2月ももう終わりだというのに、今日はとても寒い1日だった。 とても寒いのでアキコと一緒に暴れて体を温めようと思っていた のだが、アキコはジッカに遊びに行ってしまった。 アキコのジッカには寒がりのパパと寒がりのネコが住んでいるの でとても暖かいらしいのだ。
暖かいジッカに住んでいるくせに、アキコのジッカのネコは少し 寒いだけでコタツという暖かい装置の中に入って過ごすらしい。 アキコが撮影してきたジッカのネコの写真を見せてもらったら、 少し前にボクがコタツ犬になった時の写真とは違っていた。 ボクがコタツ犬になった時は毛布を背中にかけただけだったが、 ジッカのコタツネコには毛布はかかっておらず、何だか夕焼けの 中にいるようであった。
アキコが「ゲンゾーもコタツに入ってみたい?」と聞いたけれど ボクは「コタツには入りたくない」と答えておいた。 ボクは夕焼けよりも明るいお日さまの下でひなたぼっこをする方 が好きである。
今日、ボクはアキコと一緒に梅を見に行った。 ボクの家からクルマで7分くらいのところに梅の並木があるのである。
クルマに乗るのはあまり好きではないが、梅の花を見に行くのならと、 ボクは喜んでクルマに乗った。 クルマで少し走ると、道の脇に紅い梅がたくさん咲いていた。 この並木は紅梅の並木なのであるが、ところどころに白い梅の木もあ って、こちらもきれいに咲いていた。
梅の花は白いのも紅いのも「私の方がきれいでしょ」とボクに語りか けているようだった。 どちらがきれいかの勝敗はつけられないが、咲き競う梅の花はとても 華やかでボクはため息が出てしまった。
ボクの庭に梅の木はないのだが、ぜひボクの庭にも欲しいものである。 ボスとアキコは食べられる植物が大好きなので、実がなる梅を植える といい、とすすめることにしよう。
今日は1日雨降りだった。 雨がたくさん降ったので、ボクの庭は水たまりでいっぱいだ ったのだが、ボクがふとベッドの上から水たまりを覗いて見 ると、水たまりの中にこちらを覗き込む犬がいた。
ボクの庭に犬が来た気配はまったくなかったので、犬を見つ けたボクはびっくりしてしまった。 水たまりの中にいる犬は、ボクによく似た犬で、口のまわり が黒くて耳が三角形をしていたが、水たまりが揺れるので、 はっきり顔がわからなかった。
犬は吠えようとしたようだが、びっくりして声が出ないよう であった。 ちょっと怖がっているようにも見えたし、興味津々でこちら を伺っているようにも見えた。 どちらにしても、それほど強いヤツのようには見えなかった。 ボクの方がずっと男らしい犬である。
ボクがベッドから顔を引っ込めると、水たまりの犬もそっと ベッドの下に隠れたようであった。 きっと臆病な犬だったに違いない。 今日のところは我慢してやるが、今度見つけたらワンワン吠 えて追い払ってやることにしよう。
鳥のオリンピックで日本のアラカワという鳥が金メダルを 取ったと聞いた。 アラカワという鳥は今まで聞いたことがないが、クルクル まわって体もしなやかで、とてもきれいだったとアキコが うっとり話していた。
日本代表の鳥で金メダルを取ったのはアラカワだけだった らしいが、実は今日、ボクも金メダルをもらったのである。 ピカピカに光った丸いメダルをアキコがボクの首にかけて くれた。
ボクが何の競技で1位になったのか、ボク自身もよくわか らないのだが、金メダルとは非常に嬉しい。 金メダルを首にかけてもらうと、誉れ高い気分になった。
アラカワ、金メダルおめでとう。 今回、日本で金メダルをもらったのは、アラカワとボクだ けらしいので、できれば一緒に乾杯したい気分である。
今日は1日雨降りであった。 ボクが雨も気にせず庭で遊んでいると、アキコがガラス戸のところ に出てきて「ゲンゾーはいつもどろんこだね」と言った。
毎日雨ばかり降っているわけではないので、正確にはボクはいつも どろんこではないのだが、アキコはボクがどろんこになってばかり いると思っているらしい。 どうしてアキコがそんな風に思っているのかと思ったら、アキコは どろんこになったボクの写真を部屋に飾っているらしいのである。
アキコが飾っている写真は下の写真らしい。 格好いいボクの写真はたくさんあるはずなのに、どうしてアキコが この写真を飾っているのかというと、この写真のボクの足が気に入 っているらしいのだ。
幸い今日のボクはどろんこ足だったので、アキコにもっと気に入っ てもらおうと思って近づいたら、どろんこ足が好きだったはずのア キコは服にどろんこマークをつけられるのを怖れて家に逃げ帰って しまった。 どろんこ足が好きだと言ったはずなのに、勝手なアキコである。
今日、散歩の時にホトケノザの花が咲いているのを見つけた。 ホトケノザは前屈みに咲いて、田んぼの水を覗き込んでいる ようであった。 ホトケノザは田んぼの水に姿を映して自分の姿にうっとりし ていたのかもしれない。
ボクも田んぼの水に姿を映して、どのくらいボクが男らしい 犬なのかを確かめてみたいのだが、ボクが田んぼに近づくと ボスもアキコも「ダメだよ」と言ってお散歩ヒモを引っ張る のでボクは田んぼを覗くことはできないのである。
山や空が映る田んぼの水を覗き込むのはきっと面白いに違い ない。 水の中を泳ぐカエルくんを見つけられるかもしれない。 ボクも一度でいいから田んぼの水を覗き込んでみたい。 田んぼの水に映ったボクの姿はきっと男らしいに違いない。
最近とても暖かくなってきたので、ボクの庭に生える 植物たちがザワザワと動き出しているような気がする。
もちろん植物は動かないし声も出さないのでザワザワ 音がするわけではないのだが、ひなたぼっこをしてい る時や、夜寝ている時にふと耳をすますと、植物たち が背伸びをしたりお日さまを見てため息をついたりし ている気配があるのである。
今日は散歩道にある桜の木がなにやらザワザワとして いるような気がしたので見てみると、つぼみが花を咲 かせる準備をしているようであった。
つぼみはまだまだ固いが、きれいな空を見上げて仲間 と何か話し合っているようであった。 桜のつぼみも春を感じて花を咲かせる日を楽しみにし ているに違いない。 ボクも桜の咲く日がとても楽しみである。
ボクの庭の裏の田んぼではもうカジカガエルというカエルが 鳴き始めている。
カエルたちはまだ冬眠から覚めて間もないせいか、声の調子 が今ひとつのようである。 夜になると「ウフフフ、ウフフフ」と笑っているような変な 声を出している。
散歩の時に追いかけっこをして遊べるほどにはカエルが出て きていないので、ボクはまだカエルくんたちと遊んではいな いが、田んぼには水がたっぷりはってある。
今日は田んぼにいろいろなものが映っていて、とてもきれい であった。 空の雲、ボスの家、おフドウさんがいる山、てっぺん杉、裏 の菜の花畑まで、みんな映って揺れていた。
去年の夏は暑かったので、ボクはアキコに毛を刈ってもらって 涼しい夏を過ごした。
しかし毛は伸びたものの、ボクは毛を刈る前よりも白っぽい犬 になってしまったような気がするのである。 ボクが毛の話をするとアキコは「去年と変わってないよ・・・」 とボクと目を合わせないように言って、さっと家に入ってしま うのであるが、去年の写真と比べてみると明らかにボクは白っ ぽい犬になってしまっているのである。
白っぽくなったからといって、特別困ることはないのであるが、 どうもボクは迫力のない犬になってしまったような気がするの である。
みなさんにぜひ伺いたい。 ボクは去年よりもマヌケな犬になってはいないだろうか?
暖かくなってきたので、ボクの庭にはたくさんのペンペン草が 花を咲かせている。
ペンペン草は別名ナズナと言って、春の七草の一つらしい。 ムビョウソクサイを願って、春の七草を1月7日にお粥に入れ て食べるといいらしいが、ボスもアキコも七草のお粥は食べて いなかったようである。 「今年の冬は寒くて1月7日には七草が生えていなかったから 七草粥が作れなかった」とアキコは言っていたが、きっとアキ コは「ムビョウソクサイ」の意味がわからなかったから食べな かったのに違いない。
ボクの庭にはようやく「セリ、ナズナ、ハコベラ、ホトケノザ」 が生えてきたので、あとはハハコグサ(ゴギョウ)が生えたら 大根とカブを買ってきて七草粥を食べよう、とアキコが言って いた。
七草粥はボクが食べても大丈夫らしいので、ゴギョウが生えて いるのを見つけたらすぐアキコに知らせて七草粥を作ってもら おうと思う。 意味はわからないが、ボクもムビョウソクサイを願ってみたい。
最近、アキコはボクの顔をアップで写真に撮ることに凝って いるらしい。 オリコウに磨きがかかったボクは「カメラ目線」というコト バも覚えた。 カメラがこちらを向いている間は、カメラから視線をそらし てはいけないのだとボスが教えてくれたのだ。
今日のボクは格好良くカメラ目線で写真を撮ってもらうこと ができた。 今日はカメラの後ろにビスケットがなくてもちゃんとカメラ を見ることができたのだ。
アキコは「氷川きよしにも負けてないね」と言ってくれたが ボクのカメラ目線はどうだろうか。
今日はアキコがボクを置いてジッカに出かけてしまった。 ジッカに「おひなさま」が飾られているのでそれを見に行くのだと 言っていた。 ボクも一緒にジッカに行ってパパやママからギュウニュウをもらお うと思っていたのに、置いていかれてちょっとさびしい。
ジッカから帰ってきたアキコはボクに「おひなさま」とやらの写真 を見せてくれた。「おひなさま」というのは花か何かと思っていた が、そうではなくてきれいな人形飾りのことだったのである。
ジッカのおひなさまはアキコのお姉ちゃんが生まれた時にお祝いに もらったお人形らしいので、かれこれ40年近く前のものというこ とになるが、とてもきれいな人形だった。 なぜこんなにきれいなままなのかと言うと、それはおひなさまが毎 年3月3日の桃の節句の前1ヶ月ほどしか箱の外に出ないからだそ うである。1年のほとんどは押入の箱の中で眠っているそうなので ある。
男らしいボクは人形には興味はないが、おひなさまの顔を見ている と「ようやく外に出られましたな」「1年ぶりですね」と言ってい るように見える。 3月3日にはまた仕舞われてしまう身のおひなさまには、ぜひ飾ら れている間だけでも穏やかなひとときを楽しんでほしい。
今日は雨降りであったが、ボクの心は青空であった。 お友達が送ってくれたプレゼントをいただいたのである。
お友達がくれたのは、スペシャル犬用ビスケットと馬アキレス、 そして手作りライオンパンであった。 スペシャル犬用ビスケットも、馬アキレスもボクが今まで食べ たことがないほどおいしいもので、ボスやアキコに取られない ようにボクは小屋に隠れて食べたのだが、ボクが一番気に入っ たのは何といってもライオンパンであった。
ライオンパンは手作りなのである。 お友達がこねて焼いてくれたのである。 しかも、ボクの大好きなライオンくんの顔と同じ形をしている のだ。
ライオンパンはコトバにできないほどおいしかった。 今、イヌノオリンピックがあったらボクは幸せ犬部門で金メダ ル間違いなしなのである。 プレゼントどうもありがとうゴザイマシタ! 今日のことは一生忘れませぬ。
2006年02月15日(水) |
ユウビンヤさん カムバック! |
今日はとても暖かくて気持ちのいい日だった。 暖かすぎて日なたでお昼寝をしていると暑く感じるほどであった。
昨日の夜、アキコが「お友達がゲンゾーにプレゼントを送ってく れたんだって」と言っていたのだが、ボスとアキコはボクのプレ ゼントを受け取らずにどこかへ出かけてしまった。
ボスとアキコが出かけた後、赤い乗り物に乗ったユウビンヤさん という男がボクのプレゼントを持ってやって来た。 ユウビンヤさんが持っている荷物からは非常によいニオイがプン プンしていたのでボクはすぐにも開けてみたかったのだが、ユウ ビンヤさんはボクに荷物を渡さずにどこかへ行ってしまった。
いつもユウビンヤさんを追い出すことを日課としているボクだが、 ユウビンヤさんが去っていく後ろ姿をこんなにさびしく見送った ことはない。 ボスとアキコはユウビンヤさんからちゃんとプレゼントを受け取 ってくれたのだろうか。
今日、ボクの庭の後ろにある田んぼにツグミが遊びに来ていた。 この前から田んぼでゴトゴト音がしていると思っていたら、いつ の間にか田んぼには水がはられていたのである。
ツグミは田んぼで大変ゴキゲンであった。 ボクとアキコが田んぼの縁まで来ているのに、まったく気にする 様子もなく、チョコチョコと田んぼの中を歩き回っていた。
今、ナガグツの国で鳥のオリンピックが開催されているらしいが、 こんなところで遊んでいるところをみると、このツグミ君も代表 には選ばれなかったらしい。
きっとそのうち正式種目になる「田んぼ歩き競争」の特訓でもし ていたのかな。
朝、とても寒かった。 もう春が来たと思っていたのだが、そういえばいつも春は 簡単には来てくれないのだ。
でもこうやって暖かい日と寒い日を繰り返しているうちに 野の花がたくさん咲いて嬉しい春がやってくるのである。
写真は毛布をかぶってコタツ犬になったボクである。 朝、寒いと訴えたらアキコがボクをコタツ犬にしてくれた のである。 コタツ犬はなかなか暖かくて気持ちがよかったが、毛布が 重くて移動しづらいのが難点であった。
日記をさぼりすぎて困ったアキコがボクの写真を日記に 貼るというごまかし技に出たのである。
仕方がないので、今日はボクの写真を見てクダサイ。
今日、ボクは土手で小さい花を見つけた。 これはフラサバソウという名前の、とっても小さい花なのだ。 どのくらい小さいかと言うと、花の直径が3ミリくらいしかない 花なのである。
毎年、早春に真っ先に花を咲かせる花だが、とても小さい花なの で、背の高い人間にはなかなか見つけられない花なのだ。 いつも花に気が付かないアキコのために、ボクが見つけて教えて やるのである。
フラサバソウはもともと日本の草ではなく、ヨーロッパやアフリ カからやって来て日本に根付いた草らしい。 名前は発見者であるフランスの学者、フランシェとサヴァチェと いう2人の名前からとったものらしい。
フラサバソウという名前は日本的ではないとは思っていたが、ま さかフランス人の名前からきているとは知らなかった。 フラサバソウ殿、というのはちょっと合わないようなので、フラ ンスらしく「ムッシュ・フラサバ」と呼ぶことにしよう。
ボスの話によると、今日から鳥のオリンピックが始まるらしい。 オリンピックというのは色々な国のすごい選手が集まって、日頃か ら鍛えている技や力や美しさを競い合うものらしい。
ボクの庭にも鶏がいるので、もしやこの鶏のどれかがオリンピック 代表に選ばれて出かけて行くのではないかと楽しみにしていたのだ が、みんな揃っているところを見るとボクの庭から代表は出なかっ たらしい。少し残念である。
ボクの庭の鶏たちもそれぞれ得意なことがある。
チビという名前のオスは、鶏小屋のボスで心優しく強い鶏である。 闘争心むきだしで何かが鶏小屋に近づくと、真っ先に近寄って攻撃 をくわえるのだが、鶏たちに決して暴力を振るわない、心優しい男 なのである。なかなか良いボスである。
デカというオスは、ノドが自慢の美声の持ち主だ。 何かが来ると、番犬であるボクをさしおいて大声で鳴き始める。 ビブラートが効いた声はなかなかのものである。もしや番犬である ボクの地位を狙っているのではないかと思うこともある。
そして、写真はオスダッタという名前のオスである。 小さい時、メスだと思われていたためにこんな名前なのである。 ヤツの得意技はちょっと嫌な技である。 とにかくメスに乗りまくることなのだ。朝から晩までメスの後ろか らメスのすきを狙っている。 鶏たちが産む玉子の8割は、このオスダッタの有精卵だと言っても 過言ではない。 メス乗り競技があったら、優勝まちがいなしなのである。
今日、ボクは庭の隅にフキノトウが顔を出しているのを見つけた。 ボクがフキノトウを教えてやると、アキコは目を輝かせて大喜び であった。
ボクがもらわれて来た時、お散歩に行く度アキコが野草のことを 教えてくれたのであるが、ボクが最初に覚えた野草はこのフキノ トウであった。 ボクがフキノトウを教えてやるとアキコが喜ぶので、ボクはとて も嬉しくなってフキノトウを探しまくったものである。
今でもボクはフキノトウが大好きである。 フキノトウを見つけるとアキコが喜ぶからかもしれないが、フキ ノトウは小さい頃を思い出す香りがするのである。 寒い日が続いた後、ポカポカ暖かくなってフキノトウが顔を出す だけで、ボクはしあわせな気分になる。
ちなみにボクは気分だけであるが、ボスとアキコはフキノトウの 天ぷらというものを食べて、お腹もしあわせになるらしい。
2006年02月08日(水) |
浮かれた飼い主と賢い犬 |
この日のことはよく覚えている。 風がとても強かったが、暖かくて最高に気持ちのいい日であった。 アキコがベッドに毛布を広げてくれたので、ボクは1日中ぽかぽか の陽を浴びてお昼寝を楽しんだのである。
この日はアキコもとてもゴキゲンであった。 ボクがお昼寝をしている写真を撮ろうとして、自分でピースを出し ていたくらいである。
アキコは「私は写真を撮る方だからピースなんて出してないよ」と 言っていたが、実はアキコがピースサインを出している証拠写真が あるのである。 ニコニコしているのが写っていないのが残念であるが、アキコは良 いお天気でとても浮かれていたのだ。
ちなみにこの時のボクは「なぜ写真を撮る人の方がピースを出すの であろうか」と考えごとをしていたので、マジメな顔をしている。 写真のタイトルはボクがつけよう。 「浮かれた飼い主と賢い犬」である。
2006年02月07日(火) |
「それより前」の引き出し |
この頃アキコは日記をさぼってばかりである。 また3日も日記をさぼって、今日になって急に「3日前には何が あったかな?」などと言っている。
前にも書いたことがあるが、ボクはおとといまでのことはよく 覚えているのだが、3日前のことまでは覚えていない犬なのだ。
ボクは「今日のこと」は「今日の引き出し」、「昨日のこと」は 「昨日の引き出し」、「おとといのこと」は「おとといの引き出 し」にしまっているのだが、3日以上前のことは「それより前」 の引き出しに入れてしまうので、いろいろな記憶がごちゃごちゃ になって、取り出すのがなかなか大変なのである。
3日前のことを思い出すのはもうやめよう。 男らしくあきらめよう。
------------------------------------ 2月7日
何もなく平和な1日であった。 おわり ------------------------------------
ボクが住んでいるところは山が多くて、この山全体が地すべり しやすいらしいのである。 ボクの庭の土はすべる先がないから安心だが、近くの崖はすべ りやすい土でできているのだ。
今日は散歩の時に散歩道の横の崖の土が少し道に落ちていた。 道のところに崖から落ちてきた石もあった。
ここの崖はアキコがよくのぼって植物の写真を撮ったりしてい るので、アキコの重さで地すべりしたのではないかとボクはに らんでいるのだが、アキコは雪がずっと積もっていたせいだと 言い張った。 崖から水がしみ出てきているから、これが原因に違いない、と アキコは水たまりに責任を押しつけた。
水たまりを覗いてみたら、中にきれいな空があった。 曇っていた空が少しだけ晴れて、水たまりの中に入っていた。 こんなにきれいな水たまりが地すべりを引き起こしたはずがな い。水たまりは「この通り私は無実です」とボクにきれいな心 を見せたのに違いない。 そういえば、少し前にアキコがここの大きな石につまずいて大 きな石を掘り起こしていたから、きっとあれが原因で崖の土が 崩れてきたのに違いない。
しばらくの間、地すべりしないようにアキコの崖のぼりは禁止 した方がいいな。
アキコの話によるとコヨミノウエではもう春らしいのだが、 今朝もだいぶ寒かった。 朝冷え込むと山水のジャグチをひねってもちっとも水が出て 来なくて鶏の飲み水を替えるのに苦労するとボスがグチを言 っていた。
ボクの庭の日陰の部分は雪や雨が降ってからなんとなく水が たまってグチャグチャしていたのだが、今朝はそのグチャグ チャ地点もカチカチに凍っていた。
昨日、ボクがグチャグチャ地点を歩いて遊んだまま、ボクの あしあとが凍って残っていた。 ボクのあしあとを見つけたアキコが「ああ、ゲンゾーのあし あとの標本が残ってる」と言って写真を撮った。 ボクのあしあとは写真を撮るのに値する、なかなか芸術的な あしあとであった。
最近、ボクの庭ではノラネコたちが夜な夜な大騒ぎをする。 ボスの話によると、ノラネコたちは嫁さんをもらうために縄張り 争奪戦をしているらしい。
ボクの庭には納屋というものがあって、そこにはネコが暖かく眠 るのにちょうど良い藁やもみがらがいっぱい置いてある。 毎朝ボスが庭の鶏たちにエサをやろうとして納屋の扉を開けると、 中で寝ていたノラネコが驚いてバタバタ音を立てて逃げていくこ とが多いらしい。 ボクの庭の納屋はノラネコたちが住んでみたいステキな場所とし てノラネコ界ではかなり人気が高いらしいのだ。
きっとオスネコは、ボクの納屋を陣取ってメスネコを誘い、 「見てごらん、ボクの部屋はなかなかだろう?」などと自慢して みせているに違いない。
今日も昼間、下見に来たらしいクロネコがボクの方をじっと見て いた。 ネコは「あの犬さえいなければ最高の場所なのに」と思っている ような目をしていた。
庭の納屋はボクの縄張りなのだが、寒そうなネコたちのために ボクは我慢して貸してやっているのだ。 ボクはいわゆる大家さんみたいなものなのだから、ボクを睨みつ けるのではなく、きちんと挨拶をしていってほしいものである。
今日は節分という日だそうである。 節分には豆をまいて家から鬼を追い出す「豆まき」という行事が 行われるらしいのだが、ボスとアキコは豆をまかなかったようで ある。 外に豆が飛んできたらどさくさで豆を食べてやろうと思っていた のにとても残念である。
あちこちの家から鬼が追い出されて来るそうなので、今日こそは キビダンゴを持った桃太郎というヤツがボクを鬼退治に誘いに来 るのではないかと待っていたのだが、桃太郎は来なかった。 きっと寒くてみんな鬼退治を面倒がったので、サルとキジが集ま らなかったのかもしれない。
最近、日本中で節分には巻きずしをかじるというのを風の噂に聞 いたので、ボクも巻きずしというものをかじってみたいとアキコ にお願いしてみたのだが「そんな風習は千葉にはない」と言って 却下されてしまった。
今日は期待していたことがみんなダメでボクはとても残念である。 仕方がないので、巻きずしなしだが、吉方を向いて笑ってみた。 あれ、吉方を見て笑うのは初物を食べた時だったかもしれない。 初物を食べた時は東を向くのだったかな・・・。 よくわからなくなったが、とにかく笑っておいたのである。
この日、ボクは田んぼでタネツケバナが花を咲かせているのを 見つけた。
ボクが散歩の時に何かの植物を見つけてアキコに教えてやると アキコはいつもその花の名前や由来を本で調べるそうである。
アキコが持っている野草の本は春夏秋冬に分かれていて、その 季節ごとに植物が分かれているのだそうである。 ここのところずっと「冬」の本ばかり見ていたのが、タネツケ バナを調べようとしたらタネツケバナが「春」の本に載ってい る植物だったのでアキコはとても嬉しかったのだそうである。
「春」の本に載っている植物が花を咲かせ始めたということは やっぱりもうすぐ春なのである。 この話を聞いて、ボクもとっても嬉しかった。
タネツケバナが咲いたことを知ってのことかどうかは知らない が、裏の田んぼでゴトゴトと作業をする音も聞こえてくるよう になった。 農家のおじいちゃんが田んぼの準備を始めると、もうすぐカエ ルが鳴き始めて、どんどん春になっていくのである。 暖かい春はもうすぐそこまで来ているのだ。
ようやくおとといの日記である。 ボクは3日前のことはちょっとうろ覚えであるが、おとといの ことはよく覚えている。
この日も雨が降っていた。 前の日よりも気温は低かったが、2日前に春のような暖かさに なった後2日も続けて雨が降ったので、この日は散歩道のあち こちに小さな早春の草が芽を出していた。 雪が積もったりしてずっと冷たく固まっていた地面が暖かい雨 でやわらかくなって、草たちは喜んで顔を出したに違いない。
写真の小さな草はハコベである。 まだ花は咲いていなかったが、もうツボミもできていた。 去年の今頃はもうフキノトウも芽を出して、ハコベやオオイヌ ノフグリは花畑を作っていたのに、今年は本当に寒い。 でも、こんな小さな草たちが顔を出し、ツボミをつけたのなら もう春もすぐ近くまで来ているということである。 暖かい春が今からとても待ち遠しい。
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