Title / Place of peacefulness(安らぎの場所)
◆Thanks◆
 music by Are you
picture by LOSTPIA



思い出の貝殻をお気に入りの小瓶に詰めたら・・・
耳に近づけてそっと・・振ってみてください
懐かしい音が聴こえて来ませんか!?



この空の向こうに

 
この空の向こうに
君がいるんだろうね

勇気の羽根はないから
臆病なこの羽根で
どこまで飛んでいけるだろう

この空の向こうに
君の生活があるんだろうね

どんな朝を迎え
どんな夜を眠りにつくのだろう

この空の向こうに
君の笑顔があるんだろうね

零れんばかりの笑みは
いま 誰のそばに咲いているのだろう

君の目が翳ったとき
この空は曇り
僕も闇色に沈むだろう

僕が君を思い出すとき
空はいつも青く澄み
雲はいつも白く輝いていてほしい

この空の向こうに
君の幸せはあるんだろうね

そう信じて いつまでも 僕は
この空を見上げているよ


105


一夜(ひとよ)

 
繊細な新月と
毀れそうな星たちが
群青色の街並を淡く染めあげる

セピアのベンチに影ふたつ
小さい夜に魔法をかける恋人たち

甘んじて・・・
顔なじみの時計が
いつもの半分の速さで秒を刻み
人見知りの夜明けは
恥じらい顔で優しく退く

恩情で・・・
無口な闇は
迷路を抜けて月の下まで歩み寄り
大人な夜は
不安を払いベールを纏う

ありがとう
寛大な心を 

あなたがたのおかげで
永遠と呼べる幸福を
きょうの一夜(ひとよ)に封じ込め
魔法のトランクに詰めました

たとえば
神様がこの恋を
お許しにならなかったとしても
罪深い私が
悲しみに揺れることはありません

それどころか
私の心は
満たされたままに
新しい朝を迎え入れ
希望を摘めたトランクの
小さな穴に鍵をかけ
時が往き
許される日を待ちましょう



104


永遠

 
ある日私は君に出逢った
私は君を愛したよ

それまで着ていた殻を捨て
何ひとつ隠すものはなかったよ

すべての私を君に見せ
私の愛はオトナになれた

季節は遷り
私は君の一部になった
心は君のカラダの中に
瞳は君のくちびるの中に
唇は君の肌の中に

年は流れ
私は君そのものだった
私のカラダは消え
心だけが君の中に残った
私は君以外もう
誰にも見られることはない

遠いある日
鏡に映った私を見て
君はいとおしいと
涙を流してくれるだろうか

私はとても幸せだったよ
君に出逢えたことが
君を愛せたことが・・・



103


海に抱かれて・・・

 
遍く水を湛えて
この海は柔らかな光で海底を射る
悲しみを燃やす花も 戸惑う木も
すべてを抱きながら
この海はゆたりと波打際を打つ

ある日小船で漕ぎ出た漁師のように
猛々(たけだけ)しく強い心で
遠くの涙をも受け止める聖母のように
広く慈悲深い心で
すべてのHITOの想いを抱いて

海が遣わした鳥よ
どうか そのかわいい瞳を見せておくれ
その幼気な(いたいけな)姿で
この痛みを鎮めておくれ

今日の憂鬱を優しい調べに替えて
その柔らかな羽根で癒しておくれ

HITOは寂しいもの
だけどひとりじゃないんだよ

海が私を優しく抱き寄せ
そっと口づけをくれた



102


七月の雨

 
唐突な雷鳴が耳を摩る
プロローグは午餐の街角

見覚えのある傘が前を歩く
忙しそうに寄せ返す傘の波
見失わないように
足早に追いかける

傘の中
蒼い心が小さく揺れていた
雨の匂いは妙に懐かしく
物憂げな街を一瞬甘い幻影が襲う

はっと見上げた目の前に
もうその傘がない
慌てて探しながら
店の横の路地に目をやる

そこは思い出の街
一年前のふたりが歩いている
傘をさして並んで・・・
顔は見えないのに
なぜか泣いているのがわかる

目が醒めたわたし
雲間に冴えた青が見えた

想い出はエピローグの中に
それを気付かないまま
わたしは
ずっと雨を探し彷徨っていた

傘は今もう誰のものでもなく
七月の雨は二度と
私の上に降らないのだと
確かな記憶で口にしてみた




101


闇夜の逢瀬・・・時をとめて

 

この夜の月影に
私も隠されてしまおう

漆黒の中にだけ君は体をやすめ
心の衣(きぬ)を脱ぐだろう

光の中では私も息をひそめ
真実の歌は歌えない

闇に映る君の姿
闇にすべてを委ねる私

一夜(ひとよ)かぎりに許される言葉たちが
闇の中で密やかに生を受ける

一秒 一秒がとても大切なのに
嗚呼
闇の時間は追いかけても掴むことができない
まして
ため息の数が時計の針を進めてしまう

選ぶ時も知らないままに
言葉がリズムを打ちながら流れる
まだこの時計は
闇の時間を計っているのだろうか

君の寂しげな微笑みが
狂おしくあたりを染めるころ
ふたつの言葉は重なることもなく
闇に包まれ また夫々の時間へ帰される

次の闇夜が またの逢瀬
月影に この葉映りて 待つ身揺れつつ

置き去りにされた
空しい言葉たちが泣いている



100


気持ちのゆくえ

 

いまはもう
あなたを愛していたのかどうかさへ
わからなくなりました

もしかすると
憧れだったのかもしれません
もしかすると
信頼に満ちた
友情だったのかもしれません

いまわかっているのは
あの時 確かに 
あなたを好きだったということ

あの焦がれるような熱砂の日々は
今ではもう
僅かな熱ささへも残さないほど消化されて
想い出そうとすればするほど
綺麗すぎるだけの画像が
スクリーンを覆ってしまうのです

いまにして想えば
その中に映し出される自分の影を
追い求めていただけなのかもしれません
あなたのこと好きでたまらない自分を
愛しく感じただけなのかもしれません

いま私・・・
悲しいから忘れようとしているんじゃないの
辛いから逃れようとしているのでもない

ほんとに 
あなたを愛したときがあったのか
今はそれすらも霧に隠れようとするのです

でも・・・
これだけは言える
あの時
あなたを好きだった
たまらなく好きだったということ




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