2008年07月27日(日)...虚虚実実

 炎天下、じりじりと焼き尽くされる正午、ブラインド越しに照らされたフローリングが熱を持つ。鎖した目蓋に浮かぶ緑色の迷路がオレンジ色に染まって、スパークする。エアコンの吐く風が湿された身体を這って、血液の循環を遮られた手先が冷たく痺れていた。背中が酷く痛む。
 部屋に充満するココナッツの甘い香りが脳味噌をぐにゃぐにゃと溶かして、塗れる朱色にさえ鈍感になる頃には、力が加わる度に覚えていた背中の違和感すら別の何かに変質して仕舞っていた。天井を彩る花火が糸を引いて湖に溶けては消え、揺らめく波紋は新たな煌きを生み出している。
 所有権を繰り返し振り翳す唇が紡ぐ、愛してる、が代替可能の執着だと解っていても、その言葉にでも繋ぎ止められていなければもう、生きていない。

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