2005年03月30日(水) |
I’ve got fire water right on my breath and the doctor warned me I might catch a death |
午後に築地のスタジオで、ラジオCMのジングルを歌う仕事。一人スタジオでヘッドホンをしてマイクに向かう。隣の調整室では数人のスタッフが腕組みをして私の声を聞いている。モニターで姿も見られている。ものすごく冷や汗モノの状況だが、とにかく深く考えないことにしている。
今日は23日のデモ録りの時よりずっと喉の調子が悪い。今日が本番だってのに。
何とか乗り切った。拘束1時間で、ギャラがSad Cafeの一週間ぶんのお給料だったのが嬉しい。(終わってから初めて額を知ったw)
クライアント側は、CMをナレーションにするかジングルにするか迷っているらしい。つまりは今日の録りを聞いて決定するということだ。
正直あの出来じゃあ難しいな。しかし楽しかった。どっちにしても、いい経験をした。
夜中、元ダンナと電話で話す。連絡するのは4ヶ月ぶり。
入院してたんだと言う。肝臓がやられていて、あと一滴でも飲んだらアウトだとか。相変わらず歩けないらしい。
私の日記をお正月頃からずっと読んでいなくて、数日前からまとめて読んでいるんだって。・・・お正月後って。いつもこのひとはものすごいタイミングでまとめ読みするなあ。
「何か大変みたいだね」と言われる。ええまあね。あなたほどじゃないけどね。
I've got fire water right on my breath and the doctor warned me I might catch a death (強い酒の飲み過ぎで死ぬって医者に脅されたよ) *Stage Fright / The Band (970) の歌詞。
2005年03月27日(日) |
You gotta tell |
今夜はRonnyは夜勤。私は渋谷でNakeesのライヴを観る予定。家を出るのが遅くなってしまい、光速で身支度をする。私のせいで彼を仕事に遅刻させるわけにはいかない。それは、彼が自分の意思でうちにいてバンドのリハに遅れて行くのとは全く話が違う。
新宿でRonnyと別れ、渋谷へ着いたのがライヴ開始時間の17時半。慌ててひろりんにメールし、Nakeesが毎月出演しているテラプレーンの場所を訊きながら、急いで向かう。ところが何通目かのメールでひろりんが突然「ちょっと待って!! 今日ってテラプレーンじゃなかったんじゃ・・・」
・・・げっ。じゃどこなんだ。
「BOSSってとこだよ。私、場所わかんないや」
走って駅に引き返し、交番に飛び込む。「BOSSっていうライヴハウスはどこですか?!」 若いお巡りさんが電話帳をめくるが探せない。「レストランしかありませんねえ・・・」
「そのレストランの電話番号は?」
「え、だってライヴハウスじゃないですよ?」と、また悠長に別のページを探し始める。「・・・やっぱりないですねえ」
「さっきのレストランの電話番号を下さい」
「え、でもライヴハウスじゃないし」
・・・いいからさっさとおしえろ!!!
電話する。ライヴやってるとのこと。ああ助かった。場所を訊きつつ走る。Nakeesはもう始まっているという。「何曲目くらいですか?」
「え? さあ・・・でもさっきから何だかドカドカやってますよ?」
・・・ああもう皆いい加減にしろっ。と言いたいが、一番責められるべきは私。
飛び込む。「泥棒とカナリア」をやっている最中。あああ私がNakeesで2番目に好きな曲じゃんか。オサムさんのどまん前の席が空いてたので滑り込む。走ったので暑い。コートもジージャンも脱いでタンクトップ1枚になる。
白石さんが珍しくマトモなドラム・セットで叩いてる。服装も今日は渋くキメてる。そのせいか音もタイトに聴こえる。
一方NOGGYくんの格好はイロモノそのもの。最近ベースのトラブルが続くが、今日は何と2弦が切れてしまった。しかしものともせず力強く弾きまくるあたりはさすが。
オサムさんは金髪のヅラ。ラストの「Teacher」で、「君のその美しさ」という歌詞でこっちをひたと見すえて手を差し出したので、ああ今のプロポーズかしらと感激しかけたが、そのすぐ後に似たようなことを他の子にもやったところを見ると、どうやらただのファン・サーヴィス。ちぇ。
結局7曲中3曲半だけ聴けた。終わった瞬間にぐったり。もう帰りたい気持ちをおさえて次のバンドを観てみるが、その次のGSバンド(ワイルド・ワンズのメンバーの飛び入りもあった)の途中で力尽きる。
先に来ていたRくんと一緒に出て、ビックカメラでヘアアイロンを買ってもらう。数日前から接触が悪かったのだ。ヴィダル・サスーンの新製品にした。店を出ようとしたらRくんが「iPodの売場は見ないように」などとわざわざ言うので、せっかくだから、でも多少は遠慮してminiを買っていただく。色はRくんに選んでもらってピンク。パールがかったこの色は、私のマニキュアと同じ色だわ。
「房's」というバーで軽く飲む。鹿肉などの料理が美味しかった。
You gotta tell (いいから言え!!) *Tell Me(言え!!) / The Rolling Stones (1964) の歌詞。
2005年03月23日(水) |
立派にきちんと風邪をひいたのである |
明け方からぞくぞくし始め、あっという間に具合が悪くなる。風邪だ。
風邪気味はしょっちゅうだが、こうも本格的なのは1月12日以来。
何で日付まで言えるのかって?――当然だわ、Ronnyに初めて会った日だもの。
今夜の飲みの約束をキャンセルし、ベッドで寝る。
先週土曜にGODZで会ったハーベイ――20歳のコロンビア人からメールが来る。月曜から毎日何度も来ているが、話題はいつもふたつだけ。もう一度会いたいということと、自分の仕事(小松製作所で働いてるらしい)が嫌いだということ。
彼はあまり英語が得意じゃないので、たまに私の言うことが通じない。だから電話よりメールを好む。
コロンビアの公用語はスペイン語だ。彼と初めて話した時、私は(よく人がそうするように)知っているスペイン語を全部並べた。"Hola!" "Buenos di'as." "Co'mo esta?" "Muchas gracias." "Adios!"
あとは数を数えるくらい?――"Uno, dos, tres, cuatro, cinco, cinco, seis"(1、2、3、4、5、5、6)・・・ってそれじゃ、オフスプリングの Pretty Fly だろ。
"Uno, dos, tres, catorce!"(1、2、3、14)と言えば、U2の"Vertigo"になるけどね。
立派にきちんと風邪をひいたのである *かぜのひきかた (How To Catch Cold) / 矢野顕子 (1989) の歌詞。
2005年03月21日(月) |
Transformer |
読書量は年間120〜150冊、それがネットを始めて以来、半分以下に落ちていた。しかし最近また本を読む時間が少しづつ増えてきつつある。
最近はまったのが宮沢章夫という作家。この5、6年、本は殆どネットで(PC購入前は紀伊国屋の携帯用サイトで)買っているが、この作家はそういうネット・ショッピング中に「お薦め」されたのだ。書名と内容紹介だけでもう面白いと決めつけ、2冊買ってみたらはまったので、すぐまた3冊買った。本来は劇作家で戯曲など書いているようだが、私が買ったのは全てエッセイ。
「牛への道」に収められている機械翻訳の話。ある女性がネットの機械翻訳サービスを利用したところ、(当然だが)おかしな翻訳が送られてきた。そこで 「彼女が知ったのは、『最新の人工知能の研究成果』はこの程度かという当たり前の結論ではなかった。彼女はむしろ、その『日本語』に魅力を感じ、『機械翻訳は使える』とすら思った」 と来る。そしていきなり、カフカの「変身」を本棚から抜き出して試してみるのだ。 「そして臆面もなく機械は訳したのである。予想も出来なかった『出来のよさ』に彼女は気分の高揚を感じた」
更に彼女は「ライ麦畑でつかまえて」の一節を試し、その結果 「何か素敵な発見をしたように思えた」 と来る。
この「彼女」こそ素敵である。つまりはこの作者の感性が素敵ということだが。
自販機で千円札が戻ってくるのに怒りうろたえ、「なぜ戻そうなどと考える。おまえは金が欲しくないのか」ってのもいいなあw
Transformer (変身させるもの *アルバムタイトルの意味は服装倒錯者) *Lou Reed のアルバム。(1972)
2005年03月18日(金) |
I want you to remember |
今日も朝からRonnyとメールして、夕方には電話をもらった。で、会話の最中に、たったひと言にかなりがっかりした。電話を切って電源も切る。PCにメールが来たので、いわば決別宣言のような短い返信をする。
夜、高円寺のCROSS ROADでTACさんと飲む。TACさんに聴かせる為、R.E.M.の'Automatic For The People'を持込んでかけてもらった。
1曲目の'Drive'は、本当は夜に一人きりで、ヘッドホンどころか耳に突っ込むイヤホンで聴くのがいい。ずっとそうして聴いてきたから、一昨日の武道館で、あの音が会場中に拡散していくのを「見た」時の驚きと感動は言い尽くせぬものがあった。
2曲目の'Try Not To Breathe'の歌詞に"I will see things you will never see"というのがある。オアシスの'Live Forever'の"We see things they'll never see"という能天気で幸せな歌詞に比べ、何という不幸だろう。
レッチリのハイド・パークのライヴもかかった。何ていい店だw
酔っ払ってRonnyに電話して、自分は出ずにTACさんに話させる。TACさんが色々話してくれていたようだが、私は全く聞いてない。
それにしても私って、酔っ払うとタガが外れて色んなことするなあ。おまけにヘタしたら覚えてないし。
帰宅途中にもRonnyと電話したけど、この時の会話内容、何一つ記憶にないw
I want you to remember (あなたは覚えていてね) *Try Not To Breathe / R.E.M. (1992) の歌詞。
2005年03月17日(木) |
When you're beautiful and dyeing all the world that you've denied |
夕べもいつも通り寝ないでずっと起きていたが。
朝6時半に突然、R.E.M.の名古屋・大阪に行きたくなる。Nariさんは8時過ぎの高速バスで新宿を発つ筈だ。今から急げば間に合うかも。慌てて荷造りしてみたが。ふと検索かけたら彼女の乗るものを含めてバスは全部満席、大阪はライヴのチケットが完売。諦めたわ。残念。
少し風邪気味。少し喉が痛い。今夜は約束をキャンセルしてうちにいることに。
火曜の夜Ronnyに電話で、離れていく私を止めて欲しいと言った。以来Ronnyから電話がよく来る。水曜の朝も昼も、夜も私がライヴから帰るなり夜勤中なのに電話をくれた。その間を埋めるようにずっとメールが来る。
それが単純に嬉しい。
夜に、R.E.M.を聴きたいというRonnyにmp3で5曲送る。'Drive'が気に入ったようだ。
'Drive'―――あまりに好きでじりじりする。
一昨年、精神状態の荒れている時によくMDでR.E.M.を聴いた。アルバムはたいてい'Green'か'Automatic For The People'で、'Automatic'の1曲目の 'Drive'は特に繰り返し聴いた。いつも新宿に向かう上り電車のがらがらの車内で、ドア際に立って夜の闇を見ていた。マイケル・スタイプが暗く深い声で"Hey kids, rock and roll. Nobody tells you where to go, baby"と歌うのを聴くと、世界中をこの美しい曲の足元に踏みにじりたいような気分になった。
自分の中の焦燥と不安、外の腑抜けた世界に対する苛立ちが強ければ強いほど、この曲が暗い夜を照らして燦然と輝きわたった。
What if I ride? What if you walk?
What if you rock around the clock?
Tick-tock, tick-tock.....
When you're beautiful and dyeing all the world that you've denied (その美しさが、否定した筈の世界を染め上げる) *Boys On The Radio / Hole (1998) の歌詞。
2005年03月16日(水) |
そして私の胸も熱くなったのでした。 |
私は音楽情報が何もないので、R.E.M.を知ったのも遅かった。1995年。
好きなロックのアルバムは山ほどあるが、初めて聴いて殴られたような衝撃を受けたのは今までに3枚だけ。レッチリの"By The Way"、暗黒大陸じゃがたらの「南蛮渡来」、そしてR.E.M.の"Monster"だ。
R.E.M.は'95年に、私が彼らを知ったと同時に来日した。実に数日違いで、私はきっちり見逃した。
その後、音楽雑誌なんて年に1冊も買わない私が珍しく買ったRocking Onの、巻頭グラビアに載っていたR.E.M.来日のレビュー。その見出しのコピーを見た時の悔しさは忘れない。
――――「そして皆の胸は熱くなったのでした」
そしてあれから10年。ようやく観られるR.E.M.、武道館ライヴ――――。
なのに遅刻。おい。マジで? おかしいだろう、ちょっと。
19時開演なのに。18時半に、一緒に行くまるちゃん(♂)から来た携帯メール「今どこ?」――私の返信が「お・・・荻窪」
東西線で九段下へ。駅に着いたら走る。18時57分! とにかく走る。そこへまるちゃんからメール。「前座があるから急がなくていいよー」・・・あっ。
歩く。着いたらバリバリ前座中。日本若手バンドのどうでもいい音。ゆっくり飲物など買い、終わってから中へ。
二階南東一番前。隣は通路という夢のような席。取ってくれてありがとう、まるちゃん。Nariさんも子供のようにワクワクしている気配。しかし聞けば高所恐怖症だって。二階の手摺は異常に低いから、これは怖いだろう。なんてお喋りしてたら――――
照明が落ちた。間をおかずにR.E.M.登場。R.E.M.だR.E.M.だやだどうしよう。ホンモノが。あんなあっさりと現れて。マイケル・スタイプだ。マイケル。
ピーター・バックのギターが一音鳴る。ディストーション。嘘。この音。ドラムのカウント。
"I Took Your Name"―――Monster の9曲目。
思わず低い手摺いっぱいに乗り出す。実は私だって高所恐怖症。それを完全に忘れ去る。興奮をどうしたらいいかわからず、両手が手摺をかいて、虚空に伸びる。
シンプルなステージだ。ライトもどぎつくないので、二階からだと見えづらいくらいだが。それがいい。
ピーター・バックが――全くただの太ったオジサンだが――軽い身のこなしでぴょんぴょんと跳ねる。
マイク・ミルズのコーラスがこんなに上手いとは知らなかった。マイケルのボーカルときれいに絡んで。ベースもしっかりと。とにかく全体が、何てクオリティの高い演奏だろう。
マイケル・スタイプの動き。独特のパフォーマンス。ちょっとした動作にいちいち会場全体がわっと反応する。この、オーディエンスの素晴らしいこと。10年待ったから?
日本にこんなに沢山R.E.M.を愛する人たちがいるなんて。(外人率は高かったが) こんなにいい人たち(w)が沢山。
一曲ごとの拍手がすごい。ロックのライヴでは、あまり拍手するとダサいと感じる場合も多いが。今回は私も素直に自然に手を叩いていた。どれだけ私が感動しているか、少しでもあらわしたくて。
今日は初めての体験をした。実は今度の新譜"Around The Sun"が、入手が遅くて聴く時間があまりなかったというのもあるのだが、どうも頭に入らなかったのだ。しっくりとしみてこなかった。
ところがライヴで初めてこのアルバムの聴きどころがわかった。最初に新譜からやった"The Outsiders"でもう、良さがすとんと腑に落ちた。かつてなかったことだ。
"Electron Blue" の、"You"というたったひと言にぞくっと痺れた。―――ああ、R.E.M.は昔と全く変わってないじゃないか。何てこと。おそろしくロマンティック。
"Drive"
今日、来る途中ずっとMDで聴いていた。一昨年の秋、薄汚い恋に苛ついている時、よくこの曲を聴いて壮絶なカタルシスにひたっていた。
特にどうアレンジすることもなく、ただひたすら完璧な演奏。何という迫力。
マイケルが歌詞に合せて、"Tick...tock...tick...tock"と左右に手を上げる、それだけでもう、感激でじりじりしてしまう。
――――"Orange Crush"
反射的に立ち上がっていた。こんな席で立ったりして、落ちたらどうするのよ(手摺は殆ど膝の高さで、床は前に傾斜している)、などということは一切おかまいなしで。
マイケルが拡声器で声を張り上げている。何てかっこいいんだろう。まさに今夜のクライマックス。
この時の記憶はあまりない。ただ感動で涙ぐみながら、同時に嬉しくて笑いが止まらなかった。いやもう涙ぐむっていうか、かなり最初の頃から泣いてたし。久しぶりに、忘我の境地ってのを味わったよ。
ラストは"Losing My Religion" やっぱりこのイントロはいいな。マンドリンの音が美しい。ソロ嫌いのピーターの、ほんの一瞬のソロが心に沁みる。
アンコール。"What's The Frequency, Kenneth?"
Monster の1曲目。私が初めて聴いたR.E.M.の曲。これを聴けた瞬間、10年越しの悔しさがようやく抜けた。
一番最後は"Man On The Moon"
もう、文句なし。どういう言葉でたたえればいいのかもわからない。
あのオープニング曲に、このエンディング曲。予想もしてなかった。素晴らしい。他のバンドではあり得ない。素晴らしい。
終了後に興奮してまるちゃんと語り合う。R.E.M.は、ルーツがわからない。どこからこの音が沸いて出たのか。こんなバンドがアメリカのジョージア州から生まれたなんて。
明日から名古屋・大阪とまわるNariさん(羨ましい・・・)と別れ、まるちゃんと新宿のMariottへ。何と'I took Your Name'がかかってる。何たる偶然!と思ったら、店の奥にやはりR.E.M.帰りらしいKB(g)を発見。何だーw
毎年、一年間に観たライヴのベスト3を選んでいるが。
3月現在早くも、今夜観たライヴがベスト1に決定。というか、今までの人生で観たベスト1のライヴだった。本当に。
神様、R.E.M.をこの世にくださって有難う。
(セットリスト)
2005年03月06日(日) |
Qu'est que c'est |
これはいいもの借りちゃったな。BBCのTV番組'The Old Grey Whistle Test'のDVD。'71〜'84年、28アーティストの演奏と、ロバート・プラントやストーンズのメンバーなどのインタビューを収録。
私的には'78年がたまらない。トーキング・ヘッズ、XTC、ブロンディ、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、ポリスと続くのだから。
この中でXTCだけは、ちゃんと聴くのは初めて。ベースのコリンが可愛いこと! このテの顔は好きなんだよなあ・・・。
トーキング・ヘッズは"Stop Making Sense"の映像しか知らなかった。その頃のティナ(b)はそこらのショッピング・モールで子連れでお買物してそうな平凡な女性に見えたが。たった6年前のこの映像ではボーイッシュなショート・カットで、その目つきがすごい。デヴィッド・バーンをひたと見据えてまばたきもせずに、単調な重いぶつ切りの、存在感のある音を送ってくる。'Psycho Killer'って、こんなにベースが肝心な曲だっけ。そして対照的にギターとボーカルのヨレヨレなこと。シロート並だわこりゃ。
ビジュアルはもう最悪で、デヴィッドはレモン色のポロシャツ(裾はパンツに押し込み、胸のボタンを一番上までぴっちり止め、エリは片方が折れ曲がっている)で、ヘンな横揺れの動きで腰を振っている。
・・・え、じゃあ見る価値ないのかって? 28アーティスト中、一番印象的でクセになる音と映像よ。何十回繰り返して見たことか。
演奏前の番組スタッフの紹介が痺れる。
"What the fuck is this?! Talking Heads!"
Qu'est que c'est (=フランス語で That is that it is) *Psycho Killer / Talking Heads (1977) の歌詞。
スタッフのコメントと合わせると、会話になる。"What the fuck is this?!"(一体何だこりゃ?!) "That is that it is."(それはそれ自体さ)
お休み。珍しく寝る。
バーナード・マラマッド著「アシスタント」読了。何て美しい話だろう。人生の悲惨とか恥とか悩みとか、そういう一切のものをしっかりと見据えながら、その脇に少し離れて立っている「美」がある。それを「神」というんだと私は考える。
視点の定まっていない小説で、心象風景が次々と色んな登場人物のそれに変わる。小説作法の基礎としては、やってはいけないとされる手法だ。それが全く問題なく、個々の人物の裸の懊悩があっさりとぽんぽんと読者の目の前に投げ出される。
彼女は本を読む。彼は読まない。彼女は彼に「あんたは偉大な小説のいくつかを読まねばいけない」と言い、こともあろうに「ボヴァリー夫人」、「アンナ・カレーニナ」、「罪と罰」を読ませる。この時の彼の感想がいい。「ボヴァリー夫人」は「好奇心とともに読んでいったが、最後にはげっそりとし、嫌になり、冷たい気持になった。どうしてこんな婦人のことを書きたがったりするのか、見当がつかなかった」、「罪と罰」は「反発と興奮を同時に感じた。この連中は誰も彼も、口をあければ何かを告白したがった」とある。何とまあ、正しい感じ方だろう。
彼は、「読んでいるのは自分自身のことだという奇妙な錯覚にとらわれた」という。同時に私も、この、本を読まないイタリア人が自分と重なる。彼は決して何かを完成することが出来ず、弱さや罪の告白がひとを結びつけると信じる。
「アシスタント」の前には、ポール・オースターの「偶然の音楽」を読んだ。恐ろしい小説だった。
いくばくかの遺産を手にした男が、勤めを辞めて車で放浪を始める。途中で金がなくなり、奇妙な事情を経て、ある屋敷内に軟禁されて壁をつくり始める。
目的のない人生の自由と不安。そこに突然当面の目的を与えられ、思考を停止してよくなり、しかしやはりまた実人生に戻ろうとした時、ひとはどうすればいいのか。
今日は詩も書いた。
「belly」とは腹のこと。以前に飼っていた牝兎の柔らかい腹と、'02年に行ったアムステルダムのレッドライト地区(飾り窓がずらりと並ぶ地域)のイメージ。何もかも与える女の危険性を書いた。己と無関係とは言わないが、いつもの日記同然の詩に比べると客観性が高い。
Beautiful (美しい) *Smashing Pumpkins の曲。(1995)
2005年03月04日(金) |
But it's no joke |
早朝に携帯のメルアド変更。約100人に連絡。アド変更のたびに「友人」が絞り込まれていく。新アドレスはこの世で一番好きなものにした。
今日はオーナーから電気が(料金未払いで)止まるかもしれないと聞いていた。もしそうならMATTさん(g)がお食事に誘ってくださるとのことだったので、ものすごく期待して出勤したのだが。
電気ついた。ちぇっ。肝心な時に限ってこうだわ。
MATTさんご来店。甘いものを色々と差し入れてくださった。ホワイト・デーのクッキー(テディ・ベアつき)も。
ステイタス・クォーの'Riffs'をお聴かせした。最近、ネタとしてよく店でかけている。
'03年発売のこのアルバム、他人の大ヒット曲のカバーばかり集めている。そのベタベタの選曲は眼をおおわんばかりで、クラッシュの I Fought The Law、ステッペン・ウルフの Born To Be Wild、キンクスの All Day And All Of The Night など。イギー・ポップの Wild One までやっている・・・節操ってものがないのか、一体。しかし何より腰が抜けるのは、J.ガイルズ・バンドの Centerfold(堕ちた天使)。しかもこれら全てを、何のひねりもなく素直に、まるで中学生が文化祭用にコピーしたみたいにやっている。・・・大御所バンドが何で今更こんなことを。
それと、やるならいっそ全部カバーにすればいいものを、最初と最後だけオリジナルのセルフ・カバーってのが潔くない。
・・・冗談でやってるのか? そうなのか? だとしたら、わかりづらっ!!!(いやでもやっぱりマジだと思うなあw)
But it's no joke (冗談ではない) *I'm So Tired / The Beatles (1968) の歌詞。
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