プープーの罠
2007年07月20日(金)

チクタク

週末なので友人と
飲みに行こうと待ち合わせ。

決めた時間に決めた場所に着き、連絡を
しようかと携帯を取り出したらちょうどメール着信。

それは八木君だった。

開こうとした瞬間、
待ち合わせていた友人に肩をたたかれ、
そのまま携帯を閉じて飲みに行った。

彼女は今の会社でまだ派遣として働いていた
頃に仲良くしていた人で、
現在 彼女は別の会社に派遣されているけれど
いまだに連絡は取り続けていて
こうして時々二人で遊んだりする。

そういう風に
仕事仲間から友達に発展
するのはそうそうあることではなく、
福田さんも連絡は取ったりするが
どこか打算的というかやはり仕事の延長の域を出ない。
加えて薄情な私はただでさえ
その場限り
で疎遠になりがち。

ダーツでもしようか
などと言っていたのだが、
まずははらごしらえ、と入った居酒屋で
喉が枯れるほど話し込み、
気がつけば終電ぎりぎり。

またねと別れてちょうど
ホームに滑り込んで来た終電に飛び乗る。

時間をみようと携帯を開いて、
画面に映りっ放しになっていたメール受信アラートで思い出す。
今度は何だ?またお笑いが面白かったか?

『今度のみに行きましょう』

別れて以来の、初めてのお誘い。
ライブに誘われることはあってもそれは会うのとはちょっと違う。
カフェでお茶
すら断られていたのに。

私はぼんやりしてしまう。
止まっていた時計がまた動き出すのかも知れない。

2007年07月10日(火)

点と点

福田さんとひょんなことから飲みに行くことになり、
仕事終わりに家の近所で待ち合わせた。

彼女はまだ無職
もとい、フリーランスとしてやっている。
冬に一瞬カムバックしたが、
初日にバレンタインチョコレートを配り、
最終日にホワイトデーのお返しを回収して辞めた。

彼女のクリエイターとしての自信は何故か加速度を増し、
そういう彼女に対する私の辟易感も比例して増大し、
お互いの出す そういう空気 をお互いに感じ取ってか、
最近ではめっきり疎遠になっていた。

私はなんでも知っている
と誇示するかのように彼女の口から羅列される社員情報。
得意気になると方言が出る。

私は現役で在籍しているとはいえ
出向している限り最新の情報は入ってはこないが、
それでも初耳の目新しい情報はなかった
が、それでひとつ、解った。

多分、早稲田君は彼女に私のことも話している。

そもそも彼女と私が共有している"時代"はほぼ一緒で、
本当に最新のニュースになってしまうと、
その社員自体が分からないので
自然と時が止まったまま懐古する形になる。
出向してからの数ヶ月間は、
私は早稲田君から社内のことをいろいろ聞いていた。

早稲田君目線の人間関係をこれだけ知っているなら
それだけ話す機会があったのなら、
彼は自分の話もしているだろう。
相手が誰、とは言わずとも。

半年ほど前、
私も少しだけ福田さんに話したことがある。
社内に付き合ってる人が
いた
と。
誰とは言わなかった。

どこかのタイミングで、福田さんは気がついたはずだ。
早稲田君の相手を。
私の相手を。

早稲田君が話したとすればきっとこうだ。

 俺は好きだったんだけどね、
 急に機嫌が悪くなって
 どこもかしこも気に入らないと言われて
 突然一方的に別れられた


私が彼女に話したことはこれだけ。

 早く死ねば良いのに、と思ってる

そのこともきっと彼女から早稲田君に伝わっているだろう。
早稲田君の相手が私だと気づく前か後かは分からないけれど。

そして福田さんが知っているということは、
香さんや螺子さんも知っているのだ。
そう考えると、先日たまたま会った
時のよそよそしい態度に納得がいく。


福田さんは分かっててそういう話題に持っていこうとしている。
私がもう知っていると分かりきった話をして、
私視点の早稲田君エピソードを聞こうとしているのだ。
野次馬ゴコロか 或いは 持ち前のおせっかいで復縁を取り持つ気か
少なくとも今度の飲み会の話のタネにでもなるだろう。

私は何も話さない。
早稲田君の話をそのまま信じて
いてくれても別にかまわない。
それが誤解だろうが真実だろうが、
大して重要なことではないから。

索引
「プープーの罠」 written by 浅田

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