ぶらんこ
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山奥の小さな駅にいる。 観光地なのかもしれない。古い小さな駅だが、周囲にはそれなりの人々が電車を待っていた。
そんな中、構内の段差のところに座ってギターを弾きながら歌っている男性がいた。小さな紙切れに書かれたのは楽譜らしい、それを見ながら弾いている。 よくよく見ると、なんとそれは南こうせつだった。わーーーこうせつだ!!わたしは嬉しくなってそろりと近付いて行った。
彼はとてもみすぼらしい格好をしていて、どうも暮らしぶりが良くない感じがした。 それでも囁くように歌うその歌声は昔ながらのこうせつの声で、ちっとも衰えている感じはなかった。 「こうせつ、カッコイイ!」 思わず、声を出して言ってしまった。こうせつはふと指を止め、わたしの事を見上げて言った。「君は僕のことを知ってるの?」 「もちろんです!大ファンです!」 こうして、わたしはこうせつと一緒に座り、彼のギターに合わせてともに歌った。 こうせつは嬉しそうにしていた。間近で見たら、あぁこうせつも年取ったんだなぁ、、、と感じた。
こうせつはどこかの街の何かのお店でレジ打ちをしていた。その姿を見ながら、生きていくって厳しいな、、、と思った。 こうせつは音楽の世界にいるべきなのに。と、心から悔しく思ったが、それも生きるってことだよね、と納得している自分もいた。 なんだっていい、素晴らしいものは素晴らしい。 こうせつはやっぱりカッコイイ。
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