ぶらんこ
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2011年07月22日(金) デトックス

「薄情」と「現実的」


似ているようで違うのか

それとも

違っているようで同じことなのか



さて、


解毒には何が必要か








2011年07月12日(火) てんつゆ

てんぷらをつけて食べるてんつゆ。
熱いてんつゆに揚げたてのてんぷらをさっとくぐらせていただく。大根おろしとしょうがが入っていると尚よろし。
あ〜てんつゆてんつゆ。
魔法のつゆ、てんつゆ。
なんてセンチメンタルな響き、てんつゆ。





  ・・・・・・




その日、わたしたちは近所の蕎麦屋へ食事に行った。
その蕎麦屋は消去法で辿り着いた場所であり、やりきれない思いを振り切るようにして入った店だった。


母のためにはうどんと天丼のセットを頼んだ。
大きなどんぶりに入ったうどんは母にとっては食べ辛いだろう、と、店員に取り分け用のお椀をお願いした。
ほどなくして店員さんが持って来てくれたのは、子ども用のキャラクター椀と小さなフォークだった。
もちろんわたしたち家族には「小さな子ども」はいない。
届けてくれた店員さんがそれに気付いたとは思えない。いや、気付く気付かないというよりも「気にしていなかった」。


水色のお椀を前に、どうしたものかとしばし思ったが、熱いうどんを冷ますためにそれを使った。
母は「それでいいよ」と言っていた。「お椀はお椀、変わりはしない」と。


天丼も食べるといいよ、そう言って勧めると、殆どてんつゆがかかっていないのに気付いた。

「これって、てんつゆ、かかってるのかね・・・」

姉のひとりがそう言い、皆でそれぞれその天丼を確認した。

「かかってない、、、」
「かけ忘れ・・・?」
「どうだろか、、、」
「これじゃぁご飯の部分が食べられんよ」
「これは、、、酷い、、、」

てんぷらには辛うじててんつゆがかかっていたが、ご飯にはその名残が表面にほんの少し付着しているだけで、ほぼカラカラ状態だった。

「どうする、、、」
「店員さんが戻って来たら、頼めばいいんじゃない?」
「えぇ、、、」

先の子ども用お椀&フォークに心なしか傷付いていたわたしたちは、それぞれ皆、心のなかでちょっとした葛藤があったに違いない。
しばし沈黙の後、

「言おう。頼もう」
「そうそう。もしかしたらかけ忘れたのかもしらんよ」

そんなことはあり得ない、と思いつつ、それぞれが奮起して言い合った。

「もう少してんつゆをかけてくださいませんか、っち頼もう」
「いや、てんつゆを少しいただけますか、っち、別に頼めばいいよ」
「なんのてんつゆ?っち思われるよ」
「なんで〜普通に頼めばいいがねー、てんつゆください、でいいよ」


誰が言うかというのは決めていなかったのだが、店員がちょうど通ったとき、姉のひとりが「すみません」と声をかけた。
成りゆき上、その姉が言葉を続けた。

「あの、、、この天丼、、、てんつゆがかかっていないような、、、あの、、、てんつゆ、、これで、、かかっているのでしょうか、、?」


あぁ、、、そんな言い方じゃ、、、しかし、とき既に遅し。
店員さんはちらりとその天丼に目をやってから、は?なんのこと?風な目でわたしたち全員をぐるりと見返し、

「てんつゆがかかってないと言うのですか」

と、言った!いや、本当に!

わたしは気が短い。とてもとても短い。姉妹のなかでいちばんに、短い。
もちろんカチンと来た。ドッカチーン!じゃ。


「かかっているのかもしれませんが、ちょっと少ないように思うのです。もう少してんつゆをいただくことが出来ますか」

ひるんでなるものか、という想いで言った。店員さんは、ちょっとの間わたしを見てから

「いいですよ」

と言い残して去って行った。そして、てんつゆを少量(超、極少量)持参して戻って来た。

「ありがとう・・ございます・・・」


しかしそのてんつゆは美味しくなかった。
哀しい味がした。
こんな気持ちになるのなら、てんつゆなんかなしで食べれば良かった、、、と思ったくらいに。


母は「あんたたちの〜お店の人に対して失礼じゃ〜」というようなことを言っていた。
あ〜母ちゃん母ちゃん母ちゃん!


母ちゃんは知らない。
わたしも姉も、あんな風に言葉にして言ったけれど、心のなかは暴風雨で、言った後もドキドキして・・・


「まみぃたちは小心者だからね。お店の人はそういうのわかるんだよ。だからあんな馬鹿にした態度で応対するんだよ」

こころの言葉に妙に納得。
もっと毅然とした態度で、心を開いて、これこれこういうわけだからお願いできませんか、と頼めば良かったのだ。

だけどね、あのお椀のことで傷付いてしまったのだよ。
あのとき、母を馬鹿にされたような気がして憤慨したのだ。そして、どこか萎縮してしまったのだ。
あぁ、けれど、もっと堂々としていれば良かった。萎縮する必要などなかった、母はわたしたちの大事な母ちゃんなのだ。


「母のためにお願いしたのです。出来ればこれでなくて、普通のお椀をいただけますか」


きっと次は(本当の)心の声に従って、それを言葉にしなくちゃいかんね。
そして、てんつゆを美味しく美味しく、いただこう。





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