ぶらんこ
indexpastwill


2009年03月06日(金) 「親友」

町で開催されたアートフェアーへ出かけたことが引き金となったのか・・・ふと思い出したことがある。


中学2年か3年の頃、美術の時間に「人物画」というのがあって、わたしは親友の顔を描いた。
机をくっつけ、彼女と向かい合うように座り、わたしは彼女を、彼女はわたしを、それぞれ描いたのだ。


当時のわたしにとって、彼女はいちばん近い存在だった。
お互いを「親友」と呼んでいた(と思う)。

あの頃のわたしは非常に屈折していて、自分を表面に出さないようにしていたが、彼女には(比較的)防御を緩めることが出来た。
自分のすべては出せなかったけれど、そうしたい、とは望んでいた。
だから彼女には密かな恋心も打ち明けた。(彼女の他、誰にも言わなかった、否・言えなかった。と思う、たぶん)


本当に彼女のことが大好きだった。
名前も、姿形も(綺麗な子だった!)、頭の回転が良いところも、適度に運動が出来るところも。
何より彼女は面白かった。
あんなに綺麗な顔のどこからどうやって、あのふざけた思考が飛び出してくるのだ?と思った。
もちろん、思考は顔から発生するものではない。つまりはそのギャップが新鮮で嬉しい驚きで、不思議と波長が合ったのだろう。




その彼女を人物画のモデルに選んだ。
白い画用紙を前に、わたしの2B鉛筆は、さらさらさらと動いてくれた、ためらうことなく。
今でもはっきりと覚えているのは、まず彼女の眼から描き始めたということ。
眼というか、眼の部分。眼球と瞼、その周囲。その後に、鼻、頬、耳、口、それから顔の輪郭。
(実は、漫画を描くときにはいつも顔の輪郭からはじまり、眼、鼻、口・・と描いていたので自分自身ちょっと驚いた)


さて、こうして仕上がった絵にわたしは大満足だった。
わっ似ている!と思った。これはまさに○○じゃ〜!と思った。
彼女はというと、「えぇーーーこれ酷いよ、、、」と不満気だったが、別に気にならなかった。
いいの、自分で好きだから。

思いがけず、美術の先生からも絶賛された。
特徴をよく捉えている、というようなことを言われた。彼は他にも何やら言っていたが、残念なことにまったく覚えていない。

とにかく、誰になんと言われようと、わたし自身がその絵を気に入った、ということが大きかった。
なんとも形容しがたい、しあわせな気持ちだった。



それからしばらくして、中間だか学期末だか、美術のテストがあった。
教科書に載っている、美術一般の事柄や美術史からの何やらが問題として挙げられていた。
が、問題用紙の二枚目(だったと思う)最後の問題は「担当の試験官を描きなさい」で、ページ半分程が四角で囲われていた。


生徒たちがざわざわっとしだした。
それを見越していたかのように先生はわたしたちをなだめ、「ハンサムに描いてよー」などと言って笑わせた。


わたしは・・・

結構、自信があったのだ。
あれだけの親友を描けたのだから、先生なんて簡単カンタン〜ってね。


ところが、鉛筆が動かない。全然、まったく動かない。
おいおい時間がなくなっちゃうよ。早く描かないとーーー。

もちろん、焦れば焦るほど全然ダメ。
しょうがない。無理に鉛筆を動かす。顔を上げる。先生を見る。線を描く。線を太くする。細くする。消す。その繰り返し。


どれくらいの時間だったのか。とうとう鐘が鳴り、試験終了。

そうやって出来上がった先生の姿は・・・





とーーーっても





ちっちゃかった!!!




まぁーーわたしは自分の絵を見て愕然とした。どうなっちゃったの、わたし!

似てなくないことはない。が、違う。これは違うでしょうー。
正直、うろたえた。
すべて消してしまいたいとう衝動に駆られた。
でも、多少の点数は貰えるだろうと、そのまま提出した。

その後は、案外良い出来だったのかもよ?と思い直したり(言い聞かせたり)もしたが、いやあれはいかん、、、と、さらに落ち込んだ。


結果、テストそのものの点数は悪くはなかった(と思う)。
絵に対する点数は、高くもなく低くもない、といったところか?(全然覚えていない)

覚えているのは、筆記試験と一緒に絵を描かせて点数にするって卑怯じゃないか、と思ったこと。
また、いくらかでも点数になる・・なんていうイヤラシイ気持ちを抱いた自分が情けなく、なんとも腹が立ったこと。



う===嫌な思い出だ。




ところで、その親友とはもう長いこと会っていない。
一度、5年か6年前に島へ帰ったとき、遠くから姿を見たことはある。
あっと走り寄って声をかけようかと思ったが出来なかった。
彼女はふたりか三人の、まだ小さなこどもの手を引いて歩いていて、その姿を見てなぜか躊躇してしまった。
彼女じゃなかったかもね、と思ったりもしたが、いやあれは絶対に彼女だ、と変な確信もあった。
実際、彼女が島に住んでいるかどうかもそのときは知らなかった。



あのとき声をかけなかったことに後悔はしていない。
でも、もしもいつかまた会えたなら・・・


はて。何を話したら良いのやら?やっぱりわからんけど。。。
そうなったらそうなったで、楽しみではある。かも。



今、思うのは。。。

あの頃、自分をさらけ出せなかったと同時に、彼女のこともよく知ろうとはしなかったのかもしれないな〜ということ。
自分のことで精一杯だったのかもね。自分ばっかり見てたから。色々ぐじぐじ悩んでたし、そのことは彼女にも言わなかったしなぁ。
いわゆる「思春期」てヤツ、と姉に言われたけれど・・・

あ・案外、彼女もおんなじだったかもしれないなぁ。。。






2009年03月02日(月) 果て



底へ降りていくのに

どれだけの時間を費やしたろう

ここが深淵か

或いはもっと深いのか


わたしは闇を欲する

もっともっと

わたしを包み

わたしを飲み込むほどの


苦しみこそがわたしの支え

痛みこそがわたしの糧


闇に限りはない

ひたひたとどこまでも続く

じっと目を凝らす

拡がる闇を見る



闇は休むことがない

わたしに寄り添い

わたしを放さない




わたしは闇を見る

闇に


果てがあるかのように







marcellino |mail