胡桃の感想記
DiaryINDEXpastwill


2000年07月31日(月) ◇マルタ・シャート著「皇妃エリザベート」

「皇妃エリザベート」
マルタ・シャート著  西川賢一訳   (集英社文庫) 322P

ある漫画にはまって(笑)、ハプスブルク家に関する書物が最近気になって、しょうがない。そんな暴走はまだ続き、今回はこの作品を。

オーストリア(行きた〜〜い!!)帝国最後の皇帝、フランツ・ヨーゼフの美貌の皇妃エリザベート(シシー)のお話。
物語なので、史実とお話が織り交ぜてあり、楽しく読めた。(今まで、割と堅い感じのハプスブルク関係読んでいたしね〜。)14歳から30歳までのシシーが生き生きと描かれている。

それにしても、いつの時代のどの国でも、嫁姑の確執っていうのは変わらないものなのね〜。結局、それが皇太子ルードルフ、しいてはオーストリア・ハンガリー二重帝国を破滅に追いやったのよ〜。ルードルフが死ななければ、少なくとも第一次世界大戦はなかったはず。(ハプスブルク帝国崩壊は免れなかったとしても。)

あっ、この物語ではまだルードルフは7歳かそこらでしたわ(笑)。
いや〜、失敗失敗。


2000年07月25日(火) ◇トム・マグレガー著「エリザベス  ELIZABETH」

「エリザベス  ELIZABETH」
トム・マグレガー著  野口百合子訳  (新潮文庫) 376P

「毒の庭」のエリザベスのその後。(続編でもないし、繋がりはないけど時代設定と年齢がね)でも、もちろん例の従者たちはいない。
前作は娯楽色が強かったけど、こちらは、実在人物が多く、話も宗教問題が(カトリックとプロテスタント)を軸にしている。

エリザベスの周りは、常に陰謀や暗殺が渦巻いている。
愛した人は、政治的局面に立つと、てんで頼りなくなってしまう。
頼もしい(御幣があるかもしれないけど)ヒロインには、かっこいいヒーローは現れないのかな。だって、ロバートはエリザベスの女官にも手を出してしまうほどの、浮気性だもの〜。しかも、彼は結婚までしていたし!
それでも、やっぱりロバートを信じようとするエリザベス。何度も何度も。

そして、ラストシーン、仮面をかぶり綺麗に着飾った人形のようなエリザベス女王が誕生した。
表情豊かなエリザベスが変わっちゃたのは、周りの男たちのせいよ〜!!


2000年07月18日(火) ◇ポール・オースター著「ムーン・パレス  moon palace」

「ムーン・パレス  moon palace」
ポール・オースター著 柴田元幸訳  (新潮文庫) 443P

ムーン・パレス・・・綺麗な響きと表紙に惹かれて購入。(私にとって、とても珍しいこと)しかし、この名前はかつてコロンビア大の近くにあった中華料理店の名前だった・・・。(ちょっと、がぁ〜ん)

この作品のキィワードは、もちろん月。

最初は、見栄っ張りの主人公がどんどん堕落していき、(それも半端じゃなく、死にかける程)友人、恋人の助けにより立ち直る・・・位の話かなぁと思っていた。
頑固者の老人エフィングの世話係り(話し相手、散歩など)として、住み込み彼の最期を看取る。このエフィング、筋金入りの変わり者の頑固者。彼の容姿や、食事の仕方の描写もすごい。核家族で元気なお年よりしか知らない人が読んだら、ぞっとするんじゃないかな。私?私は、まぁエフィングほどすごい人はまだ見たこと無いけど、別に驚かないわね。

エフィング亡き後、彼の息子歴史学者の超ビッグサイズのバーバーと出会い、そして、主人公はある事実を知る。
・・・まぁ、結果を言ってしまえば、私生児で父はもういないと聞いていたのに
バーバーが父親だったと。ということは、物語の三分の二位を占めていた部分は、祖父と孫・・・。偶然が重なり続けてこの結果。話が出来すぎてて、こうなるとは・・・。いい意味で、裏切られた感じ。

恋人キティは、なかなかのしっかり者。ただ、何故MSに惹かれたのか・・・。
さっぱり、理解不能ね。
そして、歴史(?)は繰り返される・・・。





2000年07月10日(月) ◇カレン・ハーパー著「毒の庭  The poison garden」

「毒の庭  The poison garden」
カレン・ハーパー著 吉澤康子訳 (ハヤカワ文庫) 375P

 舞台は16世紀英国。
今まで私が読んだミステリーとの最大の違いは、主人公が命を狙われているということ。事件に首を突っ込んで、命を狙われる主人公はいたけど、最初から
―その身分ゆえに―というのは初めて。
だから、主人公エリザベスの不安・悩み、そして孤独がとてもリアルに伝わってくる。しかも、たった4人(キャット、ジェンクス、ネッド、メグ)の従者
も、なんだか一癖も二癖も有りそうで・・・。みんな忠実なのだけど、怪しい
感じもしてくる。これは、エリザベスに感情移入しているせいね。

当時、医学と薬物学は密接な関係だった。(訳者あとがきより)

だから、薬草係メグは重要な役割(だと私は思っている)。彼女の言動には目が
離せない。エリザベスにそっくりなので、ネッド(彼は役者なので)に教わりながら、気品をつけていくのもポイント。過去が謎っていうのもいい。(つまり私はファンなのです)

エリザベス王女は高貴な方すぎて、庶民の私には理解できないところがあるからね。例えば、いつか指を鳴らすだけで人を動かせるようになりたいとか、秘密会議(王女+従者)では、皆平等よと言いつつネッドが口答えすると怒ったり(じゃあ、平等とか言うなよ・・・)。まぁ、生い立ちからいっても、王女というプライドが高いのかも。環境が良くなかったから、精神くらいはしっかり持っていないと耐えられなかったのだろう。ラストで、メアリー女王が亡くなり、女王になるので、彼女のプライドは高くて当然。と言うより必要不可欠なものなのでしょうね〜。

最新作『The Tidal Poole』(2000年)も早く読みた〜い。
エリザベス1世は、実在の人物。(もちろん、この作品はフィクションです、
念のため)映画化もされ、文庫本も出ているので、まずは『エリザベス』(新潮文庫)を読んでみようと思っている。


胡桃 |MAIL

My追加