八月も残り少なくなってからやっと夏空がかえってきた。 残暑の厳しいいちにち、蝉たちがいっしょうけんめいに鳴いている。
気忙しさはずっと続いていて落ち着かない日々が続いている。 仕事帰りに母の病院へ、前回の事もあり慣れているはずなのだけれど 正直言って今日はちょっとしんどいなと思った。 もしかしたら不機嫌な顔をしていたかもしれないなと後から悔やんだ。
母が明日退院するかもと言う。すっかりその気になっているけれど 母に内緒で看護師さんに聞いてみたらまだもう少し先だと言うこと。 母にはそのことを告げずに帰って来た。きっとがっかりすることだろう。
けれどもそれだけ元気になったということ。 気の早い母だなと思うとなんとも微笑ましい出来事でもあった。
帰宅すると娘たちの荷物が少し増えている。 産休に入った娘と父親とが今日も頑張ったらしい。 いよいよ明後日の夜から同居が始まる。 いったいどんな暮らしが始まることだろう。
おそらくこうして日記を綴ることも思うように出来なくなると思う。 けれども12年間書き続けてきたウェブ日記を閉じるつもりはない。
過去の日記を読み返しながらそれはとてもとても愛しい日々であった。
長年おつきあいくださった皆様に感謝しながら またきっと帰って来ますとゆびきりげんまんをしたいなと思う。
明日はあしたの風が吹く。私のいちばん好きな言葉です。
相変わらず不安定なお天気が続いている。 午後少しだけ青空が見えたけれどなんとも蒸し暑い一日だった。
母の経過も良く昨日から一般病室に移る。 忘れていた入れ歯を届け、趣味のクロスワ−ドも届けた。 土日は面会に来られないことを伝えると寂しそうにしていたけれど 順調に回復している様子で、病院にお任せするしかなかった。
娘たちのお引っ越しが近づき、今日は一部の荷物を運んだりしていた。 明日すべての荷物を運ぶ予定だったけれど 大きな荷物は業者さんに頼むことになり28日に延期となる。 それまでに少しでも運べるだけ運んでおくことになった。
母のこと、娘たちのこととなんだか頭の中が混乱してしまって ふっとこころの余裕をなくしそうになってしまう。 いつものふんわりとしたこころはどこに行ってしまったのだろう。
お大師堂でとても過酷な境遇のお遍路さんと出会った。 30分ほど語り合う。なんとしても生きなければなどと。 自分がすごく無責任なことを話しているような気がした。 それでもお遍路さんは真剣な目をして頷いてくれたのだった。
「明日はきっとあるから」その言葉にどんなにか励まされたことだろう。 どんな境遇であっても希望をなくさず前を向いて突き進んでいくこと。 決して明るくはない前途を「修業」だと言ってまた歩き始めるのだった。
自分がどれほど恵まれているかを思い知るような一期一会であった。
午前二時、枕元の携帯電話がけたたましく鳴り響き 母が救急車で病院に運ばれたことを知る。
夫と二人で真夜中の国道を走り抜け隣町の県立病院へ駆けつけた。 良かった、意識はあるけれど「うっ血性の心不全」だと言うこと。 手当てが遅れたら命に関わる状態だったと聞き身体が震えた。
午前五時、酸素マスクをつけたまま集中治療室へ入る。 うわごとのように仕事の話をしようとしている母。 こんな時にどうして?と思う。それほどまでに仕事が 母の日常を支配していたのかと思うとやり切れなかった。
様態が少し落ち着いてきたこともあり後は病院にまかせて帰宅する。 ざわざわと胸がさわぐ。幸い命は取り留めたものの「死」が頭をよぎった。
これも試練なのだろうか。神様は何を試そうとしているのだろうか。
日中はどうしても職場を守らねばならず落ち着かないまま仕事。 午後二時で仕事を終えすぐに病院へ駆けつける。
今朝よりもずいぶんと顔色が良い。どんなにかほっとしたことか。
「入れ歯を忘れた」開口一番がそれで思わず笑ってしまう。
一時はどうなることやらと肝を冷やしたけれど 経過さえ良ければ二週間ほどで退院できるのだそうだ。
明日のことはあした。あれこれと思い悩むのはよそうと思う。
なにごともなるようになりまする。それが母の口癖だった。
今日は娘が生まれた日。
もう33年も経ったなんてなんだか信じられない。
その娘が母になり、またもうすぐ二人目の赤ちゃんが生まれる。
「ここにねかかとがあるの」お腹を触ったら確かにそれがあった。
あの時と同じだなあって思った。
娘がおなかにいた時もおへその横あたりにかかとがあって
いつも触っては生まれて来る命を愛しく感じたことだった。
ほうずき色の夕陽が差し込む産院で産声をあげた娘。
生まれてすぐには泣いてくれなくてどんなにかはらはらしたことか。
「お願い泣いて!」大きな声で叫んだことをおぼえている。
夏に生まれた子はおひさまのにおいがする。
その子はおひさまのように明るくてひまわりのような笑顔で育ってくれた。
私はこれからもずっとずっと母でいる。
娘がずっとずっと私のこどもであるように。
あっという間にお盆も終わってしまった。
送り火は少しせつないけれど
また来年も帰って来てくださいねと手を合わす。
お盆のあいだもずっと不安定なお天気が続いていたけれど
今日は久しぶりの青空になってとても嬉しかった。
夕暮れ時の茜色の空につくつくぼうしの声がひびく。
つくづくほしいとなにを欲しがっているのだろうか。
娘たちのお引っ越しが近づき、なんだか気忙しい。
来週の日曜日に殆どの荷物を運び込むことになった。
あれこれと考えている。そうなってみないとわからないことばかり。
いったいどんな暮らしが始まるのだろう。
迎え火の炎が消えてしまうまでずっと見ていた。
ご近所の三歳の男の子が「どうして火を燃やしているの?」って訊く。
天国からひいおじいちゃんが帰って来るのよ。
男の子の父親が「うちにも帰って来るんだよ」って。
ひいおじいちゃんもひいおばあちゃんも知らない男の子は不思議そうな顔をしていた。
姑がしきりに仏壇の花の事とか、迎え火の事とかあれこれと口をはさむ。
寝たきりで思うように動けなくてどんなにかもどかしいことだろう。
大丈夫よ。ほらもう帰って来たから。
そう言うと一瞬ぼけたように「誰が?」と問うのが可笑しかった。
一昨年のお盆には迎え火を焚くなり仏壇の笹が音をたてて知らせてくれたけれど
昨年も、今年もその音が聞こえなかった。なんだか少しさびしい。
けれどもきっときっと帰って来てくれていると信じている。
迎え火の炎を見つけて盆帰りみんな元気か会いたかったよ
ほうずき色の夕焼け空なんて何日ぶりだろう。 ほっとほっと空を仰ぐ。まるでこころのともし火のような空。
昨日から大荒れのお天気が続いていたけれど 今朝は名残の風が強いものの、久しぶりの青空が見えた。 台風は早朝、高知県東部に上陸したようだ。 それは私が青春時代を過ごし20歳まで住んでいた海辺の町だった。
どうか無事に通り過ぎてくれますように。 古き友の顔が目に浮かぶ。けれどもどうすることも出来ないもどかしさ。
気になりながらも自分が無事に朝を迎えられたことにほっとしている。 心苦しさもあるけれど「受け止める」ってきっとそういうことだろう。
昨日の午後から夫が消防団の召集でずっと留守をしていたのだけれど 孫の綾菜と「たいふ−こあいね」って言いあいながら過ごしていた。 夕方、仕事を終えて無事に娘が帰って来てくれてほっと胸を撫で下ろした。 娘と綾菜がそのまま泊まってくれることになってとても心強く感じる。
今朝の青空の嬉しかったこと。家中の雨戸をあけて「おはよう」も笑顔。
夫が一時帰宅、「じいちゃんおかえりぃ」って綾菜が抱きついていた。 「じいちゃんしょーぼ?」「たいふ−こあい?」夫は満面の笑顔であった。
夫はまたすぐに出掛けて行き結局24時間の召集になってしまった。 今夜はとても美味しそうにビ−ルを飲んでいた。ほんとにお疲れさま。
平穏無事をかみしめるような一日。かんでもかんでもかみきれないような。
目覚めたら真っ赤な朝焼け、まるで空が燃えているようだった。 なんて綺麗なんだろうとうっとりしていたらすぐに小雨が降り始めた。
青空をもう何日も見ていない。夏のおひさまが恋しいこの頃。
明日はもう立秋らしい。「残暑」という言葉があまりも不似合に思える。
仕事から帰宅して夫と義妹と三人でお墓掃除に行っていた。 お盆にはまだ少し早いけれど、週末は大荒れになりそうなので 早目に済ましておくことにしたのだった。 「お盆には帰って来てくださいね」とみんなで手を合わす。
義父が亡くなってもう32年。ずいぶんと歳月が流れてしまった。
生きていればとよく思うことがある。 ひ孫の顔も見たかっただろうにあまりにも早い最期であった。
お盆には家族みんなが揃うことだろう。 義父もきっと喜んでみんなに会えるのを楽しみにしていると思う。
帰って来てくれる。それはとてもとても嬉しいことだった。
テレビではひっきりなしに豪雨のニュ−スが流れている。
幸いなことに高知県西部は難を逃れたようだけれど 雨はまだ明日も降り続くのだそうでやはり不安になってしまう。 どうかどうかもうこれ以上雨が降りませんようにとひたすら祈っている。
午前中にお大師堂へ。四万十川はかなり増水しており濁流が渦巻いていた。 ごうごうと唸るような水音にどきどきしながらお参りを済ませた。
ほっとこころを和ませたのはたくさんの蟹さんたち。 ざわざわと楽しそうにまるでお祭り騒ぎをしているようだった。
綾菜が一緒だったらきっと大喜びしたことだろう。 どうしているのかな。お母さんと一緒におりこうさんで遊んでいるかな。
昨夜も「あやちゃんは帰らない」などと言って母親を困らせる。 「じゃあおばあちゃんと寝ようか」って言うと「いやだ!」って言ったり 挙句の果てには「あっかんべぇ」をしたりしてみんなを笑わせる。
娘たちもそろそろお引っ越しの準備をしなければいけなくなった。 臨月になり大きなお腹がしんどそうにもう少しで産休に入る予定である。
「にぎやかになるだろうな」夫と二人で嬉しいような苦笑い。
けれどもきっときっと楽しい日々が待っている。それがいちばんの幸せ。
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