どうしてこんなにひかれるのだろうと思う。 外見も嫌いじゃない。 でもそれだけじゃない。
まわりにとても気をつかう人だ。 はじめて会った時からこんなに人に気をつかっていたら本人が疲れ果ててしまうんじゃないかと心配になってしまったぐらい・・・ 好きになってはいけない人だからなるべく傍には寄らないようにしていた。 好きになる予感はあった。
彼女を強く意識しはじめた日のことを俺はいまでもはっきり覚えている。
朝会った時「今日はとても緊張している。」と言っていた。 彼女は彼女にしては珍しくいろんな不安を口にした。 よほど不安だったのだろう。 それが頼られているみたいで、心を開いてくれたみたいでバカな俺にはとても嬉しかった。
彼女にとってはとてもハードな1日だったと思う。 俺にとっても長い1日だった。 夜になってふっと見ると彼女が俺の隣にいた。 彼女はほっとしたような笑顔を俺に向けてくれた。 そう敵に囲まれていてその中に唯一味方をみつけて喜んでくれているようなそんな笑顔だった。 彼女の笑顔の中に隠しきれない疲れがみえて「長い1日だったね。疲れたんじゃない?」と。 好きになってはいけない人だからそんな言葉かけちゃいけないと思いつつもかけてしまった。 彼女は一瞬驚いたみたいだったが「ううん、大丈夫。」と笑顔をみせてくれた。 彼女の強がりがなんだか痛々しくみえながらもその笑顔がいとしく思えた。
その後自分の立場のことを。 俺は思わず聞こえないふりをした。 俺には「あなたを好きになってはいけないのよね。」と確認しているように聞こえた。 真相はわからないけど。 その時はことさらに俺はそのことにはというより貴方に恋愛感情はないからって態度を装ったけど彼女はどう思っただろう。 あの時俺は俺と彼女の間の決して越えられないものを見てしまった。 そして彼女も同じように思ったような気がしたのは俺の自惚れなんだろうか? 彼女がなんだかがっかりしたようにみえたのも俺の思い過ごし?
それなのにその日を境に俺の心は彼女に急接近してしまった。 彼女は俺にとって忘れられない人になってしまった。
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