キャリアウーマンの正体
友人から電話があった。
以前、発言小町を教えた彼女。
掲示板にはまることなく、光回線導入後もPCはメールのみらしい。
よく考えれば、匿名の書き込みを相手にするより、
目の前にいる人間相手に、熱く語りたい性格だった。
彼女の父親も、私の父親もサラリーマンではない。
つまり、私と彼女は経済的な面で、似たような育ち方をしている。
友人の兄の妻が、どんな家庭環境で育った人なのか知らない。
学業成績優秀で、向上心もあり、出産後に語学留学までやってのけた
ことは聞いていた。
仕事もバリバリやっているそうだ。
その妻が姑に、つまり友人の母に放った一言を聞いた。
「裕福な家庭だと思ったから、お嫁に来たのに」
いつの時代の言葉だ?と友人と爆笑した。
「嫁ぐ」だとか、「嫁」だとか、キャリアウーマンを
自認している女性の本音が、それなのか。
華やかな上辺だけに惹かれて、電卓を叩いたんだろう。
私は笑いながら
夫の実家の財産狙いで結婚したのに、当てが外れて
八つ当たり中なのね。
でも、結婚した相手は兄貴であって、父親じゃないのにね。
友人もゲラゲラ笑っていた。
彼女は私と話すと元気になると言う。
今回は、私も素直に笑って、長時間話せた。
今の生活がどうであれ、育った環境が似ていると話がすぐに見える。
友人は、ますます交友関係が減っているようだ。
言いたい放題にした相手に
子供ですね。
と言われ、どう思われようがこれが私の行き方だと宣言したらしい。
言った後で、必ず落ち込むくせに開き直ってしまう。
私は、こんな彼女が好きだと思う。
電話で2時間以上、ものすごい勢いで吐き出し続けた彼女。
年に数回のことだから耐えられる。
*** *** *** *** ***
今夜はクリスマスイブ。
去年の日記に、こんなことなら一人でいたほうがよっぽどましだと
書いたけど、望みどおりに今夜は一人で過ごす。
お兄さんから送ってもらったワインを、どうやって開けるか悩んでいる。
ボロボロに砕けて、ビンに落ち、コルク臭が漂うワインを
飲む羽目になりそうだ。
2005年12月24日(土)
お兄さんからの贈り物
お兄さんから宅急便が届いた。
2ヶ月遅れのBEAUJOLAIS NOUVEAU
元々ワイン好きじゃなく、
その上、はやりに乗るのが嫌いな天邪鬼だから、初ボージョレー。
できたばかりのワインが、美味しくないことだけは知っている。
添えられた手紙には
20年くらい熟成させると、もっとおいしくなるよ。
早速、お礼の電話をした。
20年もほうっておくと、酢になる可能性大だよ。
だよね、飲んじゃうね。
電話の後に、
テーブルワイン(正確にはそれより上の格付けですが)ですので
室温よりやや低めにして(10度程度)がぶ飲みしてくださいませ。
と、メールをくれた。
さすがプロ、細かい気配りだった。
悲しいことに、お兄さんはまた彼女にフラれたそうだ。
今度のお正月に、親戚一同から「結婚まだか」と言われるのが
鬱陶しいと嘆いていた。
毎年の行事なので、がんばれと励ました。
いつ飲もうかな。
一人でクリスマスに。
彼からのプレゼントの、テディベアを相手に。
昔、国立民族博物館に勤めていた知り合いから
オランダ製の可愛らしいワイングラスを頂いた。
悲しいことに、度重なる引越しの途中で見失ってしまった。
バカラのワイングラスを、実家から盗んでくればよかった。
仕方ないので、コップ酒のようにして飲みましょう。
2005年12月21日(水)
帰省
帰省の件で、実家に電話した。
まだ新幹線の乗車券を買っていないと話すと
5分おきに出てるから、乗れるぞ。
と、父親は訳のわからないことを言い出した。
地下鉄じゃあるまいし、そこまで短い間隔ではない。
私が○に行った時、グリ−ン車だったぞ。
そんな話は初耳だ。
というより、夏前から電話していなかった。
事務局が取ってくれたが、自腹だ。
自慢なのか、愚痴なのかわからないが、いつものこと。
どうやら、○大臣様に表彰されたらしい。
お祝いが大量に届いて、お返しが大変だったそうだ。
気の毒なので、お祝いは贈らないことにすると言っておいた。
父親依存の妹は、毎年誕生日に、ロイヤルコペンでイヤーズプレートや
犬グッズを贈っている。
嫌味な私は、それって父から貰っている生活費からだろと思ってしまう。
気持ちの問題だからと、もう一人のまともな私もいる。
年が明けると、たしか父親は72になる。
戌年の犬好きなので、ネットで拾った狛犬画像でも送ろうか。
ホームで数本見送って、自由席を狙う私。
いつか、グリーン車に乗ってみたい。
もちろん、自腹はいやだ。
2005年12月20日(火)
この街
私は、この街が好きなんだと思った。
交通量の多い通りを歩くと、喉が痛くなるし
物価の高さには辟易しているけれど。
山手線に乗っても、地下鉄に乗ってもほっとする。
どの店に入っても、みんな親切だし、世間話をしてくれる。
前に見つけた小さな赤い花が、別の場所で咲いていた。
前を通るたび、同じものかどうか確かめた。
1枚だけ撮った。
歩き出すと、後ろから声をかけられた。
写真、撮ってくれてありがとう
その家の人だった。
花泥棒になったような気分で、思わず謝ってしまう。
これは1年中咲いてるのよ。
頂いたものだけど、名前を忘れちゃった。
お礼を言って帰ってきた。
もうすぐ、ここで暮らし始めて1年になる。
大阪以外での最長記録になる。
2005年12月13日(火)
彼のいなくなった夜
2週間の予定で始めた同居期間が、3週間に延びたのは、
途中で彼が消えたから。
5日後に戻ってきた彼は、憔悴し苛立っていた。
最後の最後に、また悔しさと悲しみを味わったけれど、
毎日、彼の帰る時間に合わせて食事を作り、彼と眠った。
実質半月足らずの同居が、昔からの習慣のように馴染んでいた。
21時から食事の支度を始め、零時前に食事して、深夜2時に一緒に入浴。
彼は帰ってからも仕事を続け、眠るのは3時過ぎか4時。
こんな不健康な毎日だったけれど、食事量は多かった。
朝食を作り、献立を考え買い物に行く。
楽しかった。
あの隠し事が発覚した数日間は悪夢のようで、
現実そのものだった。
2年前の彼の不実を、今なじるのことは意味が無いようで、実はある。
過去は現在に、現在は未来に続いていく。
真っ二つに折られた携帯電話の残骸を目にしたとき、私は笑った。
器物損壊で届けてやろうかと言ったとき、水を差したね。
それ以外の彼との生活は、楽しくて穏やかだった。
二人でベッドで横になり、DVDを3本観た。
早めのクリスマスプレゼントに、
私からはネクタイとCDを、彼からは色違いのマウスとテディベアをペアで。
二人で外食し、手を繋いで歩き、このままの暮らしが続くことを願った。
彼と二人で暮らしたいと強く願った。
半月足らずではなく、ずっとずっと。
駅のホームのベンチに座る男性。
颯爽と通りを歩く男性。
彼より、数十倍いい男が溢れているのに。
私の人生とクロスオーバーすることはない。
彼がいない部屋でひとり。
わたしは食べることを忘れてしまった。
2005年12月11日(日)
あの日から
あの一夜を思い出そうとしている。
きっかけは覚えている。
だけど、切れ切れに浮かぶばかりで、順を追って思い出せない。
PCを起動していても、メーラーを閉じている時が多い。
彼からのメールを見つけたのは、何時間後だったのか。
彼の腹部を指で押し
ここに包丁を突きつけたらいいの?
泣き叫んだらいいの?
彼が恐れたのは、私が無表情で、それどころか笑みさえ浮かべ
冗談を口にしたこと。
ひとごとのように、淡々と話していたこと。
最初のうちだけだったけれど。
そのうち何も考えられなくなり、ひとつだけ頭に浮かんだ。
息子の顔を見に帰る。
一緒に大阪で生活しようね。
生活?そんなこと言ってないよ。
息子の顔を見たいだけ。
帰るだけだよ。
適当に身の回りのものをバッグに入れて、部屋を出ようとする私と
引き止める彼。
渾身の力でふりほどこうとして、抑え込まれる私。
バッグを取り上げられそうになり、手放したんだっけ。
いらないや。
欲しかったらあげる。
言いながら笑った気がする。
2005年12月02日(金)
≪
≫
初日
最新
Copyright(C)2004- you All Right Reserved.