プープーの罠
2007年04月23日(月)

アイズ

タカハシヒデオは電話をする時、何故か
立ちあがり、自分のPCに背を向ける。

すると、私の方を向いている案配。

私の目の前のパーテーションから、
飛び出して
ぴょこっ
と視界に入るもの
に、目を向ければ彼と視線がぶつかる
のが分かっていて私は
ぴょこっ
と飛び出たものはいちいち見ていた。

彼はよく電話しているし
よくうろうろしている。

とはいえ席にいないことの方が多くて
ぴょこっが彼
である確率は約2割。

けれどそれが彼であった時、
目の合う確率はほぼ必ず、なのだ。

ちらと目をやると、
彼は大抵顔も体もまっすぐこっちを見ている。
盗み見た
つもりがばっちり見つかって
しまうのでちょっとバツが悪い。

しかしてちょっと考えてみる。
私は電話をしながら
どこを見ているだろう。

まったく浮かばない。

話すことに気がいって
目は完全なふしあな化、
私も誰かを誰ともなしに見ている
のかも知れないがそれは記憶の隅にすらない。

はたまた彼は近眼で
私の目線など見えていないかも知れない。

今一番知りたいことは
彼の視力は良いのか悪いのか
である。

2007年04月16日(月)

観察日記

席替えをして部署が隣りになり、
タカハシヒデオは日々、視界に入るようになった。

着ているもの、仕草、
いちいちツボをついてくる。

いつも顔が赤くて泣いた後みたい。
皮膚が薄いのだろうか。

新たな発見、
皮がつっぱったようなツリ目は
笑うと目尻にたくさん皺が寄って
ナキブクロがぷっくりする。

非常に愛くるしい(´∀`*)

2007年04月12日(木)

春の季節

4月もちょっと過ぎて
職場は部署編成を大きく改変、
それに伴い、フロア全体をかき混ぜる
ような席替えが行われることになった。

私は、上司のアシスタント
という位置づけなので
部署が変わるとはいえ一緒に仕事をするメンツは
変わりなくひとまとまりで異動になるが、
部長から送られてきたフロアの座席表を見る限り、
席だけはフロアの端から端へ引っ越さねばならなそう。

ところでタカハシヒデオの席はどこだ?

覚えたての名前を探すと、案外席が近かった。
前の席はどこだか知らないけれど、
滅多に見かけたことはなかったので、多分
反対側の端っこだったのだろう。

あのツリ目が毎日見られるのかしら。

席替えが楽しみ。

2007年04月10日(火)

タカハシヒデオ

職場に、ツリ目のきつい人がいる。
少し華奢に見える中肉中背
バランスのいい体付き、

持て余すような長い手足の人
も、見ていて楽しいが
ちょっと寸が詰まったような
そういう骨格が好きだ。

数人で立っている中で絶対的に低い背で
背筋を伸ばしてしゃんと立っている様子が好きだ。
すらりとした顎も少し巻き込んだ肩も。


少し前にデザイン誌を見ていたら載っていた。
 あ、この人知ってる
インタビューの隅についている
小さな文字のプロフィール
生まれた年が同じだった。
私は早生まれなのできっと
彼の方が学年はひとつ下だろう。

そうか、年下か、畜生。

自分より下の年齢の人が
世の中の中心になってくる。
そんなことを思った

ことをふと思いだし、
職場のアーカイブを漁って
その雑誌をもう一度探す。

さて何て名前の人だったかしら、と。

無表情のきついツリ目の顔写真
彼の名前
漢字4文字をしげしげと眺め頭の中で暗唱する。
10回言ってクイズのように。

名前を知ると好きになる。

2007年04月02日(月)

パイロットフィッシュ

前の続き。

私は八木君に返信するのはよそうと思った
けどやっぱり翌日返した。

 『ボーダフォンの人が減って寂しくなるわ』

それからその日は音沙汰がなく、次の日もなく、
その次の日に返事がきて
どの携帯にしたか教えてくれた。
別に聞いたわけではない。

私はそれに対して色を聞く。
 『何色にしたの?』
 『白だよ。』
ビビッドな色が好きな八木君。
モノトーン以外もある機種なのに。

私の携帯も白い。



 『前の携帯が海外製でね
 互換性がなくてね
 メモリーの移行が出来なかったから今
 ひとつひとつ手打ちでアドレス移しているところ。
 いい機会だから疎遠になった人とか整理しながらね』

て ことは、
もこみちの宣伝していた一括お知らせメールは
使 っ て な い
ということだ。

私に宛てて出されたメールだった
ということ。
私は整理されずに彼が意図して再登録した
ということ。
しかも比較的早い優先順位で。



八木君の前の携帯は赤かった。
因果性はわからないけれど私は昔
好きな色は赤と教え、赤い携帯を持っていた。

それに応えて八木君は昔、教えてくれた。
 僕は青。あと、黄色も好き。

それから私は黄色が好きだし青を選ぶようになった。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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