禿ワロタ!
2006年02月09日(木) |
最愛カプ補足:「BLAME!」弐瓶作品の部 |
最愛カプ「なんか忘れてるなあ」と思ってたらありましたよ!
弐瓶勉作品で!肉体関係ないけどな。
その1:メンサーブとセウ
BLAME!東亜重工編のAIメンサーブと電基騎士セウ
狂ったAIなど言われていたがその気高さは
騎士が仕えるにたる貴婦人そのもの。
肉体を持たないメンサーブと人間セウのプラトニックな愛もえがった!
セウは男前だったしな。
その2:霧亥とシボ
カプと言っていいのかわからないが腐れ縁
シボが霧亥に付いていくと言った時の
霧亥のもの凄く嫌そうな顔が印象深い
しかしシボさん、最後にあんなになっちゃうとはなあ(涙)
その3:シボとサナカン
たぶんネットスフィアの救世主の聖母(達)
サナカンの爆弾発言に驚く。
その4:珪素生物のペア
珪素生物は男女ペアで行動するらしい。
♀の方が強い傾向があるみたい。
繁殖はどうしてるんだろう。
ちなみに筆者は「ポケモンはどうやって繁殖するのか?」
と発言し周囲に大変嫌がられた。
その5:BIOMEGAの造一とカノエ・フユ
東亜重工の製品(?)合成人間の庚造一と
東亜重工製重二輪車搭載AIカノエ・フユ
この時代の東亜重工社の制服はフルフェイスのバイクヘルメットに
バイクスーツらしい。
次点:ネットスフィアの統治局
いつもセーフガードに邪魔される
哀愁帯びたネットスフィアの基底現実への使者へ一票。
いつも単体で出てくるけど。
※:「ABARA」はまだまとめて読んでないので、はっきりした事は言えない。
2006年02月06日(月) |
今月のクレイモア:とベルセルクレビュー雑感 |
❖あーっ!クレイモアで蝕なんて!❖
見たくねかったのに!
フローラさんが、ジーンさんが、あんまりだよ・゚・(つД`)・゚・
……作者的にやりそうな気はしたが、うう。
しかも、最後のクレアの顔 怖すぎる。
一ヶ月は長い
◆ベルセルク:レビュー「剣獣」◆
また、マカラかよ……
「またシールケの魔術でなんとかなるんでしょー」と思いつつ
シールケは火炎輪発動のダメージですぐには魔術使えないか……。
シーサーペントだったら個人的に受ける!
シーモンクだったら笑うしかない。
2006年02月05日(日) |
「青い狐の夢」13:ダーク描写ありますご注意を |
ダークな描写あります。
お読みになるかどうかはご自身で判断なさってください。
読後の責任は負いかねますが
「こんなもん書くな」とか「へたくそ!」等の
ご意見メールは受けつけておりますので
苦情はそちらからどうぞ。
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法王庁の軍隊が、さして得る事もないであろう祖末な家に土足で上がり込んでいた。甲冑を着込んだ騎士達の重みで、家はきしみ壊れてもおかしくない有様だ。目当ての人間がいないので、騎士達はざわめいていた。笑っていた。
この屋の住人は、石造りの家の間、じめついてゴミや汚物やらがぶちまけられた、狭く暗い境に身を隠していた。この家屋の主人とその妻に子供達。男は騎士達の笑い声を聞き、憎悪と悔しさに我が身を呪った。いや、呪われるべきはあの者達だ。
自分達はただ「日々の糧が欲しい」と言っただけだ。貴族や僧侶の様な生活をしたいなど言っていない。確かに貴族の館を焼き討ちにし、略奪をはかった事は神の御心にはかなうまい。しかし、その王侯貴族達は同じ事をして、日々肥え太っているのだ。
生まれが高貴な僧侶達の中からも、神の前の万民の平等を説いて火刑になった者も少なくなかった。もしこの世に正義があるのなら、我々が正しい。正しいはずだ……。
カチリと金属の音がして、男の妻と子供達が身を震わせる。妻は子供達の口を塞いでいた。逃げられなかったか……。夜目にもわかる金髪と、聖鉄鎖騎士団のタバードを羽織った若い騎士がこの狭い場所を覗き込み、男と目があったのだ。
「……逃げなさい」
「!?」
予想だにしない言葉だった。どう見ても法王庁の軍隊の騎士ではないか?
だが彼は続ける。出来るだけ小さな、しかし通る声でもって。
「…早く逃げなさい。ここを離れて、川を下って一刻も早く
法王庁の力が及ばない自由都市へ逃げ込みなさい。
団長が来てしまいます。それではもう僕には助ける力はありません。
早く、振り向かないで、逃げなさい!」
「セルピコ、そこに誰かいるのか?」
「いえ、ネズミだと思います……」
男がセルピコの言葉にうなずいて、家族と共に奥へ走り去ろうとしたまさにその時、女の声が近づいてきた。こんな時のファルネーゼは不思議と勘が良かった。
セルピコと呼ばれた若い貴族の前を、その屋の一家が引き立てられていく。彼は先ほど言葉を交わした男を見、微かに視線を落とした。
「恨んじゃいません、ありがとう」
男は薄らと開かれた若い貴族の瞳を見た。あの暗がりの中、奇妙に感情のない薄い色の瞳は酷薄で、まさかあんな言葉を吐くとは思えなかったのだ。
若い貴族は一度男を見、また静かに立っているだけだった。
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……教授…ヤーノシュ教授、僕はもっと貴方と話をするべきだったのかもしれません。つかの間の間でしたが、世界の謎や知識の探求について、もっと話をするべきだったと思います。世界はもっと広いのだと。自分が知り、捕われている世界は小さいのだと、逃げられるのだと、知るべきでした。
今の僕は、邪教徒を狩る仕事に携わっています。邪教徒と言っても、彼らが背徳の教えを信じたとか、何か罪を犯したとかそんな事はありません。ただ明日の食べ物を欲しいと言っただけです。彼らには何もありません。彼らが口にした事は「異端」と呼ばれました。貧しい人々が、言葉の罪だけで火に焼かれ、殺されていきます。
聖都の大聖堂の前、火刑場は今や昼も夜も火が絶える事はありません。ほんの数刻前に言葉を交わした人間が、安い薪の様に火に焼べられ、僕の目の前で骨になっていきます。
哀れなのは庇う親もいない孤児達で、食べ物を盗んだだけで火刑に処されました。僕も昔同じ事をしていたのに。子供達は恐怖に声もでないまま、抱き合ってすぐに火に包まれます。子供を二人一緒に焼くのは、もっぱら薪の節約の為だそうです。食事らしい食事をとっていない子供達は、すぐに骨になり灰になって、炎にまかれ天に昇っていきました。
もし教圏の教えが本当であるのならば、邪悪なる魔女は我々である筈です。こんな理由の為に、多くの人々を火で焼き殺す事が出来るのですから。
火あぶりにあう彼らが、魔女や悪魔である筈がありません。彼らはあまりにも無力で、ただ殺されていくだけなのですから。
聖鉄鎖騎士団の中でも、この一方的な火刑に疑問の声をあげる者もいました。騎士といえど、それ相応の学識、教養をもった人物もいるのです。ですが彼は、団長の、しいては大審院の不興を買い、騎士団を追われました。自分から聖鉄鎖騎士団から離れる貴族もいます。あまりに惨い光景に耐えきれなくなったのです。この凄惨な場から逃れる者を、卑怯であると誹る者もいます。騎士に、貴族にあるまじき行為だと。
しかし、それは違うのです。普通、人々が穏やかな暮らしをしていれば、この様に業火が絶えず燃え盛る事などありません。我々の生活には、通常この様に大きな炎はいりません。日々、わずかにパンを焼き、湯を温めるわずかな火で十分なのです。
火刑は永遠に続く山火事の様です。大きな炎から動物は逃げます。鳥もネズミもオオカミも、火の後に、奇跡の様に再生する樹木をならいざ知らず、逃げる脚や翼を持つ者は、地上の業火から逃げ出すのが真の姿なのです。
ここに留まるのは、人間、僕たちの様な人間だけです。残った者は内心、嫌な責務と思っていても、やがて炎で人が焼かれる前で、談笑し酒を飲む様になりました。
僕は、仕える主人がいるが故、この場にとどまっています。燃え盛る火で人々が焼かれていく様を、なんの感慨もなく見つめています。僕の主人が、かのヴァンディミオン家の令嬢で聖鉄鎖騎士団の団長です。
彼女は大審院から異端者狩りを命ぜられ、たいそう熱心に職務を果たしています。火で焼かれる人々を見る、ファルネーゼ様の白い陶器の様は頬は紅潮し、神託を受ける巫女の様に美しくさえあります。
ファルネーゼ様は精力的に活動なさり、日々多くの邪教徒、異端者を火刑に送ります。その度に、うっとりと人が炎に焼かれる様を見つめるファルネーゼ様。ファルネーゼ様の渇望は、どんなに人を火に投げ込んでも埋まる事は無いかのごときです。
僕は、ファルネーゼ様が、こうなってしまった理由を知っています。彼女が欲しかったモノを、僕が決して与えなかったからです。あの閉じた邸宅で、いくら鞭打っても、彼女が真に望むモノを与えなかった男。あの方は、僕を鞭打ちながら、無力感に苛まれていました。ご自分の求める物が何なのか、自分をこうも苛立たせる男達は何を考えているのか、判らないからです。
「陽が高くなってきたな。では帰るとしよう」
青い狐の神託を語っていた者とは別人の様に、ヤーノシュは顔をあげ俗世の顔に戻った。事実、荒野は陽に照らされて、乾いた風が丈低い草木の上を凪いでいった。
「『どうして自分をかまうのか?』とでも言い足そうな顔だな。
学生からの質問はいつでも受けつけておる。
君の様な優秀な生徒ならなおさらだ」
「……いえ、教授ともあろうお方が
占いを信じておられるのかと、不思議なのです」
ヤーノシュの後ろからセルピコは丘をゆっくりと下る。
丘でも山でも、いつも登るより下る方が注意が必要なのだ。
「ふん、野暮な物言い様だ。占いはあたるも八卦、あたらぬも八卦。
それでなくとも”神はサイコロ遊びをなさる”のだ。
占いで神託がおりても、次の瞬間から刻々と己の行く道など
変化していく、あたかも物理現象の様に、だ」
「……失礼ながら教典での教えはいささか
違ったものだったかと思うのですが……」
「優等生の模範的答えで真に結構。
だが”世界”があんな小さな書物に収まる大きさと思うかね?」
「……」
セルピコにもそれは実感として思い当たる。
もし教典で説かれる神がいるのなら、病、貧苦、身分の著しい不平等の世界など造る訳がない。その神が”人間の為”の神であるならなおの事だ。
病と貧困に苦しむ母親は、理性が利かなくなっても祈っていた。世界や、愛した男がいつも自分を気にかけてくれていると、夢想していた。とっくの昔に見捨てられていたのに。過去は過去でしかなく、変化を認めない、認められないで狂った女。
世界が己の求める物を与えないでの、怒り狂うファルネーゼ。いくら生身の人間を鞭打っても、彼女の乾きは収まらない。
彼女らは、世界に、男に何を期待しているのだろう……。
「では、世界の創造主は、我々人の存在を気にかけてなどいないのでしょうか?」
「我々人が期待する様な形では、気にしていないのかもしれん。
なにせ万物を創造した主なのだ。創造物の一つである人の事ばかり
気にかけてもいられんだろうよ」
「人は、神に似せて造られた特別の創造物と教えられました」
「トラか家畜ではない動物に聞いてみたまえ。聞ければだが。
彼らも、自分達は特別の存在であると答えるだろうさ」
「なにか、昔の賢者のおとぎ話みたいな問答です」
「それもそうだな……」
ヤーノシュは大きな腹を揺すって息を吐いた。
丘の途中で一息付いたのだ。
「さて、散々引きづりまわして悪かったな。
これが君につきまとった理由だよ」
「………」
ヤーノシュは、懐から二通の封蝋された書状を取り出した。
セルピコはものも言わずに受け取る。
いつも通り、一通はセルピコ宛、もう一通はファルネーゼ宛だ。
「ヴァンディミオン卿からだ。そして今、修道院長は大審院に
召還されて留守なので、私がこの書状をあずかったのだ」
「……大審院が動いて、ヴァンディミオン家に関わりのある事なのですね?」
「ご名答。あのヴァンディミオン家の娘御に聖鉄鎖騎士団団長の
話が持ち上がっておる」
ヤーノシュもセルピコも、思わず一緒に尼僧院の方向を仰ぎ見た。
丘の中腹からはわずかに鐘楼の尖塔が見えるだけだ。
「……ですが、あの方は尼僧院にお入りになりました。
いかなる高貴の婦人と言えども、出る事はかなわぬと……」
「何事にも例外はあるさ。大審院は伝統に従った
お飾りが欲しいという処だろう。
ちょうどいいのだよ、栄えある高貴の血筋に麗しい容姿。
前任の団長殿は、騎士の一人と恋仲になって腹が膨れて職をとかれた。
『処女にして娼婦』と揶揄された、男ばかりに女一人の団長など
凶状持ちのあの娘御にはうってつけの役だ」
話しながら、ヤーノシュはヒリッとした冷気を感じた。
封蝋を解いて、ただ静かに己の書状に目を落とすこの青年の
逆鱗に触れたのかと思った。
「……その不品行も今は昔の話だ。
その前団長殿も幸せな結婚に落ち着いた。
アザン殿が聖鉄鎖にきてから、だいぶ規律が引き締まったと聞いている。
君が心配する事は何も無いよ。
で、聞いてもいいかね、ヴァンディミオン卿はなんと?」
「……御館様はファルネーゼ様が聖鉄鎖騎士団団長に就任なさるので
引き続き警護役を務めよ、紋章官の役職を用意してある、と。それだけです」
「随分話は進んでいるのだな。では君は早晩神学生をやめて
こんどは聖鉄鎖騎士団に入るのかね?自分の希望如何に関わらず」
「……教授、私ごとき下々の者に希望も自由意志もありません。
ましてや、選択肢などないのです。
与えられた職務を全うすれば、明日の食事と寝床は保障される。
それだけで満足なのです……」
「そうか……。君にとって、学ぶ知識も知恵も世界も
指からこぼれ落ちる、砂のごとき代物なのだな」
「そうとも言えますね……」
自分の周りにはいつも人間がいて、浅ましく情念に突き動かされながら生きていた。自分はそこから逃れられない。
私は、広々として、美しい知恵に彩られた世界など見た事がない……。
「残念だよ……」
物寂しいヤーノシュ教授の声音を、セルピコは遠く聞いた。
一晩明けて、セルピコは荒野の丘を登っていた。
思えば、朝この丘を登るのは初めてかもしれない。
朝日でも十分背中を暖めてくれる。
今日は予定調和の様に晴天だった。
小さなネズの木と、その側に立つ恰幅のいい男の姿があった。
ヤーノシュは存外早起きの人間の様だ。
”年寄りは朝が早いと言いますものね……”
ヤーノシュの姿を認めながら、セルピコはひっそりと心の中で思った。
「遅い!遅すぎるぞ、セルピコ君。君までもか!
まったく最近の若いもんはなっておらん」
おかんむりの上、ヤーノシュは朝から元気もよかった。
精力的な方だ……。セルピコは少しげっそりする。
「遅くなったのはお詫び致します。ですが言い訳もさせてください。
僕はこれでも朝食を抜いて、まっすぐに此所へ来たのです」
「ふん、そんな事だろうと思った。
これでも齧りたまえ」
教授はまたしても、懐からパンの塊を取り出して
セルピコの手に押し付けた。
「あの、これは…」
「私の学生へのささやかな心づくしだ。
エールもないと不満かね?」
「いえ、そんな事は……」
さっそくありがたく頂戴したパンだったが
丘を登った乾いた口には、多少食べづらい食物だった。
口の中の水分をもっていってしまう。
エールの一杯でも飲んでくればよかった……。
「こっちだ、早く来たまえ」
もふもふと乾いたパンと格闘するセルピコを
ヤーノシュがネズの木の下から手招きする。
「ヤーノシュ教授、なにか急ぐ必要があるのですか?」
「あるともさ」
当たり前と言わんばかりにヤーノシュはセルピコに振り返る。
陽が高くなればなるほど、青い狐の足跡は他の動物、人間の痕跡に
かき消されてしまう。それはすなわち、夜の力、青い狐の神託が
昼の俗気に触れて消えてしまうことなのだ。
オラクルですって?セルピコはその単語を聞きとがめた。
「占いに”もう一度”は無しだ。それが作法というものだろう」
「はあ、それで肝心の神託はきているのでしょうか?」
「読み解くのは私だが、骨を置いたのは君だ。
君も一緒に見なければならん」
半ばヤーノシュに引きずられて、セルピコは昨日の場所を案内させられた。
「ここです」
セルピコが指差した場所には、確かに何かの動物が鶏の骨を噛み砕いた
痕跡が残っていた。それに足跡らしきもの。
教授は黙ってそれに見入っている。
「………シリウスの二重連星………」
「はぁ…」
「…燃え盛る炎、そして女、か……」
獣の足跡を凝視しながらヤーノシュは続ける。
「女運がひじょーーーーーにわるいな。呆れる程わるい。
君は女達にとって、とても都合のいい人間らしいな。
それに嫌気がさして、君は一度エクソダスを試みた。
しかし逃げた先には、燃え盛る炎の女がいて
君をひたすら凍えさせる。 おかしな火だ。
火の傍らにいるのに少しも暖められる事はない…」
セルピコはいつしか、戯れの占いに耳を傾ける。
「……ヤーノシュ教授、シリウスの二重連星とはなんなのですか?」
「君はケプラーの言う事を信じるかね?それとも教典かね?」
「ケプラーを」
「私にとっては合格だな。この地はあの大いなる陽の周りを回っている。
その大きさたるや、天使の領域だ」
ヤーノシュは太陽を仰ぎ見た。
「そして、天は深く広大で、あの太陽の様な星が
二つ連なって一つに回っている。それがシリウスの二重連星だ。
我々にはまだ確かめるすべは無いが、シリウスは二つ太陽の輝きなのだ」
「僕はケプラーがそう言っていたとは知りませんでした」
「いや、これは土地の古い伝説だ。
二つで一つ。絶妙な重力のバランスによって二つの星は回っている。
君には何か心当たりがあるだろう」
「………」
セルピコは黙って聞くしかない。
「君はこの先、もう一度エクソダスを考える。
それはついえるだろう……。
どうしてこんな女の側にいる……とは問うまい。
ひどく混みいった事情が、君の中にもある。
だがエクソダスは悪い概念ばかりではない。
運命は君を打ちのめすが、諦めるな。
遠い未来、新天地を求める事、デアスポラ
君自身の為に選びたまえ」
「……こんなに陽が射しているのに
僕にはまるで夢の中にいる様です……」
「そうだ、これは『蒼い狐の夢』なのだから」
「では早速やった、やった」
ヤーノシュが、食べかすの鶏の骨を握らせようとするので
セルピコは腰が引ける。勘弁してくださいよ、教授
それは教授が口に入れた物ではありませんか。
渋い顔をするセルピコにかまわず、ヤーノシュは彼に鶏の骨を握らせた。
「これ、どうしたらいいのでしょう……」
湿った鶏の骨を手にして困惑するセルピコ。
たぶん、この湿り気は鶏の脂と、教授の唾……。
「何、簡単な事だ。君が今悩んでいる事を思って
骨を好きなところへ置く。
一晩したら、同じところへきてみる。
そこに青い狐の足跡か、骨を噛み砕いた跡があるかもしれん。
それを見て吉凶を占うのだ」
「はあ……」
セルピコはヤーノシュに急き立てられて、いつも通る荒野の道筋
その脇生えた、目印になりそうなネズの木の根元に骨を置いた。
「これでいいのでしょうか?」
「それでいい。明日、陽が昇ったらすぐここに来たまえ。
私も来る」
自分は馬鹿にされているのではないだろうか?
ヤーノシュの堂々たる体格を見ると
セルピコには彼がどうにも早起きの人間に見えないのだ。
明日の早朝、ぽつねんとこの丘に骨と共にいる
とんまな自分の姿が容易に想像出来た。
また、こっそりとため息をついた。
「夕食の時間に遅れてしまいました。
私はどうすればいいのでしょう……」
「パンとチーズくらいは私が調理場から調達してやる。
暖かいスープの一杯くらい付けてやってもいい。
心配するな」
食事を抜けば倒れそうな痩身のセルピコを横目に
ヤーノシュはネズの木の周りをまわって
枝を曲げたり、葉をちぎったりしていた。
「待たせたな、では帰るか」
「あのネズの木が何か?」
「ここは昔、もっと多くの木々が生えていたそうだ。
教圏の教えがくると、その土地の木は切り払われてしまう」
すっかり夜になってしまったが、今日は月が明るくて
夜の散歩もそうわるいものではなかった。
「教授は青い狐を見た事がおありなのですか?」
「いや、私自身は見た事がない。
この土地の古老の教えだ。
この土地特有の薬草や、病気の癒し方など実に多くの事を教えて頂いた」
青い狐は非常に賢いので、滅多に人の前に姿を現さない。
ただ、昔、人と世界とが近かった頃、人々は青い狐の鳴き声、気配
蒼い毛皮のその姿をかいま見る事があったとヤーノシュは言った。
まるで世界の断片の様だと彼は語り、セルピコは眉唾ものだと思って
教授の話を聞いていた。
「私の郷里でも、法王庁の教え以外の存在の話が伝わっていた。
よく子供の頃、夜、祖母に昔話をしてもらったよ」
人の業渦巻く聖都育ちのセルピコにとって
青い狐と同じくらい遠く、しかしどこか懐かしく、羨ましい話でもあった。