。 水の中を泳いでいたオタマジャクシはまだ生まれたばかりでとて も小さかったのだが、これがだんだん大きくなって足が4本生え て、ボクが毎年遊んでいるカエルになるのだそうである。 あのピョンピョン跳び回るカエルくんが最初はこんな小さくて変 な形をしているとはびっくりである。 このオタマジャクシも大きくなったらボクと一緒に追いかけっこ をして遊んでくれるかな。
ボクの庭の東側には大きな梅の木が2本ある。 サンザエムさんという格好いいおじさんの梅の木である。 サンザエムさんというのは屋号で、三左右衛門さんの子孫だからそ んな屋号らしいのだが、まわりの人々に頼りにされている、ステキ なおじさんなのだ。 ボクの庭からこのサンザエムさんの梅の木がよく見えるのである。
ボクはここのところ、このサンザエムさんの梅の木の花を楽しんで いたのだが、今日は寒くて強い風がビュービュー吹いていたので、 ボクの庭にこの梅の花びらがたくさん飛んできて、ボクの庭は白い 水玉模様になった。
庭の水たまりの縁に並んで落ちた梅の花びらはとてもきれいである。 白い水玉模様といい、この水たまりの縁の花びらといい、なかなか フウリュウな景色なので、ボクは一句詠んでみようかと思った。 しかし今日はとても寒いのでそれよりも小屋の毛布にもぐり込んで 眠ってしまうことにした。 一句詠むのはもっと暖かくなってからにしよう。 明日からはまた春が戻ってくるそうである。 早く明日にならないかな。
今日、ボスとアキコはタテヤマゼイムショというところにカクテイ シンコクに行って来たらしい。
ボスがカクテイシンコクとは何なのかをボクに説明してくれたのだ が、ボクにはさっぱりわからなかった。 ただ、数字に弱いアキコにはとても大変なことだったらしいという ことだけわかった。 アキコは昨日の夜遅くまで数字に悩まされたらしく、赤い目をして 疲れているようであった。
アキコが「数字はもうイヤ」と言っていたのでボクはアキコに数字 ではなくローマ字を見せてやることにした。 オリコウなボクはローマ字だって知っているのである。
今日、ボクがアキコに見せてやったのはローマ字の「M」である。 舌を使って「M」を見せてやると、アキコは喜んで写真を撮った。 ボクはアキコのセリフ「もうイヤ」の「M」を作ったのだが、アキ コは「満腹のMだね」と喜んでいた。 確かにボクはエサを食べ終わったところではあったが、「M」を見 てすぐに「満腹」というコトバが出てくるとはさすが食いしん坊の アキコである。 かなり高度な技が必要だが、今度「B」を作って見せたら、アキコ はすぐに「ビスケットのBだね」と言ってビスケットをくれるかも しれない。
今日、ボクは日陰で花びらが尖ったオオイヌノフグリを見つけた。 右の写真が普通に見かける花で、左の写真がそれである。 ボクはもしや違う花なのではないかと思ったのだが、葉っぱを見 てもオオイヌノフグリに間違いないようである。 尖った方はキキョウの花に似ていて、これはこれでとてもステキ である。
この辺りに咲いていた花たちはみんな尖った花びらをしていたが、 この花たちはどうして尖ってしまったのだろうか。 他のオオイヌノフグリがお日さまを浴びて気持ちよさそうにして いるのに自分たちは日陰でお日さまを浴びることができないから グレてしまったのだろうか。 日陰の花は、葉っぱの数も少なくてちょっぴり体が弱そうである。
もし米問屋「キキョウヤ」に病弱な娘さんがいたら、こんな感じ だったかもしれない。 ちょっぴり痩せた体をしたキキョウヤの娘は、性格も少し尖って いて、爺に向かって「私なんかお日さまの光を浴びなくてもいい のよ、放っておいて」とわがままを言いそうである。
今日はとても暖かくて気持ちのいい1日だった。 晴れて気持ちがいいので、ボクはボスとアキコと一緒に山の棚田に 行って来た。 山の棚田の縁に植えてある桜のつぼみはもうだいぶ膨らんできてい た。この暖かさで桜も咲きたくてたまらないようであった。
桜の木の枝を見てみると、丈夫そうなヨロイを着たミノムシが春に 向けて特等席を陣取っていた。 この場所にいればウグイスの声もキツツキが木をつつく音も聞こえ るし、おじいちゃんやおばあちゃんが田んぼで作業をする姿を見る こともできる。 なんと言っても桜の花が咲いたら桜の花に囲まれながらきれいな棚 田の風景を見下ろすことができるのである。
ミノムシくんはきっとどこかにお花見用のお酒を隠しているに違い ない。 桜が咲いたらもう一度このミノムシくんを訪ねて来て一緒に一杯や りながらお花見をしてみたいものである。
今日は雨降りであった。 ボスから「雨の日はちゃんと屋根の下で遊んでいるように」との オタッシがあったので、オリコウなボクはきちんと屋根の下で過 ごした。 本当は雨に濡れてアキコにタオルでゴシゴシしてもらおうと思っ ていたのだが、ボスのオタッシなので仕方がない。
ボクがオリコウにしていたので、アキコがボクに特別「カマボコ」 というものを少し食べさせてくれた。 ボスとアキコは人の食べ物と犬の食べ物を区別しているのである が、この「カマボコ」はヒロシマのジュンコオバサンからもらっ た特別なものなので、ボクにも少し分けてくれたらしい。
ボクはアキコが手の中にカマボコを隠し持って来た時からカマボ コの香りに夢中であった。 カマボコは何ともおいしそうな香りがしていた。
もちろん、初めて食べたカマボコはとてもおいしかった。 もっと食べたかったのだが、ちょっぴりだけ食べるからこそおい しいものらしい。 ジュンコオバサン、どうもありがとうゴザイマシタ。 カマボコ、とってもおいしかったデス。
今日、ボクはアキコと一緒に杉林をお散歩した。 杉の太い幹には緑の葉をしたツルがずっと上までよじのぼって 茶色い幹が隠れてしまうほどであった。 杉の木もツルの服を着て暖かくしているな、と思ってふと見て みると、杉に絡みついたツルに赤い実が下がっていた。
これはフウトウカズラ(風藤葛)という木の実らしい。 暖かい地方の海近くに生える植物で日本では珍しいコショウの 仲間だということだ。 そういえばこの実はアキコが前に見せてくれたピンクペッパー というコショウによく似ている。
横から見るとただの葉っぱだったツルにこんな赤い実がなって いるとは驚いた。 何かを下から覗くのが大好きなボクにアキコはいつも「男らし くないからやめろ」と言っていたのだが、下から覗かないと見 つからないものもあるのである。 今日はボクが下から覗いたおかげでフウトウカズラを見つける ことができたのだから、やっぱり下から覗くのも悪いことでは ないのである。
今日、ボスとアキコと一緒に山に行ったら、一面が花畑だった。 風の音、ウグイスの声、キツツキが木をつつく音、アブが飛び回る 羽音、すべてが春の訪れを喜んでいるようであった。 こんなしあわせな春を迎えることができて、ボクはとっても嬉しい。 今日はすばらしい1日であった。
今日までボクは気がつかずにいたが、ボクの庭につくしんぼが顔 を出していた。 つくしんぼは食べられるらしいが、ボスがそれほど喜ばないので、 アキコは今年は食べないらしい。
つくしんぼの本名は「ツクシ」というらしいが、つくしんぼとい う名前がぴったりだとボクは思っている。 小さいものが陽を浴びてスクスク成長して、ピンと背筋を伸ばし て立つ姿は見ていてとても気持ちがいい。 「よくガンバって大きくなったな、つくしの坊や!」と声をかけ てやりたくなる。
去年、ツクシは「土筆」といって土から生えた筆だとアキコに教 えてもらったボクはつくしんぼで絵を描いてみたいと思っていた のだが、何となくつくしんぼを折る気にはなれないでいる。
背筋を伸ばしたつくしんぼを折ろうとしたら、はっきりとした 口調で「乱暴はやめてください」と注意されてしまいそうな気が するのである。
毎日ボクは庭や散歩道の草や花を観察していて、人の作ったモノ よりも、自然の作ったモノの形は素晴らしいと思う。
人の作ったモノはまっすぐな線や形の整ったカーブを描いたもの が多いが、自然のモノは思いがけない形が多い。 ボクはそんな思いがけない自然の形が大好きだ。 庭をうろうろしているだけでもボクは毎日自然のゲイジュツに出 会って、毎日刺激を受けるのである。
今日はただの枯れ草だと思っていたものに近づいて見ると、目玉 を見開いた「トンガリ鼻」の顔があった。 ちょっと反り返った鼻を突き出してこっちを見る顔は風に吹かれ てプルプル震えているようにも見えるし、驚いているようにも見 えた。
ボクは今まで気がつかずにいたが、トンガリ鼻くんは毎日ボクの ことを驚きの眼差しで見ていたのかもしれない。 自然のゲイジュツであるトンガリ鼻くんを見つけたボクも、彼と 同じように目を見開いた驚きの顔になっていたに違いない。
今日、ボスがヒロシマから帰って来た。 アキコはボスやオカアサンやカヨチャンからいろいろお土産を もらったらしいが、ボクはいつもと同じビスケットだけだった。 ちょっぴり残念だったが、ビスケットをもらえたのでボクは満 足である。
ところで今日、ボクは庭のミニ湿地帯のそばに小さくてかわい いキノコが生えているのを見つけた。 キノコは苔が生えた地面から恥ずかしそうに顔を出して、小さ いカサを広げていた。 ボクはボンと音を立てて開く傘は大嫌いであるが、このキノコ のカサのようにひっそりと開くカサは大好きである。
アキコはキノコが生えているのを見ると、アキコが喘息という 病気になったジメジメした夏を思い出すのであまり好きじゃな いと言っていたのだが、ボクがこのかわいいキノコを教えてや ると「かわいい」と喜んで写真を撮っていた。 このキノコは嫌な思い出も消し去ってくれるほどかわいいキノ コだったのである。
今日はボスがいないので、アキコと二人きりで過ごした。 毎朝ボスは鶏にエサをやったり草をやったり、いろいろな作 業をしてからボクの散歩に同行してくれるのだが、今日アキ コは鶏の世話をする前にボクと散歩に行ってくれた。
なぜなら、ボクがアキコに「オサンポに行きたいよ〜」と ニホンゴで話しかけたからである。 ボクはいつもはワンワンと鳴くのだが、散歩に行きたい時だ けは、はっきり「オサンポ」と言えるのである。
ボクが10回目の「オサンポに行きたいよ」を言った時、ア キコが「ニホンゴがうまいね」と言いながら出てきて、ボク の散歩に同行してくれた。
ちまたの犬たちは「オサンポ」というニホンゴが言えないた めに散歩に行きたいことをなかなか伝えられでいるらしいが、 ボクはニホンゴ初級なので、散歩に行きたい時はばっちりな のである。
次はぜひ「ビスケット」を言えるようになりたいのだが、ど うも「ビ」と「ス」と「ケット」の発音が難しいので言えな いのである。 いつかはニホンゴ初段くらいになって「ビスケット」もマス ターし、好きな時にビスケットをもらいたいものである。
上は散歩の時にアキコが撮った写真である。
今日からボスがヒロシマというところへ親戚の人のお見舞いに 行ってしまうのである。
いつもはそっけないボスであるが、出発の時にボクに向かって 「ゲンゾーもおみやげが欲しいか?」と聞いた。 ボクが「おみやげ」というコトバを知らないと思ってのうっか り発言であろう。
しかし、その時、急にボクがアキコに乗り移ったようであった。 ボスはボクに質問したのに、アキコが「ヒロシマのもみじ饅頭、 京都の生ヤツハシ、それからアカフクとビスケットも欲しいで ゴザル」とボクに代わってボスに答えた。
ボクはビスケットだけで良かったのだが、ボクがアキコに乗り 移った時にいろいろ追加されてしまったようである。 ビスケット以外のものをボクは知らないのでいらないのである。 ボスがいない間ガンバって鶏とアキコを守るので、ぜひビスケ ットをおみやげにクダサイ。
写真はタンポポの花である。 考えてみたらいつもの年は冬でも見かけたタンポポの姿を今年の冬は 見かけなかった。 今年の冬は寒かったので、タンポポの花も咲かなかったのだ。 ここのところようやくボクの庭や散歩道でもタンポポの花を見かける ようになって、ボクはとても嬉しいのである。
ところでタンポポにはもともと日本にあったものと外国からやって来 たものがあるらしい。 アキコは日本のタンポポを押しのけてはびこる外国から来たタンポポ が嫌いで、日本のタンポポを見つけると日が当たるようにしてやり、 外国から来たタンポポを見つけると茎から切り取ってコップにいける、 という「日本タンポポ愛護活動」を密かにやっていたらしい。
しかし、今年は見つけたタンポポが外国からきたヤツでも切らずに優 しく見守っているらしい。 寒い冬を乗り越えてようやく花を咲かせたタンポポを切り取ってしま うのはかわいそうだと思っているのだろうか。 まったく気まぐれなアキコである。
今日から3月である。 3月と言えば桜の花が咲く月なのであるが、初日の今日は雨が降 って寒い1日だった。
でも、ボクの庭にあるクロヤナギの木はツメの中から黒いモコモ コが出てきて春らしい姿になってきた。 赤い枝に黒いモコモコがついたクロヤナギの木はなかなかおしゃ れな木である。 モコモコの上に乗ったツメもとんがり帽子のようでとてもかわい らしい。
こんなにおしゃれなクロヤナギの木があるのに、アキコは「クロ ヤナギもいいけど、ネコヤナギがふわふわしていてかわいい。う ちにネコヤナギがなくて残念だ」と言うのである。 ボクは「ネコ」が名前がつく木なんてボクの庭にはいらないので あるが、アキコの話だとシズオカというところではネコヤナギを イヌヤナギと呼んでいる地区があるらしい。
ボクがシズオカに住んでいる犬だったら、庭にイヌヤナギの木が あってもいいが、この辺りではみんなネコヤナギと呼ぶらしいの で、やっぱりネコヤナギよりもクロヤナギの木の方がいいな。
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