2008年02月28日(木) |
つくしの坊やの帽子がいいな |
春らしいいちにち。枯野にはつくしの坊やがこんにちは。
のんびりと歩いてみたいものだ。なあんにも思い煩わず。
たとえば嫌なこと。どうしてこんなに気に障るのかなあ。
些細な帽子を被っているのに。その帽子が重くてならず。
こんなもんこんなもんって思っているのに脱げないひと。
そんなひとになってしまう時が。あってしまう時がある。
つくしの坊やの帽子がいいな。あんな帽子が好きなんだ。
でっ。ほんとに些細なことなんだけど。ちょっと愚痴ってたら。 おまえだってそうだろって彼が言う。そういえばそんなことが。 何度かあったなって思い出す。ぜんぜん悪気なんてなかったんだ。
でも。俺は嫌だったぞって言う。グサって来たぞ。むっとしたぞ。
だからそれとおんなじ。自分が誰かに言われてすごい刺さったのを。 自分だって刺したことあるのに。今まで気づかずにいたことだった。
痛みって。むつかしいな。痛みって。自分が痛くなるまでわからない。
言われてすごい落ち込んだこと。一気に自信なくなってくよくよ思った。 そしたら。ものすごい不安になった。いちばん自分が気にしていること。 突きつけられたんだって思った。でもしょうがないほんとのことだもん。
ほんとのことだけど忘れてた。忘れてちょっと有頂天になっていたかも。 だからおしえてくれたのかもしれない。思い出しなさいよって感じで。
それはけっして悪気ではないなあ。むしろありがたいことなんだなあ。
そうそう俺だって思い出したけど。それがどうしたって思ったぞって。
だからすぐにまた忘れたんだって言う。おまえも忘れたら楽だぞって。
言うから。私も忘れた。もう忘れた。ワスレタワスレタの呪文唱えて。
だからこのことはもう一件落着。でも刺したことは忘れてはいけない。
痛かったろう。ごめんね。我慢してくれてほんとにありがとう。
2008年02月25日(月) |
ほらほらおいで。こっちへおいで。 |
朝。すこしくつろぐ時間をありがたく。窓を少しあけて。
朝陽が降りそそぎ始めた眩しさを眺める。ちゅちゅんと。
雀がお隣の瓦屋根にいて。ちょんちょんと軽くジャンプ。
その足取りがなんともいえず可愛い。おとなの雀なのか。
小雀なのか知らない。けれどみんな子供みたいな雀たち。
一羽のそばにもう一羽がちょんちょんしてきて寄り添う。
すこし離れてもう一羽が。思案気な顔をして首を傾げる。
みんな仲間。でも遠慮しているよな雰囲気がいじらしい。
ほらほらおいで。こっちへおいで。私もふっと雀の気持。
川仕事を終えたのが午後一時。山里の職場に行こうかなって。 思ったけれど。なんだか気だるくなって。今日もやめておく。
そしたら電話があった。とても大変そうだけど何とかなってる。 大丈夫だからって言うけど。気がかりでならない。行こうかな。 でも無理しなくていいって言うから。じゃあ明日雨なら行くよ。
明日。雨だといいな。降水確率80%ってほんとだったらいいな。
晩御飯。サチコがお休みの日だったから。あれこれ作ってくれる。 と言っても。母が買い物さぼったから。冷凍シューマイ揚げてた。 シューマイの揚げたやつ好きだし。あとフライドポテトも好きだ。
それから。昨夜の残り物。牛すじと辛子こんにゃくを煮たやつと。 それから。昨夜焼き忘れていたブリ。塩焼きにして大根おろしで。
わいわい言いながら三人で食べる。「お兄ちゃんも来ればいいね」 うん来ればいい。呼んであげたらきっと来るだろう。でも呼ばない。
「呼びたいくせに」ってサチコが言うので。「呼ばない」って言う。
ほんの三日が。ひと月くらい長く感じる。これはどうしたことだろう。
突き放そうとしているのかな。それとも彼を応援しているのかな・・。
わからなくなって。なんだかほろほろとしてしまう。哀しいのじゃない。
淋しいのでもない。こたえなんてわからなくてもいいようにも思う。
ただただ。母はせつなくてならない。こどもってどこに向かうのだろう。
2008年02月23日(土) |
怯まないこと。揺らがないこと。 |
夜明け前からずっと。ずしんずしんと強い風が吹き荒れる。
ざわざわを通り過ぎる。なにもかも吹っ飛んじゃうような。
威勢のよさ。行っちゃえようって。ほえているような心が。
心地良い。怯まないこと。揺らがないことがすくっと立つ。
でも。今日の川仕事はちょっと怖かった。川が海のようで。 船に乗るのが怖ろしくてならない。しがみつくようにして。 身を屈めていた。ざぶんざぶんって水しぶきがすごくって。 行きはなんとか。帰りの向かい風は。もう恐怖のどん底だ。
私は泳げない。平泳ぎもクロールも出来ない。犬かきだって。 5メートルが精一杯だと思う。だからだから死ぬんだって思う。
ほんとうに生きた心地ではなかった。だけどちゃんと生きている。
よかった。晩御飯もお腹いっぱい食べた。熱燗もビールも飲めた。 お風呂も気持ち良かった。はあああっていっぱい満たされている。
おっし!明日もやってやろうってさっき思ったばかりなんだけど。 明日の仕事は中止になるかもって彼が言う。ナイトクリーム顔に。 べたべたしている時に言うので。鏡の私は。ちょっと腑抜けてて。
明日早朝から。消防団の召集が掛かったのだそうだ。サーファーが。 今日の荒れた海で行方不明になったらしい。一刻を争う事だけれど。 夜はどうしようもない。どこかに泳ぎ着いていてくれることを祈る。
毎年何度かは必ずあること。自分が捜されていることなど知らずに。 泳ぎついたまま。さっさと帰ってしまっていたひともいたくらいだ。
でも。さがす。安否がわかるまでさがし続ける。救ってあげたいって。 どうか生きていてくれって。みんな一生懸命になって捜し続けるんだ。
私は。ふっと口をすべらせてしまった・・・。
「今日みたいな大荒れの日にサーフィンなんて」って。
そしたら彼が言う。「してしまったことはしょうがないだろ」って。
だから。さがすんだと言う。見つけてあげたい一心で彼は行くのだ。
2008年02月21日(木) |
どこに旅して来たのだろうか・・。 |
春の陽射し。とろりんとしたくなる。まったりと平らに。
駆けもせず。ころがりもせずにいて。ひとやすみの心地。
けれどなにかが動いている。ちゃんと見ていてあげたい。
どこにいくのか。なぜにいくのか。わからないなにかを。
いつもの川仕事をお休みして。息子君のアパートを訪ねる。 サチコも一緒。そろそろ引越しの準備をしなくてはならない。
独り暮らしには不要な物。数々の食器やらを片付けたりする。 これも要らないあれも要らないと言うので。随分な荷物になる。
きれいさっぱりとしたものだ。なんだかふっと切なくもなった。
お昼。父親の彼がお弁当を買って来てくれた。四人で食べる。 「なんかこういうの久しぶりやね」ってサチコが喜んでいる。
ほんと久しぶり。子供の頃にお花見に行った時とか思い出す。
どんな事があっても。何があっても。家族なんだなあって思った。
夕方。持ち帰った荷物のなかに。古いアルバムを見つけた。 懐かしくなってそのページをひらく。生まれたばかりの頃。 はいはいしているところ。つかまり立ちをしているところ。 そして初めて歩いたとき。たくさんの思い出が胸に熱くて。
私は。こうしてこの子の母にしてもらえたんだなあって思う。
晩御飯も四人で食べる。ビール飲みたいから泊まろうかなって。 食べ終わると「ありがとう」って言う。なんだか照れくさい母。
今は。お風呂入ってサチコの部屋で寛いでいる。我が家にはもう。 彼の部屋というのがない。「日本間にお布団敷いといたよ」って。 さっき声をかけたら。また「ありがとう」って言ってくれたから。
やっぱり母はとても照れてしまった。
一緒に暮らしていた二年前には。ほんとうに当たり前だったことが。
いまは。そうではないという事なのだろうか。ふしぎだなって思う。
「ありがとう」はとても嬉しい。我が子はどこに旅して来たのだろう。
2008年02月18日(月) |
生きがいの種。そだてる嬉しさ。 |
きのう。夜明け前から雪。日中も風と一緒に雪が舞った。
きょう。朝の冷たさが嘘のように。ぽかぽかと暖かくなる。
冬と春が。かわりばんこしている。きりりっとひきしまり。
ふわりっとゆるんで。日常がすすも。おわってはじまって。
はじまればおわることが。もうじゅうぶんなくらい満ちた。
昨日は。地区の『厄抜け還暦祝い』の行事があり、お当番になって。 朝から集会所に行く。お昼から宴会があり地区中の人が大勢集まる。 百人以上は居たと思う。寒かったのでお酒を沸かすのに大忙しだった。
一緒にお手伝いをしていた人達と。もういいね。もう帰りたいねって。 ぼやきながら頑張る。毎年の行事。裏方さんの苦労が身に染みて解る。
やっとお開きになり大急ぎで帰宅。今度は我が家で姑さんの喜寿の宴。 もうすでに酔っ払っている親戚の皆が。祝い酒を持って集まってくれた。 床の間にずらりっと日本酒。ビールのケースもある。ちょっとにんまり。
姑さんは。ほんの内々のつもりでいたらしく。感激して涙ぐんでいた。
「おばちゃんの頑張りはすごい!」って従兄弟たちが口々に褒めてくれる。 手先が思うようにかなわない。足だって痛くてたまらない日もあるのに。 毎日まいにち畑仕事に精を出している。ほんとに野菜作りが大好きなのだ。
はたけをたがやしては。生きがいの種をまく。そのたねをそだてる嬉しさ。
いつか終わる。やがて終わる。けれど耕すことをあきらめてはならない。
2008年02月16日(土) |
そんな光にあいたくて |
北風が強く吹くいちにち。ひゅるひゅると冷たいけれど。
白波のたつ川面には光の粒がまぶしい。踊り子のように。
天使のように。それは空から降るように舞い降りてくる。
あたたかなものたち。優しいものたちの歌声がきこえる。
とうとう。昨日から独りぼっちになってしまった息子くんが。 遊びに来たふりをしながらずっと家にいた。晩御飯とお風呂。
「ありがとう」って言って帰る。母はなんだかフクザツな気持ち。
もうコドモじゃない。子供じゃないって思うけど。やはりこども。
明日は。おばあちゃんの喜寿のお祝いをする。 それが無事に終わってから。すべてを打ち明けることに決めた。 なんぼかショックを受けることだろう。でも。もう始まっている。 過ぎたことを思い煩うことなく。ただただ前へ進むだけだと思う。
あたりがすっかり暗くなった午後6時50分過ぎ。すぐ近所に住む。 甥っ子姪っ子達に声をかけ。堤防の石段を上がる。夜風が冷たい。 四人で空を見上げた。「見えるかなあ・・見えたらいいね」って。
あっあれだっ!って姪っ子が一番に見つけた。動いてるよあれだよ。 早いね。だんだん近くに見えてくる。おっきなお星様みたいだった。
スペースシャトルが見えました。すげぇ〜って甥っ子が喜んでいる。 地球ってやっぱ丸いんだねって。その光は宇宙に吸いこまれるように。 遠く遠くなっていく。あーあってわたしも子供みたいな声をあげた。
光るものって。ふしぎ。光るものってやはりどうしてもまぶしくて。
そんな光にあえただけで。こころがほこほこっとあたたかくなった。
※みんなに見えるといいな。。スペースシャトルを見よう
2008年02月14日(木) |
追憶というなの今日という日 |
北風が冷たい一日。立ち向かわず少し俯くのがいい。
そうすると思いがけない緑にあえる。枯れ草のなか。
よもぎ。犬のようにくんくんとしたくなる。草もち。
むくむくっと聞える。土の中から誰かが呼んでいる。
こえ。耳を澄ますとそれが息。その息に手のひらを。
そっとしよう。感じたままにもっと素直に微笑もう。
午後。家中にチーズの匂い。サチコがチーズケーキを焼いていた。 なんと炊飯器のなかにケーキがあるのでびっくり。でもふっくら。 炊きたてのケーキを味見する。熱々のケーキなんて初めてだった。
でも冷ましているうちにだんだんしぼむ。今年も失敗だったよう。 チョコクッキーも。オーブンの中で焦げくさい。あーあーと嘆く。
だけど。その失敗作も愛嬌だと言って。綺麗にラッピングしていた。 若いって可愛いもんだなって母は思う。てへへって笑ってにっこり。
母も。すんごい昔のことだけど。バレンタインの思い出っていうのが。 ちゃんとある。何十年経っても忘れられない。苦いような甘いような。
紙テープに手紙を書いた。何色のテープだったのかは忘れてしまった。 けれど。くるくるしてるのを少しずつほどきながら。せっせと書いた。 途中で破れたら元も子もないから。すごい慎重に心を込めて書いたんだ。
なんて書いたのかな。もう忘れてしまった。思い出せたらいいなあ・・。
やっと最後の芯のところまで書き終わって。やったぁって思ったっけ。 そしてそれを元通りに巻き戻す。綺麗に巻けない。何度もやり直した。
グリコのアーモンドチョコだったかな。自分が好きなのにしてしまう。 放課後に渡そうと思った。でもどうしても渡すことが出来なくって。 とうとう意を決してそのひとの家まで行った。一言も話せず仕舞いで。 玄関で押し付けるように差し出し。逃げるように路地を走って帰った。
三日後ぐらいだったろうか。すごい大変なことが起こってしまったのは。
緊急のPTA会が開かれたらしい。明くる日私は職員室へ呼ばれた。 「コドモが何やってるんだ!コドモのくせに・・コドモのくせに」って。 担任の先生にすごい叱られた。悲しかった。すごい悔しくてたまらない。
好きなのに好きって伝えるのが。どうしていけないことなんだろう。
一生懸命に書いた手紙が。たくさんの父兄の前で晒されたらしい・・。 「こんなもの、こんなもの!」ってそのひとの母親が激怒していたって。 自分の親がその席に欠席していたことが。何よりの救いだとも思った。
でも好きだった。どうしてもそのひとが好きだった。
放課後。体育館でバスケの練習しながら。野球部の練習が見たくて。 たまらない。春には大会があるからきっと応援に行こうって思った。
そして春。思いもかけない悲しくて遣り切れないことが起こる。
彼が転校するのだという。それがすごく遠い。岩手県だって知る。
はりつめたこころ。いまにも破れてしまいそうなこころだった・・。
最後の大会の応援に行く。そのひとが打つ。そのひとが走る。 きらきらとまぶしくてならない。好きなひとってまるで光のようだ。
お引越しの日。初めて言葉をかわした。「手紙ありがとう」って。 言ってくれた。隠していたのをお母さんに見つかったのらしい。
「また手紙書くね」って言って別れる。そうして泣きながら走って。
それが彼に会った最後になった。
それから5年間。岩手と高知を何度か手紙が行き交ったけれど。 私が19歳の時。結婚することになって。それを知らせたとき。
「僕にはもう言葉がなにもありません・・」って葉書が届いた。
「高知大学を受けたけど落ちました・・」って最後に書いてあった。
2008年02月12日(火) |
でも椿かもしれない。わたし。 |
くもりのち晴れ。そのくもりは花冷えの頃に似ていて。
満開の梅を見る。はらはらと潔く散れそうにもない花。
その傍らに落ちる椿。なんだか痛い。その音が聞える。
わたしは桜のように散りたいと願う。惜しまれつつも。
潔く散れたらどんなにいいだろう。儚いねって誰もが。
その花びらを受け止めようと。そばにいてそばで見て。
ああ散ったねって惜しんでほしい。花吹雪のさなかで。
でも椿かもしれない。そう思うと。なんだかかなしい。
午前中。姑さんのお供で。喜寿のご祈祷に『延光寺』さんへ行く。 年明けの怪我のせいもあって。歩くのがとても辛そう。でも杖を。 だいじょうぶ。だいじょうぶと。それは力強く踏みしめるように。 石段をあがる。厄払いの大勢の人ごみのなか。なんだか不安だった。
でも。無事にご祈祷をしてもらって。その笑顔にすごくほっとする。 待っているあいだ『奥の院』へ行って来た事を話すと目を輝かせて。 観音さまの話とか。もうこれですべて平穏におさまるのだからって。
清々しいきもち。お供をさせてもらった。きょうは『吉』の日だった。
帰り道。運転する私に助手席から。どうしてもってきかないキモチだと。 言って。お賃をくれた。三千円も。当たり前の事をしたのにいけないと。 つき返してもまた差し出してくる。とうとう根負けして遠慮なく頂いた。
とてもありがたい日だった。それ以上に尽くしていきたいと心から思う。
午後。一週間ぶりだろうか。山里の職場に駆けつける。「こんにちは」 そう言って。タイムカードを押した。専務オババが笑顔で立っている。
案の定。机の上がいっぱいになっていた。ああこういうのが快感だな。 てきぱきとこなす。さあ次は。どんとこいよって感じで仕事が楽しい。
郵便局へ行く。昨日書いた手紙。チョコレートと本と一緒に送る。 そしたら。窓口の女性が綺麗な花の記念記切手を貼ってくれている。 「このほうがいいよね?」って毎年だから。ちゃんと憶えてくれている。
すごい嬉しかった。憶えているのはわたしひとりなんかじゃない。 忘れないでいてくれるって。こんなに嬉しいことはないなあって思う。
「ほーらこれでさいこう」そう言っておっきな封筒を見せてくれた。
この嬉しいの。まっすぐに届け。瀬戸内の海をまっすぐに泳いでいけ。
椿。落ちるまで。あとどれくらいだろう。届かない年。私が落ちたのだ。
2008年02月11日(月) |
かたいつぼみのようでやわらかなこころ |
晴れのちくもり。冷たい北風も吹かずぬくぬくのいちにち。
午後。窓辺の机で手紙を書く。便箋三枚とどけ届けと願う。
一方通行だけれど進入禁止ではない。それがこの道の規則。
もう何年もそうしている。ことしもその季節になったのだ。
なにも求めず。なにも失わない。なにも変わらない人の縁。
そんな縁が愛しい。かたいつぼみのようでやわらかなこころ。
手紙を書き終えて。また茶の間の炬燵で猫になる。
彼が。とても暴力的な洋画を見ていた。すごい嫌だなって思う。 男の人ってどうして殴ったり殺したりするのが好きなのだろうか。
ため息をつきながら。うたた寝も出来ずちらちらとテレビを見る。 なんだか大変なことになっているらしい。宇宙人が地球をのっとり。 人間が檻の中に入れられている。そして奴隷みたいに働かされている。
逃げたって同じだ。また狩られてしまうとか言う。闘うしかないって。 宇宙人たちの母星を爆破して粉々にしてしまうんだと作戦を練っている。
ほんとうにこれはたいへんだ。うたた寝している場合ではもうない。
気がつけば手に汗を握るほど夢中になって見ていた。やれ!いけっ! がんばれ。走れ。撃たれるなよ。生きろよ。地球の命を皆で救うんだ。
自ら犠牲になって地球を救ったひと。涙を流しながら自爆していった。
地球では残された命たちが抱き合う。未来がある。希望だってまだある。
はぁ・・よかったなってほっとする。
でも。晩御飯の支度がすごい遅れた。お休みだったサチコが台所で。 ばたばたしている。どうするの?なにするの?ってひとり騒いでいた。
サチコがトンカツを作ってくれる。後は昨夜のカレーでだいじょうぶ。 カラリッと揚がった美味しそうなトンカツ。さあ晩御飯の時間ですよ。
でも。なんということでしょう。炊飯ジャーの中身が空っぽだった。
母。またやってしまった。母。いっつもこんなんだけど。母です。
2008年02月09日(土) |
どれくらい海で。どれくらいの川なんだろう。 |
みぞれ降る朝。雪になれそうでなれない雨はとても冷たい。
休もうか休みたいねって言いながら。でも雪じゃないから。
雨合羽を羽織って川仕事に行く。川船の舳先にちょこんと。
ここまできたらもうやるしかない。うんやろうと思う仕事。
海は荒れていても。川の水はどんどん引いていく。春の潮。
ふしぎだ。この水はどこにいくのだろう。海水にまざって。
また帰ってくる。おなじ水なのかな。ちがうのだとしたら。
どれくらい海で。どれくらいの川なんだろうってふと思う。
からだを冷やしてしまったせいか。午後にわかに腹痛が起こる。 正露丸が良いのか胃薬が良いのかわからない。しぶしぶと痛む。
炬燵にすっぽりともぐりこみ。また猫みたいになって寝ていた。 彼がカンフーみたいな映画を見ていて。「アチョー!」ばかり。
とうとう今日も買出しに行けず。ジャージ姿で近くのコンビニ。 おうどんと日本酒を買う。それと大好きな豆大福もちゃんとね。
生卵をのっけて月見うどん。すごい温まる。熱燗もいい感じだ。
『土佐鶴』ってお酒を飲むたびに思い出す。土佐太郎君のこと。 彼は故郷で暮らしているのだろうか。今でも詩を書いているのかな。
酒蔵の息子さんだった記憶。とてもユニークな詩を書くひとだった。
あの頃って。あれこれ口に出して話すことより。言葉がたいせつで。 俺の詩とか私の詩とか。そいうのにとても満たされていたように思う。
なんだかとても遠くなった日々。だけどいつだって心は還っていける。
ひいてひいてまざってかえる。それが海なのか川なのか私は知らない。
2008年02月07日(木) |
その新鮮を見つけてあげたい |
メジロの鳴き声がする。その小鳥と語らうひとがいる。
目を細めてそれは嬉しそうに。その優しい声のぬしが。
彼だった。このひとってこんなひとだったんだなあって。
新鮮。ながいこと一緒に暮らしていて。気づかなかった。
もしかしたら知らないことがもっともっとあるのかもしれない。
いつだって遅すぎることはない。その新鮮を見つけてあげたい。
梅の花蜜が好きだというメジロが。人を恐れもせず里を飛び交う。
幾度目の春だろう。指折ることも忘れてしまった。あなたとわたし。
息子君の新居も決まり。月末に引越しをすることになった。 あれこれ雑事もあるけれど。とにかくの一歩にほっとする。
家業の川仕事も順調。まだ始めて一週間なのに。取らぬ狸の皮算用。 今年こそは旅行に行こうとか。クルマ新車にしようとか夢ばかりだ。 でもそれも楽しい。生活のためだと現実ばかりでは疲れてしまいそう。
カラダきついなあって不安だったけど。大好きなバドもちゃんと出来る。 昨夜なんか、気合入れようとリポビタン飲むつもりが。手にウコンの力。 冷蔵庫の前で可笑しくて笑った。最近ボケボケ度が高まっているみたい。
バドミントンはほんとに楽しかった。やるたびに好きだなあっておもう。
今日は旧正月らしくて。晩御飯は『ひっつけ寿司』を作る。 鰹の切り身にお酢をかまして、握り寿司みたいにするのだけど。 握る片っ端つまむひとがいて。握る自分もついつい味見をしたり。
すごい久しぶりにワインも飲んだ。なんだか懐かしい味がするワイン。
そうして食後の別腹にマドレーヌ。ついつい二個も食べてしまった。
お腹がいっぱいになると。やはりそこには幸せが満ちているものだなあ。
満たされたいと求めるばかりでは。なにも満たされないのに似ている。
2008年02月05日(火) |
前って。ここからが一歩だから。 |
白い梅と紅い梅がならんで咲いているのが好きだ。
競い合うのでもなく。自慢しあうのでもなく。ただ。
そこで寄り添う。あなたとわたしみたいなそれぞれ。
たがいに散り急がず。凜とした寒さに耐え春を映す。
いま。ひととひとが別れる。男だなんて女だなんて。
何も責めたくはない。ひととしてふたりを尊いと思う。
川仕事から帰宅したら。庭に息子君のクルマが停まっていた。 ほっとする。先日からずっと待っていたけれど。仕事しごとで。 思うように休みが取れず。何の相談も出来ずに今日に至っていた。
ありあわせのおかずで三人で昼食。腹へりへりと言いながら食べる。 「でっ、どうするんだ?」とはもう聞かない。もうなるようになった。
明日は独りで。ワンルームのマンションを捜しに行くことに決まった。 自炊もするし、洗濯もする。お弁当はコンビニで買うから大丈夫だと。
なんだかとても不憫に思う。家に帰ってくれば良いと言ってあげたい。 でも。父も母もそれだけは言うまいと心に決めていた。だから言わない。
こどもだけど。もう子供ではない。もっともっと苦労をするべきだろう。
縁あってともに暮らしてくれたひとを想う。いつも笑顔で明るくて。 ほんとうの娘のように思っていた。「お母さん」って呼んでくれて。 嬉しかった。頼りにしていた。甘えていた。とても大好きだったひと。
ありがとうって言えない。さよならも言えない。それだけを悲しく思う。
「前向きにな」って父が言う。母も言う。前ってここからが一歩だから。
誰も恨まず。誰も憎まず。それ以上にひとを思い遣る気持ちを育てて。 これからの人生を。自分の人生を一歩いっぽ。歩み続けて行って欲しい。
2008年02月04日(月) |
あのひとのことなどわすれてしまうくらい |
ひとつひとつを確かめるように山里へと向かう。
昼下がり。それは菜の花の畑だったり。水仙が。
少しうつむき加減に咲いている民家の庭先とか。
門番のように繋がれた犬の。眠たげな虚ろな瞳。
猫の親子が道を横切る。あちらの陽だまりへと。
時が静かに流れている。のどかにゆるうくそっと。
早朝からの川仕事を終え。慌しく職場へと向かった。 いったい何を急いでいるのだろうって。ふっと思う。 「どうどう」と馬の背中を撫でるような気持ちになる。
気掛かりな事がたくさんあって。駆け付けるような思い。 だけど。急いだって何も変わらない。なるようになるって。 いつもそう言っているのは自分なのに。それを忘れている。
立ち向かうべき時もあれば。そうとも限らない時だってあるのだ。
少しだけ残業をして。明日もし来れなくてもかまわないくらいに。 しておく。専務オババである母の体調もだいぶ良いみたいで安堵。 「あんたが居なくてもだいじょうぶ」とか言う。それが優しさかも。
夕暮れて川辺の道は。はっとするほど紅い空。なんだかきゅんっと。
ひとを想う。アノヒトノコトナドワスレテシマウクライの空腹だった。
2008年02月02日(土) |
ひゅいんひゅいんと。こんにゃくのきもち。 |
早朝。今にも雨になりそうな空を見上げつつ。ふぅっと。
ちいさなため息をひとつ。でもやるんだからって思って。
家業の川仕事に出掛ける。今年もなんとかここまできた。
海苔の生育がいまいちで。はらはらしながら不安だった。
けれど。こうして恵まれることが幸い。ありがたいこと。
桜の季節が終わる頃まで。ふんばってふんばって頑張ろう。
気力はこうして漲っているのだけど。やはりもう年なのかな。 なんだか身体が思うようにいかない。すぐに疲れが出てくる。
今日は土曜日なのを幸いに。午後は炬燵でずっと寝てばかりだった。 買い物に行く馬力もなくて。晩御飯はまたすごい質素に済ます。
平日だと。山里の職場と掛け持ちになる。親孝行だって思っていても。 こんなにしんどくて大丈夫だろうかと不安になる。自信が薄れていく。
弱音。そうこれはかなりな弱音。だって強がるとよけいにしんどいもん。
ふにゃふにゃしてる。こんにゃくみたいな気持ち。力まなくていいんだ。
そうだよ。切られたり千切られたりには弱い。でも振り回してみると。
こんにゃくは意外と強い。ひゅいんひゅいんと風を切る事だって出来る。
しなやかなる弱音に魅せられて。そっとふたをするように今日を閉じる。
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